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中国社会主義と民族自決権

2009年07月12日 18時27分56秒 | 北朝鮮・中国人権問題
中国の民族問題―危機の本質 (岩波現代文庫)
加々美 光行
岩波書店

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 現在、中国の新疆ウイグル自治区(東トルキスタン)全域で、中国支配に対するウイグル人の抗議行動が広がっています。それに伴い、自治区首都のウルムチでは、ウイグル人と中国人の衝突も起こっています。
 日本ウイグル協会などの情報によると、この事件のキッカケは、新疆よりずっと南方の広東省韶関市にある玩具工場で、6月26日未明に起こった中国人(漢人)によるウイグル人従業員寮襲撃事件が発端だと言われています。工場を解雇された中国人従業員が、恐らくウイグル人の低賃金労働者に職を奪われたと思い込んだのでしょう、その腹いせに「漢人女性がウイグル人従業員にレイプされた」とネットに書き込み、それが元で襲撃事件が引き起こされたと言うのです。

 中国筋の発表によると、この玩具工場での衝突では、漢人・ウイグル人双方に数十人の負傷者が出、2名のウイグル人が死亡しました。下記の映像は、ネットに流出した当時の現場映像の一つです。私も、それを幾度と無く見ましたが、「おぞましい」の一語に尽きます。数百人からの中国人が寄って集って、少数民族のウイグル人をなぶり殺しにしています。その少し前に、日本の埼玉県蕨市や京都で繰り広げられたネオナチ在特会の所業を、もっと凄惨かつ大規模にした様なものではないですか。或いは、大正時代の関東大震災での朝鮮人虐殺も斯くやと、思わせる様な映像です。

Race riot in China!!!Han VS Uygur!!


 そして、「内陸部に住むウイグル人が、何故沿岸部の広東省で多数働いていのたか?」という問題もあります。これも貧困対策・就職斡旋の名目で、経済後進地域の内陸部から成長著しい沿岸部へ、貧困人口を大量に移動して、奴隷労働に従事させていたと言われています。これなども正に「蟹工船」や「女工哀史」と同じ構図です。或いは、疲弊した就職難の地方住民の足元を見透かして、今まで盛んにトヨタやキャノンの工場に低賃金労働力を送り込んできた、日本の大手派遣会社の姿とも、よく似ています。いずれにしても、洋の東西や左右のイデオロギーを問わず、人間性を失った体制の姿は、どこも同じだと改めて思いました。
 この今回のウイグル人虐殺でもそうですが、「今でも表向きは全人民の平等を建前とする社会主義の中国で、何故この様な事が繰り返されるのか?」という事を、実はこの間ずっと考えてきました。此処で少し言い訳させて貰うと、今回のこの記事執筆が今頃になってしまったのも、偏にこの為です。

 ここで予め断っておきますが、この問題に託けても、一部ネオコン雑誌・識者・ネットウヨクによる安易な中国バッシングが流行していますが、私はこの手の論には一切与しません。その様な機会主義者の言動には、もういい加減ウンザリ来ています。
 この手の論者の中には、大企業の側に立って日本の「派遣切り」は露骨に擁護しながら、中国の「派遣切り」についてだけは、さも労働者の味方面して中国バッシングに興じる輩が後を絶ちませんが、自己矛盾も甚だしいと言わざるを得ません。ウイグルの人権問題についても、例えば中国・ロプノールでの核実験被災の実態を暴露しながら、日米の核軍拡や日本の原発政策を露骨に擁護する向きがいますが、これも唾棄すべき行為以外の何物でもありません。ウイグル・チベットに対する中国の同化政策には異を唱えながら、過去の台湾・朝鮮に対する日本の同化政策(創氏改名など)を擁護する田母神・靖国一派に至っては、正に噴飯モノという他ありません。

 その一方で、日中両党関係正常化以後の「しんぶん赤旗」に見られる、一見「喧嘩両成敗」的な及び腰の報道ぶりや、一部識者による中国社会主義美化論にも、違和感を感じています。この問題の背景には、中国人特有の排外主義(中華思想)が根源にある事は、ほぼ間違いないでしょう。その中華思想が、近代の中国革命を通しても払拭出来ず、近年はそれが更に酷くなっている所にこそ、この問題の一番の悲劇があると感じています。
 中華思想そのものは、中国に昔からあった考え方です。しかし、それが現代にも累を及ぼす様になったのは、近代の西欧帝国主義列強による中国支配に抗して、孫文などの民族運動指導者が、民族再興と革命のイデオロギーとして称揚する様になってからです。その展開の仕方は、日本幕末期における国学ともよく似ています。日本における国学との違いは、日本ではそれが尊王攘夷・王政復古の靖国思想となっていったのに対して、中国では倒満興漢の運動を経て共和革命の思想にまで発展した点です。
 その後に誕生した中華民国や、今の中華人民共和国の、国名の由来も其処から来ています。斯様に、当時としては一定の抵抗イデオロギーとして機能した中華思想ですが、中国人(漢民族)以外のウイグル・チベット・モンゴルその他の周辺諸民族にとっては、欧米や日本の帝国主義と同様の、侵略者の思想でしかありませんでした。

 また、これら中国周辺諸民族の居住地域は、国境を挟んで北は旧ソ連領のシベリア・中央アジア、南はアフガニスタンや旧英領インド、ネパールなどに接していたので、これら地域の民族運動には、旧ソ連・英国や、民族的・歴史的に繋がりの深かったトルコ・イランなどの思惑も、微妙に影を落とす事になります。そういう意味では、同じく周辺大国の思惑に翻弄され続けてきた、中東におけるクルド人の置かれた立場ともよく似ています。
 これら諸民族の中で、最終的に独立を達成する事が出来たのは、モンゴルの一部(外モンゴル=現在のモンゴル国)のみでした。それ以外の内モンゴルやウイグル・チベットでは、未だに独立への動きは抑えつけられています。ウイグルでも、1930年代と40年代の二度に渡って、東トルキスタン共和国の独立が宣言されましたが、いずれも当時の中国国民党政府・ソ連や、現地を支配していた省政府・軍閥との力関係によって、独立の動きは潰されてきました。

 そんな中国を反帝・反封建の新しい国に変えるべく誕生した中国共産党も、やはり中華思想との関係を断ち切る事は出来ませんでした。寧ろ、今の中国の「社会主義」は、過去の毛沢東思想全盛期や今の社会主義市場経済の時代も含めて、実は社会主義でも何でも無く、ただ中華思想が社会主義の形を装っただけにしか過ぎなかった、と言うべきなのかも知れません。
 党創設期・革命戦争時代の、連邦離脱権規定も盛り込まれた「中華連邦」構想は、次第に後景に退けられ、それに代わって登場してきたのが「民族区域自治」の考え方です。これは、自治区領域内での少数民族による自治(民族自治)と、自治区内での漢民族をも含む全民族の完全平等(区域自治)の、二本柱の考え方から成っています。その特徴は、あくまでも限定的な自治でしか無く、しかも平等や格差是正の名目で、漢民族への同化政策も同時に推し進められる、というものでした。
 しかし、これはウイグル人からすれば、民族語や文化の抹殺でしか無く、他方で漢民族にとっても、自らは実際は支配民族でありながら、表向きの少数民族優遇策(実際は格差是正を口実とした同化政策でしか無いのだが)によって、自分たちが逆差別されているかの様な感情を抱かせるものでしかありませんでした。それが、改革開放以来の中国における新自由主義の浸透、経済格差の拡大と相まって、次第に民族衝突が生まれる背景となっていったのではないでしょうか。そういう意味では、かつてのユーゴスラビア崩壊でも見られた現象が、中国でも進んでいるのではないでしょうか。

 この事態に終止符を打つのは、形だけの「民族区域自治」なぞではなく、名実ともに民主主義の原則に裏打ちされた、連邦離脱権をも含む完全な連邦国家に、中国が変わる以外に道はないのかも知れません。そして、民族独立を云々する以上は、それ以外の言論・集会などの市民的自由の保障や複数政党制の導入も、その段階では当然視野に入れなければならないでしょう。
 勿論、その道を選択するか否かを最終的に決めるのは、漢民族や周辺諸民族を含めた今の全中国の人民であり、それを応援する全世界の民主勢力の連帯です。それが何時どの様な形で実現するかは、私には全然見当も尽きませんが、将来的には、もうその方向でしか、根本的解決の道はないのではないでしょうか。

 但し、今盛んに中国バッシングに興じている勢力が、それを実現出来る事など、あろう筈がありません。未だに帝国主義・植民地主義を礼賛し、「遅れた国や民族を発展させる為に、鉄道や大学を作ってやった」と言い放ち、自分たちが過去に進めた同化政策を免罪する様な輩に、中国の今の同化政策を非難する資格なぞあろう筈がありません。それは、民族自決・人権・民主主義を擁護する、中国人民をも含む全世界人民の世論によってしか実現出来ないと思います。
 以上、今回の中国ウイグルにおける事態に際して、自分にとっては荷が重すぎるのも承知の上で、聊か大仰なテーマで筆を進めて来ましたが、私は斯様に考えます。そういう思いで、記事冒頭に掲げたアフェリエイトの著書もぼちぼち読み始めています。

(参考資料:追記有り)
・民族抑圧に抗議するウィグル人民への弾圧を許さない(虹とモンスーン)
 http://solidarity.blog.shinobi.jp/Entry/536/
・広東省韶関市でウイグル族と漢人との間で発生した悲惨な事件に対する声明(日本ウイグル協会、以下同上)
 http://uyghur-j.org/about_activity_090703.html
・7月5日中国ウイグル地域ウルムチで起きた事件の情報
 http://uyghur-j.org/urumqi_090705.html
・7月12日「中国政府によるウイグル人虐殺抗議デモ」
 http://uyghur-j.org/urumqi_demo_090717.html
・奇妙な発表「死者140人」・・・ウルムチで何が起ったのか(リベラル21)
 http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-821.html
・王力雄『私の西域、君の東トルキスタン』を読む―新疆のパレスチナ化、或いはチェチェン化(集広舎:劉燕子さんのコラム)
 http://www.shukousha.com/column/liu007.html
・ 梁文道:中国も多民族国家だということを忘れてはならない(思いつくまま)
 http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/306768a506fc3dc2eff6fe475c8c8be9
・中国西域マイノリティリポート 少数民族ウイグル人決死の抵抗(米流時評)
 http://beiryu2.exblog.jp/9961950
・ウイグル問題のこと(ものろぎあ・そりてえる)
 http://barbare.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-b0ed.html
・東トルキスタン共和国(ウィキペディア)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD
・東トルキスタン独立運動(同上)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E7%8B%AC%E7%AB%8B%E9%81%8B%E5%8B%95
・東トルキスタン共和国(世界飛び地領土研究会)
 http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Lake/2917/syometsu/higatoru.html
・中国少数民族地域の民族教育政策と民族教育の問題-内モンゴル自治区の民族教育を中心に-(哈斯額尓敦)
 http://www.lang.nagoya-u.ac.jp/tagen/tagenbunka/vol5/hasu5pdf.pdf
・水谷尚子著「中国を追われたウイグル人―亡命者が語る政治弾圧」(文春新書)
 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4166605992/hatahata-22/ref=nosim
・東トルキスタン(新疆ウイグル)について(1)資料編(ブログ旗旗)
 http://bund.jp/md/wordpress/?p=2459
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今の「救う会」に果たして人権を語る資格が在るのか?

2009年05月31日 16時03分37秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 高田純という人物がいます。札幌医科大学教授・物理学者で、かつて広島大学原爆放射能医学研究所に在職していた事もありました。核物理学・放射線防護学の専門家で、「核爆発災害 そのとき何が起こるのか」(中公新書)などの著作があります。また、NGO・放射線防護情報センターの代表として、中国・ロプノール核実験場周辺の核被害・核汚染の実態を告発してきました(下記参照)。

・中国の核実験 シルクロードで発生した地表核爆発災害(放射線防護情報センター)
>中国は地下核実験を1990年代に11回を実施した。その1回は、1メガトンと大型だった。特に、一部の浅い地下実験は、地表実験と同様に分類されるべき、危険な実験である。これらが、胎児影響による奇形の発生や、若い世代の白血病発生を引き起こしている可能性がある。現在進行形のこうした健康被害が多数、シルクロードの地にあると考えられる。
 http://www15.ocn.ne.jp/~jungata/NEDonSilkRoadJap1.html

 しかし、その同じ口で、日本の靖国右翼や米国のネオコンを露骨に擁護し、日本の再軍備・核武装を主張しているのですから、開いた口が塞がりません(同上)。

・どうする日本!「核と刀」(放射線防護情報センター)
>現代の黒船は核武装している
核兵器の威力は、携帯型の1キロトン以下から大型のメガトン級まで色々
憲法9条により竹光以下との説もあるわが国の自衛隊
核兵器の拡散により、米国の核の傘の効果は低下している
>核爆発に対しても防護は可能!
諦めるな、知恵を持とう!
広島でも空襲警報後に防空壕退避さえしていれば、
半数近くは生存でたはずである。
 http://www15.ocn.ne.jp/~jungata/DosuruNippon1.html

 「核戦争恐れるに足らず」「爆心地で戦闘を継続せよ」なぞと言っているのですから、お話になりません。万が一核爆発の熱線・爆風をやり過ごせたとしても、放射能でやがて全員死んでしまいます。アトミック・ソルジャーの悲劇も知らないとは、とんだ「核の専門家」です。
 これを荒唐無稽のトンデモ話と、一笑に付す事は簡単です。しかし、では次の例はどうでしょうか。

・[CML 000095] Fw:[調査会NEWS 781](21.5.25)記者会見(河嶋さん情報・核実験・しおかぜ)
 http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-May/000092.html
・[CML 000096] Fw:★☆救う会全国協議会ニュース★☆( 2009.05.25 )北朝鮮の核実験に全面制裁の発動を-家族会・救う会声明
 http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-May/000093.html
・[CML 000097] Fw:守る会NEWS :北朝鮮核実験は政治犯収容所囚人の犠牲の上に行われている
 http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-May/000094.html

 いずれも、RENK・「救う会」・「守る会」などの北朝鮮・拉致問題関連NGOの重複会員である原良一さんのCML投稿です。上記3本の投稿とも、CML運営委員会の判断で非表示扱いとされてしまいましたが、いずれの投稿とも、殆ど当該表題に掲げられた北朝鮮関連NGO団体ニュースからの転載です。転載元ニュースへのリンクも併せて表示しておきます。

・[調査会NEWS 781](21.5.25)記者会見(河嶋さん情報・核実験・しおかぜ)
 http://www.chosa-kai.jp/090525.html
・★☆救う会全国協議会ニュース★☆( 2009.05.25 )北朝鮮の核実験に全面制裁の発動を-家族会・救う会声明
 http://www.sukuukai.jp/mailnews.php?itemid=1901 
・守る会NEWS :北朝鮮核実験は政治犯収容所囚人の犠牲の上に行われている
 http://hrnk.trycomp.net/news.php?eid=00102

 原さんが上記3本の投稿をCMLで配信した動機は、以下の通りです。原稿自体は非表示で読めませんが、それに対する別の会員からの返信投稿に、その原文が残っていましたので、そこから引用します。

>北朝鮮の核実験から半日が経っても、こちらでは広島在住の伊達 純氏のコメント一本のみ(呆)。
>CMLに変わっても、護金派どものお花畑に変わりはないようで、当方もこのテーマでは、敵対的な関与を続けることにします。
>暴金膺懲!
>○○○○に刃物、麻原にサリン、金正日に核兵器はあってはならない悪夢です。
>北朝鮮とは「核兵器を持ったポルポト派」です。
 http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-May/000095.html

 要するに、「北朝鮮では、政治犯強制収容所に囚われた良心の囚人が、核実験の人身御供にまでされたというのに、お前ら左派リベラルの無関心ぶりは一体何だ!」と言いたいのでしょう。しかし、その後に続いて「非核三原則の見直し」や「日本核武装」を主張している「家族会・救う会声明」も一緒に投稿するに至っては、もう何をか況やです。これでは、前述の高田純の立場とも、そう変わらないではないですか。
 原さんは、おそらく「家族会・救う会はこれだけ怒っているのだ」と言うつもりで、この投稿を配信したのでしょうが、これでは逆効果にしかなりません。只管「目には目を、歯には歯を」と、北朝鮮に対する復仇感情を煽っているだけなのですから。実際に核戦争にでもなれば、単に拉致被害者だけでなく、多数の朝鮮半島の人々が犠牲になると言うのに。これでは、それをごり押しする為に、徒に拉致被害者や脱北者を踏み絵に利用しているだけと、言われても仕方ないでしょう。
 しかも、その腹いせに、場違いな場で「八つ当たり」に及ぶに至っては、お門違いも甚だしいと言わざるを得ません。一体全体、これが「救う会」の活動スタイルなのでしょうか。

 そんな一見勇ましい「非核三原則見直し」「日本核武装」論ですが、それが実際には、どれだけ非現実的な空論であるか、冷静に国際政治の現実に照らし合わせてみれば、直ぐに分かります。
 まず、「核武装」を主張するからには、当然NPT(核拡散防止条約)脱退も織り込み済でしょうが、そうなれば、米国も含め現在の核保有国全てを敵に回す事になります。かと言って、イランの様に「米帝やイスラエルの蛮行を非難する」のでもなく、引き続き米国の属国に止まり、アフガン・イラク戦争にも加担していくのでしょうから、非核保有国や第三世界諸国も、敵に回りこそすれ、味方になる事はまず在り得ない。
 斯様に、核兵器は、実際の戦争には事実上使えないのですから、幾ら持っていても意味がありません。下手に戦略核を使おうものなら地球滅亡、たとえそれが戦術核・小型核であったとしても、使ったが最後、その国は「核戦争の引き金を引いた戦争犯罪人」として、世界から完全に孤立してしまいます。そんな「無用の長物」の為に、国民生活は全て犠牲にされる。消費税も10%位の増税では済まなくなる。旧ソ連が崩壊し米国経済がガタガタになったのも、偏にこの軍拡の所為では無かったのか。

 そもそも、それ以前の問題として、「そんな主張が人権問題解決の手段として、果たして成り立つのかどうか」という疑問も在ります。
 広島・長崎の原爆被爆者や沖縄集団自決の遺族が、果たして同じ様な事を口にするでしょうか。また、それらの犠牲者・遺族に対しても、「また同じ目に遭え」と、果たして口に出来るでしょうか。
 こんな主張は、かつての「米国の核は汚いが、ソ連の核は清い」の、全く裏返しでしかありません。「北朝鮮の核は汚いが、米国・イスラエルの核は清い」という、ダブル・スタンダードの際たるものです。
 それはまた、「欧米のアジア侵略は悪だが、日本のアジア侵略は善だった」とする、安倍・靖国派の主張とも重なります。なるほど、原さんは、一方では「日本の戦争責任資料センター」会員の顔も併せ持ち、そういう意味では、他の「救う会」会員とは異色の立場に在りますが、これではもう靖国派と全く同じではないですか。

 そして、忘れてはならないのは、これは別に過去の話でもなければ、単に「戦争と平和」に限った話でもないという事です。軍拡論者は「財源は消費税で」位に考えているのかも知れませんが、その消費税の負担に、庶民がどれだけ汲々としているのか、これらの政治家は考えた事があるのでしょうか。今のワーキングプアや「派遣切り」の実状を、果たしてどれだけ知っているのでしょうか。
 知っていたら、国民には偉そうに道徳や愛国心の説教を垂れながら、自分は平気で公務中に泥酔したり、公舎に愛人を住まわせたりなぞ、出来ない筈です。そんな自民党政治を、幾ら「拉致被害者救出の為だから」と言われても、そう簡単に支持なぞ出来ない筈です。国民の人権・生存権要求に対して、上から目線で「生活よりも国防」だの「奴隷の平和」だのと、一方的に貶める様な真似なぞ、出来ない筈です。

 しかし、それが出来るという事は、これらのうちの少なくない部分が、実際は「平和」でも「人権」でも「正義」でもなく、「戦争」と「搾取」を望んでいるからに他なりません。だから、かつての被爆者や今の劣化ウラン弾被災者も含めて、全国民に対して、「再び同じ目に遭え、それでも戦え」と、平然と言ってのける事が出来るのです。また、自分の気に入らない者は全て「反日分子」「北朝鮮工作員」と看做しているので、北朝鮮・拉致問題とは何の関係も無いカルデロンさん一家やDV被害者への嫌がらせなぞと言う、ファッショ紛いの行為に及んだりも平気で出来るのです。「北朝鮮・拉致問題に冷淡な左派リベラル」よりも、寧ろこちらの主張の方が、よっぽど冷淡で非人間的ではないでしょうか。
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戦前日本と現代北朝鮮の類似性

2009年05月27日 23時44分18秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 下記(A)が、今回の北朝鮮核実験に際しての、朝鮮中央通信の報道文です。読売新聞からの転載です。

(A)わが方の科学者、技術者らの要求に従い、共和国の自衛的核抑止力を各方面から強化するための措置の一環として、主体98(2009)年5月25日、いま一度の地下核実験を成功裏に行った。
 今回の核実験は、爆発力と操縦技術において新たな高い段階で安全に実施され、実験の結果、核兵器の威力をさらに高め、核技術を絶えず発展させる上での科学技術的問題を円満に解決することになった。
 今回の核実験の成功は、強盛大国の大きな扉を開くための新たな革命的大高潮の炎を力強く燃え上がらせ、150日戦闘に一丸となって立ち上がったわが軍隊と人民を大きく鼓舞している。
 核実験は、軍事優先の威力で国と民族の自主権と社会主義を守護し、朝鮮半島と周辺地域の平和と安全を保障する上に寄与するであろう。
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090525-OYT1T00533.htm?from=rss&ref=newsrss

 そして下記(B)が、1933年国際連盟脱退時の、日本政府の通告文です。その2年前に起こった満州事変のキッカケとなった鉄道爆破事件(柳条湖事件)を、日本軍の仕業と結論付けたリットン調査団の報告に抗議して、当時の外相・松岡洋右が、「連盟よさらば」の捨て台詞を残して、連盟脱退に踏み切った時のものです。往時の原文は余りにも長文の上に、読みにくい文語体なので、下記の口語訳の方を転載しておきます。

(B)1933年2月24日,国際連盟臨時総会が採択したリットン報告書は,日本帝国が東洋平和を確保する以外はなんら他意ないという考えを顧慮しないだけでなく,事実認定と結論づけでも大きな誤りをしている。なかでも9月18日の柳条湖事件当時およびその後の日本軍の軍事行動を自衛権の発動でないと誤った判断をし,また柳条湖事件前の緊張状態や事後の事態の悪化が支那側に全責任があることを見過ごし,その結果東洋の政情に新しい紛争の原因を作り出している。他方では満州国成立の真相を無視し,同国を承認した日本の立場を否定し,東洋の政情安定の基礎を破壊しようとするものである。
 http://www2.ocn.ne.jp/~hiroseki/shiryou/dattai.html

 ちなみに、当時の原文、ならびに松岡洋右・外相による連盟脱退演説の全文は、下記を参照の事。特に外相演説の方は、日本の置かれた立場を殉教者イエス・キリストに準えての「名演説」だったそうです。

・国際連盟脱退通告文(大正・昭和・平成事件簿)
 http://homepage1.nifty.com/zpe60314/jikenbo16.htm
・松岡洋右演説「十字架上の日本」(日本近代史勉強メモ)
 http://seagull07.blog51.fc2.com/blog-entry-55.html
・軍歌になっていた松岡洋右「連盟よさらば」(きまぐれな日々)
 http://caprice.blog63.fc2.com/?mode=m&no=110

 実は、私が前記(A)の報を聞いて、真っ先に頭に思い浮かんだのが、この(B)の史実でした。そして、実際に上記(A)(B)2つの文章を読み比べてみて、論理構成が余りにも似通っている事に、改めて気付かされました。

 まず第一に、どちらも「旧秩序打破」の立場に立っている点が、非常に似通っています。(A)では米・露・中・英・仏5カ国による核兵器の独占を、(B)では欧米諸国によるアジアの植民地統治を、それぞれ論い、そこからの「解放」を主張している点について。
 そして第二に、それら旧秩序に対抗する為に、それぞれ自衛権を主張している点が、目を引きます。曰く「自衛的核抑止力の強化」(A)や「自衛権の発動」(B)という様に。
 しかし第三に、「旧秩序打破」と言いながら、そこからまた別の、より進んだ段階に移行するのでは決してなく、只管「自分たちにも旧秩序の分け前をよこせ」と言っているに過ぎない点についても、非常に似通っています。それは、「核独占打破」と言いながら、肝心の「核廃絶」には一切触れずに、単に「自国の核武装」のみに汲々としている(A)の立場にも、「欧米のアジア支配」を非難しながら、「帝国主義・植民地主義の廃絶」には一切触れずに、単に「自国の勢力圏拡大」のみに汲々としていた(B)の立場にも、両方共に言える事です。
 その結果として、第四に、その様なエゴイスティックな姿勢が、とうに国際世論からも見透かされ、次第に孤立状態に陥っている(いった)という点についても。

 つまり、(A)も(B)も、「旧秩序の非」を盛んに詰り、そしてその言い分にも一理あるが、しかし所詮は「奴隷が主人に取って代わろうとする復讐心」から出たものにしか過ぎない。「奴隷制度そのものの廃絶」を目指したものではなかったので、第三者から「そういうお前は一体どうやねん?」と突っ込まれたら、もうそこで終わり。そういう立場でしかない、という事です。
  
 この際敢えて言いますが、北朝鮮の主張にも「一分の理」があります。それは、米・露・中・英・仏の5大核保有国が、自国の膨大な核兵器や、インド・パキスタン・イスラエルの核保有には、頬かむりしたままで、何故、北朝鮮やイランの核保有ばかりが、槍玉に挙げられなければならないのか、という事です。
 それに対して、「米・露・インドなどは民主主義国だが、北朝鮮は独裁国だから」というのは、理由になりません。国家の本質においては、前者も後者も、そう変わるものではありません。イラク戦争やパレスチナ・ガザの虐殺を行ったのも、一応「民主国家」と認知されている国々です。

 北朝鮮の核実験を非難する以上は、どんな国に対しても核廃絶を主張しなければ、凡そ説得力ある議論にはなりません。「米国の核は汚いがソ連の核は清い」なんて事は、実際は在り得ませんでした。勿論、その逆も在り得なかった事は、広島・長崎の例からも明らかです。「米ソどちらの核も汚かった」というのが、唯一の真実です。
 それを弁えずに、しかも、色々限界はあっても、今や当の米国大統領すら核廃絶を口にする様になった時代に、徒に「日本核武装」や「敵基地攻撃論」を主張した所で、逆に今度は日本が、世界から「北朝鮮と同類扱い」されるだけでしか無いのに、何故そんな事も分からないのだろうか。

・[CML 000101] 【転送】北朝鮮の核実験への抗議
 原水協・原水禁による抗議談話の紹介。
 http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-May/000098.html
・オバマ核廃絶構想  被爆国日本が呼応すべき(長崎新聞・社説)
 http://www.nagasaki-np.co.jp/press/ronsetu/09/022.shtml
・一気に前進期待できず 広島から具体的提言を(広島平和研究所)
 http://serv.peace.hiroshima-cu.ac.jp/fkiroku/article49.htm
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追悼・忌野清志郎

2009年05月11日 22時08分43秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 下記は忌野清志郎のユーチューブ動画。上から順に「IMAGINE」「君が代」「あこがれの北朝鮮」。







 前回のエントリーでソウル・フラワー・ユニオンに触れたついでに、つい最近亡くなったロック・ミュージシャンの、忌野清志郎(いまわの・きよしろう)の曲も幾つか聴きました。それまでは、清志郎の曲といえば「雨上がりの夜空に」しか知らなかった私ですが、上記の曲を聴き、改めて彼を見直しました。特に、最初の「IMAGINE」に込められたメッセージには感動しました。

 しかし、最後の「あこがれの北朝鮮」については、人によって毀誉褒貶が大きく異なるだろうと思います。北朝鮮を徒にパロディー化、或いは美化するかの様な歌詞の部分に対しては、私も正直言って抵抗はあります。あこがれの対象を金正日体制と取る限り、確かにそのまま受け入れる事は出来ません。
 しかし、そうではなく、対象を北朝鮮民衆と捉えるならば、「民衆同士ともに理解し合おう」という事で、何ら違和感はありません。確かに、前述のソウル・フラワーの「うたは自由をめざす!」よりは後退的な歌詞内容かも知れませんが、そういう見方もあって良いとは思います。

 私は、それよりも、東京・青山での彼の「ロック葬」に、4万人以上のファンが詰め掛けたという点に、注目しています。最近の新入社員に対する意識調査でも、「上司の業務命令には、たとえそれが産地偽装や粉飾決算などの反社会的なものであっても、無条件で従う」という回答が4割以上も占めた様に(海舌さんのブログ記事参照)、この不況下で、単に右傾化・保守化というだけに止まらず、「社畜化・奴隷化」とも言うべき状況が広がっています。
 しかし、その中でも、「蟹工船」ブームの底流とも響き合う、「社会の不正や不平等には簡単には従わない」という意識も、少なくとも、忌野清志郎のロック葬に集まったファンの中では、無意識のうちにも共有されていたのは、確かだろうと思います。「そう簡単に飼い馴らされて堪るか!」という民衆意志の表れとして。

 いずれにしても、今は亡き故人を偲んで、黙祷。今日、例のソウル・フラワーのアルバム「シャローム・サラーム」も、ネットで注文しました。ああいうアルバムは、ツタヤ辺りには殆ど置いていない事も、初めて知りました。

―希望は本来有というものでもなく、無というものでもない。これこそ地上の道のように、初めから道があるのではないが、歩く人が多くなると初めて道が出来る。―(魯迅・作「故郷」より)
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ノースコリアからも、民衆は自由をめざす!

2009年05月09日 08時30分43秒 | 北朝鮮・中国人権問題
極東戦線異状なし!? - ソウル・フラワー・ユニオン Soul Flower Union


 「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」(通称:守る会)関係者の方から、下記声明文の転送依頼がありました。緊急の転送・紹介依頼という事で、当ブログでも急遽ここに紹介する事にします。

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緊急声明文
中国政府はただちに脱北者の北朝鮮強制送還を中止せよ

 報道によれば、去る4月28日、中国の青島にて脱北者約30人が中国公安により不当逮捕され、今にも北朝鮮に強制送還される方向である。逮捕者の中には、生後8ヶ月の乳児を含めて7人の児童が含まれている。脱北者が北朝鮮に強制送還されれば、厳しい拷問や強制労働が待ち受けていること、たとえそれに耐えて生き延びたとしても、その後の北朝鮮国内での生活基盤は消失することが、脱北者の多くの証言により明らかである。
 脱北者を難民として保護することは、難民条約を批准している中国政府の当然の国際的責務であるにも拘らず、中国政府は幼い子供を含めた彼らを強制送還しようとしている。 
 私たちは北朝鮮の人権問題に取り組む市民団体として、この難民条約違反と人権無視の犯罪行為に強く抗議し、直ちに脱北者たちを希望する第三国に出国させることを中国政府に要請する。また、日本政府には、人権・平和外交の理念から、直ちに中国政府に抗議し、脱北者の送還中止を要請することを求める。

2009年5月8日
北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会
代表 三浦小太郎
http://hrnk.trycomp.net/index.php

※上記声明文の元記事

・中国で脱北者30人以上拘束(時事通信)
 【ソウル7日時事】韓国の対北朝鮮ラジオ「開かれた北朝鮮放送」は7日のニュースレターで、中国公安関係者の話として、同国山東省青島で4月28日、脱北者30人以上が公安当局に拘束され、北朝鮮に送還される予定だと伝えた。
 それによると、拘束された脱北者の中には生後8~10カ月の乳児ら子供7人が含まれている。脱北者は朝鮮族のブローカーの手引きで集まり、団体の観光客に偽装。バスで雲南省昆明に向かう計画だったという。(2009/05/07-17:35)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009050700728
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 世間の人は大抵、「脱北者」と来れば、その次には「北朝鮮・拉致問題・核・ミサイル」、或いは「改憲・核武装・愛国心」といった話題を連想するのでしょうが、私は少し違います。私の根底にあるのは、常に「被抑圧者の人権」「被抑圧者の解放」の視点です。
 日本の非正規労働者も、北朝鮮の脱北者も、チベット・イラク・パレスチナの民衆も、共に平和・自由・人権が守られる社会を目指すというのが、私の立場です。だから、これらとは相容れない「改憲」志向の「救う会」系の運動とは一線を画しつつも、脱北者救援活動には、人権擁護の立場から取り組みます。

 そんな私が、「脱北者」と聞いてまず思い浮かぶのは、下記の「うたは自由をめざす!」という歌の歌詞です。ニュー・エスト系のミュージシャン「ソウル・フラワー・ユニオン」の歌で、「シャローム・サラーム」というアルバムに収録されています。(歌詞は、「少年少女思春期中毒。」さんのブログに掲載されていたものを、そのまま引用させてもらいました)

 ソウル・フラワーといえば、その歌詞の内容から、人によっては「左巻きの偏向ミュージシャン」と捉える向きも居られるかも知れませんが、どうしてどうして、彼の人たちは彼の人たちなりに、北朝鮮の事もきちんと考えている事が、下記の歌詞からも分かります。以前の9条世界会議のエントリーでも紹介した通り、歌のメッセージも、「アフガン・イラク戦争も金正日もNO!」という、当ブログの運営方針と完全に合致しています。

 この歌は、音楽サイトで検索すれば、試聴やダウンロードが可能です。しかし、ユーチューブにはアップされていないので、このエントリーで直接紹介する事は出来ません。代わりに、似たような感じの曲を冒頭に紹介しますので、そちらで曲の雰囲気に浸って下さい。

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うたは自由をめざす! 

ちらばって うたは自由をめざす
混ざりあって うたは自由をめざす
傷つけあって うたは自由をめざす
手を取りあって うたは自由をめざす

デタラメだらけの神々 家畜の歌合戦
世界の終わりのはなしが 茶の間に花そえる
ゲットーから うたは世界をめざす
戦場から うたは自由をめざす

這いつくばって うたは自由をめざす
こんがらがって うたは自由をめざす
とっちらかって うたは自由をめざす
体を張って うたは自由をめざす

デタラメだらけの神々 家畜の歌合戦
世界の終わりのはなしが 茶の間に花そえる
ゲットーから うたは自由をめざす
戦場から うたは自由をめざす

路地裏から うたは自由をめざす
ドヤ街から うたは自由をめざす
傷つけあって うたは自由をめざす
手を取りあって うたは自由をめざす

バグダッドで うたは自由をめざす
ノース・コリアで うたは自由をめざす
辺境から うたは自由をめざす
バビロンから うたは自由をめざす
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日米も金正日もニンマリの北朝鮮ミサイル騒動

2009年04月05日 17時59分24秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 今、世間では、新聞もテレビも、北朝鮮による「ミサイル」発射の話題で持ちきりだそうで。私は、このニュースには興味も関心も殆どないものの、マスコミが余りにも囃し立てるので、この件に関しても、一応意見表明だけはしておこうと思います。

 昨日のテレビ番組欄(4月4日・大阪版)の見出しを見ても、朝と晩のニュースでは、定番の様に取上げられていました。主なものだけでも、NHKでは朝の「おはよう日本」と夜の「ニュース7」、毎日は朝の「サタズバッ」と夕方の「報道ネクスト」、関西テレビ(フジ・産経系列)は午前中の「めざまし土曜日」と「ぶったま!」、読売に至っては朝から「ズームイン!!サタデー」「ウェーク」「あさパラ!」と三連発も、という取上げ方をされていました。
 しかし、その割には、職場の休憩時間でも、意外な程、雑談の話題には上りません。意外と、みんな冷めているのです。勿論、春に入って仕事が俄然忙しくなってきた所為もあるのでしょうが。ただ、それだけでなく、マスコミがこのニュースを、興味本位で取上げているのを、みんなも薄々感じ始めているからではないでしょうか。

 だって、毎日なんかにしても、早朝5時半の「サタズバッ」で「ミサイルか、北朝鮮きょうにも発射、列島が緊迫」と散々煽っておきながら、その後の7時半からの「知っとこ!」では桜満開・ランチ・ドライブなど、9時25分からの「せやねん!」では高速料金値下げ・プロ野球・グルメなどという様に、お気楽バラエティ番組を延々と垂れ流しているのですから。夜も夜で、「報道特集ネクスト」で煽った後に、夕方6時半から深夜12時前まで延々と、オールスターと銘打って、長沢まさみから東国原やオバマまで引っ張り出して、訳の分からない特番を組んだりしているのですから。
 関西テレビや読売テレビに至っては、北朝鮮「ミサイル」発射の話題を取上げたその同じ番組で、芸能ネタやら猫の話題やらプロ野球やら穴場ランチの話題を、一緒くたに取上げているのですから。これで、幾ら北朝鮮のコーナーで「情勢緊迫!」とか言われても、視聴者からすれば「お前ら、寄って集ってワシ等をバカにしているのか!」という事にしかならない訳で。

   

 大体、北朝鮮の打ち上げようとしているのが、ミサイルか人工衛星かの区別もつかないで、政府も公式には「飛翔体」などという造語でお茶を濁している様な、真偽も定かでないものに対して、やたら大騒ぎしすぎです。そんなに大事なニュースなら、こんな野次馬根性丸出しの茶番ではなく、もっとちゃんと正確に取上げて、避難勧告などの、それなりの然るべき措置を執っているいる筈です。それで、挙句の果てに、「発射は確認されませんでした」で、言われた方も「くたびれ損」の何とやらで終わりとは。これが東南海沖地震の速報やら津波警報なら、行政・マスコミ・国民のこんな対応は、まず在り得ない。
 だから、以前に国会で社民党の福島党首が、「北朝鮮のミサイルを下手に撃ち落して破片が落ちてきたらどうする」なんて下らない質問をして、産経新聞によるリベラル叩きの格好の標的にされていましたが、あれも「目くそ鼻くそを笑う」の典型でしかありません。まずミサイルには当たらないし、当たっても破片など落ちてきません。

 そりゃあ、どんな事にも100%や0%の確率は在り得ませんから、「絶対に」とは言えませんが、まずそういう事は在り得ない。若し、それを心配しなければいけないというのであれば、米国・インドが打ち上げる人工衛星やミサイルに対しても、同様に心配して然るべきですが、現実にはそんな事は全くないでしょう。結局それは、「米国の核は汚いがソ連の核は清い」という、かつての旧左翼のダブル・スタンダードの、全く「裏返し」でしか無い。
 そう言うと必ず出てくるのが、「日・米・印は民主国家であって、北朝鮮の様な独裁国家ではない」という反論ですが、果たして、そう簡単に割り切れるものでしょうか。確かに、前者と後者は全く同じではありません。しかし、ブッシュ前政権支持の米国深南部のネオコン有権者や、この21世紀にもなっても未だに天皇やら靖国やらに固執しているバカウヨの物言いを聞くと、左右が真逆しているだけで、金正日の精神構造と瓜二つだと、私は思うのですが。

 本当は、みんなも分かっているのでしょう。「あんなモン、迎撃出来る訳が無いし、迎撃する程のモンでも無い」という事が。
 当の北朝鮮が言うには、これはあくまで試験衛星で、国際機関にも通告し、弾道やら落下予定地点も公表しているものを、碌に調べもせずに、「大気圏再突入で燃え尽きなかった破片が落ちてきたら大変だから、迎撃ミサイルだか地対空誘導弾(パトリオット)だかで打ち落とすのダーッ!」と息巻いて。しかし、たかだか射程高度が数十キロ(後者)から数百キロ(前者)しかない、それらの兵器で、上空数千キロの成層圏から、どこに落ちてくるか分からない(多分、大気圏突入時に全部燃え尽きてしまうであろう)ものを、どうやって撃ち落す事が出来るのか。そんな事、冷静に考えれば直ぐに分かろうものを。

 言っておきますが、これは別に、北朝鮮を弁護するつもりで、私は書いているのではありません。北朝鮮の打ち上げるのが、人工衛星であろうとミサイルであろうと、碌な性能もないモノである事は、確かでしょう。それでもあの国は、米国がイラクに侵攻したのを見て、「通常戦争での圧倒的劣勢を跳ね返すには、もうこれしかない」と、ハマスがイスラエルに射ち込んでいるのに毛が生えた様な「ミサイル」を、せっせと量産しているのでしょう。自国の経済状況や国民生活をも度外視して。イラクでの米国の劣勢が、軍事力の差なんかではなく、イラク人民の抵抗や反戦世論に因るものである事にも、思い及ばないで。
 そんな、どこに飛んでくるかも分からず、多分大気圏再突入時に殆ど燃えてしまうような、チャチな代物を相手に、こちらも技術的に未完成な「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の兵器でしかない、迎撃ミサイルやパトリオットで、やれ撃ち落すの何だのと、大騒ぎする事自体が、バカらしいと言っているのです。スターウォーズのSF映画や、競馬の予想じゃあるまいしw。

 そんな事は、日米も当の北朝鮮も百も承知の上で、茶番を演じているのです。若しも仮に、北朝鮮が本気で戦争をおっ始めようとしたら、まず米国や中国が黙っていません。そんな事になる前に、何としてでも北朝鮮を黙らせます。たとえ金正日の首を挿げ替えてでも。北朝鮮も、それを充分分かっているからこそ、その米・中の許容範囲内で、国際社会の出方を伺いながら、経済援助や見返りを引き出そうと、「瀬戸際外交」で突っ張っているのです。そういう意味では、金正日も、かつてのブッシュや安倍も、只の「軍事バカ」という点では、全く「同じ穴のムジナ」に他なりません。田母神なんて、その最たるもので。
 そうして、北朝鮮が米・中の掌の中で抗っている限り、周辺諸国にとっては、北朝鮮というのは、逆に何かと便利な存在なのです。必要悪と言い換えても良い。
 まず米国にとっては、冷戦終結以降は何かとダブツキ気味の武器を、日本や韓国に法外な値段で売りつける為の、格好の口実に使えます。中国にとっても、北朝鮮が自国の許容範囲内でごねまくってくれる限り、逆に日米や国際社会に対して、北朝鮮の後見人として自国を高く売りつける為の取引材料に使えます。日本や韓国にとっては、もはや言わずもがなでしょう。麻生・自民党政権や韓国の李明博政権にとっては、表向きは政府に対する不平不満を逸らす事の出来る格好の「はけ口」として、裏に回れば経済利権の取引先として、今後も重宝していく事でしょう。

 単に、改憲・右傾化扇動や朝鮮人差別の口実として、北朝鮮・拉致問題を利用するのではなく、本当に人権・人道の観点から、今の北朝鮮の体制を何とか変革したいというのであれば、自ずから進むべき道は決まる筈です。日米の政府や軍産複合体のお先棒を担いで、こんな「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の軍事バクチにのめり込むのではなく、具体的な難民救済に踏み出す事です。
 中国に数十万人、韓国に数万人、この日本にも在日コリアン系を中心に千人以上の脱北者がいるのですから、その人たちの難民認定・生活支援・定住支援を図る事が、まず第一ではないでしょうか。東ドイツが崩壊した原因も、戦争ではなく難民の流出でした。
 その為にやるべき事は、山ほどあります。中国にジュネーブ難民条約の遵守を迫ったり、周辺国だけではなく、国連も動かしての国際的な取り組みにする事も重要でしょう。日本について言えば、脱北者も含めた政治亡命者や経済難民への支援を、広く在日外国人支援策の一環として、取り組むべき段階に既に来ているのではないでしょうか。それが現実には、まともな定住支援策はほぼ皆無に等しく、辛うじて生活保護制度だけが機能しているのが、実情ではないですか。

 本来、生活保護というのは、あくまでも、「セーフティネットの最後の砦」である筈です。そこに至るまでの段階として、失業給付や奨学金制度の拡充が、もっと図られて然るべきなのです。ところが政府は、この数十年間に渡り、逆にセーフティネットの削減に血道を上げてきました。日本国民や在日外国人の生存権を広く保障する立場には立たずに、19世紀的な救貧政策のレベルに、福祉施策を後退させてきました。今の派遣村の惨状が、その何よりの証です。
 最近ニュースで取り沙汰される偽装難民や、脱北者が心ならずも犯罪に手を染めてしまう事例も、単に個人のモラルの問題だけに解消されるものではなく、そういう経済的・社会的背景から取り上げられるべき問題です。
 本当に北朝鮮の問題を何とかしたいのであれば、そういう問題は避けて通れない筈です。それを抜きにして、こんな「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の軍事バクチにのめり込んだり、ネオナチ紛いの在日外国人虐めに精を出せば出すほど、国民の生活権保障も、在日外国人や難民に対する支援も、全て等閑にされ、自らの首を絞める事にしかならない事に、いい加減気付くべきです。
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ガザ・派遣村から北朝鮮の人権へ

2009年01月12日 23時48分53秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 

※画像解説:
 上左から時計回りに、大阪・扇町公園派遣村(釜パト)、北朝鮮飢餓(RENK)、ガザ空爆負傷者(毎日新聞)の画像(括弧内は各々の出典元)。

 もうだいぶ前になりますが、イラク戦争が始まり、世論の関心がそちらに集中した時の事です。北朝鮮・拉致問題掲示板の一部に、「せっかく小泉訪朝と金正日の拉致告白で、北朝鮮・拉致問題への関心が盛り上がったのに、イラク開戦以降は世論の関心がそっちに行ってしまった、このままでは、また拉致問題が見捨てられるのではないだろうか」という趣旨の投稿が、散見された事がありました。私はそれを見て、非常に奇異に感じたのを覚えています。「何故両者を、同じ人権問題として、統一した視点で捉えられないのか?」と。

 勿論、その投稿子の言いたい事も分かります。新しいニュースが報道される度に、世論の関心がより目新しいニュースに移ってしまい、それまで注目を集めていたニュースへの関心が低下する事は、北朝鮮・拉致問題だけに限らず、他でもよくある事です。しかし、問題提起の仕方によっては、あるニュースに関心が集まる事で、逆にその他のニュースにも関心が集まるという事も、充分可能だと思うのですが。

 何故、今になってこんな事を書くかというと、実はついこの前も、ある「救う会」関係者の方とメールでやり取りしていた際に、その方からも同種の意見が、図らずしも提示されたからです。「今回のイスラエルによるガザ侵攻で、また世間の耳目がそちらに行ってしまい、北朝鮮・拉致問題への関心が、ますます遠のいてしまうのかなあ」と。
 確かに、今までと同じ運動の仕方をしている限り、そうなるでしょう。しかし、運動の持って行きようによれば、これは「救う会」にとっても、逆にチャンスとなり得るのではないでしょうか。

 まず、イスラエルのガザ侵攻の問題ですが、150万人の人口が密集する面積僅か350平方キロ(東京23区の約半分強)の土地を、イスラエルが完全封鎖して、日夜空爆を加え、数日前からは地上軍も投入しているのです。イスラエルの、今回の軍事侵攻に際しては、クラスター爆弾や白リン弾などの残虐兵器の使用も伝えられています。また、住民を一箇所のビルに集め、そこを戦車で砲撃するなどの、第二次大戦中の日本軍による「三光作戦」も斯くやと思われる様な、残虐や戦術を取っています。このやり方などは、実際の戦闘行為こそ無いものの、一旦入れられたら脱出はほぼ不可能と言われている、北朝鮮国内の強制収容所における統治の仕方と、酷似しているのではないでしょうか。

 そして、ネットカフェ難民や「派遣切り」、派遣村の問題にしても、今まではなかなか表面に出てこなかった問題でしたが、今や全労働力人口の4割近くが非正規雇用に置き換えられるに及んで、もはや一般の人にとっても、「決して他人事ではない」と捉えられる様になりました。解雇とともに住む所も奪われて、所持金も僅か数十円、数百円となり、今日・明日の食糧を求めて彷徨する、これら日本国内の経済難民たちも、情報鎖国の程度こそ違えども、経済的には、北朝鮮のコッチェビ(国内難民孤児)と同じと看做せるのではないでしょうか。

 日本は、昔は「総中流社会」などと言われていましたが、近年のOECDの調査によっても、当該加盟国の中で、米国に次いで経済格差(相対的貧困率)が拡大した事が、明らかになっています。派遣村の住民にとっては、この日本こそが、ガザであり北朝鮮なのです。この事は逆に言えば、今までは「遠いどこかの国の話」と看做されていたものが、実際は自分たちが今直面している問題とも、本質的には同じである事が、分かり易い形で示されるようになった、とも言えるのではないでしょうか。

 以前のエントリー「北朝鮮からアジアの人権へ」でも触れましたが、北朝鮮の人権問題を「アジアの人権・人道問題」として捉え、「国内人権の国際化、国際人権の国内化」を図ると言うのであれば、先の投稿子の様な「北朝鮮か、はたまたガザ・派遣村か」といった捉え方ではなく、「北朝鮮も、ガザも派遣村も」という捉え方こそが、正しい捉え方ではないでしょうか。

 何故そういう方向に踏み出せないのか。それは、北朝鮮・拉致問題に取り組む活動が、主に、ブッシュ・ネオコン派や靖国派などの右派・国家主義者によって担われてきた事とも、無縁ではないと思います。

 一つ例を挙げます。拉致議連幹事長も務める右派の衆院議員・西村真悟が、この新年の年頭所感で、小沢・民主党の「生活が第一」という選挙スローガンに対して、「何が生活が第一だ、国防こそ第一じゃないか。国防がなければ、国民の生活なども在り得ないじゃないか」という趣旨の批判を加えています。

 確かに、小沢・民主党が、どこまで本気で国民生活の事を考えているかについては、私も甚だ疑問に感じています。派遣法改正問題一つとっても、小沢・民主党は、1ヶ月以内の登録(日払い)派遣禁止だけでお茶を濁し、「労働者使い捨て」の元凶たる、登録派遣そのものや、派遣自由化の仕組みには、一向に手をつけようとはしていません。なるほど、自民党出身の小沢にとっては、「生活が第一」も、所詮は自分が政権に再復帰する為の足がかりにしか過ぎないのでしょう。そして、右派の西村にとっても、そんなスローガンよりは、国防の方がよっぽど大事なのでしょう。

 しかし、世の中には、小沢の思惑とは全く別の立場で、必死の思いで「人間の生活が第一、我々も人間なんだ」と叫んでいる派遣村の人たちもいるのです。そういう人たちからすれば、小沢よりも寧ろ西村の物言いの方が、よっぽどカチンと来るのではないでしょうか。
 若し、派遣村の人たちが弁が立つのであれば、多分こう言い返すのではないでしょうか。「あなた方は、二言目には国防だの国益だの言うが、そのお国が一体我々に何をしてくれたと言うのか」「『奴隷の平和』とは一体どこの国の話か?我々からすれば、この日本こそが北朝鮮やガザではないか」「やれ天下国家だの、平成維新だのと、いつもそういう『上から目線』でしか物が言えないのか」と。

 これがまだ数年前なら、西村の上記の物言いも、「門外漢の無知の為せる業」として、一笑に付す事も可能だったでしょう。当時はまだ「小泉構造改革」や「総中流社会」の幻想も世の中には残っており、「貧困・格差は個人の自己責任」という考え方に囚われた人も大勢いましたから。
 しかし、これだけ貧困・格差問題が誰の目にも顕になった今頃になっても、まだ、その動向には一顧だにせず、被災者たちの生存権要求も小沢の政権欲も全て十把一絡げにして、「生活より国防だ」と平気で切って捨てられる神経が、私には理解できません。現に、西村が日夜活動する東京・永田町とは目と鼻の先で、「派遣切り」被災者たちの生死をかけた闘争が今も繰り広げられているというのに。西村も政治家・国会議員であるなら、その問題にも無関心では済まされない筈だ。

 北朝鮮・拉致問題に取り組む右派の人たちは、左派に対して、よくこういう批判の仕方をします。「君たちは沖縄やベトナム、イラクやガザ・パレスチナの問題しか取り上げず、北朝鮮や中国・チベットの問題は一向に取り上げようとはしない」と。確かに、その批判は正鵠を得ています。しかし、そういう右派の人たちは、一体どうなのでしょうか。「北朝鮮や中国・チベットの問題しか取り上げず、派遣村やガザの問題は一向に取り上げようとはしない」=「真に『弱者連帯』の視点が無い」という点では、どちらも同じではないですか。

 私は、何も、「救う会」の集会で赤旗やゲバラやパレスチナの旗を掲げろとか、そういう事を言っているのではありません。運動員同士の絆を保つ為には、今はまだ「日の丸」掲揚や「日の丸」斉唱は外せないというのなら、それも止むを得ないかも知れません。但し、少なくとも私は、そんな「拉致被害者支援集会」には、金輪際、参加しませんが(それはもう「救う会・大阪」の集会で懲りました)。
 しかし、それでも、その気になれば、「『弱者連帯』の視点」を示す事は、もっといくらでも出来る筈です。

 これも、一つだけ例を挙げておきます。数年前に、イラクで活動していた日本人NGOが現地のテロリストに拉致され、NGOもテロリストと同じ様にイラクからの自衛隊撤退を主張した時に、日本国内で当該NGO関係者に対する醜いバッシングが横行した事がありました。「2ちゃんねる」だけに止まらず、幾つかの拉致板でも、当該関係者を貶める醜い書き込みが横行しました(今になって知らないとは言わせない)。その時に、北朝鮮・拉致被害者の横田滋さんが、「イラクで拉致された方々の無事を祈っている」という事を言われました。
 今になって正直に告白しますが、当時私はこの言葉を聞いて、「精神的にも道義的にも、当該NGO関係者よりも横田さんの方が、数段偉いな」と、つくづく思いました。

 こういう精神こそが、「弱者連帯」(国際連帯、人民連帯)や、「国内人権の国際化、国際人権の国内化」と言う事の、そもそもの原点ではないですか。
 この視点さえ失われなければ、その運動は、たとえその時に痛手を蒙っていたとしても、いつかまた再生・発展していきます。しかし、そういう視点すら見失なわれ、単なる「上から目線」の体制翼賛運動や、イデオロギー偏重の運動に変質していくならば、その運動は、やがて民衆の支持を失い、次第に先細りになっていくでしょう。
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北朝鮮からアジアの人権へ

2008年12月30日 00時18分35秒 | 北朝鮮・中国人権問題
 米国ではブッシュからオバマに大統領が変わり、日本でも愈々長年に渡る自民党政治の命脈が尽きつつあります。そんな政治の激動期の中にあって、実はこの12月に、北朝鮮問題に関しても一つの動きがありました。それが下記の「北朝鮮テロ全体主義国家の実状を訴える6団体共同集会」=「アジア人道人権学会設立準備期成会結成」の動きです。

・北朝鮮テロ全体主義国家の実状を訴える6団体共同集会(ネットライブ)
 http://www.netlive.ne.jp/archive/event/081214.html
・アジア人権人道学会設立準備期成会 開催される(同期成会ブログ)
 http://d.hatena.ne.jp/asiajj/

 この動きについては、実は私宛にも関係者の方から事前にメールで情報が送られて来ていて、私としても何らかの形で取り上げたいとは思っていました。ところが、そうこうしている間にも、麻生が次から次へとトンデモ発言を繰り返し、それへの反論に手がとられる中で(あんなモノに一々取り合ってたらキリが無いのですが、さりとて黙認するのも癪に障るので)、それに加えて仕事先での年末繁忙期の多忙もあって、ブログにアップするのが今になってしまいました。

 当該集会は、今月12月の14日に、東京の明治大学において、北朝鮮関連NGO6団体(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会、北朝鮮難民救援基金、特定失踪者問題調査会、RENK、NO FENCE、北朝鮮による拉致・人権問題にとりくむ法律家の会)の共催によって開かれたものでした。
 集会は3部に分かれ、第1部では、川島高峰・明治大学准教授による開会挨拶や、「鳥の歌」などのチェロ演奏、飯塚繁雄・北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表による挨拶、映画「めぐみ 引き裂かれた家族の30年」の上映などが行われました。そして第2部では2名の脱北者の方による北朝鮮強制収容所生活の証言、第3部では6団体による大発言会(パネル・ディスカッション)、という流れで行われました。当日の詳細については、下記の関連記事なども参照してみて下さい。

・鳥の歌と「恥ずべき平和」(守る会)
 http://hrnk.trycomp.net/news.php?eid=00065
・アムネスティが拉致問題に消極的なわけ(高世仁の「諸悪莫作」日記)
 http://d.hatena.ne.jp/takase22/20081227
・拉致問題と北朝鮮人権問題(荒木和博BLOG)
 http://araki.way-nifty.com/araki/

 斯く言う私ですが、偉そうな事を書いておきながら、実はまだ全部視聴出来ていません。視聴出来たのは、第1部の川島さんの挨拶及び「鳥の歌」の演奏と、第3部の各NGOによる大発言会のみです。大発言会の視聴だけでも優に1時間以上かかります故、なかなかまとまった時間が取れなくて。しかし、ボチボチでも時間を見つけて、一応全部視聴するつもりではいます。
 そういう状態なので、とりあえずここでは、視聴した範囲で印象に残った次の三点について、簡単にですが、書き記しておこうと思います。

 第一は、この北朝鮮問題を、ようやく国際人権問題として捉える流れが出てきたなあ、という点です。

 今までは、とかく北朝鮮問題といえば、「お涙頂戴」で与党サイドに都合よく纏められた日本人拉致の話がメーンで、それに加えて強制収容所や脱北者、北朝鮮難民の話題が続くものの、あとはもうテポドンと核と「喜び組」と金正男がどうたらとか、まるで恰も「狂人の国」と、その中で彷徨い続ける「哀れな洗脳された民」しかいないかの様な、そういう興味本位の話ばかりがメディアに流れていたので、私はもう聊か食傷気味でした。
 勿論、そんな番組ばかりではなく、石丸次郎さんの北朝鮮国内レポートなどの、貴重な情報もメディアに取り上げられてきましたが、どちらかというと、そういう番組については、まだまだ地味な扱われ方しかされていない様に感じていました。

 それがこの14日の集会では、川島准教授が、「グローバル時代の人権問題」という問題意識の下、「国内人権の国際化、国際人権の国内化」という提起をされ、「北朝鮮・金正日体制を国際刑事裁判所に提訴し、ローマ規約に基づいて裁くべし」と主張されていました。その他にも、韓国のNGOが取り組んでいる北朝鮮への風船ビラとか、拉致問題や北朝鮮の実状を彼の国の人民に直接語りかける民間放送「しおかぜ」の取り組みなどが紹介され、正に拙ブログが当初から唱えてきた「北朝鮮平和解放」論を地で行く内容で、従来の「靖国参拝派の議員しか来ない、いつもの拉致集会とは全然雰囲気が違う」(高世仁さんの日記より)という事が、視聴していてもよく分かりました。

 その中でも取り分け目を引いたのが、スペイン内戦をモチーフに取り、反フランコ・反ファシズムのメッセージが込められた、カタロニア民謡「鳥の歌」のチェロ演奏です。「北朝鮮問題」と「スペイン内戦」、一体どう関係があるのと、私でも一瞬思いましたから。
 しかし、よくよく考えて見ると、スペインの旧フランコ政権も、北朝鮮の金正日政権も、共に民衆を抑圧してきた独裁政権でした。なるほど、「反独裁・反ファシズム」という点では同じだなと、妙に納得した次第です(社会主義を僭称する金正日政権も、実態は一種の国家社会主義でファシズムに近い)。こういう企画も、「日の丸・君が代」だけの集会では絶対に在り得なかったでしょう。

 第二は、それでもまだ「ここは少し違うのではないか」という点も、私から見たらありました。

 それは例えば、第3部の大発言会で、守る会(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会)事務局長の宋允復(ソン・インボク)さんが、「アムネスティが拉致問題に消極的な理由」について、以下の様に述べていた点についても言えます。

>今国際社会では、日本人拉致問題でのイメージが大きくなっていて、しかも日本が過去の慰安婦ですとかその他諸々の強制問題に対して、そうしたことはなかったという否定するような動きを取り、そして北朝鮮内の人道支援に消極的である。
>そういうあり方に対して、アムネスティの各国ヨーロッパを含めた各支部において疑問を持つ一定の認識があって、それを収斂した結果、アムネスティとしては北朝鮮の人権問題間に関しては慎重にアプローチすべきであるという判断が立ち、それを日本のアムネスティも支持したんだ、と。
 http://d.hatena.ne.jp/takase22/20081227

 私も、日本アムネスティの上記の対応は、誤りであると思います。人権問題として対処しなければならない事案であるにも関わらず、他の問題との兼ね合いで及び腰になってしまうのは、確かに間違っています。しかし、その一方で、その対応を単に「無知に因るもの」だと切って捨てる宋允復さんの対応も、私は疑問に思います。それは例えば、安倍政権時代の、米国下院での従軍慰安婦非難決議に対する、日本の自民党政府の対応や、政府御用の産経新聞の論調を一つ取って見ても、「過去の問題に対するもみ消し・頬かむり・矮小化」は、抗う事の出来ない事実ではないですか。
 
 また宋允復さんは、同じ流れの中で、「北朝鮮関係NGOが米国ばかりを重視するのも、キューバのグアンタナモ米軍基地内でイラク人捕虜への虐待を続ける米国に、免罪符を与える事になるのではないか」という批判に対しても、同様に切って捨てていました。しかし、私は「この米国批判も確かに一理ある」と思います。
 従軍慰安婦問題もグアンタナモの問題も、それを理由にして、「北朝鮮問題に対して及び腰になってはいけない」とは、私も思います。しかし、それはまた同時に、「北朝鮮・拉致問題があるからと言って、従軍慰安婦やグアンタナモの問題や、イラク戦争に関して、米国や日本の政府に対しても、手心を加えて良いという理由にはならない」という事では、互いに等価でなければ、所詮は米国や日本に対する「身びいき」でしかないと思います。

 その拠って立つべき基準は、あくまで人権です。その対象が北朝鮮であろうとイラクであろうと、本来そんな事は無関係の筈です。それを、かつての左翼は履き違えた為に、支持を減退させてきたのでしょう。ところが、それを指摘する左翼批判者の側も、これを見る限りでは、「身びいき」という点では、かつての左翼と何ら変わらないではないですか。
 だから、この場合は、他方の立場で一方の意見を切って捨てるのではなく、北朝鮮に対するアムネスティーの対応も、慰安婦・歴史問題やグアンタナモ・イラク戦争に対する日米両政府の対応や、そのブッシュのイラク侵略に今も加担しながら、「歴史問題で裏切られたから”反米”に宗旨替えした」とか言って恥じないご都合主義の某空幕長の態度も、共に人権の観点から批判しなければ、筋が通りません。

 第三は、「アジア人権人道学会」という括り方に対する疑問です。

 一口にアジアと言っても、これでは漠然としています。最初からアジア地域全般を守備範囲としていたのなら、これで良いかもしれませんが、最初は北朝鮮問題が出発点だったのに、やがて北朝鮮との関係で中国・チベットの人権問題も取り上げざるを得なくなった。
 ここまでなら、まだ何となく分かりますが、どうやらそれだけではなく、ミャンマーの問題も取り上げると言う。確かに「人権はグローバルなものであり、国家や民族による身びいきがあってはいけない」という点では、その通りなのですが、そうすると、「アジア人権人道学会」というからには、スエズ運河以東のアジアの人権問題全てを、網羅しなければならなくなります。
 そうすると当然、イラクの問題も、数日前から始まったイスラエルによるパレスチナ自治区・ガザへの空爆問題も、取り上げなければならなくなる。日本国内の「派遣切り」やネットカフェ難民の問題も、当然アジアの人権問題の中に含まれます。
 それら全てについて、本当に訳隔てなく公平に取り上げてくれるのなら大歓迎なのですが、正直言って、今の「アジア人権人道学会」設立準備会に、いきなりそれを要求しても、収拾がつかなくなるだけではないかと思うのですが。

 また敢えて穿った見方をするならば、本当は麻生が外相時代に唱えた「自由と繁栄の弧」とかいう中国包囲網を構想しているのだが、それでは余りにも露骨なので、「アジア人権」という様に言い換えているだけではないか、と。
 仮にそういう意図であるならば、正直に「北朝鮮・中国・チベット人権」とでもしてくれた方が、私としてはすっきりするのですが。今の中国も、北朝鮮ほど酷くはないでしょうが、問題大有りなのは事実ですから。反共や資本主義美化の、ネオコン流の中国包囲網の立場には、私は組みしませんが、それでも反グローバリズム、反・新自由主義の立場から、中国におけるスウェット・ショップ(外資と共産党官僚が結託した搾取工場)の問題を取り上げる中で、「別個に進んで共に撃つ」という事もあるかも知れません。
 一番適わないのは、表向きは「アジア人権」と言いながら、実際は「中国人権」の名の下に、「あんな麻生内閣」でも、かつて「自由と繁栄の弧」を唱えたのだから、一切批判まかりならぬ、なんて理屈を押し付けられる事です。(そもそも、これだけ日本の経済・社会をメチャクチャにして、8万5千人以上の派遣労働者を寒空に放り出しておいて恥じないアホ首相が、何が自由か繁栄か、石ぶつけたろか、ホンマに!!)

 以上、最後はまた批判めいてしまいましたが、「アジア人道人権学会」については、私は大いに注目し期待もしていますので、くれぐれも、その期待を裏切る事だけは無いように願います。
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【大阪】アジアプレス現地報告会イラク・北朝鮮のご案内

2008年11月25日 22時19分10秒 | 北朝鮮・中国人権問題
※知人を介して標記のメールが転送されてきました。「イラク・北朝鮮にも平和と自由を」という、ある意味拙ブログの志向とも合致する催しが、私の地元・大阪で行われるという事で、急遽こちらでもお知らせしておきます。生憎私は当日仕事で行けませんが、興味のある方は是非ご参加を。


イラクと北朝鮮はいま <アジアプレス現場報告>  【大阪】
11月29日(土)にアジアプレス大阪事務所が現地報告会を行います。
イラクは北部モスル取材映像報告、アルジャジーライラク支局長電話インタビュー(予定)、
北朝鮮は最新の内部映像報告や国内記者撮影によるミニ写真展、
DAYSJAPAN関西サポーターズクラブ、アムネスティインターナショナルのミニ報告もございます。
他では見られない報告会です。
-----------------------------
■日時
2008/11/29(土)
午後1時30分~6時50分(予定) 
【4部構成】
■開場 午後1時15分
■場所 
大阪・ドーンセンター(天満橋) 5階 特別会議室 地図リンク >>>
■参加協力費 1000円
■定員 90名 
(先着です。定員になるとご入場いただけない場合がございます。ご了承ください)

■主催 アジアプレス・インターナショナル
     DAYS JAPAN関西サポーターズクラブ
■協力 社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
--------------------------------------------
【4部構成】
【第1部】 主催者メッセージ 午後1時30分~1時50分
--------------------------------------------
【第2部】 イラクの現状と現地メディアはいま (玉本英子・坂本卓)
     午後1時50分~3時10分
--------------------------------------------
【第3部】 北朝鮮はどうなっているのか~
リムジンガン内部記者からの報告(石丸次郎)
       北朝鮮国内記者に聞く(予定) 午後3時30分~4時50分
--------------------------------------------
【第4部】 ジャーナリストと話そう
       知りたいこと、伝えたいこと、自由トーク
      午後5時10分~6時50分(予定)
=====================================
【ミニ写真展】 北朝鮮のいま
「北朝鮮人自身が撮った”祖国”の真実の姿」
北朝鮮内部からの通信 リムジンガンの記者たちが撮影した
最新写真の一部を展示。(四切X約24点/予定)
【お問合せ】
アジアプレス大阪事務所 TEL (06)6373-2444 (午前10時~午後7時)
メール osaka@asiapress.org
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制裁でも対話でもなく北朝鮮の平和解放を

2008年10月19日 23時08分02秒 | 北朝鮮・中国人権問題
季刊リムジンガン 第2号(2008夏)―北朝鮮内部からの通信 (2)

アジアプレス・インターナショナル出版部

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・北朝鮮のテロ支援国家指定、米が解除 6者維持へ譲歩(朝日新聞)
 http://www.asahi.com/international/update/1011/TKY200810110170.html?ref=goo
・テロ指定解除:対北朝鮮で米政府が発表 核検証計画に合意(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/world/america/news/20081012k0000m030079000c.html

 上記ニュースにもある様に、先日11日に、北朝鮮の核無能力化再開に伴い、米国が同国に対するテロ国家指定を解除しました。少し遅くなりましたが、今回はその件について、自分の思う所を書いておきます。

 911テロを機に、アフガン・イラク反戦を訴えて始めた私のHP・ブログが、北朝鮮問題にも言及する様になったキッカケは、あくまでも拉致問題でした。しかし、今はもう、北朝鮮問題に関して一番憂慮すべきなのは、核問題でも拉致問題でもなく、北朝鮮国内の人権問題だと思っています。

 金正日を中心とした個人崇拝・世襲政治の下で、身分制度や密告制度、強制収容所網によって国民が縛り付けられているこの国の実態は、もはや「社会主義国」とはとても呼べない、単なる「封建王朝」にしか過ぎないのは明らかです。
 その北朝鮮の人権状況を抜きにして、米国・ロシア・中国などの核大国が幾ら北朝鮮の核保有を論った所で、所詮は「核保有国のエゴ」でしかありません。また、幾ら日本人拉致ばかりを言い募っても、米国やその配下の軍事独裁政権が、アフガン・イラクや中南米で同様の犯罪行為に手を染めてきた事実には頬かむりでは、当事者以外にとっては「どっちもどっち」にしか映りません。

 確かに、北朝鮮の人権問題は、最終的には北朝鮮人民自身によって解決されるべき問題です。しかし、「世界人権宣言」が、国家・民族の枠を超えた人権の普遍性を謳っている様に、この問題は単に当該国だけの問題に止まるべきものではありません。限度を超えた人権抑圧に対して、「民族自決権」を口実に「知らぬ存ぜぬ」の態度を取る事は、とりわけ弱者の人権擁護を任じる左翼・リベラルにあっては、在ってはならない事と考えます。

 まず、金正日体制の崩壊によって、北朝鮮人権問題が解決に向かう事で、核や拉致の問題は言うに及ばず、今まで長年打ち捨てて置かれた日本の過去の帝国主義・侵略戦争に対する歴史総括や、国家間のODAや経済協力と引き換えに黙殺されてきた個人に対する戦時賠償の問題も、初めて本格的解決に向かい始めます。
 そして、東西冷戦の残滓と米国の軍事的・経済的支配の下で、「民主的」装いを凝らした新自由主義的搾取によって、「ネットカフェ難民生活」や「派遣イジメ」に痛めつけられてきた、日本などアジア資本主義諸国の人民にとっても、国内政治の民主化や対米従属からの解放、非核・非同盟・非軍事化への道に、本格的に歩み出せる展望が初めて開けます。
 斯様に、この北朝鮮人権問題は、単に日本人拉致家族だけの問題や、当該国人民の解放だけに止まる問題ではなく、周辺国人民の、我々の解放にも関わる問題でもあるのです。

 今の北朝鮮問題を巡る「制裁か、対話か」の議論の中で、どちら側の主張にも私が組する気になれないのは、そのどちらにも、前述の「人民解放」の視点が決定的に欠けているからです。「制裁論」にも「対話論」にも、北朝鮮やその近隣諸国で実際に生活している人民・民衆の姿が、全然見えません。
 ネオコン(新保守主義者)や靖国右翼が主張する北朝鮮「制裁論」は、軍需産業・軍拡勢力と金正日独裁体制との「鞘当て」にしか過ぎません。それを「お涙頂戴」の、拉致問題を自民党の悪政隠しに利用するNHK「命令放送」で誤魔化しているだけです。その一方で、ネオリベ(新自由主義者)や財界、共産党・社民党などの議会左派が主導する北朝鮮「対話、国交正常化実現論」についても、こちらも資本主義諸国と金正日体制との「談合」でしかありません。後者では確かに戦争は避けられるかも知れませんが、所詮は「新自由主義」の北朝鮮への拡大にしかならないと思います。今の中国がそうである様に。
 では、「戦争・ファシズム」でも「格差社会・新自由主義」でもない北朝鮮・東北アジアを作るには、どうしたら良いか。これは直ぐには答えが出る問題ではありません。ただ一つには、周辺諸国による脱北者の組織的受け入れで、東ドイツやチェコと同様に無血解放の道を辿る可能性があるのではないかと、漠然と予想しています。

 いずれにしても、「制裁か、対話か」の議論は、私にとっては、それ自体には余り興味はありません。私も、HP立ち上げ当初は、どちらかと言えば後者に近い考え方で、一時期はその是非を決めかねて態度を保留した事もありましたが、今はもう、そんなものは、「自民党と民主党のどちらが、より左寄り(革新的)か?」と言った類の、北朝鮮人権問題の本質を覆い隠す「ニセ対立」でしかないと、思っています。
 「救う会・調査会」界隈では何やら、今回の米国による「北朝鮮テロ国家指定」解除に対する怨嗟の声が満ち満ちている様ですが、そもそも私は、米国のキューバ・イラン制裁に見られる様な、特定の超大国・帝国主義国による恣意的な「テロ国家指定」そのものを認めない立場です。さりとて逆に、「指定解除」がそのまま「東北アジアにおける真の平和・人権・民主主義の確立」に直結するものか否かを考えると、手放しに礼賛する気にもなれません。その理由は前記で述べた通りです。
 北朝鮮の市場経済化への移行が、彼の国の民主化への契機にもなり得るという意味では、確かに少し期待も持てますが、そこで人民が民主化に立ち上がらなければ、それは単に「開発独裁」を補強するものにしかなりません。かつての朴正煕・スハルト・ピノチェト独裁政権がそうであった様に。過去の植民地支配に加えて、現在の「派遣イジメ」まで北朝鮮人民に味わせる様な真似は出来ません。それはもう我々だけで沢山です。

 そんな「制裁か、対話か」といった議論よりも、実際にそこで生活している北朝鮮人民や、彼の国と繋がりを持つ在日コリアンの方々が、何を思い日々生活を送っているのか、そこに寄り添う事の方が、一見地道に見えて、実は「制裁か、対話か」よりも遥かに重要であると思います。
 「護憲は言うが北朝鮮問題には及び腰」でも、「排外主義・国家主義扇動に乗せられてファシストの先導役を買って出る」のでもなく、日・朝をも含む全・東アジア人民の連帯で、改憲・右傾化策動や新自由主義にも、北朝鮮や中国の人権抑圧にも反対し、それぞれの国で民主化を勝ち取っていく。私は、この姿勢こそが、世界人権宣言・日本国憲法の理念を真に体現したものであり、左翼本来の立場でもあると考えます。
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