礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

警察庁長官狙撃事件につきまとう疑惑

2014-09-02 05:11:48 | コラムと名言

◎警察庁長官狙撃事件につきまとう疑惑

 昨日の続きである。一昨日(八月三一日)のテレビ朝日の番組「日本2大未解決事件スペシャル」では、後半の二時間強を使って、一九九五年三月三〇日に起きた警察庁長官狙撃事件を取り上げていた。たいへん勉強になった。
 しかし、この番組を見ても、この事件についての不可解な印象を解消することはできなかった。この事件に対して抱いていた疑問は、むしろ深まったという印象である。その疑問を箇条で述べてみよう。

1 老スナイパーN(番組では実名)が国松長官を狙撃した動機が、はっきりしない。番組では、検察・警察がオウムの犯罪に本気で対応していないので、こういう形で、彼らにカツを入れた――といったような老スナイパーの言葉を紹介していたが、説得力に乏しかった。Nは、若いころ、チェ・ゲバラに心酔し、一貫して反権力の道を歩んできたという。そのNであるからして、オウム・サリン事件に便乗し、さらに国家権力を混乱させようとしたと見るほうが自然ではないのか。
2 Nによれば、自分には、ハヤシという同志がおり、狙撃事件の際も、二人で現場に赴いたという。ところが、番組では、このことについて、まったく触れていなかった。これはどうしたことか。
3 Nによれば、同志ハヤシは、自分より射撃が巧みだったという。実際に射撃したのはハヤシで、Nは、その補助にまわったということも考えられるが、番組では、もちろん、このことについても触れなかった。
4 警視庁公安部は、この事件をオウムによる犯行と思い込み、老スナイパーNによる犯行の可能性について、一顧だにしようとしなかった。しかしこれは、単に警視庁公安部の「思い込み」、彼らの「メンツ」の問題だったのだろうか。何か深い理由があって、警視庁公安部は、老スナイパーNの犯行としての立件を躊躇したのではないだろうか。
5 番組には、『警察庁長官を撃った男』(新潮社、二〇一〇:新潮文庫、二〇一二)の著者・鹿島圭介氏も登場していた。しかし、首から下しか映っていなかった。なぜ、鹿島氏は、顔を隠さなければならなかったのか。

 この番組の司会は、石原良純氏。ゲストには、後藤謙次、金美鈴、孫崎享の各氏が登場していた。また、取材に際し、中心的な役割をはたしたテレビ朝日報道部報道局の清田浩司デスクも、たびたび登場していた。『警察庁長官を撃った男』の著者・鹿島圭介氏もコメントしていた。
 しかし、上記1~5の点に関しては、彼らの口から、一言のコメントもなかった。長時間にわたる充実した番組ではあったが、この点は、満足できなかった。

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