自分史 物怖じしない国際人を育てるヒント集

近現代史に触れつつ自分の生涯を追体験的に語ることによって環境、体験、教育がいかに一個人の自己形成に影響したか跡付ける。

最初にして最後のデイト/桜の季節/とわの別れ

2013-12-01 | 体験>知識

漱石も訪れた桜の名所発心公園は吉野桜が満開だった。
示し合わせて人出のないウイークデイに隠れるようにして花深き桜の樹の下で語り合った。
どんな話をしたのか何も憶えていない。
浮き浮きした気分でなかったことは確かだ。
けじめをつけるデイトであることは分かり合っていた。
写真を撮り合った。
二人して裏通りを駆けるようにして山を下りて分かれた。
近くに住んでいても出会うことがないだろうことは二人とも分かっていた。
久大線は単線で草野駅で列車がすれ違うことはなかった。
だから目を合わせるだけの淡い恋が終わることも分かっていた。
日を置かずして手紙で縁切りを確認した。
予感が的中してその日かぎりで彼女と出会うことはなかった。
月日が経って風の便りに彼女が学友の一人と結婚したことを知った。
わたしの幸福なこども時代の掉尾に一輪の花をそえてくれたひとの幸せを祈りたい。

※特定秘密保護法の廃止をめざして管理者の「恣意」で秘密を決めて黒塗りにしました。
特定秘密を探ったり見たり聞いたり言ったりすることは10年以下の懲役に値します。
教唆共謀も同罪です。