スエミ姐さんが乳癌と診断されたのは7年前だった。
「ホントにその時は癌だけにガーンとなったのよ。
連れ合いも私以上に落ち込んでね。
でも、1か月か2か月でどん底は脱したわ。
病気と闘うんじゃなくてね、病気と上手に付き合っていくことにしたわ。」
そう言っていたことを覚えている。
その後、もちろん彼女はボンヤリ手をこまねいていたわけではない。
病気について調べ、人の意見を聞き、複数の医師の診察を受け、できる全てを試したと言える。
それなのに経過は、
恐れていた再発、骨に転移と最悪のパターンを辿ってしまった。
1年前までは、体が言うことを聞く限り、痛みに堪えて反原発デモにも参加していた。
「帰国者の友」の篆刻、パーティーなどのイベントにも、何回も来てくれた。
今年の春は、教え子たちとお花見を楽しみ、
橋下市長による大阪市交響楽団への助成金カットに立腹して
支援コンサートに出かけた。
実にいいコンサートだったと、南昌にメールで知らせてくれた。
しかし今月に入っての著しい体力の消耗は、
傍でもはっきり見て取れたそうだ。
その頃スエミ姐さんは、
最近疎遠になっている友人・知人に電話をかけ、
あちこちにメールを送った。
「記念だから」と、自分の陶芸作品のお皿を家に遊びに来た一人ひとりに包んで渡した。
〈釈明窓〉という法名も作った。
7月8日、久しぶりに大阪の味が食べたいだろうと言って、
中国から帰った私のために家人に車で送ってもらい、
近所のお好み焼き屋さんに(そこは2階なのに!)やってきた。
いつもの、明るく、大阪のジョーク連発のスエミ姐さんだった。
たった一度だけ、
法名を作ったお寺の住職の前で号泣したという。
しかし、そのあと、
「一回ちゃんと泣きたかったの。これですっきりしたわ」
と、いつもの明るいはきはきしたスエミ姐さんに戻った。
死に逝く人は、どうしてこんなに健気なのだろう。
昨年亡くなったもう一人の知人は、
「母のもとに行くことになりました」
と、職場を去って入院し、半年足らずで逝ってしまった。
職場では、てっきり故郷に帰ったと信じただろう。
住居の支払いもきちんと済ませ、
「死んでも友人には連絡しないこと」
と身内に伝えて、ひっそり病院で亡くなったそうだ。
死に逝く人は、どうして何もかも清算しようとするのだろう。
生きている者は、
死んでもその人と繋がりたいと思っているのに。
あんまりカッコよく死なれると、
ときには途方に暮れてしまうものなのに。
「ホントにその時は癌だけにガーンとなったのよ。
連れ合いも私以上に落ち込んでね。
でも、1か月か2か月でどん底は脱したわ。
病気と闘うんじゃなくてね、病気と上手に付き合っていくことにしたわ。」
そう言っていたことを覚えている。
その後、もちろん彼女はボンヤリ手をこまねいていたわけではない。
病気について調べ、人の意見を聞き、複数の医師の診察を受け、できる全てを試したと言える。
それなのに経過は、
恐れていた再発、骨に転移と最悪のパターンを辿ってしまった。
1年前までは、体が言うことを聞く限り、痛みに堪えて反原発デモにも参加していた。
「帰国者の友」の篆刻、パーティーなどのイベントにも、何回も来てくれた。
今年の春は、教え子たちとお花見を楽しみ、
橋下市長による大阪市交響楽団への助成金カットに立腹して
支援コンサートに出かけた。
実にいいコンサートだったと、南昌にメールで知らせてくれた。
しかし今月に入っての著しい体力の消耗は、
傍でもはっきり見て取れたそうだ。
その頃スエミ姐さんは、
最近疎遠になっている友人・知人に電話をかけ、
あちこちにメールを送った。
「記念だから」と、自分の陶芸作品のお皿を家に遊びに来た一人ひとりに包んで渡した。
〈釈明窓〉という法名も作った。
7月8日、久しぶりに大阪の味が食べたいだろうと言って、
中国から帰った私のために家人に車で送ってもらい、
近所のお好み焼き屋さんに(そこは2階なのに!)やってきた。
いつもの、明るく、大阪のジョーク連発のスエミ姐さんだった。
たった一度だけ、
法名を作ったお寺の住職の前で号泣したという。
しかし、そのあと、
「一回ちゃんと泣きたかったの。これですっきりしたわ」
と、いつもの明るいはきはきしたスエミ姐さんに戻った。
死に逝く人は、どうしてこんなに健気なのだろう。
昨年亡くなったもう一人の知人は、
「母のもとに行くことになりました」
と、職場を去って入院し、半年足らずで逝ってしまった。
職場では、てっきり故郷に帰ったと信じただろう。
住居の支払いもきちんと済ませ、
「死んでも友人には連絡しないこと」
と身内に伝えて、ひっそり病院で亡くなったそうだ。
死に逝く人は、どうして何もかも清算しようとするのだろう。
生きている者は、
死んでもその人と繋がりたいと思っているのに。
あんまりカッコよく死なれると、
ときには途方に暮れてしまうものなのに。