Viedel/KukiHairDesign/ヴィーデル/クキヘアデザイン 四条烏丸 美容室

ヴィーデルは四条烏丸の美容室です。フランス仕込みの技術 ナチュラルで優しく ふんわりとしたヘアスタイル

モノクロ映画

2019-07-04 07:19:19 | 映画
冷戦下のポーランドで、若い歌手とピアニストが激しい恋に落ちる。
映画は、十五年もの長きにわたって幾度も別離と再会を繰り返す、このふたりを時には憂愁に満ちたメロドラマのように、時には突き放すような、仮借ないハードボイルド・タッチで描き出す。
ピアニストはソ連のスターリニズムが苛烈な強制力を帯びてきた時代から遁走するようにパリへと亡命する。
女流詩人と同棲し、パリのナイトクラブでジャズを弾いているシーンは、戦後のある時期、サルトルやボリス・ヴィアンら実存主義者たちがジャズに熱狂していたサンジェルマン・デ・プレ界隈の喧騒を否応なく想起させる。
光と影のコントラストが強調された、深いノワールな哀調をたたえたモノクロの画面がすばらしいが、逢瀬を重ねるごとに、光の中で若い歌手は官能的な魅力を生き生きと浮かび上がらせる。
パリのクラブのカウンターで「ロック・アラウンド・ザ・クロック」に合わせて彼女が踊り狂うシーンの躍動感は圧倒的だ。
いっぽうピアニストは、次第に自らの影に脅かされるように、虚ろさ失意にとらわれ、疲弊を深めてゆく。
そこにはメランコリックな喪失感にも似た、ある痛ましさが感じられる。
バッハの「コルドベルク変奏曲」が流れる。
名状しがたい、深い余韻を残す「COLD WAR あの歌、2つの心」のラストシーンには、越境者の祖国ポーランドへのアンビバレントな心情が色濃く反映されている。
一見、くされ縁の物語が、そのままポーランドの現代史と重ね合わされる、スリリングな語り口には、ただ感嘆あるのみである。