私の会社の休憩室にあるコーヒー自販機で、今までコーヒー抽出トラブルが続いていました。お金を投入して紙カップのコーヒーを買っても、まともにコーヒーが出て来ないのです。
私も始業前に、このコーヒー自販機でよくコーヒーを買って飲んでいたのですが、先日も、ドトールレギュラーコーヒー(ホット)(100円)を買っても白い濁った液しか出て来なかったので、仕方なく隣の香仕立ディープマスター(90円)を選び直してお金を投入したら、これも同じような液しか出て来ませんでした。両方で190円も損した事になります。
もう私は怒り心頭で、自販機に備え付けの返金カードに「不買運動を起こしてやる!」と苦情を書いて投函してやりました。だって、そうでしょう。この不良品のコーヒーの中身を捨てに紙カップを持ってトイレまで往復した後、返金カードに苦情を書き終えた時には、もう始業時間が迫っており、私はコーヒーも飲まずに現場に降りなければならなかったのですから。
その後、仕事を終えて自宅に帰った後も、この自販機トラブルの事が気になり、自販機メーカーのジャパンビバレッジの事をネットで調べる中で、同社のブラック企業ぶりを知る事になりました。
マスコミ報道によると、この自販機のメンテナンスを行なっているジャパン・ビバレッジでは、「みなし労働時間制度」を悪用した残業代未払いが横行しています。この制度の下では、幾ら働いても7時間45分以上しか働いていなかったとみなされ(制度の名前もここから来ている)、賃金は支払われない仕組みになっています。しかし、現実には、そんな時間には業務は終わらず、毎日数時間以上ものサービス残業が強要されているのです。
しかも、同社の場合は、外回りで自販機のメンテナンス業務を行う営業社員は、携帯電話で会社と頻繁に連絡を取り合う事になっており、会社は通話内容を元に幾らでも社員の労働時間を把握する事が出来ます。外回りの営業社員の労働時間把握が難しいから、やむを得ず「みなし労働時間制度」を適用したという、会社の言い分そのものが成り立たないのです。
そこで、同社の営業社員が「ブラック企業ユニオン」という労働組合に入り、会社に未払い残業代の請求を行ったら、会社は何と、表向き和解するふりをして、残業代支払いに応じるかのようなポーズを取りながら、実際は僅かばかりのお金しか払わず、逆に労働組合員を解雇しようとしているそうです。その為、組合がストライキに突入し、自販機メンテナンス業務のボイコットや、法律通りの休憩時間を確保しマニュアル通りに業務を遂行する事で過密労働を拒否する「順法闘争」を行なう事になりました。そのせいで、東京駅にある同社の自販機では品切れが続出しているそうです。
今、安倍政権は「働き方改革」と称して、労働時間の規制そのものを取っ払おうとしています。「過労死を防止する」という名目で、「働き方を労働者の自主性にゆだねる」「労働時間規制に違反した企業への(形ばかりの)罰則を設ける代わりに、もっとバリバリ働きたい労働者には、8時間労働の規制を取っ払い、幾らでも働けるようにする」という「逆立ちした理屈」をこね回し、「働き方改革」関連法案を、連休明けに国会に提出して、強行採決で通してしまおうとしています。本来なら、労働時間を規制する事でしか、過労死を防止する事が出来ないはずなのに。そもそも、何故、タイムカードで勤務時間を拘束された労働者が、「自分の裁量=責任で」働き方を見直さなければならないのか?「働き方改革」しなければならないのは、「労働者」ではなく「会社」の方ではないか!
その後、法案の根拠とされる労働時間データの捏造(ねつぞう)が明らかになり、安倍政権は裁量労働制の適用拡大については撤回を余儀なくされましたが、それを年収1075万円以上の労働者に限り適用する「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」については、そのまま法案に盛り込み実施しようと画策しています。決して法案提出を諦めてはいません。しかし、年収制限なんて後で幾らでも引き下げる事が出来ます。それに、裁量労働制なら裁量を超えた分については残業代が支払われますが、「高プロ」では労働時間規制そのものが無くなるので、残業代は一切支払われなくなります。「高プロ」が「定額働かせ放題」と皮肉られる理由も、そこにあります。そういう意味では、「高プロ」の方が裁量労働制の適用拡大よりも更に悪質なのです。
もし、そんな事になれば、このジャパンビバレッジの「みなし労働時間制度」も、国から労働時間規制緩和のお墨付きを与えられた事になり、もっと更に多くの企業で採用される事になってしまうでしょう。私たちにとっても、このジャパンビバレッジの事態は、決して他人事では済まされないのです。
うちの会社の休憩室にある自販機で、ずっとトラブルが放置されていたのは、そのストライキの影響もあるかと思われます。順法闘争やストライキは労働者の正当な権利行使です。ましてや、相手がそんなブラック企業では、自販機のメンテナンスが行われなくなったのも、企業側の不当労働行為によるもので、いわば自業自得と言えるでしょう。
是非、下記のネット署名で、ジャパンビバレッジの労働者を応援して下さい!私もこの労働者の順法闘争を応援し、返金カードの内容も苦情から応援に書き換える事にします。
左上の写真が一番最初の怒り心頭モードの返金カード。右上の写真は、その後、返金カードを書き直した際に、カード裏面に書き添えた文章。
キャンペーン · ジャパンビバレッジは組合員に対する不当な懲戒処分をやめてください!#東京駅売り切れアクション実施中 · Change.org
https://www.change.org/p/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%93%E3%83%90%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B8%E3%81%AF%E7%B5%84%E5%90%88%E5%93%A1%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E4%B8%8D%E5%BD%93%E3%81%AA%E6%87%B2%E6%88%92%E5%87%A6%E5%88%86%E3%82%92%E3%82%84%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%A7%85%E5%A3%B2%E3%82%8A%E5%88%87%E3%82%8C%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E5%AE%9F%E6%96%BD%E4%B8%AD
(以下、上記リンクの呼びかけ文より転載)
私たちブラック企業ユニオンは、サントリーグループの自販機運営会社大手・ジャパンビバレッジ東京、ジャパンビバレッジホールディングスと団体交渉を行っています。交渉の詳しい経緯についてはこちらの記事をご参照ください。
ジャパンビバレッジで飲料の補充などを行うAさんは、長時間労働に悩まされていました。昨年6月の時間外労働は約110時間と、厚生労働省が定める「過労死ライン」を大きく超えています。また、事業場外みなし労働時間制を適用し、飲料の補充や集金の業務はどれだけ時間がかかっても1日7時間45分の労働だとみなされていたため、多額の未払い残業代が発生していました(みなし労働時間制の適用要件を満たしていなかったため)。昨年12月、労働基準監督署は同社の事業場外みなし労働時間制を無効と判断し、労働基準法32条違反の是正勧告を出しています。
Aさんは休憩もほとんど取れない状態での長時間労働によって体調を崩し、病院で点滴を打つまでに追い込まれました。そんななかで、会社の働き方を変えようと決意したAさんは、ブラック企業ユニオンに加入して会社に団体交渉を申し入れました。
団体交渉では、事業場外みなし労働時間制の違法性を追及し、その結果として、この制度を今年1月から撤廃させることができました。また、これによってジャパンビバレッジは、未払い残業代の一部を支払うことになりました。
しかし、会社は、正当に声をあげた組合員を不当に攻撃してきています。先日、ジャパンビバレッジに勤める組合員のAさんは、「組合活動」を理由に突然の出社停止命令を受けました。支店長は、組合員のAさんや組合役員に対し、組合活動(抗議行動)を理由に出社停止処分を行ったと説明しています。正当な組合活動を理由とした従業員への不利益取り扱いは、労働組合法第7条が禁じる典型的な不当労働行為です。
これは、ブラック企業による労働組合潰しです。組合の要求は、「過労死ライン」以上の長時間労働が横行していた状態を改善し、残業代の支払いや長時間労働の削減により「普通の働き方」を取り戻すことです。「普通の働き方」を要求した結果、声をあげた組合員が出社停止という措置を受けるのは、あまりにも不当ではないでしょうか?
組合はジャパンビバレッジに抗議するとともに、労働委員会に不当労働行為救済申し立てをして、不当な懲戒処分を中止するよう求めています。現在、出社停止の措置は解かれましたが、組合員に対する懲戒手続きは依然として進行中です。このままでは、組合員が不当な懲戒処分を受けてしまうかもしれません。
勇気を出してブラック企業に声をあげた労働者が会社からの攻撃にさらされるという事態がまかり通ってしまえば、日本社会の長時間労働を改善することはできなくなってしまいます。
ジャパンビバレッジの不当な懲戒処分をやめさせるため、皆様ご協力をお願いします!
追記:「順法闘争」をご支援ください!
ジャパンビバレッジに勤めるブラック企業ユニオンの組合員は現在、会社のマニュアルに従って業務を行い、法定通り1時間の休憩を取り、残業せずに勤務を終える「順法闘争」という運動を行っています。普段の過密な業務では清掃や保守点検などを十分に行えず、休憩もほとんど取れていません。順法闘争は、こうした過密な業務を拒否し、「普通の働き方」を行う運動です。
ジャパンビバレッジ東京駅支店では、順法闘争の初日に多数の商品売り切れが発生し、大きな反響を呼びました(東京駅の自販機で「売り切れ」続々発生も「頑張れ!」「もっとやれ」の声 背景にサントリーグループの残業代未払い問題)。「普通の働き方」の結果として大量の売り切れが発生してしまうということは、普段の自販機の補充はブラックな労働環境に支えられているということです。
「普通の働き方」を実践する「順法闘争」について、皆様のご理解・ご支援をお願いします!