アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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同床異夢のプレゼン

2016年04月27日 07時14分29秒 | 職場人権レポートVol.3
 今まで何度かブログで取り上げてきた、私の会社の業務改善発表会が、いよいよ明日(4月28日)に迫りました。先週の土曜日も、所長と二人で本社に出向き、刺々気(ささき:仮名w)プレジデントから、直々にプレゼンの指導を受けて来ました。
 なお、「プレジデント」と言うのは、社内体制の再編に伴い設けられた新ポストです。一応、「子会社の代表者」という位置づけですが、他社で言えばただの取締役部長みたいなものです。その「プレジデント」に、社員昇格試験で私と面接した、あの刺々気が就任する事になりました。
 しかしまた、仰々しい名前の肩書にしたものです。まるで、どこかの国の「国家主席」みたいな発想です。そんなに会社の力を誇示したいなら、横文字なんかにせず、素直に「大統領」と名乗れば良いのに。但し、他人がその肩書名を聞いてどう感じるか?ただの「裸の王様」や「独裁者」と取るか?それとも、本当に「それに相応しい好人物」と取るか?それは知りませんがw。

 そのプレゼン指導の中で、当初の原稿は大幅に見直しを迫られる事になりました。

 (1)あくまでも会社のプレゼンなので、相手や得意先は敬称や丁寧語で呼ぶように。(スーパー・××→スーパー・××様、ベトナム人→ベトナム人の方、等)
 (2)1人当たりの持ち時間が10分間しかないので、話すポイントを絞るように。前置きはほどほどにして、苦労談をもっと強調すれば良い。
 (3)あくまでも我が社のプレゼンなので、他社や他国の事例と比較するよりも、「今後、我が社でどうして行きたいのか?」を前面に出す方が良い。

 プレジデントからの、上記のアドバイスを参考に、原稿を下記のように書き直しました。
 前置きも、もっと短くするつもりでしたが、発表会には他部門からも大勢来られるので、職場や仕事内容の説明はどうしても必要です。その為、前置きの部分は余り変える事が出来ませんでした。その分、後半部分を大幅に見直して、苦労した点をもっと具体的に話す事にしました。最後の結論も、上記の内容に沿った「会社好み」のものに変えました。

 そうして、ついに下記のプレゼン原稿が確定しました。プレジデントからも、下記の内容で了承をいただき、後は発表を待つばかりです。実際に喋ってみると、ギリギリ10分内に収まりました。会場にはプレゼン原稿をそのまま持ち込む事が出来ます。当初予定された質疑応答も無くなりました。後はひたすら平常心で、下記の原稿を読めば良いだけです。なお、原稿の所々に挿入した小見出しは、同時並行で会場のプロジェクターに映し出される応募書類の該当箇所を示したものです。

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 こんにちは。××(社名)・××(事業所名)の××(私の本名)です。
 本日は、改善テーマ「外国人バイトの作業精度・モチベーション向上に向けて」について、ご説明させていただきます。

(→⑧事例となる業務の内容)
 私の職場は、大阪市××区の××にある、スーパー・××様の物流センターです。
 センター内で、加工されたカット野菜を、店舗別に仕分けする作業を請け負っています。
 その作業を、私も含めて、3名の契約社員で回しています。但し、当日休みの人や、午前のみの勤務の人もいるので、実際は午前2名、午後1名で回す事になります。ところが、その人数では、午前中はまだどうにか回るものの、午後からは非常に苦しくなります。その為、昨年ぐらいから、ベトナム人留学生のアルバイトが、順次配属されるようになりました。

(→⑨改善前の状況・問題点)
 ベトナム人アルバイトの方も、日本語は話せ、文字も平仮名やカタカナぐらいなら読めます。
 しかし、日本語を話せると言っても、片言程度なので、少し込み入った内容になると、もう話が通じなくなります。そして、文字も、ほとんどの人は、カナしか読めません。商品名の漢字が読めないのです。
 こんな状態では、「この商品を、何個ここに積んで下さい。」と言った程度の事を、伝えるので精一杯です。しかし、日常作業では、もっと細かな事を伝えなければなりません。例えば、「春菊と菊菜は同じ物だから、同じように扱ってよい。」とか、「大根とレタスも、一緒の箱に詰め合わせて良いが、大根の方が重たいので、上下ではなく左右に分けて積みましょう。」等のように。それを、漢字も読めず、日本語も片言しか喋れない彼らに伝えるのは、そう簡単な事ではありません。

(→⑩改善内容)
 その中で、どうやってベトナム人に仕事の内容を教えていけば良いか?まずは、ベトナム語の挨拶から覚える事で、彼らとコミュニケーションを取る所から始めよう…。そう思った私は、本屋でベトナム語の会話集を買ってきて、ベトナム語の勉強を始めました。
 その時に、「ある事」にふと気が付きました。それは、「外国人にとって習得が難しいと言われている日本語も、発音だけ見れば、そんなに難しくはないのではないか?」という事です。
 それが証拠に、日本語には、複雑な発音は、ほとんどありません。だから、中国語やベトナム語とは違って、非常に発音が聞き取りやすいのです。
 そこから、「外国人が日本語を覚える際にネックになっているのは、漢字の読み書きではないか?だったら、子供でも理解できる文章で、漢字に全てカナを打ったマニュアルを現場に掲示して、一から教えていけば良いのではないか?」と考えました。





(→⑯参考資料=上記画像)
 そこで、毎日の日常作業を幾つかの工程に分解し、その工程ごとに、注意点などのポイントを書いた分かりやすい解説文を、写真付き、カナ付きで掲示し、作業に入る前に時間を取って、一人一人にきっちり説明する事にしました。そして、口頭で伝えるだけでなく、マニュアルを冊子にしてコピー配布するようにしました。

 しかし、「工程ごとに分解する」と言っても、余り細分化し過ぎると、作業全体の流れが掴めなくなります。その取捨選択にまず悩みました。
 マニュアルの文章についても悩みました。全ての漢字にカナを打ち、写真も入れるとなると、一枚の紙に書ける文字の量は本当に限られます。その限られた字数の中でも、必要な事は漏らさないようにしなければなりません。
 表現についても苦労しました。例えば、「怠る」と言う言葉も、「もっとやさしい言葉に置き換える事が出来ないか?」「『サボる』では、余りにも俗っぽくて、余計に理解できないのではないか?」等、色々悩みました。悩んだ末に、他に適当な言葉が見当たらなかったので、もうそのまま載せる事にしました。
 また、マニュアルの内容をアルバイトの方に伝えるには、A3サイズに拡大したカラーコピーを、現場に一枚ずつ貼り出さなくてはなりません。一枚コピーするだけで80円かかります。それを何枚もコピーしなければなりません。

 そうやって、苦労した末に、ようやくマニュアルが完成しました。やはり、苦労しただけの甲斐がありました。

 今まで、外国の方と意思疎通がスムーズに行かなかったのは、私たちの方に「焦り」があったからです。今までは、私たちも忙しさにかまけて、ついつい、通りすがりに、二言、三言、作業を指示するだけで済まそうとしていました。しかし、それでは、全然コミュニケーションが取れません。私たちも、外国人から一方的に英語でまくし立てられただけでは、全然理解できないでしょう。それと同じです。
 それを改め、「何故、その手順が必要なのか?」という事も含め、一つ一つ、マニュアルを使って、丁寧に説明して行きました。その結果、ようやく、外国人アルバイトの方とも、徐々に意思疎通が図れるようになって行ったのです。

 そして、私も、ベトナム人の方からお菓子やコーヒーを貰うようになった事で、ベトナム語の挨拶や、ベトナムの食文化、ベトナム戦争などの歴史についても、勉強するようになったのです。

(→⑮感想・意見・今後の展望)
 今後、日本では、人手不足が続く中で、外国人アルバイトの方に頼る機会がますます増えます。日本にやって来る外国人観光客も、うなぎ上りに増えています。その中で、外国人とのコミュニケーション能力が、ますます求められるようになるのではないでしょうか。まずは、お互いに挨拶する事から始めましょう。そして、自分がされたら嫌な事は相手にもしない。逆に、自分がされたら嬉しい事を相手にもしてあげよう…。そういう気持ちで、新しいアルバイトの方にも、これから毎日接して行こうと考えています。どうも、お忙しい中、ご清聴ありがとうございました。

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 唯一残念なのは、最後の結論部分の内容が、当初私が最も言いたかった事と、だいぶかけ離れてしまった事です。

 発表会の応募書類では、最後は下記のようにまとめていました。(1月17日付記事「今度は業務改善発表会に応募する事にしました。」参照)

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(15) 今回の改善に関する当該者による感想・意見・今後の展望:

 まず、マニュアルの必要性について。通常の特売日等での応援作業者教育については、せいぜい一日で完結する場合が大半なので、その場しのぎの対応でも間に合うかも知れません。しかし、年末繁忙期の様に、一週間から10日前後に渡る比較的長期間もの間、大勢の応援作業者を戦力として活用しなければならない場合については、その場しのぎではなく、安全教育の整備や作業マニュアルの作成も含めた計画的な対応が求められると思います。
 次に、外国人バイトへの対応について。日本の少子高齢化や経済の国際化が進むにつれて、今後ますます職場に外国人労働者が増えてくるでしょう。しかし、外国人も生身の人間です。新自由主義、利益至上主義の風潮の中で、外国人労働者を単なる低賃金の捨て駒の様に扱うだけでは、諸外国から反発を買うだけです。特に日本では、在日コリアンへのヘイトスピーチ(差別扇動)にみられるように、アジア蔑視の根強い風潮があります。まずは私たち自らが、在日外国人の事を理解し、相手の人格・人権を尊重できる様にならなければ、21世紀の国際社会で生きていく事は難しいと思います。

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 そして、そのブログ記事の中では、このように書いていました。

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 経済の国際化、グローバリゼーションの進展によって、外国人雇用の分野は今後ますます拡大していくでしょう。その点については、私も会社も考えている事は同じです。
 でも、そこから先が違います。会社は、外国人をあくまでも使い捨ての駒と見なしているのに対し、私は、日本人も在日外国人も、共に人権が尊重され共存できる社会を目指しています。「世界が幸福にならなければ自分も幸福になれない」と言った宮沢賢治の言葉を今一度思い起こすべきです。まあ、こんな事ばかり言っているから、社員登用試験でも面接で落とされ、今回の応募も多分採用されないでしょうけれど。

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 最初のプレゼン原稿では、上記の「体制批判」「会社批判」の論調をだいぶ緩めましたが、それでも、「外国人や日本人アルバイトの安易な使い捨ては許さない」と言う事は、下記のように、はっきり書いていました。(4月10日付記事「会社の業務改善発表会で日本人と外国人の人権擁護を訴えてやる!」参照)

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 これは、単に外国人バイトだけでなく、日本人の年末短期バイトに対しても言える事です。幾ら自分が忙しいからと言っても、バイト教育をなおざりにして、人間をただ物のように扱うだけでは、相手もこちらの言う事を聞いてくれなくなります。それは日本人もベトナム人も同じです。自分がされて嫌な事は相手にもしない。逆に、自分がされて嬉しい事を相手にもしてあげる。ベトナム人に気持ちよく仕事してもらう為には、日本人もベトナム人の事を理解しなければならない。だから、単に仕事のマニュアルだけでなく、ベトナム語の基本会話やベトナムの文化・歴史についての解説も現場に掲示したのです。
 以前、広島県の牡蠣養殖場で、中国人労働者が養殖場の経営者を刺し殺すという事件がありました。今後、経済の国際化や、日本が少子高齢化に向かう中で、外国人労働者に依存する割合がますます増えるでしょうが、その一方で、彼らを単なる低賃金労働の穴埋めとみなしたり、いたずらに排斥するような事になれば、同じような事件が他でも起こるようになるかも知れません。それを防ぐ為にも、今こそ、日本人と外国人の関係において、相互理解が求められるのではないでしょうか。

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 それが、最終の原稿では、「まずは私から外国人バイトとコミュニケーションを取ろう!」みたいな内容にされてしまっています。「外国人をぞんざいに扱っていたのも、労働者全体を仕事に追いまくる会社ではなく、あくまで労働者個人に責任があるんだ」みたいな内容に。そうして、実際には外国人労働者も「使い捨ての駒」としか見なしていないくせに、「”ベトナム人”ではなく”ベトナムの方”と、相手を敬うように」と、上辺だけ取り繕って。
 公共施設や会社の中に張ってある人権啓発や安全標語のポスターなんて、まさにこんな感じでしょう。実際には、学校や会社で思いっきり競争をあおり、成績で人を差別しておきながら、表向きだけ「虐め防止」とか言ってお茶を濁して。国も、実際の人権侵害たるブラック企業の横暴は見て向ぬふりしながら、労働者個人にだけ「人権尊重」や「安全確保」の義務を説く、みたいな感じで。

 要するに、会社としては、「新自由主義=金もうけ至上主義」「非正規・下請け・外国人労働者の使い捨て」批判みたいな事は、言ってほしくはないのです。でも、私が作ったマニュアルなどのノウハウについては、うまく活用したい。それが会社の本音でしょう。
 そういう意味では、確かに「会社に上手く丸め込まれた」感がしないでもないです。しかし、それでも、私の最も言いたかった事は応募書類にはちゃんと盛り込まれており、その応募書類の文面も発表会でプロジェクターに映し出されるので、これぐらいは、まあ仕方ないでしょう。やっぱり、私も賞金は欲しいですし…w。
コメント (1)
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