◎この本は、全篇、ケンカの話である
ここのところしばらく、中野清見(きよみ)の『新しい村つくり』(新評論社、一九五五)を紹介している。引用している本人は、この本の魅力に、改めて気づかされているが、読者諸氏の感想はいかがであろうか。
本日は、私が感じているこの本の面白さを三点挙げておきたい。
第一点は、戦後の農地改革が、いかに大きな変革だったかということを、実感できることである。戦前・戦中も農地改革の動きはあった。それが進展しなかったのは、地主層(保守層)の抵抗があまりに大きかったからである。
戦後の農地改革は、占領下、占領軍の方針ということで、何とか実現したのである。日本が戦争に敗れたことによって、ようやく農地改革が実現されたのである。もちろん、その道が平坦なものでなかったことは、中野清見の筆に見る通りである。
第二点は、敗戦直後における江刈村の人民のメンタリティというものが、リアルに描き出されているからである。これは、江刈村の出身者であり、かつ東京帝国大学経済学部を出たインテリでもある筆者だからこそ可能だったと言えるだろう。
第三に、筆者の中野清見が、みずからの「ケンカ好き」な部分を、包み隠すことなくというか、むしろ誇らし気に表現していることである。読んでみるとわかるが、この本は、全篇、「ケンカ」の話なのである。
というわけで、このあとも、もう少し、『新しい村つくり』の紹介を続けさせていただきたい。
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