アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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日本は司法も政治も中世レベル

2018年05月27日 20時53分53秒 | モリカケも忖度もない公平な社会を

 

 昨夜たまたま観た「逆転人生」というNHKのドキュメンタリー番組に目が釘付けとなり、結局最後まで観てしまいました。この番組は、転落人生の再逆転劇を、実話を基に再現ドラマにして放送しています。昨夜は、7年前に大阪府泉大津市で実際にあったコンビニ強盗冤罪(えんざい)事件を取り上げていました。

 2011年6月の深夜、泉大津のコンビニに、レインコートを着てマスクをした強盗が押し入り、店員ともみ合った末に、レジの中の1万円札をわしづかみにして逃走しました。犯人は逃げる時に、コンビニの自動ドアに右手の指紋を残していきました。その指紋から、近くに住む土井佑輔(どい・ゆうすけ)さんというラップミュージシャンの男性が、2ヶ月後に強盗容疑で泉大津警察署に逮捕されます。

 逮捕当日、警察がいきなり自宅に逮捕令状を持って現れ、家宅捜索を始めます。その時、土井さんは友人と一緒に酒を飲み、友人宅に泊まっていたのですが、朝早くにお母さんからの電話で自宅に戻った所を、いきなり逮捕され警察に連行されてしまいます。

 土井さんは身に覚えがないにも関わらず、警察に100日余りも拘留され、執拗な取り調べを受けます。警察は、コンビニの防犯カメラに映った映像と、店の自動ドアに残された指紋から、土井さんを犯人と決めつけ、「はよ吐かんかい、ボケ!」「お前はほんまに人間のクズやな!」と、密室の取調室で土井さんにずっと暴言を浴びせ続けました。

 しかし、いくら身に覚えが無くても、2ヶ月も前の事を、詳しく覚えていて言える人なんて、普通はいません。幸い、土井さんの場合は、家族が必死の思いでコンビニの防犯カメラを解析する中で、事件5日前に、土井さんが友人とそのコンビニに買い物に来た際に、土井さんの「左手」が自動ドアに触れる映像を、偶然見つけ出す事が出来ました。ドアに残された土井さんの指紋は、犯行とは無関係だったのです。

 その後、土井さんの携帯電話からも、犯行当日は友人と自宅で酒を飲みテレビでサッカー観戦していて、その時に彼女から来たメールに返信した投稿や、友人が自宅で土井さんを撮影した時の写真も、続々と出て来ました。犯行時刻には、土井さん達は自宅で酒を飲んでいて、コンビニには行っていない事が明らかになったのです。

 しかし、警察は執拗でした。「犯行現場のコンビニには、自宅から徒歩3分でたどり着く事が出来る。アリバイとされる写真の撮影時刻と犯行時刻との間には、約15分のズレがある。撮影後に犯行に及ぶ事も十分可能だ。写真の撮影時刻も後でいくらでも改ざん出来る。たとえ写真やメールが出て来ても、それらはアリバイにはならない」と言い張ったのです。

 ところが、そのコンビニの防犯カメラには、犯人が「右手」で自動ドアを掴む姿しか映っていません。犯人は盗んだ1万円札を左手で握りしめていた為に、「右手」でしか自動ドアをつかむ事が出来なかったのです。犯人が掴んだのは「右手」で、土井さんの指紋は「左手」。同じように見えても、実際は別々の指紋でした。そして、その矛盾点に警察も薄々気付き始めていました。だから、途中からは、自動ドアをつかんだ日時を再び土井さんに何度も尋問するようになったのです。最初は、日時の特定もろくにせず、有無をいわさず「お前がやったのだろう!」と決めつけていたにも関わらず。

 だが、警察は、途中でその矛盾点に気付いても、それを自分から認める事はしませんでした。しかし、この矛盾点を家族や弁護士が突き崩す事で、勾留100日後になって、ようやく無罪判決を勝ち取る事が出来たのです。しかし、せっかく無罪判決を勝ち取っても、警察からは謝罪も賠償もありませんでした。見舞金の形でいくばくかの金が振り込まれただけでした。そこで土井さんは、国と大阪府を相手取って国家賠償請求訴訟を起こしますが、二審とも敗訴してしまいます。捜査が違法でさえなければ、どんなに警察に落ち度があっても、警察が敗訴する事はまず無いのです。

 表向きは三権分立の法治国家で、一見公平に思える日本の司法制度も、根っ子の所では裁判所も警察もグルなのです。その証拠に、警察が裁判所に逮捕状請求したら、逮捕状はほぼ100%発行されます。そして、いくら冤罪を主張しても、99%起訴され、裁判でも9割以上が有罪と認定されてしまいます。その結果、数々の冤罪事件が生まれる事になります。酷い場合は、再審請求中に死刑が執行され、死後になって別の真犯人が浮かび上がる例も後を絶ちません。よく刑事ドラマなどで、逮捕状を水戸黄門の印籠のように掲げて逮捕を執行する場面がありますが、そんな八百長まがいの逮捕状なぞ、いくら見せびらかされても何の価値もないという事です。

 実は、警察の取り調べに弁護士が立ち会えないのも、先進国の中では日本だけなのだそうです。外国からは「日本の刑事司法はいまだに中世さながらの状態に置かれている」と批判されています。ドラマの中で、土井さんの母親が「今までよく知らないまま、日本に生まれて幸せだと思っていたけど、それがいかに浅はかな考えだったか、今回の件で思い知らされた」と述懐する場面がありますが、私もその通りだと思います。

 その中では、冤罪被害者が無実を証明するには、黙秘権を行使するしかありません。番組の中で、「警察に洗いざらい真実を話したら警察は直ぐに釈放してくれる」と、家族が土井さんを励ます場面が最初に出て来ますが、いくらこちらがそんな殊勝な心掛けでいても、警察は自分の都合の良いように捜査をでっち上げるだけです。そんな中で、中途半端に喋って、でっち上げに利用されるぐらいなら、むしろ黙秘を貫いて、弁護活動の時間を稼ぐ方がはるかに良いのです。

 ところで、たまたま観たこのドラマに、私が何故ここまで見入ってしまったのか?それは、私もこの泉大津警察署に、お世話になった事があるからです。但し、お世話になったと言っても、別に逮捕された訳ではありません。警察に届けられた自分の落とし物(会社の入門証)を取りに行っただけです。入口横の会計課で入門証を受け取り、受領書にサインして直ぐに退出したので、警察内部の様子なぞ伺い知る由もありませんでした。しかし、その警察署の中で、実際にこんな取り調べが行われていたとは、その当時は想像もしませんでした…。

 また、私の実家の近所でも、一人住まいの老人宅に強盗が入られた事がありました。まだ私が実家に住んでいた時の事です。強盗に入られたお宅は、実家から100メートルほどしか離れていません。すぐそばには24時間営業のコンビニもありますが、被害者宅はそこから更に角を曲がった奥まった所にあり、夜間には人通りも絶えるので、コンビニの従業員も気が付かなかったのでしょう。

 この時も、もし私が強盗事件の前日に、この被害者宅の横をたまたま通りかかり、庭の桜を見ようとして、塀に自分の指紋を残していたら、私も強盗容疑者として地元の警察に逮捕されていたかも知れないのです。そう思うと、とても他人事とは思えなくなりました。

 先日も、森友学園を経営していた籠池元理事長夫妻が、大阪拘置所を保釈されました。学園への国有地叩き売りの本筋疑惑や、問題大ありの学園に私学認可を行った大阪府の責任をウヤムヤにして、別件の補助金詐取容疑だけで、逃亡や証拠隠滅の恐れもないのに、口封じの為に夫妻を逮捕し、100日以上も不当に拘留した末に、ようやく保釈が認められたのです。正に「国策拘留」そのものです。このように、「日本国家の闇」は、私達の直ぐ身近な所に、ポッカリ口を開けて潜んでいます。公文書も平気で改ざんするような国なのですから。その事を、このドラマで改めて思い知らされました。

 もし、日本が本当に法治国家、民主国家として出直したいのなら、国民に政治家への信頼を取り戻してもらえるように、政治家の方から先にアクションを起こすのが筋です。それが政治家としての最低限の責任です。それもせずに、一方的に国民にばかり「政府を信頼しろ」「国の言う事を聞け」「政治不信をあおるな」と言うのは、筋違いです。

 尚、現在、土井佑輔さんは、MIC SUN LIFE(MSL)のリーダー「SUN-DYU」として活動しています。音楽を通し「冤罪撲滅イベント」などを開催しておられるそうです。(上記写真参照)
 http://hotnewsmilk.com/doiyuusuke-gennzai#SUN-DYUwiki

コメント (1)
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