◎わが国における新聞の嚆矢は官板バタビヤ新聞
昨日の続きである。古典社編『書物語辞典』(古典社、一九三六)に「しんぶんし」という項があり、その説明が興味深かった。本日は、これを紹介したみよう。
しんぶんし(新聞紙) 新聞と同じ。一般(社会的、内容的)には新聞と云ひ、特殊(個別的外形的)の場合に新聞紙と云ふ。普通は日刊であるが外国には週刊新聞も多い。月刊の新聞もある。新聞の形態は、刷上げた紙を綴ぢてないのが特色で大部分は折畳んだまゝである。世界に於ける新聞の起源は羅馬時代にありと云はれ、近世新聞の最初の形態は1563年ベニスで発行されたガゼツトであるといふ。我国に於ては読売、瓦板を新聞の先駆とするが、其の実を稍備へた文久二年〔一八六二〕の官板バタビヤ新聞を嚆矢とする。又現代新聞の形式を備へた最初のものは明治三年〔一八七〇〕の横濱毎日新聞(のち東京毎日)である。次に東京大阪の代表的新聞の創刊年月を示さう。(いづれも明治)。
大阪毎日 9年2月 大阪朝日 12年1月
東京日日 5年2月 東京朝日 21年7月
読売新聞 7年11月 報知新聞 5年6月
時事新報 15年3月 中外商業 9年12月
国民新聞 23年2月 都新聞 17年9月
萬朝報 25年1月 東京毎夕 31年2月
尚、参考資料として本辞典には長すぎるが他に適当な紹介の機会も無いので茲に、東京日日新聞の創立者の一人條野伝平(採菊散人)が『新聞紙』と題し文芸俱楽部明治29年〔一八九六〕第2巻第9篇海嘯義捐小説号へ載せたものを転載する。【以下、次回】