礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

坂上信夫『土地争奪史論』(1922)のモチーフ

2014-07-28 05:47:30 | コラムと名言

◎坂上信夫『土地争奪史論』(1922)のモチーフ

 坂上信夫の『土地争奪史論』(大同館書店、一九二二)について紹介をしている。同書の凡例には、「本書は最後の一章即ち第十三章回顧の記述を尤も重要な主題とする」とある。しかし、この「回顧」の章は、表現が難しく、そう簡単には「主題」はつかめない。
 むしろ、この作品のモチーフを知るには、同書本文の冒頭部分、すなわち「序説」に注目すべきであろう。そこで本日は、同書の冒頭の二ページ弱を紹介してみよう。

 土地争奪史論         ■上信夫著(■は、偏が山、旁が反)
 序説 土地とその所有
 土地の所有は、人類として尤も当然な平等の権利である。生存の為の第一義的権利である。地上何ものゝ尊貴を以てしても、壟断〈ロウダン〉することを許さぬ平等の所有である。それが偏頗に所有せらるゝやうになつた経過は、如何なる必然の推移であったにしても、状態そのものは徹頭徹尾不合理である。それは、吾等の過去に背負ふ生活が、如何に不合理であつたかを尤も簡明に裏書する。如何にして、何故〈ナニユエ〉に、斯くの如き不合理が我等の祖先によつて成されたか。而してそれは最早その不合理に絶対に遵は〈シタガワ〉ねばならぬ程に必然性を有するものであるかどうか。
 之等の疑問を氷解する為には、先づその推移の経過を回顧するに如く〈シク〉はない。而してその不合理を招来した原因を窮めることによつて、偏頗を衡平に、不合理を合理に更める〈アラタメル〉為の方策を導き出すことが出来ぬとも限らない、寧ろその経過の動因を根本的に洞察するにあらざれば、百千の改革も革命も怖らくは空しい徒労に了るではなからうか。

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