風のささやき 俳句のblog

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放浪の夏 【詩】

2023年07月06日 | 
「放浪の夏」

放浪の果てに訪れる
名も知らない異国の街を
もう動きたくない程に歩く

褐色の肌の人々にまぎれ
日差しに焼かれながら
砂塵まみれの
乾いた空気を吸い込み
足の裏を石畳は
靴底から焼き払うようで

土色の壁には黄を濃くした光り
僕の遅い足取りを意地悪に嗤う
自分はこんなにも早く
動けるのだところげて見せる

僕のまわりの時間だけが
長い物憂いに疲れ
べっとりとのしかかる
手足が鉛のように重い
力を込める
一歩一歩に息切れる

目に入る形象は蜃気楼のように歪む
通り過ぎる人々は熱病のように
すべての視線が僕をその認識に置かず
判らない言葉が僕の耳を
鏃のようにかすめて行く

店先に並ぶオレンジ
妙にどぎつい色をして
まるで敵意を向けているようだ
慌てる僕の心を見すかすように
売り子はニヤリと白い歯を見せる

-どこに僕の帰るところが
 あるのだろう

一羽の燕が空気を切り裂き空へと進む
 その垂直な視点に僕の魂をのせて
 届きたかった

あの大きな雲の上
空の青さがわき出すほとりを
越えたはるかなる深みにまで
研ぎ澄まされた矢のような叫びとして


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