「離れ行く毎日に」
掬ったそばから
指のすき間 こぼれる
澄んだ水のように
咲いたそばから
花びら散らす桜のように
離れる速さを
誰も引きとめられない
暗い流れに踏み入れた足を
誰も踏ん張っていられない
別れの予感を
空気のようにまとう心
深い眠りに満ち足りた目覚めも
薄手のワイングラスのように危なげで
それとはなしににじむ涙は
眠気のせいにして
だから離れてゆく手は
少しでも長く
つないでいよう
少しでも多くの
言葉をかわしたい
体の芯は霜がおりるように
冷えてゆくばかりだ
夜に寄り添いゆっくりと
あなたと歩く
その時間に暖をとる
ここにいることは
夢のように頼りない
せめて良い夢を
月明かりの下で
あなたの耳元に囁く幸せを
いつも感じている透明な
流れの岸辺にたどりつきたい
その岸辺からいつまでもあなたを見守る
ひっそりと話しかける星のように
あなたが見上げる夜空の
奥に輝き続ける光として
それぐらいでは数多の
恩返しにはならないかも知れないけれど
この場所でいつも
温もりをくれるあなたのことを
胸の真ん中に思っている
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