以上、「ぼうごなすこ」さんの漫画「百日で崩壊する政権」より。
6月18日の夕方、仕事から帰って来てテレビを点けたら、安倍総理が記者会見をしていました。記者会見の内容は、「緊急事態宣言を解除して、今後は都道府県をまたいだ人の移動も規制しない」という内容でした。
私は「わざわざ記者会見を開いて言わなければならない内容なのか?」非常に疑問に思いました。何故なら、安倍総理は、前回5月25日の記者会見で、新型コロナ感染症の緊急事態宣言を解除した際にも、同じ様な事を言っていたからです。前回との違いは、それに「今後は都道府県をまたいだ人の移動も規制しない」が付け加わっただけでした。それだけなら、別にわざわざ記者会見なぞ開かなくても、総理談話だけで十分です。
しかも、前回は記者会見の中継放送を流していたのはNHKだけでしたが、今回はそれに加え、朝日・フジ(関西テレビ)・読売と、民放各社も一斉に流していました。前回と同じ様な内容を、わざわざテロップまで付けて。私は呆れて直ぐにテレビを消しました。
私は直ぐにテレビを消したから、記者会見の内容については、後で首相官邸のホームページで確認する他ありません。それで、先程ホームページで確認したら、肝心のコロナ対策そっちのけに、河井夫妻の逮捕や憲法改正、北朝鮮拉致問題、イージス・アショア配備停止、総裁任期延長など、コロナ対策以外の事で質疑応答の大半を費やしていました。
これでは一体何の為の記者会見か分かりません。1時間の放送時間の中で、総理の冒頭発言だけに20分余りも費やし、残りの40分で8人の記者の質問に総理が答えるだけです。一つの質疑応答に割ける時間は精々5分程度です。しかも、再質問する時間的余裕もありません。台本に書かれた当たり障りのない質問に総理が答えるだけ。これではまるで総理の独演会です。北朝鮮あたりの国営放送と何ら変わりません。
何でわざわざ、こんな記者会見を開いたのか?その直前に、自民党参院議員の河井案理と、その夫で元法務大臣の河井克行が、公職選挙法違反容疑で逮捕されたので、その矛先逸らしに開いたとしか思えません。記者会見では河井夫妻逮捕に関する質問も出ましたが、「買収は無かったのか?」という質問に対し、「買収なぞしていません。これ以上の事は捜査中の個別案件に関する事なので答えられません。いずれにしても、今後は襟を正して行こうと思っています」と答えて、それで終わりです。これでは「出来レース」と言われても仕方ありません。
では、河井夫妻の公職選挙法違反容疑とは、どんな内容だったのか?昨年2019年の参院選で、定数2の広島選挙区に、自民党が現職と新人の2人も候補者を立て、新人に現職の10倍以上もの選挙資金を渡し、ウグイス嬢一人に法定上限である1万5千円の倍の3万円も日当を支払ったという事で、参院議員の河井案理が逮捕されたのが始まりです。そして、夫で元法務大臣の河井克行も、地方議員に選挙資金をばらまいた買収容疑で逮捕されました。
元々、この選挙区には、自民党現職の溝手顕正がいました。この溝手という人は、自民党ですが安倍総理の事を余り良く思っていなかった様で、陰では何かと安倍総理の事を批判していました。但し、安倍批判と言っても所詮は同じ自民党。「俺とコイツとは馬が合わない」程度の批判だった様です。
安倍総理もそれを快く思っていなかった様です。昨年の参院選で、定数2の広島選挙区に、現職の溝手氏とは別に、新人の河井案理も擁立すると、総理がいきなり言い出したのです。表向きの狙いは自民党の議席独占ですが、実際は馬の合わない溝手を追い落とす為に、わざわざ河井を擁立したのです。そして、河井は新人だからという事で、溝手のざっと10倍以上にもなる1億5千万円もの選挙資金を渡しました。そして、安倍内閣の閣僚にも「溝手の応援はするな」と指示していた様です。
参院広島選挙区の与党(自民+公明)の基礎票はざっと50万票。それに対し野党は、民主系(立憲+国民)30万、維新15万、共産8万票。全野党では53万票で与党を3万票上回ります。2019年は維新が不出馬以外は、ほぼ前回(参院は3年毎に半数ずつ改選なので2013年)と同じ対立構図でした。確かに政党第一党の自民党は強いですが、断トツという程でもありません。常識で考えたら、こんな所に2人も擁立したら2人とも共倒れしてしまいます。上手く票を割ったとしても、精々1人当選させるのが精一杯です。
(得票概数比較データ)
2013年参院選 広島選挙区(改選2)
当 溝手顕正 自民・現 52万1千
当 森本真治 民主・新 19万4千
灰岡香奈 維新・新 17万3千
佐藤公治 生活・現 13万7千
皆川恵史 共産・新 8万6千
*民主系(民主+生活)計33万1千
2019年参院選 広島選挙区(改選2)
当 森本真治 無所属・現32万9千
当 河井案理 自民・新 29万5千
溝手顕正 自民・現 27万
高見篤巳 共産・新 7万
加藤輝美 諸派・新 2万6千
玉田憲勲 無所属・新 1万5千
泉 安政 諸派・新 1万2千
*森本氏は元々、国民民主党の出身だが、この時は旧民主党(民進党)系の統一候補として、立憲民主党や社民党の推薦も得て無所属で出馬。
*2019年は維新が候補者を立てていないので、自民党の得票は2013年より伸びているが、それでも2人合わせても56万票余。2人当選なぞ無理だと分かった上で、安倍は、溝手氏を落とす為に、河井案理をわざわざ立候補させたのだ。
その定数2の選挙区に、同じ自民党から候補者を2人も立てて、一方の76歳男性現職候補には規定通り1500万の選挙資金を、しかし、もう1人の45歳新人女性候補には、その10倍もの破格の1億5千万もの選挙資金を与えて、閣僚には陰で「現職の応援なぞするな」と言いくるめ、地元の地方議員に「今回は新人の女性候補の方を宜しく」と金を配ったのです。
結果は案の定、野党系の無所属候補が32万票でトップ当選し、自民党新人女性候補の河井案理が29万票で2位当選。自民党現職候補の溝手は27万票しか取れずに3位で落選。これでは、反自民の私ですら、溝手に同情してしまいます。
何と陰険な事をするのでしょう。どんなに馬が合わなかったとしても、同じ自民党の仲間ですよ。しかも現職候補。普通なら、その現職候補の仕事ぶりを評価して、その人を応援するのが筋でしょう。逆に、仕事ぶりが評価出来ないなら、別の候補にさっさと交代させて、堂々と戦えば良いのです。それを交代もさせず、2人とも応援する振りしながら、気に入らない方の1人を後ろから鉄砲で撃つとは。小・中学生のイジメじゃあるまいし。これが総理大臣のやる事か?!
もし、会社で上司が部下にこんな仕打ちをしたら一体どうなりますか?部下は、ひたすら上司の顔色ばかり伺う事になります。上司がとんでもない方針を打ち出したとしても、それを諫める人は誰もいなくなります。そんな会社では、社内は社員同士の足の引っ張り合いで目も当てられなくなります。業績も下降し、退職者続出で、最後には顧客にも見放され、やがて倒産してしまいます。
安倍のやっている事は、つまりそういう事なのです。森友・加計問題も、「桜を見る会」疑惑も、検察庁法改正問題も、皆根っ子は同じです。最近、安倍が盛んに記者会見を開いているのも、それを誤魔化す為に他なりません。だから、記者会見も台本の棒読みで、記者も台本通りの質問しかしない。安倍政権からにらまれるのが怖いから。悪いのは勿論、河井夫妻ですが、そんな人物を候補者や法務大臣にしたのは一体誰なのか?安倍総理に他なりません。
それが、ここに来て流れが変わり始めました。今まではマスコミを手なずけ、上手く誤魔化す事が出来ました。マスコミが通り一遍の追及しかしないから。でも、元々「総理の器」ではなかった為に、新型コロナ感染症対策の不手際で、たちまちボロをさらけ出し始めました。安倍が、この非常時においても、国民の命と暮らしを守る事なぞ二の次で、ひたすら私腹を肥やす事しか考えていない事が、これですっかりバレてしまいました。検察庁法改正問題で、それまで政治とは縁がなかった芸能人までが、一斉に抗議の声を上げ始めたのも、安倍政権のやり口が、余りにもエゲツないし、大人げないからです。
いつまでも、こんな国であって良いはずはありません。コロナ感染症対策で国民に団結を呼びかけるなら、尚更、誇りを持てる様な国にしなければなりません。もう、これ以上、ヤラセの記者会見を見せつけられるのは沢山です。