脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

たしかに三密回避は認知症の孵卵器だった

2022年11月21日 | エイジングライフ研究所から
「三密回避」という言葉とその現象は、いつから始まったのか調べてみました。
2020年2月29日に専門家たちが「換気が悪く、人が多く、近距離で接触がある状態、この3 条件すべてを満たす状況を回避すべきという提言」を発表したのが始まりらしいです。
その後3月18日に、官邸から「3つの密を避けて外出しましょう」という呼びかけがありました。その時に、上記の3条件を密閉、密集、密接(近距離=互いに手を伸ばして届く距離、での会話や発声)と解説して「3つの密」という言葉が誕生しました。
もう少し詳しくみてみました。
4月1日には3条件が同時に重なった場を「3つの密」と呼ぶ定義があたえられたそうですが、条件が 1 つでもあれば「3つの密」 と呼ぶ定義に変更されたのが 4月7日。ただしこの定義は徹底されなかったのです。
とにかく厳密なようでいて、厳密でないということがよくよくわかりました。今年出会った京都の紅葉を。
ところが我が国の国民性というか、一旦方向性が決まれば、みんなが見事に足並みをそろえることはよく指摘されますが、高齢者の皆さんも然り。
一斉に、「認知症予防教室」「集い」「趣味の会」などなど中止になっていきました。認知症予防講演会も原則中止が続きました。

そこで、大きな問題が表に出てきています。
三密回避の状況は、実は脳機能から言えば、老化を加速させる温床のようなものです。
高齢期を迎えると、若い頃に比べるとただでも筋肉低下が起きてくるものですが、歩かなければ、歩行に関わる筋力がガクンと低下しますね。
脳機能も同様。
前頭葉機能、中でも注意集中力や注意分配力は20代をピークになだらかに直線的に衰えるものですが、三密回避の状態ではその衰え方がはっきりと急角度になっていくのです。
三密回避の状態では、何しろ「相手がいないので」注意集中力や注意分配力を発揮させる場が極端に減ってしまうこと、自分らしくイキイキと生活する場がなくなるからなのですが。
「三密回避は認知症の温床ー脳機能にもフレイルが」というテーマで、このブログに意見を書いたのは2020年9月12日でした。ちょっと読んでみていただきたいです。脳機能の老化が加速されてしまうメカニズムを正確に記し、かつかなり強く警告を発しています。

実際に最近の相談事例では、「『三密回避を守った』ことが、今の状態『脳が元気を失っている』ことと関係があると思いますか」と尋ねると、ほとんどの方が「はい。よくないこととは思っても、みんなとは会えないし行くところもないんですから。仕方ないと思ってるうちにだんだん変になってしまいました」と答えます。
2020年時点で、保健師さんたちからは「すでに脳の老化が早まっている人たちの老化の加速が目立ちます」という報告がありました。小ボケの方が中ボケになるとか、中ボケの重症化ですね。

最近は、脳機能が正常な高齢者が、たしかに老化を加速するきっかけとなる出来事は起きるのですが、あまりにも簡単にズルズルと老化を進めてしまう(老化のスピードが速い)印象を強く感じます。
もし三密回避がなければ、持ち直せたに違いないというケースに出会うたびに、もう2年以上も前に警告していたとはいえ、無力感が沸き上がってきます。
もう少し影響力の大きいところが声を揃えて国民に伝えてほしいと思います。




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