雨宮智彦のブログ 2 宇宙・人間・古代・日記 

浜松市の1市民として、宇宙・古代・哲学から人間までを調べ考えるブログです。2020年10月より第Ⅱ期を始めました。

本と映像の森21 水上勉『ブンナよ木からおりてこい』新潮文庫

2010年03月24日 22時53分05秒 | 本と映像の森
本と映像の森21 水上勉さん著『ブンナよ木からおりてこい』新潮文庫

 著者は「みなかみつとむ」さんではなく「みずかみつとむ」さんです。
 群馬県にある温泉は「水上(みなかみ)温泉」です。

 主人公のブンナは沼に住む若いオスのトノサマガエルです。
 周りのツチガエルたちと一緒に住んでいますが、ツチガエルといっしょに住むなかで、能力の高いトノサマガエルのブンナは、だんだんとイヤな性格になっていきます。
 なにしろ「トノサマ」ですからね。
 
 木登りの好きなブンナは、高い椎の木に、周囲の反対の声を無視して登っていき、2度目には1夜を明かそうとします。
 
 そこが実は肉食鳥類で鷲鷹類の一種であるトビが狩った獲物の動物を中間的に置いておく悲しい場であることがわかったのです。
 
 もうブンナは下りられなくなって、椎の木の頂上の土の中に潜って、トビの捕まえてきていずれトビに食べられる運命の動物たちの嘆きと葛藤を聞くことになります。

 モズ・スズメ・ネズミ・ヘビ・ウシガエル・ツグミたちの会話とブンナとの会話で、ブンナは何を学んでいくのでしょうか。
 ブンナは無事下りられるのでしょうか。

 なにしろモズにしろ、ネズミにしろ、ヘビにしろ、地上ではカエルを食べている動物たちなのです。

 ブンナは、自分たちの人生(いやカエル生)が、他の動物たちを食べて、他の動物たちに食べられることをリアルに学び、自分を生かしてくれる動物たちに感謝するようになっていきます。

 人間も同じだと思います。
 食事をするときに「いただきます」と言いますが、これは、「生き物であるあなたたちの体を,今から自分のからだにいただきます。」ということなんですね。
 食事のあと「ごちそうさまでした」というのも、食べてしまった生き物たちへのお礼の言葉なんだと思います。

 私は思うのですが、食べるのは敵だからではなくて、同じ仲間だからこそ食べるんですね。
 食べた動物や植物が毒ではなくて、自分の体の栄養になることを知っているからこそ食べるんです。

 スズメも、ヘビも、モズも・・・みんな、少し曲がっている人格(じゃない「動物格」)なのですが、その最後の時間に、自分の真実を吐露しているように思います。

 生態系のリアルな姿を具体的に知るための、いい本です。
 そして、生と死の問題を考えるための必読本です。

 

 
 

雨宮日記 3月24日(水) 市議会で子どもに「愛国」押しつけ

2010年03月24日 22時35分48秒 | 雨宮日誌
雨宮日記 3月24日(水) 市議会で子どもに「愛国」押しつけ

 今日の浜松市議会本会議で、「浜松市子ども育成条例」が採決されます(もう採決されましたね、たぶん)。   

 自由民主党浜松の会派さんが委員会で、修正案を提案し、原案に「国を愛する心をはぐくむことができる環境づくり」を加えたものが委員会で可決されて、今日の本会議にかかったのです。

 どうして子どもたちが、「国を愛する心」を持たねばならないのでしょうか。愛しようと批判しようと自由ではないでしょうか。

 「国を愛する心をはぐく」まない子どもは、学校で批判されるのでしょうか、

 国を愛するか憎むか、自治体を愛するか無視するか、親を愛するか批判するか、それぞれの自由なのが市民社会ではないのでしょうか。

 それぞれがそれぞれの意見で決めていいんだよと浜松市の学校では教えられず、子どもたちに「国を愛しなさい」と押しつけられるのでしょうか。
 恐ろしいことです。

 そんなことを子どもに押しつけるより、まず「愛する価値のある国」「愛する価値のある自治体」をつくる、「愛する価値のある大人・議員」になる努力をみんなでしたらどうでしょうか。



本と映像の森20 クリストファー『トリポッド 1襲来』早川文庫

2010年03月24日 04時46分47秒 | 本と映像の森
本と映像の森20 ハヤカワ文庫、早川書房、2004年11月15日初版、254ページ、定価620円+消費税

 いま(今!です、2010年3月24日の午前4時50分です!)気がついたのですが、この本にも「定価(本体620円+税)」と書いてあるだけで「消費税」と書いてないんですね。
 これって、法律で「消費税」と書いてはいけないとか決められているのかな?
 それとも政府の「要請?」
 あるいは「要請」もないけど、書籍業界の自主規制?
 ほかの「業界」はどうなっているか?調べてみたいと思います。

 脱線しましたが、イギリスのSF作家、ジョン・クリストファーさん著『トリポッド 1襲来』は、宇宙からの侵略者による「破滅」もの4部作の第1番目です。

 「ネタバレ」がありますので、そういうのが嫌な方は、ここから後は読まずに、本を読んでからお読みください。

 「トリポッド」は英語ですが、日本語に訳すと「三脚」になります。

 宇宙からある日、「三脚」のような物体がやってきて、というと、やはり、最近、映画化された、H・G・ウェルズさんの「宇宙戦争」を思い出しますが、この「トリポッド」の方が、すごく上質の、よくできた、もっと怖い作品だと思います。

 「宇宙戦争」では、タコのような侵略者の宇宙生物が、地球の生態系を調査しきれなかったのか、たぶん、細菌かビールスで感染して死んでしまうのですが、「トリポッド」では,侵略者(第1巻では正体不明です)はもっと用意周到です。

 イギリスに住む主人公の少年ローリーは、従兄弟のアンディと、サマーキャンプに参加していて、オリエンテーションで道に迷い、夜、2人で潜り込んだ農場の納屋で、とんでもない事件を目撃します。

 20メートルの巨大な「三脚」が現れて、農場を襲い、農場の男性を触手でからめとって食べて、建物を破壊したのです。

 イギリス軍の戦車や軍用機が、この「トリポッド」を攻撃して破壊したのですが、それは事件の終わりではなく、始まりにすぎませんでした。

 この「トリポッド」事件を戯画化したテレビ番組が始まり、世界で大流行します。

 まるで催眠術にかけられるように、そのテレビを見た人たちのなかで、催眠にかかりやすい人が、「トリポッド」を賛美する「トリッピー」になってしまったのです。

 そのテレビ番組に魅せられた一人が、ローリーの妹アンジェラでした。 
 アンジェラは、家庭医の先生が、催眠術に詳しかったので、アンジェラがテレビを見てかけられた催眠を解いてくれたのですが、ほとんどの人は、そのまま、「トリポッド」の言うがままに行動していきます。

 それに気がついた、ローリーやアンディやアンジェラは、トリポッドの地球支配に抵抗する動きの中心になっていきます。
 もちろん、最初から意識的にそうなったわけではなく、それに抵抗していったら、そうなったんです。
 
 地球生命を破滅させる心の侵略者と、それに抵抗するレジスタンス、4巻本の始まりです。

 
 
 

本と映像の森19 変わり種でネット「青空文庫」を紹介します

2010年03月24日 04時32分59秒 | 本と映像の森
本と映像の森19 変わり種でネット「青空文庫」を紹介します

 みなさん、「青空文庫」って知っていますか?
 図書館の巡回車?というイメージの名前ですが、違います。(公立図書館でそういう巡回車があるかもしれませんが)。

 「青空文庫」は、ネットでアクセスできる電子図書館です。

 著作権の切れた作家(没後50年)や著作権はまだ切れていないけど遺族が権利を承諾してくれた作家の作品を、ボランテイアの人たちが打ち込んで、誰でも無料で自由に読めるようにしています。

 たとえばぼくの大好きな宮沢賢治さんは、161の作品が掲載されていて、自由に読めるようになっています。
 無料でダウンロードもできます。

 うれしいのは、宮沢賢治さんの場合は、戦前の人ですので、戦前の「旧かな」、戦後の「新かな」という問題があって、その両方を掲載されていることです。

 希望としては、たとえば「銀河鉄道の夜」は、第1次稿から第4次稿まで賢治さんはずっと推敲してきて、かなり変わっているのですが、それも掲載してもらえないかな、と思います。
 「雨宮さん、自分でやれば」と言われそうですね。
 余生があれば、したいですね。