礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

自筆句集『廣芝五十句』(1948)より

2014-07-05 04:38:34 | コラムと名言

◎自筆句集『廣芝五十句』(1948)より
 
 数日前、某古書店の百円均一の台から、『廣芝五十句』という本を拾い上げた。万年筆の細字で書かれた自筆句集である。冒頭に、「廣芝五十句/昭和二十三年四月編」とあり、以降、各ページに一句ずつ、自選の句が紹介されている。表題には「五十句」とあったが、全部で四十八句しか収められておらず、「跋」などもないので、未完成本かもしれない。
 その第二九句は、次のようなものであった。

 空梅雨や巷に絶へし馬犬など
 
 昭和二十一年六月、生きて還つた祖国はたゞたゞ焦
 土と化してわれわれ引揚者の想像を絶するものがあ
 つた。未だ定まつた職もなかつたがとに角起ち上
 らなければならないと考へてゐた。 

 空梅雨は〈カラツユ〉、巷は〈チマタ〉と読む。馬犬は、〈ウマイヌ〉と読むのだろうが、そうすると字余りになってしまう。あるいは〈バケン〉か。

 昨日のクイズの解答(その言葉の出典と、百家説林におけるページを示す)
1  文鎮  けいさん   後松日記(続編中824)
2  家司  けいし    後松日記(続編中831)
3  鷁首  げきしゅ   家屋雑考(正編下247)
4  懸想文 けそうぶみ  閑田耕筆(続編下一95)
5  蚰蜒  げじ     世事百談(正編下一95)
6  下手人 げしにん   南留別志(正編上118)
7  脇息  きょうそく(ケフソク) 難波江(続編下一672)
8  仮名  けみょう   南留別志(正編上161)
9  慳貪  けんどん   還塊紙料(続編上715)ほか
10 犬皮  けんぴ    善庵随筆(正編上664)

 7の脇息は、「キ」のところで出題すべきでした。9の慳貪は、今日では、もっぱら、「つっけんどん」(突慳貪)という形で使われます。

コメント (1)
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