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以前、所用で大阪市住之江区の地下鉄四ツ橋線北加賀屋駅付近を歩いていると、倉庫に見事な装飾が施されているのに気が付きました。その時は別に気にも止めませんでしたが、後で調べたら、アートで町おこしをしようという試みである事が分かりました。
北加賀屋は木津川沿いにある名村造船所を中心に発展した街でした。しかし、その後の産業構造の変化によって、造船所も撤退してしまい、街は寂れてしまいました。
それが、21世紀に入り、名村造船所の遺構が近代化産業遺産に認定されたのを機に、アートで町おこしを図ろうという機運が盛り上がりました。それを機に、倉庫や工場の壁にウォールアートが施され、空き家も改装されて、次第にアーティストが集まるようになりました。
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この地域には、他にも装飾が施された場所が一杯あります。例えば、この人々が手を繋いだ形のウォールアートも、名村造船所の跡地に出来たクリエイティブセンター大阪(CCO)の壁に施されたものです。
このCCOやMASK(MEGA ART STRAGE KITAKAGAYAの略で、アート作品の貯蔵庫)では、今年も10月から先週11月14日まで、芸術作品の展示などが行われていたようです。但し、造船所の跡地に進出し、今も操業中の工場敷地内にあるので、イベントのない日は関係者以外は中には入れません。
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この近くにある3軒並びの文化住宅(白馬荘、乗鞍荘、穂高荘)も、昔は名村造船所の従業員寮でした。この文化住宅には今も人が住んでいます。この住宅の家賃が初期費用なしで月1万8千円余りと超格安なのも、企業福祉の名残りなのかも知れません。長崎県の軍艦島アパートも昔はこんな感じだったのでしょうか?
でも、残念ながら、町おこしのイベントの恩恵が、この文化住宅に住んでいる人にも及んでいるとは、とても感じられませんでした。装飾が施された工場や倉庫も、普通に営業はしているのですが、とても賑わっているようには見えませんでした。
私がそれまで住んでいた西成のあいりん地区でも、アートで町おこしをしていました。南海電鉄の高架下にも、そのようなウォールアートが施された場所があります。でも、それを見て喜んでいるのは、外から来た観光客だけでした。観光ブームに湧いていたのも、新今宮駅前を走るあびこ筋沿いのホテル街だけで、ホームレスや日雇い労働者の人達は、それを冷ややかに眺めていただけでした。
ウォールアートが無駄だとは言いません。しかし、それだけでは、地域の活性化は無理だと思います。アーティストの人達だけでなく、文化住宅に住むお年寄りや、工場勤務の人達も、楽しめて明日も頑張ろうという気になる、そして実際に給料も上がる、そんな取り組みこそが求められているのではないでしょうか。
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ところで、最初に紹介した倉庫のウォールアートですが、一体何と書いているか分かるでしょうか?英国のベン・アイルというアーティストの方の作品ですが、全てアルファベットの大文字で書かれている上に、ピリオドも省略されているので、文章の切れ目が分からず、読み解くのに一苦労します。
SUCHAPERF ECTDAYIMG
LADISPENT ITWITHYOU…と書かれています。これをまず文節ごとに区分けしなければなりません。
私も色々調べた結果、半日がかりでようやく正解にたどり着きました。私の解読結果は後ほど公開しますが、皆さんも一度解読に挑戦されてはいかがでしょうか?はっきり言って、超難問です。(ヒント:別の歌手が歌っていた歌詞の一節です)
SUCHAPERF
ECTDAYIMG
LADISPENT
ITWITHYOU
↓
Oh it’s such a perfect day
ああ、なんて最高の日だ
I’m glad I spent it with you
きみと過ごせて嬉しい
https://hrecords.jp/entry/perfect_day/
https://search.yahoo.co.jp/amp/s/hrecords.jp/entry/perfect_day/%3Famp%3D1%26usqp%3Dmq331AQIKAGwASCAAgM%253D
IMGLADが実はI'm glad。これは難しいw。英国の歌手連中ならアートの意味を理解できるかも知れませんが、北加賀屋の住民にこれを理解せよと言う方が無理です。
私も、たまたま自転車で南津守のネットカフェに行く途中で、あの倉庫のアートを見つけ、何だろうと思って調べ始めて、やっと北加賀屋クリエイティブビレッジ構想(この町おこしの取り組み)にたどり着く事が出来ました。
おそらく、この取り組みで盛り上がっているのは、北加賀屋に移り住んで来た100名ほどのアーティストだけで、それ以外の地域住民や工場勤務の人達は、全く何も知らないのではないでしょうか。実際にそこで働く人達にとっては、ただの落書きにしか見えないと思います。
これはいささか不謹慎な例えですが、広島の原爆ドームと比較すればよく分かると思います。広島市民で原爆ドームを知らない人はほぼいません。ほとんどの人は原爆ドームの出来た理由も知っているし、核廃絶の想いも共有出来ます。
北加賀屋のウォールアートも、広島の原爆ドームと同じぐらい認知度があり、市民の間で共通認識も持てて、初めて観光資源や町おこしの宣伝材料になると思います。しかし、今のままでは、肝心の地域住民からの応援もなく、単なる芸術家仲間の自己満足だけで終わると思います。
過疎地域にありながら、若い人達が転入し、人口が増えている自治体が幾つかあります。そんな自治体に共通しているのは、行政が公営住宅の家賃を補助したり、農業塾や林業塾を開講したりして、地域の基幹産業である一次産業の後継者を育てようとしている点です。
翻って北加賀屋はどうか?造船業に代わる新たな基幹産業を育てようともせず、徒にアーティストだけを呼び込もうとしているだけではないですか。西成あいりん地区も、労働環境や住宅環境の改善を後回しにして、徒らに観光客を呼び込もうとしているだけではないですか。
確かに、アーティストや観光客を呼び込むのも決して悪い事ではありません。それがきっかけで、生活環境が改善されたり、町が活性化されたりしますから。
でも、肝心の産業振興や後継者育成を蔑ろにしたまま、目先だけ変えて、アーティストや観光客集めに走るだけでは、住民同士の交流なんて絶対に生まれません。アーティストはアーティスト同士、旧住民は旧住民同士で固まって、互いに交流もないまま、地域内で分断や対立が更に激しくなるだけです。
現に、西成のあいりん地区がそうなりつつあるじゃないですか。かつてのドヤ街が、観光客向けのホテルとオンボロの福祉アパートにニ極分化し、互いに交流もないまま、地域内の格差が逆にどんどん広がっているではないですか。
これからはアートや観光業を地域の基幹産業として育成していくつもりなら、それでも良いでしょう。しかし、単なる落書き防止やゴミのポイ捨て防止の為だけに、アートで街を活性化しよう、観光客で賑わいを取り戻そうとするだけなら、一時しのぎにしかならないでしょう。