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この国の主権者は一体誰なのか?

2010年01月07日 19時44分29秒 | ヘイトもパワハラもない世の中を
 

 もう昨年の事になりますが、1ヶ月ほど前にマスコミで盛んに取り上げられていた、天皇の特例会見の件について、少し感じている事を書きます。
 当時私は、普天間問題と在特会の話題を追うのに手一杯で、このニュースにまで手が回りませんでした。そして、そもそもそれ以前の問題として、戦後も60年以上経ち、今の主権在民の平和憲法に慣れ親しんできた私にとっては、天皇なんて、はっきり言って「過去の人、ただの封建的残りカス、どーでも良い存在」でしかない。そんな、憲法上はただの「飾り」(シンボル)でしかない人の事で、何故マスコミがこれだけ大騒ぎしているのかが、全然理解できませんでした。そんな事よりも、普天間の問題や、年の瀬を前に「派遣切り」に遭った人の行く末の方が、よっぽど気がかりです。

 勿論、このニュースのあらましぐらいは、私も理解しています。通常は30日以上前に事前にアポをとっておく慣例だったのを、小沢・民主党幹事長がねじ込んで(一説には中曽根が言いだしっぺだとも言われているが、それはとりあえず置いといて)、強引に中国副主席との会見を設定した。それを羽毛田・宮内庁長官が「天皇の政治利用」だと抗議し、それ以降、小沢との間で泥仕合が続いている、と。簡単に言えばそういう事でしょ。
 まず、30日云々と言う慣例の妥当性については、ここではひとまずおいて置きます。私個人としては、何もそこまで杓子定規に拘る必要もないかと思っていますが。それに対して小沢は、怒り心頭になって羽毛田に噛み付いた。これも、何故そこまで拘るのか、私には理解できません。普通は「今回は30日前の締め切りが過ぎていますのでご遠慮下さい」「はい、分かりました」で済む話でしょう。それを何ですか二人とも、いい歳こいた大人が子どもの喧嘩みたいに。

 確かに、ここまで見た限りでは、小沢のほうが分が悪い。たとえ慣例であっても、一応ルールはルールなのだから。世間でもそうでしょうが、面接の予約然り、クイズ番組応募の締め切り然りで。それを駄々っ子みたいにごねるから、「中国との間に何かあるんではないか」と、自民党や右翼から叩かれるのでしょうが。そして、あの小沢と中国の事ですから、実際「何かある」のでしょう。
 小沢は、これらの批判に対しても色々言っていますが、私には言い訳にしか聞こえません。聞きようによっては旧態依然たる天皇制を批判しているかのような事も言ったりしていますが、要は自分が天皇のように振舞いたいだけではないですか。戦犯天皇とその皇太子(現天皇)も「小沢天皇」も、ともに非民主的存在である事には変わりありません。

 その限りでは、「己の点数稼ぎの為に、天皇を政治的に利用した」という、自民党の谷垣総裁・石破幹事長や、共産党の志位委員長の指摘のほうが正しい。しかし、共産党は兎も角として、石破ブログの書き込みや、この問題で小沢・民主党叩きに回っている人たちの言い分を聞いていると、単に「天皇の政治利用だからケシカラン」というだけに止まらず、やれ「天皇陛下を政治利用するとは『畏れ多い』」だとか、「共産中国に媚を売りやがって」とか、高齢天皇の体調懸念(30日慣例の趣旨も元々はそれが理由だった筈)や「政治利用」とは全く別の動機で反対しており、それを誤魔化す為に「政治利用」云々を持ち出してきているだけにしか見えないのですが。
 小沢のやっている事が天皇の政治利用なら、それを批判する自民党や右翼も、自分の都合の良いように天皇を利用している点においては、小沢と全く同罪です。

 そして、私が最も腹立たしく思うのは、小沢を批判する側も、小沢を擁護する側(佐藤優など)も、どちらも「我こそが天皇陛下の事を一番慮っている、相手こそ不敬なり」と、まるで「天皇は神聖にして侵すべからず」の明治憲法下のような論理で、互いに相手の非をなじりあっている事に対してです。
 主権在民の現憲法施行後60年以上も経ち、とうに21世紀に突入しているというのに、何を19世紀の「坂の上の雲」や、戦前の「天皇機関説」「統帥権干犯問題」の頃と変わらないような、時代錯誤で国民(主権者)不在の議論をしているのか。この国の主権者は未だに天皇なのか?
 そもそも、天皇が、あくまで国の象徴として、政治的関与(政治利用)が禁じられているのも、元はと言えば、過去に軍部や右翼が、天皇の権威を嵩にきて暴走し、国民を侵略戦争に駆り立てていった事に対する反省から来ているのでしょう。そうであるならば、小沢も反小沢も、「我こそは忠臣なり、相手こそ不忠なり」といった論理で非難合戦に興じているのは、一体どういう事か。

 更には、「そんな天皇を有難がって、慣例を捻じ曲げてまで特例会見に固執する中国って、一体何なのよ」という問題もある。かつて日本帝国主義の侵略を受け、それと戦う中から、革命によって建国を成し遂げた今の中国が、未だ戦争責任をきちんと清算していない日本の天皇(制)を、よりによって崇め奉り、自国の国威発揚に利用しようとしているのは、一体どういう了見に基づいているのか。
 恐らく中国は、社会主義国としての人民連帯の建前よりも、自国の国益追求を優先したのでしょう。その事の是非については、ここでは問わない。それよりも、私が一番腹が立ち、かつ情けなく思っているのは、そこに至る中国政府の政策決定の中で、日本の世論が完全に見くびられた事に対してです。「日本人は、戦後60年経っても、相変わらず天皇やお上や米国言いなりの、人権意識の薄い、奴隷根性が染み付いた国民だ」「そんな国民に直接訴えるよりも、かつてマッカーサーがやったように、天皇を利用したほうが話が早い」と、中国は恐らくそう考えたのでは。そうでも考えない事には、こんな話なぞ出て来ない。

 外国にそこまで見くびられているのに、「小沢民主党と中国による現在の天皇政治利用」と「自民党による過去の天皇政治利用」だけを問題にし、天皇制克服・清算の課題を最近はほとんど口にしなくなった共産党や、小沢に歩調を合わせて右翼・自民党による過去の天皇政治利用を非難するだけで、天皇制の見直し・清算には一切言及しない護憲リベラル・市民派も、「保身の為に天皇(制)と妥協しようとしている」という点では、小沢の天皇政治利用とも五十歩百歩ではないか(この点については、下記・金光翔ブログの指摘も参照の事)。無論、当事者たる天皇主義者(小沢・羽毛田・佐藤・自民党・右翼)に至っては、もはや論外ですが。

 他方で、そう言いながらも、「本当に国民はそう思っているのか?」という思いも、今の私の中にはあります。何故なら、いくらマスコミ・自民党・右翼が「不敬バッシング」を煽っても、当の国民は「笛吹けど踊らず」で、意外と冷めているというのが、私の率直な感触です。寧ろ「白けている」といったほうが、近いかもしれません。
 はっきり言って、この構造不況・恐慌下で、今日明日のやりくりだけで手一杯の一般庶民が、現憲法下において何ら政治的権能を持たない、ただの「籠の鳥」に対して、いちいち思いを馳せるほどの余裕があるとは、到底思えません。こんな「上げ膳据え膳」の「雲上人」の事に、いちいち付き合っていられるほどの余裕なぞ、到底あるとは思えません。マスコミや右翼のバッシングが怖いから、みんなそれを言わないだけで。

(参考記事)

・小沢幹事長、党が進める陳情のあり方を改めて説明(民主党)
 http://www.dpj.or.jp/news/?num=17436
・天皇陛下と中国の習近平国家副主席との会見問題について 谷垣禎一総裁談話(自民党)
 http://www.jimin.jp/jimin/hatsugen/hatsugen-232.html
・習近平・中華人民共和国副主席の天皇陛下との会見について(石破茂ブログ)
 http://ishiba-shigeru.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-f538.html
・君、日本国憲法読んだことあるの、とは誰のことか(眞吾の時事通信)
 http://www.n-shingo.com/cgibin/msgboard/msgboard.cgi?page=470
・羽毛田信吾宮内庁長官は尊皇のまこと心をもっているのだろうか?(佐藤優の眼光紙背)
 http://news.livedoor.com/article/detail/4504076/
・天皇会見問題/政府の対応は憲法の精神をたがえたもの/小沢氏こそ憲法をよく読んで発言すべきだ/志位委員長が会見(しんぶん赤旗)
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-12-16/2009121602_01_1.html
・天皇政治利用問題と天皇訪韓(金光翔ブログ>資料庫)
 http://gskim.blog102.fc2.com/blog-entry-26.html
コメント (17)
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