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東電の廃炉工程表に欠けているもの

2014年04月22日 23時22分17秒 | 福島の犠牲の上に胡坐をかくな


 NHKスペシャルで「廃炉への道」というシリーズ番組をやっていました。事故が起こった福島第一原発と近くの第二原発を、今後40年かけて廃炉にしていく様子を記録に残すという触れ込みで、その初回の放送が4月20日の日曜日夜にありました。普段はTVなぞほとんど観ない私も、タイトルに惹かれて観る事にしました。

 番組の前半は結構惹きつけられました。
 いわく、事故当初はガレキだらけで高い放射線量を記録していた原発敷地内も、ガレキが除去されたお蔭で何とか作業が出来る様になった。次はいよいよ原子炉建屋内のガレキや原子炉内のデブリ(核燃料の破片・残滓)の除去に向かう。しかし、建屋内はまだまだ放射線量が高く、とても人間が作業できる環境にはない。そもそも、建屋内の破損状況すら全然分かっていない。
 そこで、ガレキを取り除いたり放射線量を図るロボットが原発の建屋内に投入される事となった。まず建屋の損傷が最も少なかった2号機で、ウォーリアというロボットが障害物を取り除き、その次にマイスターというロボットでオペフロ(原子炉格納容器の天井部)のコンクリートを採取し放射線量を測る方法が取られた。ところが実際は、ウォーリアが段差に乗り上げ転倒して使い物にならなくなり、マイスターが採取したコンクリートのサンプル片にも放射能が厚さ1ミリ以上も浸透している事が明らかになり、まだまだ人間が作業できない環境である事が判明した。
 また、原子炉内部の損傷やデブリの分布状況も調べなければならないが、その為には原子炉の貫通口まで観測機材を作業員が持って行かなければならない。しかし、その貫通口の周囲には高い放射線量を出す配管が走っていて、とても作業員が近づける環境にはない。それに対し、原子炉の反対側は比較的線量が低く、そこにも別の貫通口があるのだが、その貫通口は直径10センチしかない。通常の観測機材では通す事は出来ないので、そこを通す特殊な蛇型の機材を開発する事になった・・・と。

 ここまでは結構良かったです。廃炉の技術的な内容やその困難さなぞ、素人にはなかなか分かりませんから。それを分かりやすく解説してくれていて、結構勉強になりました。ところが、その後がいけません。
 いわく、原子炉内に残存している核燃料やデブリからの熱の発生を抑え、それらを取り出す為にも、原子炉内への注水が欠かせない。しかし、それは他方では大量の汚染水を生み出す事になる。汚染水を保管するタンクの増設も追いつかない。そこで、苦肉の策として、山から原発の下を通って海に流れ込む地下水を、原発の手前のまだ放射能に汚染されていない段階で迂回路に流し込み海に放流したい。その了解を漁業関係者から得ようと東電やメーカーが苦労している。その中で、最初は風評被害を気にして心を閉ざしていた漁業者も、徐々に廃炉事業に協力する中で復興をめざす方向に傾きつつある・・・と。まるで政府や東電の受け売り番組そのものじゃないか!

 何が「まだ放射能に汚染されていない段階で迂回路に流し込み」ですか。既に事故直後に大量の放射能が原発から漏れ出て太平洋上や阿武隈山地の方に飛散している事がスピーディのデータで明らかになっています。その上、その後も汚染水を保管したタンクや格納容器の亀裂から大量の汚染水が漏れ出て海に流出している事も、これまでの報道でとっくに明らかになっています。その原発から漏れ出た放射能の大気や海に流れ出た汚染水が蒸発して、再び雨となって山に降り注いで地下水として原発に流れ込んでいるのでしょう。既に原発の手前で充分汚染されているじゃないか!しかも、そうやって何度も蒸発を繰り返しているうちに、食物連鎖による生物濃縮も加わり、放射能はますます濃縮されていきます。
 それに加え、実際の廃炉作業も、ヤクザを使って素人の作業員をかき集め、ろくに安全対策も講じないまま、被曝線量の上限をクリアさせる為にわざと線量計を外して作業させたり、多重下請構造の中で危険手当や賃金のピンハネが公然とまかり通っていたり、汚染水タンクの増設だけに追われる中で、ろくに溶接もされないタンクが作られ、そこから水が漏れ出している事も、もはや公然の秘密となっています。嘘だと思うなら、「福島原発、汚染水流出」でも何でも良い、適当なキーワードで少しネット検索するだけでも、一杯その手の情報が入手できます。

・福島第1原発のタンクから100トンの高濃度汚染水漏れ=東電(ロイター)
 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA1J01W20140220
・焦点:福島原発汚染水、漏えいタンクに違法労働の影(同上)
 http://jp.reuters.com/article/jp_energy/idJPTYE9B906720131210
・福島第1原発 汚染水ますます深刻 海水の放射性物質 濃度下がらず(しんぶん赤旗)
 http://blogos.com/article/76972/
・福島原発問題について(科学者の眼)――科学者による原発事故の解説(日本科学者会議)
 http://www.jsa.gr.jp/pukiwiki/index.php?%CA%A1%C5%E7%B8%B6%C8%AF%CC%E4%C2%EA%A4%CB%A4%C4%A4%A4%A4%C6

 政府や東電が今回の事故対策のモデルケースにしているのが米国スリーマイル原発の事故ですが、この事故の場合はメルトダウンこそしたものの、まだ格納容器はかろうじて破損からまぬがれる事が出来ました。炉心が露出していた時間も100分前後と、福島原発事故の数日間と比べはるかに短かった。だからこそ、まだ注水で何とかしのげたのです。
 NHKの当該番組では東電の廃炉工程表の解説もされましたが、その工程表には最も肝心な事が抜け落ちています。その最も肝心な事とは、安倍政権の退陣で、一刻も早く今の原発固執政策と決別し、脱原発に舵を切る事です。脱原発を実現すれば、注水も廃炉も不要になる。
 そうすると「そんな事を言うなら電気を使うな」という人が必ず出てきますが、そんな論理のすり替えに騙されてはいけません。何も原子力でなくても発電はできるのに、勝手に原子力の比重を高めておいて、まるでそれ以外には選択肢がないかのような物言いこそがマヌーバー。火力発電では石油を輸入に頼る事になる?地球温暖化が更に酷くなる?原発燃料のウランやプルトニウムは石油以上に輸入依存ですが?過酷事故で一旦放射能に汚染されたら将来の地球温暖化どころの騒ぎでは済まなくなるのも、チェルノブイリや福島の事故で既に充分証明済みですが。発電所のタービンを回す蒸気の、その元となるお湯を何で沸かすかという、たったそれだけの為に何故これほど犠牲を払わなければならないのか。


上記はこの4月28日に福島で開催される汚染水問題の集会案内です。関心のある方は是非ご参集下さい。 
コメント (1)
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