毎年夏前に政府から示される「経済財政運営の基本方針」に、「骨太の方針」という奇妙な略称が使われます。
骨太とは、主軸が太くがっしりし、かつ柔軟で、どんな外力にも耐え、内からの骨粗鬆のような障害もない、強靭な骨格の状態を表す言葉でしょう。
ある時、示した政策が、世論の一時的な批判には揺るがない、国政のしっかりした改革方向を示すという意味で、骨太の方針という言葉が使われました。
この方針は骨太のしかりしたものだと言い表したかったのでしょう。
その形容表現が、そんなつもりではなかったのに、いつのまにか略称に変容してしまいました。
骨太と呼べば、いかにもどっしりとゆるぎない内容をもっているかのように聞こえます。
こうして「骨太の方針」は、包装紙の飾り文字に似た役割を持たされ、聞くたびにどこかちぐはぐな感じをもつようになってしまっているのです。
むかし祖父が好んで食べていた「是はうまい」というふりかけがありました。
商品の名前なら使い方としておかしくはありませんが、政府が示す政策の呼び名に「これは骨太、しっかりしているぞ」という言葉を当てはめるのはいただけません。
大げさに言えば国語の崩壊です。
政策が骨太であるべきは、経済財政運営だけではなく、内外政、外交、防衛ほかすべてを含めた国政全体の骨格であるはずです。
受け狙いのような政策名称は、たとえ略称であってもよろしくありません。