Viedel/KukiHairDesign/ヴィーデル/クキヘアデザイン 四条烏丸 美容室

ヴィーデルは四条烏丸の美容室です。フランス仕込みの技術 ナチュラルで優しく ふんわりとしたヘアスタイル

C-4

2016-06-20 01:05:52 | 映画
昨今は“史上最大のリーク”と呼ばれるパナマ文書問題がメディアを騒がせているが、それ以前に世界中を震撼させたのがエドワード・スノーデンによる内部告発だった。
超大国アメリカが誇る二大情報機関、CIAとNSA(国家安全保障局)の職員だったスノーデンは、政府が秘密裏にネット上で膨大な量の個人情報を監視、収集している実態を暴露。
これによって日本を含む同盟国への盗聴が行われていた事実も明るみに出た。
かくしてスノーデンは祖国のお尋ね者となり、現在も亡命先のロシアに滞在中だ。
イラク戦争やグアンタナモ収容所をめぐるドキュメンタリー映画で知られるローラ・ポイトラス監督がアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した本作が凄いのは、監督自身が真っ先にスノーデンから匿名メールで接触を受けた人物であり、“世紀の告発”の始まりを克明に記録していることだ。
アメリカ政府を敵に回し、大事件を引き起こした当事者を独占取材した驚くべき内容である。
舞台となるのは香港のホテルの一室。
2013年6月3日の月曜日、ここを訪れたポイトラス監督とジャーナリストのグレン・グリーンウォルドはスノーデン本人と初めて会い、数日間にわたってさまざまな対話を交わしていく。
なぜスノーデンは家族や恋人にも内緒で、これほど巨大なリスクを冒したのか。
人権を踏みにじるアメリカ政府の横暴に失望した彼の強固な意志を確認したグリーンウォルドは、水曜日に英国ガーディアン紙に最初のスクープを発表し、すぐさまCNNが速報する。
まさに世界に激震が走った瞬間だ。
ポイトラス監督のカメラは、自らの人生が一変することを承知で世紀の内部告発に踏みきったスノーデンの迷いなき言動を捉えながら、室内にみなぎる静かな緊迫感を生々しく伝えてくる。
取材中にはなぜかホテルの火災報知器が鳴り響き、その場の一同が“警戒レベル”を引き上げるシーンもある。
政府の裏切り者捜しが始まるなか、細心の知略や決断を要する告発者とジャーナリストの闘いが、タイムリミット付きのサスペンス映画のように繰り広げられていく。
そして映像も音声も極めて明瞭な本作は、国家権力が得体の知れないプログラムによって国民を監視=管理するネット時代の“自由”の危うさを警告し続ける。「これはSFではありません」という前置きから始まるスノーデンの一挙一動から、ひとときも目が離せない迫真のドキュメントである。


EX

2016-06-18 01:03:36 | 映画
人工知能(AI)を搭載した女性型ロボットと青年の恋。
実にオタク心をくすぐるプロットではないか。
VFXで精緻に描かれた彼女=エヴァはもちろん、モダンな建物、周りを囲む大自然など、映るものすべてが美しい。
しかし、うっとりと恋に落ちるのは軽率。
本作には大いなる「企み」がある。
大手IT企業で働くケイレブは、滅多に姿を見せないCEOが所有する山間の別荘に招かれる。
そこは、天才にして大富豪のネイサンが極秘にAIロボット・エヴァを開発する施設だった。
ネイサンからAIの完成度をテストするよう頼まれたケイレブは、日増しにエヴァに惹かれていく。
体の一部がメッシュ状の皮膚で覆われ透けて見えるエヴァの造形は、本年度アカデミー賞で視覚効果賞を獲得。
ただし、幼少期からバレエを習ってきたアリシア・ビカンダーによる完璧な身体制御が、半分CGで描かれたエヴァの実在感に説得力を持たせ、オスカー受賞に貢献したことは疑いようがない。
本作で監督デビューを飾るアレックス・ガーランドは、2000年に最初の小説「ザ・ビーチ」を発表。
これがダニー・ボイル監督により映画化されて以降、「28日後...」「サンシャイン2057」といったボイル監督作で脚本を担当してきた。
やはり自らシナリオを書いた本作では、メアリ・シェリーの「フランケンシュタイン」、やフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」といった名作SFのエッセンスを借用しつつ、無駄を廃したミニマルなストーリーをスタイリッシュな映像で効果的に描いている。
原題「Ex Machina」は、「機械仕掛けの神」を意味するラテン語「デウス・エクス・マキナ」から。
英語のexには「元~」という意味があるので、題は「元・機械」とも読める。
機械から進化するAIの次の段階は、人間か、それとも神か。
作中の企みに裏切られたと感じる向きもあろうが、解釈の余地を残すラストはある種の希望だと信じたい。


J・R① with J・C

2016-06-16 00:55:36 | 映画
“劇場型犯罪”を扱った映画はかつて数多く作られてきた。
銀行に籠城した犯人を野次馬が取り囲む「狼たちの午後」(75)、強盗団が自分らと同じつなぎを人質にも着せて捜査側の視覚を混乱させる「インサイド・マン」(06)、強盗の濡れ衣を着せられた元刑事が高層ホテルの窓際から投身自殺を図ろうとする「崖っぷちの男」(12)etc。
2014年の映画化されていない優れた脚本の“ブラックリスト”に載った本作は、先行作品に影響を受けつつ、予想外の展開を次々積み重ねて、終始、観客の集中力を途切れさせない。
MCが巧みな話芸で視聴者に投資術を伝授する人気財テク番組を、ある日、番組が流した情報を鵜呑みにして大損した一般投資家がジャック。
犯人はMCの体に起爆装置を巻き付け、暴落した株の全損失額、8億ドルを要求。
さらに、事の一部始終を生放送しろと脅迫してくる。
こうして、コントロール室のディレクターとスタジオのMCがイヤホンを通して命がけのリアリティショーを展開する様子を、全世界の投資家たちが固唾を飲んでウォッチ。
晴れて映画化を見た脚本が勢いを増すのはここから。
スタジオを飛び出したMCと犯人をカメラマンが背負いカメラで追いかける一方で、株暴落の裏に隠された真実が、原因と思われていたPCソフトを開発した韓国人プログラマーや、アイスランドのハッカー集団によって暴かれていく。
絶妙な舞台転換とオンラインで繋がった人脈が話を躍動させる傍らで、決死のライブ中継を続けるMCとディレクターが互いに感謝の気持ちを確認し合う場面の清々しさはどうだろう!?
ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツが脚本にはないスターパワーを書き加える瞬間だ。
リーマンショックを例に挙げるまでもなく、被害者は泣き寝入るしかない金融クライシスのジレンマをエンタテインメントへと昇華させたのは、偶然か否か、「インサイド・マン」で交渉役の弁護士を演じたジョディ・フォスター。
あの時、犯罪現場の構図をスパイク・リーから学んだはずの監督は、今回、スタジオ内シーンでTVカメラと映画のカメラを意図的に使い分ける等、このジャンルに斬新な視点を持ち込むことに成功している。
ハリウッド屈指の女優監督は、劇場映画4作目にして新たな鉱脈を掘り当てたようだ。