2月23日に書いた志葉玲ガザ緊急報告会のエントリー記事に対して、「zames_maki」という方から、次の様な質問が寄せられました。
(1)パレスチナ問題は今後どのように推移するのか、イスラエルの行き着くゴールは何か?
(2)それに対してパレスチナ問題は本当はどのように解決される「べき」なのか?
(3)今、アメリカはどういう方向に進んでいるのか?強い影響力を持ち調停役であるアメリカはどういう存在なのか?
(4)その時日本はどのような動きをとるべきなのか?
これらの一見何の変哲も無い質問に対して、私はずっと返答に迷っていました。何故ならば、これらの質問は、一見何の変哲も無い様に見えて、実は私のこれまでのパレスチナ問題の捉え方や、当ブログの従来のスタンスにまで、根本的な転換を迫るものだったからです。
これらの質問は、いずれも「パレスチナ問題のあるべき解決とは何か?」を問うものです。それに対して、今まで私はと言うと、次の様な「模範解答」しか、持ち合わせていませんでした。「イスラエル人とパレスチナ人が、共に対等・平等な存在として、相手の人権を認め合い、平和共存を図る事」と。つまり、「いい加減仲直りせーや」と。
曰く、「イスラエル人もパレスチナ人も共に、第一次大戦当時の英国の二枚舌外交の犠牲者なんだから、いい加減反目するのはもう止めたら」「シオニスト右派もイスラム原理主義者も、徒に排外主義を煽って相手を攻撃するのは止めろ」「報復の連鎖を断ち切れ」と。まるで、「帝国主義に利用されるな」と、アフリカ・ルワンダの部族対立を諌めるかの様に。
斯様な「平和共存路線」の見地に止まっている限り、「zames_maki」さんの質問に「模範解答」で答えるのも、そう難しい事ではありません。次の様にでも答えておけば、それで良いのですから。
(1)の答え:折角のオスロ合意も、リクードとハマスの所為で全てぶち壊しだ。もう為る様にしか為らない。
(2)の答え:差別しないで、みんな仲良く。
(3)の答え:あくまで表向きは中立の立場で調停。(本音ではユダヤ・ロビーの影響もあってイスラエルに加担しつつ)
(4)の答え:右派は人道復興支援やらPKOやら国益擁護の名目で自衛隊派遣を、左派は護憲平和主義の立場で「仲直り」を主張。両者とも、あくまで表向きは中立の立場で調停者として。
先日の志葉さんの講演内容は、2001年911テロとアフガン戦争を機に立ち上げ、「テロにも報復戦争にも反対」を言い始めた私のブログ(当時はサイト・掲示板)の、上記の「無自覚の欺瞞」とも言うべき部分に対して、カウンターパンチを浴びせかけるに、充分なものでした。
幾ら、共に英国の二枚舌外交によって生み出されたとは言えども、片や、ロスチャイルドなどの金融資本をバックに、西側諸国や国連を味方につけ、「ナチスの仇をアラブで討つ」と言わんばかりに、パレスチナの地に乗り込んできたイスラエル人と、もう片や、ナチスとは何の関係も無いのに、一方的に民族自決権や生存権を蹂躙され、戦後ずっと難民として放置されてきたパレチナ人が、同等な犠牲者である筈がないだろう!と。
上記の立場に立つと、「zames_maki」さんの質問に対する答えも、次の様に訂正せざるを得なくなりました。
(1)の答え:イスラエルの、パレスチナに対する一方的な占領や人権抑圧が廃絶されない限り、どんな和平も共存もあり得ない。しかし、イスラエルは、今やそれとは全く正反対の、軍国主義化と自滅への道に、更に突き進みつつある。
(2)の答え:「イスラエル人とパレスチナ人が、共に対等・平等な存在として、相手の人権を認め合い、平和共存を図る事」でしか、根本的解決の道は無い。しかし、その為には、イスラエルの全占領地・入植地からの撤退と、パレスチナ難民に対する帰還権・賠償権の承認は、避けては通れない課題だ。
(3)の答え:まずは、イスラエルの全占領地・入植地からの撤退が、和平開始の前提条件でなければならない。それには、イスラエル国民や海外ユダヤ人の意識変革(排外主義・選民思想の克服)が必要。しかし、米国にはそうする意志も力も無い。今は米国は、只のイスラエルの後見人でしかない。
(4)の答え:日本は、先進国の中では、中東を植民地支配した事の無い唯一の国である。加えて、日露戦争以来の親日感情や、平和国家・経済大国としてのイメージもある。だから、ODAに基づく経済援助以外にも、本当はもっと色んな事が出来る筈。また、米国やイスラエルに対しても、彼の国々の暴走を止める事も充分可能な筈。それが真の国際貢献であり、また、同盟国としての「あるべき姿」ではないのか。然しながら、現実には単なる「米帝ネオコンのポチ」として、アフガン・イラク戦争、イラン攻撃、ソマリア派兵にも唯々諾々と従っている。このままでは早晩、「全中東人民の敵」として、米国と共に放逐されてしまう運命にある。
そして、日本の市民運動の「あるべき動き」としては、以下の方向性が考えられるのではないかと。
(1)米国ネオコンとイスラエルのシオニストに対しては、ボイコットを初めとした、あらゆる圧力を駆使する事によって、不断に政策変更を迫るべき。
(2)イスラエル国内で、シオニスト排外主義との困難な闘いを強いられている国内パレスチナ人や反戦運動に対して、連帯・支援すべき。
(3)ガザ・パレスチナ人民のイスラエル抵抗闘争については、物心両面で支援し、国際的にも支援を呼びかけるべき(但し、自爆攻撃などの評価については保留)。これは、ハマスであろうとPLOであろうと、党派を問わず。
最後に、ハマスの自爆攻撃について。勿論、私はハマスのこの様な戦術は、今でも支持しません。若し、この様な立場まで肯定してしまうと、それはブッシュの「悪の枢軸」論を、反対側から補強してしまうという、陥穽に陥ってしまうからです。
イスラエル国内にはシオニストだけでなく、反戦活動家や、イスラエル国籍のパレスチナ人も居住し、シオニストと闘っているのですから。そういう人たちまで何故自爆攻撃に晒されなければならないのか。
また、これは、他の問題と置き換えて考えてみても、分かるかと思います。例えば、ヒロシマ・ナガサキや北朝鮮問題に。日帝のアジア侵略があったからといって、原爆投下や北朝鮮拉致まで免罪されるのか。
しかし、だからといって、「どっちもどっち」の立場にも組はしません。米帝を後ろ盾にしたイスラエルの不法占領・パレスチナ人民の自決権蹂躙さえなければ、ハマスのテロも起こりようがなかったのですから。また、日帝のアジア侵略さえなければ、原爆投下も南北朝鮮分断もなかったのですから。
ハマスが、それまでのPLO各派(ファタハ・PFLPなど)に代わって、パレスチナ解放の主導権を握るようになったのは、裏を返せば、これらの世俗左派が、限界を抱えていたからではないでしょうか。創立当初のパレスチナ解放の大義から次第に遊離し、党派闘争に明け暮れたり、官僚主義に染まったり、周辺アラブ諸国や旧ソ連に従属して自主性を失っていた面も、あったからではないでしょうか。
その中で、幾ら「机上の和平」が一進一退や空回りを繰り返した所で、占領と経済封鎖は愈々強まり、生活困窮度は増すばかり。その結果、パレスチナの民衆は、次第にPLOからハマスを支持するようになった、それだけの事です。
故に、ハマスの戦術や政治的立場を、全て無条件に肯定はしません。しかし、イスラエルの不法占領に対して、ハマスが人民の利害を代弁する限り、その一点については、ハマスを支持します。これは、ハマスであろうとPLOであろうと同じです。
※記事冒頭の画像は、ガザのアブデルワーヘド教授から送られてきた写真からの出典。
※参考までに、旧掲示板過去ログの、2006年レバノン侵攻当時の議論も。この時も、よく似た議論をしていたんだなあと、今になって思い出しました。
(1)パレスチナ問題は今後どのように推移するのか、イスラエルの行き着くゴールは何か?
(2)それに対してパレスチナ問題は本当はどのように解決される「べき」なのか?
(3)今、アメリカはどういう方向に進んでいるのか?強い影響力を持ち調停役であるアメリカはどういう存在なのか?
(4)その時日本はどのような動きをとるべきなのか?
これらの一見何の変哲も無い質問に対して、私はずっと返答に迷っていました。何故ならば、これらの質問は、一見何の変哲も無い様に見えて、実は私のこれまでのパレスチナ問題の捉え方や、当ブログの従来のスタンスにまで、根本的な転換を迫るものだったからです。
これらの質問は、いずれも「パレスチナ問題のあるべき解決とは何か?」を問うものです。それに対して、今まで私はと言うと、次の様な「模範解答」しか、持ち合わせていませんでした。「イスラエル人とパレスチナ人が、共に対等・平等な存在として、相手の人権を認め合い、平和共存を図る事」と。つまり、「いい加減仲直りせーや」と。
曰く、「イスラエル人もパレスチナ人も共に、第一次大戦当時の英国の二枚舌外交の犠牲者なんだから、いい加減反目するのはもう止めたら」「シオニスト右派もイスラム原理主義者も、徒に排外主義を煽って相手を攻撃するのは止めろ」「報復の連鎖を断ち切れ」と。まるで、「帝国主義に利用されるな」と、アフリカ・ルワンダの部族対立を諌めるかの様に。
斯様な「平和共存路線」の見地に止まっている限り、「zames_maki」さんの質問に「模範解答」で答えるのも、そう難しい事ではありません。次の様にでも答えておけば、それで良いのですから。
(1)の答え:折角のオスロ合意も、リクードとハマスの所為で全てぶち壊しだ。もう為る様にしか為らない。
(2)の答え:差別しないで、みんな仲良く。
(3)の答え:あくまで表向きは中立の立場で調停。(本音ではユダヤ・ロビーの影響もあってイスラエルに加担しつつ)
(4)の答え:右派は人道復興支援やらPKOやら国益擁護の名目で自衛隊派遣を、左派は護憲平和主義の立場で「仲直り」を主張。両者とも、あくまで表向きは中立の立場で調停者として。
先日の志葉さんの講演内容は、2001年911テロとアフガン戦争を機に立ち上げ、「テロにも報復戦争にも反対」を言い始めた私のブログ(当時はサイト・掲示板)の、上記の「無自覚の欺瞞」とも言うべき部分に対して、カウンターパンチを浴びせかけるに、充分なものでした。
幾ら、共に英国の二枚舌外交によって生み出されたとは言えども、片や、ロスチャイルドなどの金融資本をバックに、西側諸国や国連を味方につけ、「ナチスの仇をアラブで討つ」と言わんばかりに、パレスチナの地に乗り込んできたイスラエル人と、もう片や、ナチスとは何の関係も無いのに、一方的に民族自決権や生存権を蹂躙され、戦後ずっと難民として放置されてきたパレチナ人が、同等な犠牲者である筈がないだろう!と。
上記の立場に立つと、「zames_maki」さんの質問に対する答えも、次の様に訂正せざるを得なくなりました。
(1)の答え:イスラエルの、パレスチナに対する一方的な占領や人権抑圧が廃絶されない限り、どんな和平も共存もあり得ない。しかし、イスラエルは、今やそれとは全く正反対の、軍国主義化と自滅への道に、更に突き進みつつある。
(2)の答え:「イスラエル人とパレスチナ人が、共に対等・平等な存在として、相手の人権を認め合い、平和共存を図る事」でしか、根本的解決の道は無い。しかし、その為には、イスラエルの全占領地・入植地からの撤退と、パレスチナ難民に対する帰還権・賠償権の承認は、避けては通れない課題だ。
(3)の答え:まずは、イスラエルの全占領地・入植地からの撤退が、和平開始の前提条件でなければならない。それには、イスラエル国民や海外ユダヤ人の意識変革(排外主義・選民思想の克服)が必要。しかし、米国にはそうする意志も力も無い。今は米国は、只のイスラエルの後見人でしかない。
(4)の答え:日本は、先進国の中では、中東を植民地支配した事の無い唯一の国である。加えて、日露戦争以来の親日感情や、平和国家・経済大国としてのイメージもある。だから、ODAに基づく経済援助以外にも、本当はもっと色んな事が出来る筈。また、米国やイスラエルに対しても、彼の国々の暴走を止める事も充分可能な筈。それが真の国際貢献であり、また、同盟国としての「あるべき姿」ではないのか。然しながら、現実には単なる「米帝ネオコンのポチ」として、アフガン・イラク戦争、イラン攻撃、ソマリア派兵にも唯々諾々と従っている。このままでは早晩、「全中東人民の敵」として、米国と共に放逐されてしまう運命にある。
そして、日本の市民運動の「あるべき動き」としては、以下の方向性が考えられるのではないかと。
(1)米国ネオコンとイスラエルのシオニストに対しては、ボイコットを初めとした、あらゆる圧力を駆使する事によって、不断に政策変更を迫るべき。
(2)イスラエル国内で、シオニスト排外主義との困難な闘いを強いられている国内パレスチナ人や反戦運動に対して、連帯・支援すべき。
(3)ガザ・パレスチナ人民のイスラエル抵抗闘争については、物心両面で支援し、国際的にも支援を呼びかけるべき(但し、自爆攻撃などの評価については保留)。これは、ハマスであろうとPLOであろうと、党派を問わず。
最後に、ハマスの自爆攻撃について。勿論、私はハマスのこの様な戦術は、今でも支持しません。若し、この様な立場まで肯定してしまうと、それはブッシュの「悪の枢軸」論を、反対側から補強してしまうという、陥穽に陥ってしまうからです。
イスラエル国内にはシオニストだけでなく、反戦活動家や、イスラエル国籍のパレスチナ人も居住し、シオニストと闘っているのですから。そういう人たちまで何故自爆攻撃に晒されなければならないのか。
また、これは、他の問題と置き換えて考えてみても、分かるかと思います。例えば、ヒロシマ・ナガサキや北朝鮮問題に。日帝のアジア侵略があったからといって、原爆投下や北朝鮮拉致まで免罪されるのか。
しかし、だからといって、「どっちもどっち」の立場にも組はしません。米帝を後ろ盾にしたイスラエルの不法占領・パレスチナ人民の自決権蹂躙さえなければ、ハマスのテロも起こりようがなかったのですから。また、日帝のアジア侵略さえなければ、原爆投下も南北朝鮮分断もなかったのですから。
ハマスが、それまでのPLO各派(ファタハ・PFLPなど)に代わって、パレスチナ解放の主導権を握るようになったのは、裏を返せば、これらの世俗左派が、限界を抱えていたからではないでしょうか。創立当初のパレスチナ解放の大義から次第に遊離し、党派闘争に明け暮れたり、官僚主義に染まったり、周辺アラブ諸国や旧ソ連に従属して自主性を失っていた面も、あったからではないでしょうか。
その中で、幾ら「机上の和平」が一進一退や空回りを繰り返した所で、占領と経済封鎖は愈々強まり、生活困窮度は増すばかり。その結果、パレスチナの民衆は、次第にPLOからハマスを支持するようになった、それだけの事です。
故に、ハマスの戦術や政治的立場を、全て無条件に肯定はしません。しかし、イスラエルの不法占領に対して、ハマスが人民の利害を代弁する限り、その一点については、ハマスを支持します。これは、ハマスであろうとPLOであろうと同じです。
※記事冒頭の画像は、ガザのアブデルワーヘド教授から送られてきた写真からの出典。
※参考までに、旧掲示板過去ログの、2006年レバノン侵攻当時の議論も。この時も、よく似た議論をしていたんだなあと、今になって思い出しました。
●映画「イラクは今・・・№2」(イラク平和テレビ局イン・ジャパン)
2月23日(月)~3月1日(日)
平日20時、土日15時・19時上映開始
於:天劇キネマトロン(中崎町) 入場無料
●第9で9条・御堂筋ピースパレード(ピースケ・おまるこの9条の会)
2月7日(土)、3月7日(土)
午後2時、新町北公園東側(厚生年金会館前)集合
●国際女性デーのつどい2009・関西―IFC・イラクの女性たちと連帯―(3・8国際女性デーのつどい2009関西実行委員会)
3月8日(日) 14:00~16:30
大阪市立中央青年センター第1ホール(森之宮)
参加費:一般1000円
●SANAフィルムフェスタ・イン・大阪(イラク平和テレビ局イン・ジャパン)
上映作品「砂漠の死のチリ」「ブッシュへの靴投げ事件「冬の兵士・良心の告発」「シカゴ占領」
3月29日(日) 午後1時半より
於:西区民センター(西長堀) 資料代:700円
●イラク戦争6年 わたしたちの選択
ジェフ・パターソンさん(アフガン・イラク戦争兵役拒否の会メンバー)と清末愛砂さん(島根大学講師)の講演
3月16日(月) 18:30~20:30
大阪市立住まい情報センター3Fホール(天六)
●「月桃の花」歌舞団 平和ミュージカル2009「ワーキングプア希望宣言 ポロロッカ ぼくらは生きている」
4月26日(日)18時開演
於:大阪・高槻現代劇場(JR・阪急高槻)
チケット(大人)前売3000円 当日4000円
●倉沢栄一さんと共に過ごす1日と写真展(ジュゴン保護キャンペーンセンター・SDCC)
沖縄ジュゴンの写真展 2月16日(月)~3月15日(日)
交流会 3月7日(土)PM4:30~6:30
於:いずれも カフェ magatama(玉造)
講演会 3月7日(土)PM1:30~3:00
於:とよなかステップ
参加費:500円(学生・フリーター300円)
●西谷文和 イラク取材帰国報告会(イラクの子どもを救う会)
3月21日(土)午後1時半より
於:大阪市立いきいきエイジングセンター3F第1研修室(南森町又は北浜) 入場無料
※その他にも、映画「パレスチナ1948 NAKUBA」の劇場公開も、せっかく2月下旬に、大阪・九条のシネ・ヌーヴォであったのに、見損なってしまった。残念!