礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

新聞業界、国家総動員法「原案」に抵抗

2016-10-12 03:02:11 | コラムと名言

◎新聞業界、国家総動員法「原案」に抵抗

 国家総動員法の「原案」から、第二〇条、第二二条、第四一条、第四三条の四か条が削除された経緯は、概略、次の通りである。これは、インターネット上にあった前坂俊之氏(静岡県立大学国際関係学部教授)の論文「日中戦争・国家総動員法とメディアの落し穴」(2004年8月)を中心にして、まとめたものである。

一九三七年(昭和一二)一二月二六日、第七三回帝国議会開会。
一九三八年(昭和一三)一月二十六日 『読売新聞』の同日第二夕刊が法案の内容をスクープ。「国家総動員法要綱、物心両面一切に亘り高度統制原則確立」と、七段見出しで報じる。
二月八日 新聞の親睦団体「二十一日会」、帝国ホテルに末次信正内相、富田健治警保局長ら内務省幹部を呼び、国家総動員法案のうち、新聞関係の条項についてただす。二十一日会側からは、朝日新聞、東京日日新聞、読売新聞、国民新聞、報知新聞、中外日報、同盟通信が出席。
二月九日 「二十一日会」実行委員(各社一名)、近衛文麿首相に申し入れ。
二月一〇日 「二十一日会」の実行委員、企画院を訪れて申し入れ。
二月一八日 閣議、「原案」から第二〇条、第二二条、第四一条、第四三条の四か条が削除し、新たに第五〇条を加えた最終案を決定。
二月一九日 政府、国家総動員法案を衆議院に提出。

 前坂俊之氏は、前記論文において、「これが効を奏したのか、国会に提出された総動員法からは『発売、頒布禁止の行政処分二回以上受けた新聞や出版物は発行停止処分にする』という項目は閣議で急きょ削除され、新聞界はホッと胸をなでおろした」と述べている。
「発売、頒布禁止の行政処分二回以上受けた新聞や出版物は発行停止処分にする」というのは、旧第二二条第一項を指しているようだが、前坂氏は、ここで、「これが効を奏したのか、国会に提出された総動員法から、新聞関係四か条が閣議で急きょ削除され、……」とコメントすべきではなかったのか。そうしなかったのには、何か理由があったのだろうか。【この話、続く】

◎礫川ブログへのアクセス・歴代ベスト30(2016・10・12現在)

1位 16年2月24日 緒方国務相暗殺未遂事件、皇居に空襲
2位 15年10月30日 ディミトロフ、ゲッベルスを訊問する(1933)
3位 16年2月25日 鈴木貫太郎を救った夫人の「霊気術止血法」
4位 14年7月18日 古事記真福寺本の上巻は四十四丁        
5位 15年10月31日 ゲッベルス宣伝相ゲッベルスとディートリヒ新聞長官
6位 15年2月25日 映画『虎の尾を踏む男達』(1945)と東京裁判
7位 16年2月20日 廣瀬久忠書記官長、就任から11日目に辞表
8位 15年8月5日 ワイマール憲法を崩壊させた第48条
9位 15年2月26日 『虎の尾を踏む男達』は、敗戦直後に着想された
10位 16年8月14日 明日、白雲飛行場滑走路を爆破せよ

11位 13年4月29日 かつてない悪条件の戦争をなぜ始めたか     
12位 13年2月26日 新書判でない岩波新書『日本精神と平和国家』 
13位 15年8月6日 「親独派」木戸幸一のナチス・ドイツ論
14位 16年8月15日 ブログ陸海軍全部隊は現時点で停戦せよ(大本営)
15位 16年1月15日 『岩波文庫分類総目録』(1938)を読む
16位 15年8月15日 捨つべき命を拾はれたといふ感じでした
17位 15年3月1日  呉清源と下中彌三郎
18位 16年8月24日 本日は、「このブログの人気記事」のみ
19位 16年1月16日 投身から42日、藤村操の死体あがる
20位 14年1月20日 エンソ・オドミ・シロムク・チンカラ     

21位 16年6月7日 世界画報社の木村亨、七三一部隊の石井四郎を訪問
22位 15年11月1日 日本の新聞統制はナチ政府に指導された(鈴木東民)
23位 16年8月31日 美濃部達吉のタブーなき言説
24位 13年8月15日 野口英世伝とそれに関わるキーワード   
25位 16年2月16日 1945年2月16日、帝都にグラマン来襲
26位 16年2月14日 護衛憲兵は、なぜ教育総監を避難させなかったのか
27位 16年8月16日 論文紹介「日の丸・君が代裁判の現在によせて」
28位 16年10月10日 公布時の国家総動員法(1938年4月1日)
29位 16年5月24日 東條英機元首相の処刑と辞世
30位 16年6月13日 マトモなことを言うとヒドイ目に遭う

次 点 16年6月14日 大政翼賛会は解散、大日本婦人会も解散

*このブログの人気記事 2016・10・12

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする