衆院大阪12区補選に野党統一候補として無所属で出馬した前共産党衆院議員・宮本岳志(たけし)の「本気度」を探るべく、昨日4月17日に実際に選挙区に行って観て来ました。(以下、文中敬称略)
衆院大阪12区は寝屋川・大東・四条畷の北河内3市で構成されます。ここは自民党衆院議員・北川知克の地盤でした。ところが、知克が昨年12月に死去した事に伴い、補欠選挙が行われる事になりました。投票日は統一地方選後半戦と同じ4月21日です。小選挙区なので当選できるのは1名だけです。
宮本岳志以外の候補者は3名。知克の甥で自民の北川晋平、維新の藤田文武、旧民主党系無所属の樽床伸二。いずれも地元出身者で、その点では落下傘候補の宮本よりも有利です。しかし、各候補の演説を動画で見る限り、とても私が支持できる内容ではありませんでした。
北川晋平は叔父の北川知克の弔い選挙で、叔父の地盤を引き継ぎ、本来なら選挙戦を有利に進められる筈でした。ところが蓋を開ければ、藤田に水を開けられ大苦戦。演説を聞いても叔父や家族の話ばかり。但し、最終日に安倍晋三が直々に応援に入る事で、どれだけ挽回できるか?
維新の藤田文武は、表向きは自民とガチンコ勝負を演じているが、憲法改正や万博・カジノ誘致については自民と同じ穴のムジナです。支持者の書き込みを見ても、「どちらが本気で憲法改正するか」みたいな投稿が目立つ。ベンチャー企業の経営者でもあり、自分を盛んに下町ロケットの主人公になぞらえているが、上から目線の話ばっかりで、社会的弱者からの視点は皆無。
旧民主党系無所属の樽床伸二は、「頑張る人が幸せになる社会を」と唱え、前二者よりは庶民目線が感じられるが、演説内容は空虚。そんな社会にする為には、高額な奨学金返済や待機児童、ブラック企業搾取の是正は避けて通れないはずだが、それに対する言及は一切無し。「正直者がバカを見る事の無い様に」と訴えるも、その最たる例であるモリカケ問題への言及も無し。
そして前共産党衆院議員で今回、野党統一候補として無所属で出馬する宮本岳志です。私は共産党支持者ですので、普通なら宮本岳志を応援すべきなのでしょう。しかし、同じ大阪でも南の岸和田出身で北河内には縁もゆかりもない宮本が、何故、既に決まっていた候補者を押しのけてまで、自分から立候補しようとしたのか?「議員の職を投げ打って背水の陣で臨む」と言えば聞こえは良いですが、これでは維新の松井・吉村のやり方と同じではないですか?
共産党は、それに対して「野党共闘候補として、有権者に選択肢を提供する為に臨む」と答えるのでしょう。でも、そんな理屈が通じるのは精々、共産党の支持者までです。支持者でもない一般有権者にとっては、単なる落下傘候補でしかありません。「覚悟を示す」と言うのであれば、統一地方選挙前半戦の和歌山県議選で、定数1の御坊市選挙区で自民党現職候補に競り勝った共産党の楠本文郎候補の様に、落下傘候補ではなく地元の候補者を擁立すべきだったのではないか?そこまでやってこそ、初めて一般有権者や保守層・自民党支持者からも支持を頂ける様になるのではないか?
どうしても、その思いが拭えませんでした。そこで、宮本岳志の「覚悟」がどれほど本物か?それを探るべく取材に出かけたのです。しかし、当日の詳しい選挙日程を明らかにしているのは宮本陣営のみ。後は夕方に自民参院議員の三原じゅん子が北川の応援に来る事が分かっているだけです。とりあえず、この宮本・北川の2人の候補者を追う事にします。
京阪寝屋川市駅には午前11時半頃に着きました。12時10分からの宮本岳志の街頭演説にはまだ間がありますが、既に宮本サポーターの人達が、黄色のヤッケを着て駅前でビラを撒いていました。その内の一人に、「なぜ落下傘候補でなく地元出身者を候補に出さなかったのか?勝つ為には何でもありと言うのでは、松井・吉村のやり方と何ら変わらないじゃないか」と、率直に疑問をぶつけてみました。それに対し、その方は「国政選挙なので地方選挙とは違う」と答えましたが、何か腑に落ちません。
やがて12時過ぎから寝屋川市駅東側の電通大行きバス停の前で、宮本岳志の街頭演説が始まりました。赤旗とMBSが取材に来ていましたが、立ち止まる聴衆は僅かです。黄色いヤッケを着た運動員の方が目立っています。
宮本岳志は演説の中で主に奨学金の問題を取り上げていました。曰く「私が和歌山大学に入学した1979年の学費は年18万、昔は更に安く年僅か1万2千円しか無かった。ところが今や国公立大学でも学費は50万以上かかる。私学に至っては100万以上も。奨学金も高い利子付きで返さなければならない。こんな物は学資ローンであって奨学金ではない。
ヨーロッパでは学費は全て無償だ。日本は1979年に国際人権規約を批准したが、そのA規約には高等教育の学費無償化が定められている。既に40年前に義務化されているのだ。その履行をずっとサボり続けながら、今頃になって学費無償化を憲法改正や自己責任論の正当化に利用するなぞ筋違いも甚だしい。無駄な安倍・麻生道路の建設や欠陥戦闘機F35の爆買いを止めれば、別に消費税10%に値上げや憲法改正なぞしなくても、学費無償化は実現できる」と訴えていました。
この宮本岳志ですが、自分の演説が終わった途端に歩き出し、全然一所(ひとところ)にじっとしていません。まだ応援弁士が喋っているのに、遥か向こうの方や反対側の歩道を練り歩く始末。その目立ちたがりな所や落ち着きの無さたるや、まるで私の職場の誰かさんにそっくりw。
演説は30分ほどで終わり、私は京阪寝屋川市駅前の図書館で時間を潰した後、隣駅の香里園駅まで電車で移動。17時からの香里園駅西口ロータリーでの宮本岳志の演説に臨みます。もう聞いた候補者の演説を何故2度も聞くのか?それは、ここには参院議員の山本太郎も宮本岳志の応援に来るからです。何故、宮本岳志が現職衆院議員の職を投げ打って、わざわざ無所属で出馬する気になったのか?その舞台裏が聞けるかも知れないと思ったからです。
しかし、西口ロータリーは、同時に行われる寝屋川市長選候補の演説に占拠され、宮本たけしの宣伝カーが入り込む余地はもはやありません。仕方なく東口で演説する事になった様です。ところが、飛び入り参加の私には、そんな情報は伝わらず、私は15分過ぎまで、その事に気が付きませんでした。
演説会場の変更に気付いた私が、ようやく東口に移動した時には、山本太郎の応援演説は既に佳境を迎えていました。山本太郎は「今年10月の消費税10%増税を食い止めよう」と話されていました。曰く「日本は20年以上も、世間に金が回らないデフレが続いている。これは先進国の中でも日本だけだ。美味いと評判のラーメン屋も消費税を価格に上乗せ出来ず、税金滞納で差し押さえの危機に瀕している。
ところが大企業は金余りで、総額400兆円もの内部留保を溜め込んでいる。税金は、金の無い所から無理やり取るのではなく、有る所から取れ。それを麻生財務相に言ったが、日本は資本主義なのでそんな事は出来ないと言われた。出来ない筈はない。消費税増税の度に引き下げられた法人税や所得税の税率を元に戻せば済む話じゃないか」。これには私も完全に同意。自民や維新の公認候補や、旧民主党系無所属の樽床伸二も、その肝心な事を言わずに、少子化などの抽象的な話に逃げ込み、社会保障などの制度の問題にすり替えているのです。
確かに今の社会保障制度にも問題はあります。少子化が続けば、若い世代だけで老後の福祉を支える事は出来なくなります。でも、少子化も勝手に進んだ訳ではありません。正社員を減らして低賃金で不安定な非正規雇用を増やしたからこそ、皆んな将来不安から子どもを産まなくなったのです。つまり、これは政治家の責任です。その責任の所在をはっきりさせず、全世代社会保障などの抽象的な制度論議ばかりされても、全然、国民の心には響きません。だから投票率が下がり、組織票だけで当選できる世襲候補や、知名度だけで当選できるタレント候補ばかりになるのです。金権・汚職や忖度(そんたく)・賄賂政治がはびこる事になるのです。
それを聞いて、やはり宮本岳志は、無くてはならない政治家だと思う様になりました。しかし、ここでも聴衆は精々50名ぐらい。場所変更で狭い場所で演説せざるを得なかった点を割り引いても、やはり活気にイマイチ欠けるというのが実感です。
この後、17時半から再び駅西口のロータリーで、自民党・北川陣営の演説も聞きましたが、全然心に響く物がありませんでした。同じ姓の寝屋川市長が「息子を宜しく」と言えば、自民党応援弁士の中山泰秀も「私も世襲議員だが世襲自体は悪くない。子は必ずしも親のコピーではない。親を乗り越えれば良いんだ」と居直り。親の七光りで最初から下駄を履かせてもらって、親を乗り越えるもクソもあるか。乗り越えられて当たり前じゃないか。下駄を履かせても乗り越えられないなら、単なる穀潰しに過ぎない。
続いて登壇した三原じゅん子も「何をするかではなく何が出来るかが大事だ」と。最初から全部出来る人間なぞ誰もいない。最初は誰もがほとんど失敗する。「失敗こそ成功の母」。それでも挑戦し続ける中で、徐々に「出来る」人間に成長して行くのだ。自民党もそれを「再チャレンジ」と言って推奨して来た筈だ。それを三原みたいに「最初から出来ないとダメ」なんて切り捨ててしまったら、新人は永遠に政治家にはなれない。新陳代謝も進まない。三原の言っている事は単なる世襲政治擁護、独裁政治擁護でしかない。
この後、候補者の北川晋平も演説しましたが、「亡くなった叔父の遺志を継がせて欲しい、私には若さがある」と、相変わらずお涙頂戴の内容に終始。お前の叔父の話なんかどうでも良い。我々はお前の叔父や家族の為に生きているのではない。しかし、そう思うのは私だけで、聴衆は次第に増えて来ました。最初こそ宮本陣営と変わらぬ50名ぐらいからスタートしたものの、三原じゅん子の客寄せ効果もあってか、北川晋平の演説が終わる頃には80名ぐらいに増えていました。
今日は宮本岳志、北川晋平の2人の候補者の演説しか聞けませんでしたが、他の藤田文武や樽床伸二も、社会保障制度などの一般論、抽象論に終始している点では、北川と同じです。後二者の演説もネット動画で、ある程度確認しました。
後の候補者は「反対ばかりでは何も出来ない」と言いますが、宮本岳志も決して反対ばかりしている訳ではありません。対案もちゃんと提示しています。この報告の中で述べた通り。
抽象的な話ばかりして、現実の庶民の苦境には何も答えない。あるいは、上から目線の話ばかり、経営者の苦労話ばかりに終始して。維新の藤田文武は、自分を下町ロケットの主人公になぞらえ、自民党の北川晋平を利権政治と攻撃していましたが、下町ロケットも所詮はベンチャー企業。ベンチャー企業の中にはブラック企業も少なくない。
こいつらの話は総じて「上から目線」。当人は一端の国士気取りなのでしょう。しかし、庶民の苦境に目を向け、民衆救済に立ち上がる。そんな百姓一揆の指導者みたいな人こそ、本当の国士ではないでしょうか?ところが、奨学金返済や消費税納税に苦しむ庶民の事なぞ眼中に無く、天下取りの話ばかりにうつつを抜かして。有権者はお前らの金ヅルや出世の道具ではない。
そんな政治ばかり続いて来たから、政治が面白くなくなり、庶民はますます投票に行かなくなるのです。それで更に世襲候補や金権・タレント候補ばかりがのさばる事になるのです。
そんな事は以前から分かっていましたが、昨日の北川陣営の演説を聞いて、更にその感を強くしました。そう思うと、宮本岳志が落下傘候補である事も大して気にはならなくなりました。世襲・金権候補と比べたら、まだ落下傘候補の方がナンボかマシです。しかし、これまでの世論調査の結果では、残念ながら当選可能性は一番低いのも事実です。後は「どこまで追い上げる事が出来るか?」にかかっています。
それはさておき、文中に「既に決まっていた候補者を押しのけてまで」とありますが、そのような候補者は存在したのでしょうか?野党共闘を進める「大阪12区市民連合SND(四条畷・寝屋川・大東)」が3月の反維新集会で述べたところでは「12区からは立憲野党からの候補者がいない」ということになっていましたが…
そして、今回の選挙では北河内でも共産党現職がバタバタ落選しています。今の共産党組織では、統一地方選挙に加え、衆院補選を闘う力量はそもそもなかった…そこに無理矢理「落下傘候補」を降ろして、共倒れになったのでは?とも思います。うがった見方をすれば、宮本氏が無所属で出て「野党共闘」色を強めたのは、自由党や社民党の支持者層を運動に引っ張り出すための苦肉の策だった。そもそも12区に共産党以外の立憲野党の支持者がいるのか?基盤があるのかということを抜きにした「野党共闘」だったのでは?とも思います。
http://tatakauarumi.cocolog-nifty.com/blog/2019/04/post-fca40b.html
実はこの方、以前にも私と一度お会いした事があるのです。2014年に大阪・ミナミのイベント会場で行われた無党派の若者向けの「共産党知る会」で、異色の共産党候補としてコスプレ姿で登場していました。他の候補者の中でもひときわ目立っていたので、私がブログに載せようと写真を撮っていたら、向こうもそれに気付いたらしく、帰る時に待ち構えていて、握手を求められましたw。https://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/9dabe080051e40b121ec36fec9301d0d
「大阪12区市民連合SND(四条畷・寝屋川・大東)」の名前は私も初めて聞きました。赤旗の報道では全国から千人以上もの選挙ボランティアが駆け付けたそうですが、その割には盛り上がりに欠いていたように思います。
北河内各市はパナソニックの企業城下町でもあり、昔から連合系労組が強く、その影響で共産党のイメージは余り好くないのかもしれませんね。