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勝新太郎より速いのではないか。
若山富三郎よりも速いのではないか。
「るろうに剣心」を見て、ボクは感心した。
「座頭市」や「子連れ狼」のシリーズが、蘇ったのだ。
もちろん、主人公の個人技では敵わないだろう。
勝や若山の殺陣は、なんといっても年季がちがう。
試行錯誤やひらめきを繰り返し、超現実的な型と速度を獲得している。
こればかりは覆しようがない。
が、対抗策ならあるのではないか。
「るろうに剣心」では、主人公の足りない技量を補うために、見事な工夫を凝らしている。
工夫のひとつは、強力(ごうりき)と脱力のコントラストだ。
簡単にいうなら、剛と柔の対比。
主役を演じる佐藤健に「柔」の部分を担わせる一方、敵役や助っ人の役に、ずらりと「剛」を並べる。
このキャスティングは、相当に考え抜かれたものだ。
するとアクションが生きる。
古典的な一騎打ちも光るが、乱戦のさなかでも個々のキャラクターが埋没しない。
強力なヒーローが群がる敵をつぎつぎと斬り倒す従来の構図とは逆に、ここではスリルの持続時間が長い。
わけても眼を奪ったのは、悪役・鵜堂刃衛を演じた吉川晃司の存在感だ。
吉川は肩幅が広い。
身長が高く、上半身が発達していて、背筋の強さを感じさせる。
日本の時代劇ではめったに見られない悪役のタイプだ。
それなのに、吉川には刀アクション(チャンバラと呼ぶと重量感が伝わらない)がよく似合う。
次世代型の剣鬼を思わせる。
そんな剣鬼を、佐藤健の柔らかさを引き出す形で生け捕りにしようとする。
感じたのは、反射神経の鋭いキャメラと空間に対する嗅覚の連動だ。
単なるアクロバットではなく、空間を引き連れたアクションの発動。
これは見飽きない。
若い俳優の台詞術にもうひと工夫あれば、この映画はシリーズ化されてもおかしくないと思う。