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戦没者慰霊式典での式辞コピペ等、安倍が色々やらかしてくれたお蔭で、報告が遅くなってしまいましたが、実は8月14日の仕事帰りに、釜ヶ崎の夏祭りに行って来ました。
「釜ヶ崎」というのは、現在の大阪市西成区にある「あいりん地区」の旧称・通称で、西日本最大の「寄せ場」(日雇い労働者の街)です。故郷を離れ、この地で土木工事等の日雇いの仕事で生計を立てている労働者や野宿者(ホームレス)の人たちの為に、支援団体の人たちが中心になって、地域内の通称「三角公園」というグラウンドで、毎年ずっと夏祭りが行われてきました。もう今年でかれこれ43回目を迎えます。それまで暴力団や覚せい剤の売人等が支配していたこのグラウンドを、地域の人々の手に取戻し、憩いの場に変えようと取り組まれ始めたものです。今では地域外の住民も参加する大規模な祭りに発展しています。
私がこの祭りの事を知ったのも、職場のバイト仲間で、西成の隣の阿倍野区に住んでいるT君の、「こんな祭りがあるんやけど、プレカリアートさんも一度行ってみたら」の一言からでした。ちょうどその日は夕飯は外食で済ます予定だったので、「仕事帰りのついでに、夕涼みがてら見てこようか」という事で行って来たのです。
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会場には夕方5時過ぎに着きました。さっそく夕食にしようと屋台を物色。150円の焼きそば、100円のチヂミ、100円の泉州野菜の天ぷら1舟を食べたら、もうそれで満腹になってしまいました。天ぷらコーナーでは他にタチウオ等の地場の魚も揚げていたそうですが、私が行った時にはありませんでした。
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他にも、カップ入りの冷やしソーメンが1杯50円、カレーライスも100円と、財布に優しいメニューが目白押し。安くても味は確かです。野宿者の方はカレーライスは無料です。
また、お金を持っていなくても、アルミ缶1キロで200円前後の「釜マネー」と交換でき、その200「カマ―券」で200円の商品が買えます。但し、このアルミ缶と釜マネーの「交換比率」はアルミ缶相場に対応しているので、年によって数十カマ―(数十円)の開きがある様です。上二つ目右側の写真が、その「釜マネー」の交換受付所です。
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雑誌・書籍の販売コーナーでは、ホームレス支援雑誌の「ビッグイシュー(BIG ISSUE)」と「路上脱出ガイド」というパンフレットを購入。いずれも100円から300円前後の価格です。私はそこでついに小銭が切れ、とうとう、なけなしの1万円札を出す破目になったのですが、店員さんがお釣りが足らずに四苦八苦。余計な苦労を店員さんにかけてしまいました。いずれも安い商品ばかりなので、出来るだけ小銭を用意しておいた方が店員さんも助かるでしょう。お札はせいぜい千円札まで。
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会場では、他に記念写真・証明写真の撮影や書道展のコーナーもありました。
お祭りのメニューも、12日夕方の前夜祭(ちんどんパレード)を皮切りに、ステージでののど自慢大会や、フォーク・ロックの演奏やダンス、参加団体のアピール、相撲大会やすいか割り、綱引き大会、夜の盆踊りと、色々あります。そして最後は15日夜の、今年1年間に釜ヶ崎で亡くなった仲間の追悼式(慰霊祭)で終了です。今年は歌手の加藤登紀子さんも祭りに参加されたそうです。私が行った時は、ちょうど真ん中で綱引き大会をやっていました。
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釜ヶ崎で誰にも看取られずに亡くなった方々の冥福を祈る為に、祭壇が設けられていました。
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現在、橋下徹・大阪市長の下で、大阪都構想と連動して進められている西成特区構想に反対の展示コーナーにて。
今や区民の4人に1人が生活保護世帯と言われ、「あいりん地区」以外にも高齢者や母子家庭を中心に数多くの貧困問題を抱える西成区を、「敢えてエコヒイキする」と鳴り物入りで宣伝された「西成特区構想」ですが、「住民の意見も聞きながら進める」と言われる割には、詳しい事は何も伝えられず。
それどころか、支援団体の情報によると、「ドヤ街」、つまり今の簡易宿泊所を中心とした既存の街並みを一掃して、日雇い労働者を追い出して官庁街や文教地区に造り変えようとしているだけとか。ちょうど、隣の阿倍野区で「あべのハルカス」や下町の再開発等として進められている様な形で。しかし、いくらそんな事をしても「臭い者に蓋」にしかならないでしょう。貧困問題は、分散され世間の目から見えにくくされるだけで、決して無くなりはしない。
その中で、あいりん福祉センターや医療センターの移転、結核対策事業の打ち切り等が進められようとしているそうです。
また、中央の特設ステージでも、住民票を一方的に奪われ選挙に投票も出来なくなったドヤ街住民による、選挙権を取り戻すアピールが行われていました。
日雇い労働者は、寝起きする飯場やドヤが変わるたびに、いちいち住所変更などしていられません。また、訳ありで故郷に住民票を置いてきたまま釜ヶ崎に流れ着いた人たちも決して少なくはありません。かつてはそんな人でも、支援団体のビル(釜ヶ崎解放会館)にとりあえず住民登録しておく事で、免許証・保険証切替え等の行政サービスも受けられたし、選挙で投票する事も出来ました。
しかし、2007年に、「実際の住所ではない」の一語で以て、そのビルに住民登録していた3千人からの住民票が、大阪市の手で一方的に抹消されてしまいました。今やこれらの人たちは、現に生きて働いているにも関わらず、戸籍上は行方不明者や死亡者と同じ扱いにされてしまっているのです。
実際、釜ヶ崎以外でも、夫の暴力から逃れ、別天地でようやく生活基盤を確保できるようになった女性で、夫に現住所を知られる事を恐れ、戸籍や住民票を変える事が出来ない人が一杯いるでしょう。そういう人を保護し人権を保障するのが行政の仕事なのに、その肝心の仕事を何もしない言い訳に、「実際の住所でない」という口実が使われているのです。
治安上の理由で、この措置を擁護する人もいますが、そういう人は、人権侵害という根本問題を放置したまま、見かけ上の治安さえ維持できれば良いと言うのでしょうか。そういう「人命より権力維持の方が大事」な人は、自分も同じ目に遭えば良いのです。それ位の目に遭わないと分からないのでしょうから。
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そうこうしているうちに、祭りもいよいよたけなわ。今正に盆踊りが始まろうとしています。中央の特設ステージでも歌手の中川五郎さんが登壇。私ももっと参加したかったのですが、あいにく明日も早朝から仕事なので、この辺で退散です。
釜ヶ崎の夏祭りは、毎年8月13日から15日まで、時間は昼前から夜の22時頃までやっているそうです。会場の三角公園へは、JR新今宮駅からだと堺筋か阪堺線の線路沿いの道を南へ、南海萩ノ茶屋駅(高野線の各停しか止まらないので注意)からだとそのまま商店街を東へ。いずれの方から来ても、阪堺線今池駅のガードが見えてきたら、それを横目に見ながら、消防署(分署)手前の角を南に折れれば、もうすぐそこが公園です。みんなも、懐具合が寂しい時は、一度来てみたら良いのではないでしょうか。