1月3日(水)13時から16時の間に開催された標記のツアーですが、私がその後風邪を引いてしまった為に、なかなか報告記事をブログに公開できませんでした。今も発熱こそないものの、咳や鼻水がまだ出ます。この調子では、いつまで経ってもブログに公開できそうにありません。幸い、街歩きの要所ごとにツイッターに投稿した文章(ツイート)がありますので、そのツイートを繋げる事で、報告記事に替えたいと思います。その上で、ツイートだけでは何の事か分かりずらい部分については、適宜解説を入れて行きたいと思います。
※あいりん職安、西成労働福祉センター等の説明を途中で挿入・追記しました。その他の部分も、写真とツイートの関係がより分かりやすいように、ツイートの順序を多少入れ替えました。(1月10日)
釜ヶ崎講座の見学ツアーで釜の変貌ぶりを目の当たりに。昔のドヤが次々と観光客向け民泊に切替え。星野リゾートも進出。布団を敷くと旅館登録しなければならない。そこで大隅アパートは貸布団で旅館業法の適用を逃れたが、最近の民泊の中には堂々と布団を敷き違法営業する業者も。
左上の写真が外国人観光客向けに最近造られたEPホテル。エコノミーダブルで6733円、室内にトイレ・バス。訪日旅行会社がネットで利用客を集める。同じく右上が星野リゾートが進出を予定している場所。JR新今宮駅の北側に広がる広大な遊休地が進出予定地。
戦災被災者や売春婦の更生施設だった馬淵隣保館もあいりん再開発で取り壊しに。かつて千人児童がいた萩之茶屋小学校も少子化で今宮小中一貫校に統廃合。PTAの反対かわす為にマイクロバス運行、監視カメラ、校門前に交番、外柵に放水パイプ設置で生徒の目から野宿者排除。
左上の写真が小中一貫校の柵に設けられた散水パイプ。柵の外側にしか放水されない。それで野宿者を追い払う。同じく右上が今宮小中一貫校の校門横にある交番(逆光で見ずらいですが)。中高一貫校なら私立に結構あるが公立の小中一貫校は珍しい。少子化対策として始まった。それでも生徒数はわずか300名ほど。
1泊500円のドヤもまだ残る一方、1泊1600円でエアコン・家電・WiFi完備に果ては三食付の外国人観光客向け個室寮まで出現。しかし、そのピカピカの寮も水道・トイレ・風呂は共同。短期滞在には便利も長期ともなると…。防火設備は大丈夫か?家賃を1日でも滞納したら直ぐに追い出されるのではないか?
左上は一泊500円のドヤ(逆光で見ずらいですが)。右上は三食付き個室の入居者募集ポスター。
外国人の観光客向け民泊だけでなく技能実習生や留学生の訓練施設に衣替えしたドヤも。しかし、実際は実習や留学とは名ばかりの低賃金労働者。入管法で許可されたバイトだけでは食べていけないから違法なダブルワークや奴隷労働にも従事せざるを得ない。部屋の鍵すら自分では管理できない籠の鳥。
左上の写真が外国人留学生・技能実習生向け訓練施設「関西トレーニングセンター」の表札。同じく右上が通用門に設けられた個室の鍵。何でわざわざこんな所に設置するのだろう?
あいりん職安、同総合センター、西成労働福祉センター…どれも同じ施設名だと思っていたが違った。あいりん職安はアブレ手当(日雇い労働者の失業手当)を給付するだけ。職業紹介は西成労働福祉センターが行う。紹介と言っても1階寄せ場の巡視が主な仕事だが。他に技能訓練もやっている。あいりん総合センターはそれらの総称。近年は求人数減少や耐震対策に伴う建替え・移転問題が浮上している。尚、アブレ手当は、日雇の雇用保険に加入している労働者が直近2ヶ月間に26日以上就労し、業者から就労の証として白手帳(被保険者証)に印紙を貼って貰い、それをあいりん職安に出せば貰える。貰える金額は日雇の収入に比例する。
参考資料:http://www.city.osaka.lg.jp/nishinari/cmsfiles/contents/0000187/187570/17.pdf
隣の建物とほぼ同じ高さなのに何故片方の2階がもう片方では4階なのか?何故同じ階なのに左側トイレと右側個室の窓の高さが違うのか?何故一部の窓には今も柵が残るのか?違法な建増し建築が横行し、精神障がい者や女郎が逃げ出さない様にする為だ。そんな時代が戦後の売春防止法施行の頃まで続いたのだ。
左上写真の左のビルが違法建築。右のビルとほぼ同じ高さの階なのに、右上は1部屋で左は2部屋の窓になっている。しかも、窓には脱走防止用の網柵が。右も違法建築の例。建物の左側にある3つの窓がトイレの窓。それが右側では窓が3つから6つに増えている。
釜ヶ崎ドヤ街の隣には飛田新地の元遊郭。どちらも迷惑施設として大阪市から当時郊外だった今宮村に強制移転させて出来た。でも行政は立ち退かせるだけで無くそうとはしなかった。労働者を安くこき使い不満を性欲で解消させる装置として必要だったからだ。遊郭から女郎の脱走を防いだ壁の一部が今も残る。
左上は飛田新地の西側にある大門の跡。右上は今も残る女郎脱走防止用の壁の一部。
この後、阪堺線の低いガード(高さわずか1メートル52センチ)をくぐる。この時はもう粉雪が舞いだし、私は急にお腹が痛くなった。トイレの出来るコンビニを探すうちに、見学の人たちとはぐれてしまう。ツアー主催者の釜日労(釜ヶ崎日雇労働組合)に電話して、お迎えの人に来てもらう。お迎えの人の案内で、結核診療所の前で見学の人たちとようやく再合流。今の風邪も、恐らくこの時に引いたのではないかと思われる。
釜ヶ崎の結核罹患率は1997年になっても人口10万人に対し516人で全国平均の28倍。不就学児童も昔は100名以上に上る。まるで途上国並の惨状。その中から労働者や住民の闘いで、結核無料健診などの福祉施策やあいりん労働センター・医療センター、ふるさとの家、こどもの里などの福祉施設が作られて来た。
左から右へ順に、結核診療センター、ふるさとの家、こどもの里。映画「さとに来たらええやん」は、このこどもの里が舞台。
・ふるさとの家 - FrontPage - EMMAUS OSAKA CENTRE
・特定非営利活動法人(NPO法人)こどもの里
・映画『さとにきたらええやん』公式サイト
この後、ココルームに立ち寄ってトイレ休憩。コーヒーをタダでいただいた。
生活権擁護の闘いから新しい雇用・文化の創造へ。特掃から始まった新しい流れは西成アートやココルームとして結実。その一方で、あいりん総合センター移転やインバウンド(訪日観光客)向けホテル建設ラッシュ、在日外国人呼び込みで、昔からの野宿者は逆に追い詰められて行く。それが今の釜ヶ崎。
左上はあいりん地区内に出来た外国人向けの日本語学校。右は南海本線の高架下に描かれた通天閣のアート(逆光で見ずらいですが)。
最後に反省会が持たれ、20名ほどの参加者がぞれぞれ感想を言い合う。私は、「今まで釜ヶ崎と言えば野宿者だけの問題だと思っていたが、外国人もどんどん流入して来る事で、職場の外国人労働の問題とも重ね合わせて、より身近な問題として捉えられるようになった」と感想を述べた。
釜ヶ崎講座で旅館と民泊の違いについて知る。1館5室以上、1室7平米以上の規模で布団提供が旅館の最低基準。だから大隅アパートや民泊には布団がなく、マットレスや貸布団でお茶を濁してたのだ。敷金・保証金不要で即入居可の利便性も、1日でも家賃滞納したら追い出されるリスクと裏腹の関係だったのだ。
気になって昨日フロントの係員に聞いてみた。「1日でも家賃滞納したらすぐに出て行かなければならないのか?」と。そうしたら「××さん(私の本名)はもう数ヶ月の利用実績があるので、1日ぐらいなら待ちますよ」という返事だった。これも裏返せば「たった1日ぐらいしか待って貰えない」と言う事だ
蚕棚みたいな住居に脱走防止の窓の柵…これは昔だけの話か?脱法ハウス火災で焼け出された下流老人、派遣切りでネットカフェ難民となった若者、ブラック企業でも辞められず過労自殺してしまった女性社員、秘密保護法や共謀罪で自由に物も言えない社会。今も目に見えない柵で囲われているじゃないか!
今日の赤旗に無料低額宿泊所の記事が載っていた。それによると、一つの部屋をベニヤ板で区切っただけの三畳一間の空間に生活保護受給者を囲い込み、エアコンもない、弁当は三食付くが揚げ物ばかり。外出するにも許可がいる。それで月9万5千円も家賃を吹っかけ。釜ヶ崎のタコ部屋とどこが違う?
「無料低額宿泊所」規制へ法案/貧困ビジネス止められるか/劣悪環境・生活保護費をピンハネ(赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-01-06/2018010615_01_1.html