◎甲午農民戦争当時の朝鮮中央政府要人一覧
昨日の続きである。『内乱実記 朝鮮事件』(文真堂、一八九四)の二一ページに、甲午農民戦争当時における朝鮮中央政府の要人の一覧表が載っている。本日は、これを紹介してみよう。
中央官
領議政 沈瞬沢 左議政 趙秉世
右議政 鄭範朝 吏判書 閔泳煥
戸判書 朴定陽 兵判書 李承五
刑判書 李正魯 礼判書 洪鐘軒
工判書 金鶴鎮 外 督 趙秉稷
内 督 閔応植 左捕将 申正照
右捕将 李凰儀 扈衙使 金煥始
統衙使 閔泳駿 経理使 同 上〔閔泳駿〕
壮衙使 李鐘健 総御使 韓圭咼
海軍統制使 閔応植 総制使 閔泳玉
郵電総弁 趙秉稷 鉱務総弁 閔泳■〔■は、サンズイに羽〕
典圜局総弁 成岐運 転運総務官 趙弼永
八道監司
京畿監司 金圭弘 忠清監司 趙秉鎬
全羅監司 金鶴鎮 江原監司 閔亨植
慶尚監司 李容直 平安監司 閔丙□〔□は、渦のツクリ〕
黄海監司 洪淳馨 咸鏡監司 朴箕陽
この一覧表は、仁川領事官の書記生・小川盛重が、一八九四年(明治二七)の六月に帰国した際に持参し、『内乱実記 朝鮮事件』の筆者に示したものだとある。小川盛重というのは、鳩山和夫の実兄・小川盛重のことであろう。
この一覧表のあとに、同書は、次のような注釈を付している(二一~二二ページ)。おそらくこれも、小川盛重がもたらした情報であろう。
但し、右の内、忠清監司・趙秉鎬〈チョウ・ヘイゴウ〉は、変乱の為め逃走し、全羅監司・金鶴鎮〈キン・カクチン〉は、前監司・金文鉉の逃走後、新たに命ぜられたるものなるも、変乱の為め任所に赴く事を得ず、難を他に避け居れりと。又、右中央官にて最も勢力ある物は、統衙使〈トウガシ〉兼経理使たる閔泳駿〈ビン・エイシュン〉にして、苟も〈イヤシクモ〉地方官たらんと欲するものは、先づ閔泳駿に依ざる〈ヨラザル〉を得ざる程にして、全国八道の監司以下留使〈リュウシ〉、府使〈フシ〉、牧使〈ボクシ〉、県監等の地方官の惣数〔総数〕は、大略三百名位にして、此内、百六十名位迄は、閔氏の推撰に係る程なれば、閔族の勢力の熾〈サカン〉なる、推して知るべし。