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トランスジェンダーもの

2019-07-09 08:08:07 | 映画
ベルギーの新聞に記事が掲載される。
それは、トランスジェンダーの少女がバレリーナになるための葛藤を記したもの。
その記事に触発され9年間を費やし、完成させた映画は、バレリーナ独特の薄皮のような皮膚の内側で起こる性同一性障害の現実を描いている。
ベルギーのバレエ学校に人より遅れて入学してきた主人公は、家族の理解の下、定期的に通院して男性としての成長を抑制する投薬療法を受けている。
療法により、さらなる女性化を目指すが、自然の摂理として生まれ持った性がそれを拒もうとする。
レッスンでは、パッドでバストを強調し、股間にテーピングを施して逆に突起を隠し、華麗に舞うが、そのバレエ教室の合宿中にクラスメイトたちから酷な嫌がらせを受ける。
肉体の性と性同一性の不一致は、日常での過酷さ。
やがて訪れる決断の時。
トランスジェンダーへの一般的認識を、一気にアップデートするもの。
人によっては理解の範疇外にあった世界を、同じ肉体を持つ人間として共感できるレベルにまで押し上げてくれる。
瑞々しく好演するアントワープのバレエ・スクールに通うトップダンサー、ビクトール・ポルスターが、役柄の設定とは違いシスジェンダー(肉体の性と性同一性が一致している人)であることを問題視する論調は、決して的を射ていない。
誰が演じるかではない。
人が本来の自分として生き抜くための努力と、挫折と、そして、葛藤の果てに訪れる自由こそが、作品のテーマなのだから。
それにしても家族や医療関係者の、何とフラットなことか!?
黙々と冷静に的確な治療を提案するドクターは勿論だが、娘の幸福のためならすべてを投げ打つ覚悟のシングルファーザーの父親が、どんな時も愛に溢れていて涙が出る。
ベルギーという国の成熟を痛感させる映画でもある。