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アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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西成高校の反貧困教育(後編)

2013年03月31日 22時14分42秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
反貧困学習 格差の連鎖を断つために
クリエーター情報なし
解放出版社


 前編で西成高校生の就職活動奮戦記について書きました。その西成高校におけるバックボーンとなっているのが、「格差に負けず生きていく力を育む」反貧困教育です。そこで使われている上記のテキストを図書館で借りてきました。西成高校の先生方の手によるテキスト(ワークシート)に、先生方の解説や生徒・識者の感想を付け加えたものです。
 版元が解放出版社なので、人によっては単なる同和教育・解放教育の延長で捉えられる方もおられるかも知れませんが、実際は全然違います。かつては西成高校でもその様な教育が行われてきました。しかし、それでは単に「差別を無くそう」とのお題目に終わってしまい、その他のワーキングプアや母子家庭の貧困問題が置き去りになってしまう事に、西成の教師自身が気付き始め、今の形になったのです。

 テキストの内容も非常に実践的です。例えば画像の「労働基準法」の解説にしても、法律の名前や条文の内容、「8時間労働」などの概略を単に知識として詰め込むのではなく、解雇された時にはどうしたら良いかを、実際にバイトを解雇された生徒の体験談も元にして、生徒に考えさせる構成になっています。
 「仕事で怪我しても何もしてくれない」「レジで金額が合わなければ弁償させられた」「もう帰る時間は過ぎているのに実際はなかなか帰れずサービス残業を強いられる」、こんな日常よくあり疑問に思う事でも、例えば労災なら、どこの病院(労災指定病院)に行き窓口でどう言えば良いか(労災にして下さい)、近くに労災病院がない場合はどうすれば良いか(後で労働基準監督署に医者の診断書を持っていき労災申請する)まで具体的に学習する事になっています。給料からの天引きも、日常起こり得る過失を口実に差し引く事は労働基準法で禁じられています。サービス残業についても、手待ち・待機時間(制服に着替えたり仕事の準備をする時間)も労働時間として給与支払いの対象になり、それを30分や1時間単位で切り捨てる事は違法となります。現実にはそんな職場も少なくない中で、まずはそれを違法と認識できなければ、対処のしようがありません。違法と認識できるだけでなく対処法も知らなければ何もなりません。
 いずれもテキストには平易な言葉で書かれていますが、どれもこれも笑い事では済まされない事ばかりです。現に、昔いた職場でミスが多いからと退職前一週間ただ働きさせられたバイトが私の知人でいましたし、当の私自身も、実際は30分弱の遅刻なのに1時間丸々減額された事が昔ありましたから(当時はそれが違法だとは気付かなかった)。

 しかも、このテキストの真骨頂はそれだけに止まりません。このテキストの構成は、バングラデシュのストリートチルドレンの話から、ネットカフェ難民や日雇い派遣の話に入っていきます。「何故、より身近な日雇い派遣の話ではなく、外国のストリートチルドレンの話から入るのか?」、これにはちゃんと訳があって、実はストリートチルドレンになるきっかけとなった児童虐待は、そのまま西成の生徒の現実でもあるのです。「そこから抜け出す為に、どれ位の費用や能力、人との関わりが必要なのか」「それが日雇い労働で賄えるかどうか」を、生徒自身に考えさせてこそ、初めて「生きていく力」が身につくのです。
 次に、田村裕著「ホームレス中学生」を題材に、田村君がホームレスになったきっかけ(父の入院・リストラ・サラ金からの借入)や、そこから抜け出すきっかけ(近所の人の通報や児童相談所の尽力、生活保護)を探らせる事で、貧困ビジネス(サラ金・ゼロゼロ物件)やセーフティネットの話に繋げていくのです。ゼロゼロ物件の単元でも、単に簡易宿泊所だけを悪者にしてそれで終わりではなく(産経などはあろう事かそれすら生活保護叩きの口実にしている)、国が安価な公営住宅の建設を怠り続け、住宅を人権ではなく企業の金儲けの手段にしてきた所に、根本的な原因がある事もきちんと教えているのです。

 そして、そこから抜け出すセーフティネットとして、労働組合法や労働基準法、最低賃金法についても学んだ後で、西成差別(西成はガラが悪い、ホームレスが多い)についても、何故そうなったのか(寄せ場が低賃金労働のプールや沈め石として利用されてきた)を学び、その解決法についても「不公平な椅子取りゲーム」のたとえを引いて、「奴隷が奴隷主に取って代わるだけでは、新たな奴隷を生み出すだけで、奴隷制度そのものは無くならない」(正に今の日本・米国社会がそうだろう)、「今までの奴隷制度が撤廃されても、人権意識が人々の間に育っていなければ、新たな奴隷制度に取って代わられるだけだ」(同じく今の中国・北朝鮮がそうだろう)という事を、詰め込みの知識ではなく個人一人一人の生き方として学んでいくのです。読めば読むほど物凄いテキストです。
 自民党や「維新の会」の政治家たちも、今まで散々、労働規制緩和や原発・TPP推進や普天間問題などで弱者を切り捨て、ネオナチ「在特会」の暴力も都合良く利用してきた事を全て棚に上げ、虐めや体罰を口実に道徳教育復活や憲法改悪を目論むような、卑怯な真似をする暇がある位なら、政治家なんて辞めて、みんな西成高校で一から学び直すべきでしょう。そして生徒と一緒に企業面接を受けて見れば良い。こいつらこそ真っ先に「教育再生」しなければならないのだから。権力者としては優秀でも人間としてはダメダメな輩ばかりなので、恐らく誰一人内定を得られないでしょうけど。(続編に続く)
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西成高校の反貧困教育(前編)

2013年03月31日 17時39分20秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を
446 & SHINGO★西成 / 「生きる」っていうこと 【MV】


 またブログ更新の間が空いてしまいました。3月25日の夜にたまたま見たNHK総合番組の感動をどう伝えてよいか悩んでいるうちに、もう一週間近くも経ってしまったのです。いつまでも悩んでいても仕方ないので、思いつくまま書いていこうと思います。
 「泣き笑い 俺たちと先生の就職活動~西成高校・生きる力を育てる1年~」というのがその番組の名前です。舞台は大阪の府立西成高校。そこの3年2組の若い担任教師と落ちこぼれクラスメイトが就職内定に漕ぎ着けるまでの一年間を密着取材したドキュメンタリー番組です。

 西成高校は「あいりん地区」からも程遠くない所にあり、未解放や在日朝鮮人、母子家庭や生活保護世帯の生徒が数多く通う、いわゆる「ど底辺」の公立高校です。バイトで学費を稼ぐ生徒や授業料減免措置を受けながら通う生徒も多く、経済的困窮や学業不振などによる中退者も少なくありません。また、卒業生を受け入れてきた地元企業の方でも、長引く不況の影響で採用枠を絞らざるを得なくなっており、もはや高校を卒業しても簡単には就職できない世の中となってしまいました。
 その中で、西成高校では「格差に挑み、生徒の希望と誇りを育む」(同校HP)教育方針を掲げ、履歴書の書き方や求人票の見方、就職面接の受け方を徹底的に指導してきました。

 番組ではとりわけ二人の生徒の成長する姿を取り上げていました。一人はK君。彼はクラスの人気者ですが、母子家庭で、母親がかまってやれない後ろめたさから甘やかされて育ったせいか、遅刻や保健室登校からなかなか抜け出せません。一度は心を入れ替えて自分から頭を丸刈りにしてみせたものの、その後も遅刻は相変わらずで担任から「何の為に頭を丸めたんや!」と怒られ、大事な面接の日にもボロボロの学生ズボンで登校し、進路指導の教師から「全然心構えがなってないやないか!」とどやされる日々が続きます。その為、幾ら面接を受けても内定が貰えず、最期の土壇場で心を入れ替えてようやく内定に漕ぎ着けます。
 もう一人はUさん。彼氏の子を身ごもってしまったものの、高校生ながら自分で子供を生み育てる事を決意し、今は彼氏の家で家事・育児もこなし、子供を保育園に送り迎えしながら通学しています。大人びた性格故に、今までたびたび虐めも受けてきました。彼女は育児の事もあり一旦は就職を諦めかけます。しかし、教師から24時間保育の施設を紹介して貰う事で、介護の仕事に見事就く事が出来ました。

 この番組を見てまず感じたのが、西成高校の先生は生徒の表面的なマナーの悪さにいちいち目くじらを立てていない事です。高校HPに「スカートの下にジャージ着用禁止」の規定があっても、番組ではそういう格好の女子生徒が、椅子に立て肘をつきながら、それでも先生の意見に真剣に耳を傾けている姿が印象的でした。この光景と言い、先のUさんの例と言い、安倍政権の道徳教科復活にエールを送るような保守派には到底受け入れられない姿です。しかし、西成の現実の前には、空虚な道徳論・精神論なぞ何の役にも立たない。
 西成高校の先生方は、そんな事にはいちいち目くじらを立てず、しかし言うべき所では生徒を思いっきり叱り付けています。また、連日繰り返される企業面接の練習も、見ようによっては調教とも取れなくはない。でも、それが調教ではなく人間教育として立派に機能しているのも、教師が生徒の個々の生活の崩れだけに目を奪われる事なく、その裏にある生活の貧困にも思いやりながら、決して生徒を甘やかせず、一人の人間として見る中で、場合によっては必要な援助も与えてきたからではないでしょうか。

 西成高校は、反貧困学習でも有名な所です。遅刻などに対しては厳しく対処し、企業面接の練習を繰り返す一方で、例えば労働基準法の内容についても、通り一遍の知識ではなく、解雇されたらどうすれば良いかを、実際にバイトを解雇された生徒の事例を教材に取り入れる中で、「生徒に生きていく力をつけさせる」教育を実践してきました。昨今、ともすれば「内定を得る為にどう面接の空気を読むか」「如何に即戦力として企業側に気に入られる人材となるか」という視点ばかりが注目されがちですが、ここではただ杓子定規に「ルールを守れ」と言うだけでなく、「間違ったルールは是正し、より良いものに変えていく」事もきちんと教えています。
 その上で、遅刻防止・時間厳守などの社会人として必要なルールもきちんと教えている。だから、地域社会や地元企業からも支持され、弱肉強食の橋下市政下でも、少なくとも今の所は区長も蔑ろには出来ない存在となっている。この西成高校の先生の様な経営者や政治家が一人でも多くなれば、日本は確実に良くなる。これこそが本当の教育再生・政治再生ではないか。私も出来るならそんな職場で働きたい。それを一番感じました。(後編に続く)
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