長い夏休みのあとすぐ一斉テスト期間に入った。
自治会の活動もテストにかかわるものとなった。
よく事業に出る女子学生にささやかな謝礼を払ってノートを借り、それを生協で印刷
して販売した。
活動家仲間は授業にあまり出ていないのでテストに関して笑いの種の宝庫だった。
まず伝説的な笑い話を紹介しよう。
試験官の採点風景...。
ヴァージョン1 扇風機で解答用紙を飛ばして飛行距離によって優劣を決める。
ヴァージョン2 2階から外に投げ飛ばして順位を決める。
これからは実際にあった同期の活動家と私の話...。
・自然人類学のテスト
「絶滅危惧種の類人猿が死んだ。研究者としての所感を記せ」
実際の回答「悲しかった」
・数学のテスト テーマとまったく関係ない小論文をもって回答に換えるやり方
「それはさておき、大洋ホエルズ優勝を分析する。・・・」
わたしも、学科とテーマは憶えていないが、この方法で単位をもらったことがあった。
・英文和訳のテスト 授業で使用した小説の一部をプリントして試験会場で配布すると予告されていた。
アルバイトで多忙だったN君は対策として徹夜で和訳書を一冊丸暗記した。
本人いわく「英文に相当する対訳がどこなのか分からなくて失敗した」
・化学のテスト
わたしは履修届けは出していたが授業には一度も出ずテストも棄権した。
それなのにクラスの勉学優秀で真面目なK君より点数がよかった。
クラス委員として放って置けないので二人で先生のところに行って訂正してもらった。ばつの悪そうな若い先生が気の毒になった。
体育は必要出席数が足りないと単位をもらえなかった。
不足分は夏休み中の指定イヴェント参加によって補うしかなかった。
その夏長野県の志賀高原に合宿に行ったらしい。
らしい、というのは、二つの景色しか記憶にないからである。
アミューズメントパークらしいところでアヴェックがブームになっていた「抱っこちゃん人形」を腕にからませて観覧していた。
もうひとつは、脳裏に焼きついているエメラルド・グリーンの美しい火山湖はまぎれもなく白根山の湯釜である。
冬の合宿は志賀高原スキー場だった。最初で最後のスキー体験なのでこれはしっかり記憶している。初日合宿所に帰り着くと両手の指が凍っていた。無知ゆえの事故だった。軍手でスキーをするバカはわたしぐらいだろう。それに、かじかんだ手足を急にストーヴにかざすと血管が傷むことも知らなかった。
手当を受けた臨時医務所ですすめられてひとり下山、帰京して、医学部付属病院で診てもらった。処方されたドイツ製の高価な軟膏のおかげで、黒ずんだ指に皮膚が再生した。