礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

金子頼久氏評『日本人はいつから働きすぎになったのか』

2014-09-12 02:58:56 | コラムと名言

◎金子頼久氏評『日本人はいつから働きすぎになったのか』

 一昨日、宗教研究家の金子頼久さんから、拙著『日本人はいつから働きすぎになったのか』の書評が送られてきた。というより、その日いただいた私信の一部が、同書の書評になっていた。みずからの体験を踏まえられた実感的な書評であり、ありがたく拝読した。ご本人のご了解を得て、以下に紹介させていただく。 

 『日本人はいつから働きすぎになったのか』を読んで   金子頼久
 礫川全次さんの新刊『日本人はいつから働きすぎになったのか』(平凡社新書)は、悩める会社員の疑問に答える好著であり、二宮尊徳や福沢諭吉、吉田松陰といった言わば世間的には(通俗的には)いわゆる「立派な人たち」とされている人物らの実像に迫り、且つ彼らの化けの皮を剥がす痛快な人物描写がある。また、一向宗(浄土真宗)における厭世観と特有の勤勉性について指摘し、日本においてそれは、ヨーロッパにおけるプロテスタンティズム(ヴェーバーの著書による)と同様の役割を果たしたのではないかとしている点で画期的なものだと思います。
 そして浄土真宗のみならず、宗教一般における奉仕の精神、特に天理教における日の寄進に見られるような献労奉仕を会社経営にも取り入れようとした松下幸之助、彼自身非常に信仰心が厚くPHP研究所を設立するなど、企業の宗教化を目指しましたが、それは「無我の献身」であり(我が身忘れてひのきしんという、天理教のスローガンがあります)。ひいては「オウムとポトラッチ」の姿勢に通ずると思います。それはさらにオウムだけの問題ではなく、かつての共産党にも(中国やソ連も含む)言えることであり、自分を犠牲にして党(教団)のために尽くすということであり、そこでは何ら世間の常識というものは通用せず、絶対的な拠り所である党(教団)の名で処刑宣告されても、それに従容として従いうるものであります。
 ですから、この過労自殺の背景にあるものは企業の宗教化(カルト化)であり、自分の身を粉にして働いて、もう働けず会社の役に立てないと思いつめて、自ら命を断つケースであり、その会社内においては、「もう働き過ぎだ」とか、そのような世間の常識は頭のなかになく、会社から離れてみて初めてそのことに気づくということだと思います。これは、一種の洗脳的なものが社内教育で行われているからだと思われます。
 私もかつてのアルバイト先で、朝のスローガンなるものを提唱させられていましたし、やはりその会社の中にいると、その会社のやっていることが、たとい法律的に違反することであっても、それがあたりまえだと思い込んでしまい、あるいは自らが長時間労働せしめられていることを、会社の責任として糾弾するのではなく、会社の方針は正しいと信じ、その任務を遂行する自分は大したものだと、誇りにすら思い込んでいる職員が多数見受けられました。それは本人の知らないうちに、会社に洗脳されているということであり、なんら反抗すべき手段を見いだせないことから、自らを納得させてしまっているということだと思われます。
 元来、生産労働に従事するということは、喜びを伴うことだと思いますが(疲労することは、その達成感なり、充実を求めるため)、浄土真宗の信者には、より勤勉な姿勢が見受けられ、それは自然なことだと思いますが、そこに目をつけて巧みにそのような手法を企業に取り入れた悪徳業者を、総じてブラック会社と呼ぶことができるのだと思います。

 文中、「オウムとポトラッチ」とあるのは、礫川が一九九六年に発表した「オウムとポトラッチ」という文章とを意識されたのであろう(『犯罪の民俗学2』批評社、所載)。この文章で私は、オウム教団におけるマインドコントロールについて触れたが、金子さんは、おそらく、企業のカルト化の問題から、かつてのオウム教団を連想された推察する。当然このことは、論じていかなければならない問題であって、ひとつ大きな宿題をいただいた気がした。書評していただいた金子頼久さんに、あらためて御礼申し上げます。

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