「お前は、ショーン・コネリーか!」と突っ込みたくなるこの気取ったポーズには「オレを甘く見縊るなよ!」と言わんばかりのファーマーの無言の抵抗さえ感じられる。ファーマーのベスト・アルバムと言えば、、同じARGOの‘ART’が大方の予想ではないでしょうか。一方、同じワンホーン・カルテットのこの‘PERCEPTION’は殆ど話題に登らない月見草的存在ですね。録音後しばらく塩漬けされ、リリースされた時(1964年)はジャズの潮流がすっかり変わってしまっていたのが不運でした。なお、本作ではtpではなく、flhを吹いている。
‘I think of Art as Mr. Melody’から始まるレナード・フェザーのライナー・ノーツ通り、メロディ・メーカーとしてのファーマーの優れた資質が全編に亘り、メイバーン、ウイリアムス、マカーディのリズムセクションをバックに全開している。メイバーンのこじゃれたpと隠し味的テクニックを聴かせるマカーディのdsもGooです。
やや甘味を含んだメイバーンのイントロからスタートするファーマーの軽快なオリジナル‘Punsu’を始め、ホント、Mr. Melodyって言い当ててますよね。
1961. 10. 25, 26 & 27
そんな中、好きなトラックは、ファーマーが隠れたハード・ヒッターぶりを遺憾なく発揮するB-3の‘Change Partners’、それまでジェントルなドラミングでこのセッションを支えていたマカーディがうめき声を発しながらファーマーと掛けあう辺り、エキサイテイングです。しかも、些かの崩れ、乱れもありません。
ちょっとしたアレンジが新鮮さを生みだしている‘Lullaby Of The Leaves’、メイバーンのカウンター気味なバッキングが思いのほか決まっている‘TONK’、ラスト・トラックのバラード‘Nobody's Heart’等々、他の曲も充分に聴かせます。
このアルバム以降、ファーマーはtpよりもflhを多用し始めますが、それを予感させる作品と言っていいでしょう。
レナード・フェザーはライナー・ノーツの最後を、こう締め括っている。
'‘As long as there is room for beauty and lylicism in jazz,such voices as Farmer's will never be silenced.’
いやぁー、巧い言い表し方ですね。さすがです。
“Bluespirits”(2009.4.17)
"ART" の方がアドリブラインが高度だと思いますが。
こちらはもっと温かみがあって、よりIntimateです。
フリューゲルホーンのせいかもしれませんね。
"PUNSU" の出だしのメイバーンのピアノは、音もなく海面を
滑っていくセイリング・ボートのようになめらかで素晴らしい。
Argoというレーベルだからこそ生まれた、名作だと思います。
仰る通り、客観的に聴けば”ART”になるやもしれませんが、
愛着という点になると本作が一枚上ですね。
80年前後、一度、マクリーンとの双頭来日公演を聴き、
世評を超えたファーマーの本当の力を確認しました。
確かにNYと違いどこそこ解放感があり、
名盤が多く生まれていますね。