礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

皇軍の一員として生きて虜囚の辱を受けず……

2023-08-08 17:40:19 | コラムと名言

◎皇軍の一員として生きて虜囚の辱を受けず……

 藤本弘道『陸軍最後の日』(新人社、1945)から、「継戦と軍人精神」の章を紹介している。本日は、その四回目。

 国民義勇戦闘隊の問題は、最初は国民義勇隊として、その実体は陸軍省防衛課で企画せられてはゐたが表面上内務省の企案として政府が主体となり、当時の事態に即応して専ら軍需、食糧の増産等戦力の充実に邁進せんがための一形態として組織されてゐたのであるが、これをもつと強力にして生産と防衛の一体化を計らうとする陸軍省兵備課その他の意見が加味せられその方針を決定進行することとなつた。ところが前述せる国土決戦と住民との問題が大きくなり、更に沖縄戦の実情がその解決を精神的のみでなく実際的にも必要とすることを判然と示すに至り、陸軍省軍事課に於いて難民防止にこの義勇隊を利用せねばならぬとし、国民義勇隊を更に軍隊化して国民義勇戦闘隊に転移せしめ、義勇兵役法なるものを設け、これによつて一般非戦闘員をも戦闘員化するとともにその規律の縄によつてしばりあげ、難民化を防ぎ作戦的効果を挙げようとしたのである。
 だからこそ、その総てに亘つて軍人的精神並に規律を強制し、壮年者を対照とする軍隊的行動を強要、その中には老幼婦女子があることを考慮しつゝも考慮から除外せんとし、年齢的、境遇的思想の差をも無視し、天晴れ〈アッパレ〉本土決戦態勢は一億中に確立せられたものと考へたのである。
 そしてこれまた国民義勇戦闘隊教令なるものを定め
『国民義勇戦闘隊は神勅を畏み〈カシコミ〉勅諭、勅語を奉体して軍人精神を養ひ軍紀に服し燃ゆるが如き闘魂を培ひて国難を突破するの気魂を振起すべし』
『戦闘隊員は敵に対し善戦敢闘悔〈クイ〉なき任務の完遂に邁進すべきは勿論なれど万一敵手に陥りたる場合に於ては皇軍の一員として生きて虜囚〈リョシュウ〉の辱〈ハズカシメ〉を受けず死して罪禍の汚名を残すことなき態度を持すべし』
『戦闘隊員は戦闘如何に熾烈〈シレツ〉となるも命なくして任定遂行の職場を離るることあるべからず縦ひ〈タトイ〉其の身重傷を被る〈コウムル〉とも之が為戦意を沮喪〈ソソウ〉することなきを要す』
等々の軍人精神によつて確立されたところの国民義勇戦闘隊員魂、精神の樹立を策したのである。【以下、次回】

 本日、紹介した箇所は、「国民義勇戦闘隊」が成立した事情について説明しているほか、「国民義勇戦闘隊教令」の内容を紹介している。本冊子中、特に注意して読むべき箇所であろう。

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