◎執筆賢瑜俗老廿九歳(1372)
昨日の続きである。古典保存会から刊行された「古事記真福寺本」の下巻(一九二五)の末尾にある、山田孝雄による「解説」を紹介している。本日は、その四回目。昨日、紹介した部分に続き、改行した上で、以下のように続く。
上帖の終の方「古事記上廿丁」「古事記上廿一丁」とは左右相対して同じ合せ目にあり、その「廿一丁」の下に文字ありて「執筆賢瑜俗老廿八歳」とよまる。これは尋常にては撮影するを得ざりしを日光を透して特別にこれを写しとりたるものなり。中帖の「古事記中廿五丁」とある糊目の下にも、「執筆金剛資賢瑜俗老廿八歳」とあり。下帖の「古事記下十七丁」とある下にも「執筆賢瑜俗老廿九歳」とあり。以上の記入によりてこの本は賢瑜という僧が二十八歳と二十九歳との時に書写せしものなるを知る。この筆者につきては既に先輩の説きたる如く、同じ宝生院に伝ふる「秘蔵宝鑰巻上」の奥書に
応安第三天十一月廿七日於尾州大須庄北野真福寺宝生坊書写畢金剛資賢瑜廿七歳
とある人なるべく、この秘蔵宝鑰〈ホウヤク〉は書籍のさまも筆迹もこの古事記と同じさまに見ゆれば、聊か〈イササカ〉も疑ふべき所なし。されば、この上中二巻は応安四年〔一三七一〕、下巻は応安五年〔一三七二〕の書写にして今を距る〈ヘダツル〉こと実に五百五十余年前の書写にかかるものなりとす。【以下、次回】
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