ルイス号は大きな貨客船だった。
船尾から船首まで優に100mあったと感じている。
小僧どもにとって船内は未知の探検遊びの場だった。
船底の貨物室には入れなかったが客室階は乗員室から食堂までくまなく探検した。
乗客担当の船員はみなチャイナ系だった。
上級船員とも炊事担当とも仲良くなり航海中よくしてもらった。
ところで言葉は通じたのか?
通じたことは確かだが、意思疎通の方法については何も覚えていない。
乗船者が共有する船内生活の忘れられない思い出に食事がある。
来る日も来る日も同じ中華風メニューで大人たちはうんざりしていたようだ。
中でもみなが毎朝手を付けなかったのは、腐乳である。
この豆腐のピリ辛漬は、とっつきにくいが、食べ続けているとやみつきになる。
食い意地の張った私がそうだった。
当時は感じなかったが成人して再び出遇った時その美味に驚いた。
今でも中華街に行くと食材店を覗いてみる。
毎朝ミルクティーが出た。
ミルクコーヒーに慣れ親しんだ日本人にはこれは美味しくなかった。