◎一選挙区あたりの議員定数は四人乃至十四人、但し沖縄県は二人
美濃部達吉著『改訂 憲法撮要』(有斐閣、一九四六年八月)を紹介している。本日は、その四回目(最後)。本日は、「追補」のうちの、「三 衆議院議員選挙法の改正」と「四 憲法改正草案要 」を紹介したい。
三 衆 議 院 議 員 選 挙 法 の 改 正
選挙法の改正に付いては本文中に於いても多少触るる所が有つたが(三一五頁三二二頁)、当時は尚議会に於ける審議中で未だ確定するに至らなかつた為、詳細には述べなかつたが、其の後該法律案は議会両院を通過し、昭和二十年法律第四二号として公布せられた。該法律に依り改正せられた重なる諸点は左の通りである。
一 選挙権 に付いては従来は男子に限り且つ年齢二十五年以上の者が選挙権を有するものとせられて居たが、新法は男女を問はず平等に選挙権を有するものと為し、且つ二十五年以上の者とあつたのを、二十年以上の者と改めた。即ち従来の男性普通選挙を改めて、女子をも含めた真の普通選挙と為し、又民法上の成年と選挙法上の成年とを同一ならしめたのである。
選挙権の除斥原因は略〈ホボ〉従来と同様であるが、唯従来は現に軍隊に所属する軍人(三一三頁)は選挙権を有しないものとせられて居たのを、陸海軍の解消に伴ひ除斥原因から削除した。但し現在現役中又は召集中の軍人に付いては従前の規定が適用せられる。
選挙権を行使するには、選挙人名簿に登録せらるることを要するのは勿論であるが、名簿調製の手続及び其の登録の要件は従来と同様である。
二 被選挙権 に付いても、従来は男子に限り且つ年齢三十年以上なることを要するものとせられて居たが、改正法は男女を問はず年齢二十五年以上の国民は総て被選挙権を有するものとした。欠格原因に付いては従来と同様である。
三 選挙区制度 選挙区の分ち方及び各区より選出する議員定数は選挙法別表の定むる所であるが、別表は全部改訂せられ、随つて選挙区には大なる変動が有つた。従来は一府県を原則として数区に分ち、一区より三人、四人又は五人を選出するものとし、而して投票は単純単記即ち選挙人は一人の被選人にのみ投票するの制であつたが、新法は之を改め、原則として一府県を一選挙区とし、東京都、北海道及び十五人以上を選出する府県(大阪、兵庫、新潟、愛知、福岡)のみ之を二区に分つこととした。即ち一選挙区から選出する議員定数は四人乃至十四人(但し沖縄県は二人)である。投票の方法は十人以下の選挙区では二人、十一人以上の選挙区では三人を連記して投票すべきものとした。但し沖縄県、千島群島其の他特殊の島嶼では当分の間選挙を行はないものと定められて居るものが有る。
四 選挙の執行 に付いては、大体は従来の通りであるが、唯開票区は従来と異なり原則として郡市の区域に依るものであつたが、新法に開票区も投票区も等しく原則として市町村の区域に依るものとし、随つて又開票管理者も投票管理者も共に原則として市町村長が之に当るものとせられた。選挙長は一府県一区の場合は地方長官、其の他は地方長官の指定した官吏が之に当るのである。
四 憲 法 改 正 草 案 要 綱
政府は三月六日に其の立案に係る憲法改正草案の要網を発表した。それは憲法の全体に亘り頗る急激な根本的の改革を加へんとするものであるが、それは政府の原案としても未だ確定したものでないのみならず、それは枢密院に諮詢せられ上更に議会両院の議決を経ねばならぬもので、それが如何に成り行くべきかは、今から全く予想することの出来ないものであるから、其の詳細は此処には述べないこととする。
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