人に知られたくないことは、「教えない」という返事の代わりに「個人情報だから」と言っておくと、根掘り葉掘り聞かれないで済む。
この返事の仕方は、黙って返事をしないより、もっときつそうに思うけれども。
こういう場合、個人情報と呼びはしても、情報というほどのものではないことが多い。
それほどだいじでもなく、中味はたいしたことでない、感情のかけらぐらいの、ごく寿命の短い心の動きのほうが、知られて嫌なこともある。
家族には知らないことがあってはいけないなどと、ホームドラマなどでときどき聞くせりふがあるが、なにからなにまで知らせておかなければというのは、ずいぶん息苦しい話だ。
気楽なはずのホームドラマが、ベタベタであったり、チクチクしたり、なんとも感じが悪いのは、感情の起伏や感動の波風で、ドラマを際立たせる量産定式から抜け出せなくなった作者が多いからだろう。
またかのような感情表現は、見聞きする側には邪魔でしかないのだが。