聴く前からグッと引き込まれるミステリアスなタイトルとカヴァ。
録音テープの存在が一部を除き明確でなかったのか、日本のビクターがこの単体レコードの形でリリースしたのは録音から21年後の1983年。
もう少し遅く、吉祥寺のご領主様がジャズ文壇に登場した時期後にリリースされたならば、このタイトルではなく、”MEETS ZOOT”、或いは”WITH ZOOT”になっていたかもしれません(笑)。
ちょっとしたZOOTブームが沸き上がった中、便乗的に本作の評価、人気が上がったか、と言えば、不思議なことにそうならなかった。勿論、レギュラー作品でなかった経緯かもしれませんが、エヴァンス・ファンは思いの外、冷静だった。
中には、「ズートはゲッツではなかった」とする見方もありますが、ゲッツとのセッション(VERVE)もお蔵入りになっているので一発回答ほどの説得力を持たないけれど、当たらずとも遠からず、のラインは越えているのではないか。詰まる所、相性の問題と思う。強いて技術、演奏面で探せば、ズートの特徴の一つである啜り上げるような下町ぽいフレージングとエヴァンスのpとの調和の度合いです。
もう一つ、不幸なワケは、エヴァンスの不純な動機(金目当てとされる)により録音された所でしょう。リリースすれば、ひょっとしてその動機が表沙汰になるリスクを恐れたエヴァンスが自ら闇に葬った(笑)、とする推理もまんざら荒唐無稽ではありません。逆説的に言えば、リスクを冒してまでリリースするほどの出来ではない、と自覚したのでしょう。
ただ、タイトル、カヴァ、成り立ち等々、何一つ華がなく「陰」のイメージが強いものの、隠れた魅力を探り出し、支持するファンの熱量はその数ほど少なくない。
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