雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

本と映像の森13 A・C・クラークさん『2010年宇宙の旅』

2010年03月11日 04時25分47秒 | 本と映像の森
本と映像の森13 A・C・クラークさん『2010年宇宙の旅』ハヤカワ文庫、早川書房

 「宇宙1」の続きです。
 今年は、ガリレオ・ガリレイさんが、望遠鏡で、木星の4大衛星を発見して、ちょうど400年の年です。

 その木星周辺を舞台にして、私の大好きなSF作家・クラークさんが書いた、『2001年宇宙の旅』の9年後の続編です。

 数日前に、ちょっと時間の空いたときに行く、家の近くのイケヤ高林店で、見つけて衝動買いしました。
 なにしろ、帯に「ついに2010年到来! 巨匠クラークが描いた未来に人類は到達できたのか?」です。

 映画にもなっています。
 私は、どっちかというと、一般的に言って,映画の方が情報量が少なくて、文字による小説版の方が、情報量も・解釈の余地も多くて好きですね。
 たとえば、マイケル・クライトンさんの「ジュラシック・パーク」でも、そう思いました。

 謎の石「モノリス」は、1対4対9の石碑です(もちろん材質は石ではないです)。

 モノリスは、謎の宇宙文明が、地球を監視し制御するために残したものです。
 そのモノリスの1個目は、地球のアフリカの人類発祥の地にあって、2個目は、月のチコ・クレーターにあって、3個目は木星の衛星軌道上にあります。

 その宇宙文明は、物質的な形を持たない、純粋生命体で、というクラークさんの想像の描画は、クラークさんの代表作である『都市と星』の最終章で描かれた銀河系文明が生み出した失敗作「狂った精神」と成功作「ヴァナモンド」に描かれ、もう1つの代表作『幼年期の終わり』で地球人の子どもたちの行く末として描かれています。
 
 この作品も、地球文明と、宇宙文明の、接触のかたちの、いろんな物語の一つになると思います。
 幸福な接触、不幸な接触。
 
 象徴的な話は、原題が「スペース オディッセイ」ということです。
 ホメロスの歌う「オデッセイ」伝説は、ギリシャと異文明の接触と変容の物語だと思いますが、宇宙のオデッセイ物語は、地球文明と異質な宇宙文明の接触と変容が、はたして、可能か、幸福か、崩壊か、という話だと思います。

 2つ目は、人間とコンピューターの相克です。ハル9000ですね。
 ハルの運命に、救いを感じました。
 人間とコンピューターは、信頼しあえると思います。
 
 3つめは、地球人類と太陽系内の他の惑星・衛星の生命との接触の可能性です。
 木星の衛星、たとえばエウロパは、氷の表面の惑星ですが、氷の下に海があることは確実になっています。
 このエウロパの氷の下の海で進化した生命を1980年代に描いたのが、この作品です。

 ぼくの生きているうちに、エウロパの海の下に潜る「深海探査」が実現するといいな。