外国人にとって異国で生活するとき、まずぶち当たる壁は、
言葉、そして食べ物だろう。
黄君は、大学2年生ながら(9月から3年生)日常会話の基本はマスターしている。
慎重な性格も手伝って始めはあまり話さないが、
慣れてくると普通に話すので、周囲の人々は
「うわ、日本語めちゃ上手やん。だまっているから話せないんかと思っていたわ。」
と驚く。
昨夜は尼崎の我が娘宅で会食したのだが、遊びに来た近所の友達親子のうち、
小学5年生の子は、自然に話す黄君を娘の連れ合い(結婚相手)だと勘違いしていた。
そんな黄君だが、食事では悪戦苦闘している。
二日目の朝、ホームステイ先の一子さん宅では、
一子さんが何日も前からあれこれいろいろ考えて、
白いご飯・みそ汁・焼き魚(鮭)・漬け物・果物・その他、
腕によりをかけて作ってくれた。
しかし、
「何でも食べます」とメールに書いていた黄君の箸は
いっこうに鮭に向かわない。
一子さんは医者から塩分を控えるように言われているので黄君だけのために塩鮭を購入し、いつもよりずいぶん早起きしてせっせと作ってくれたのだ。
「鮭は日本人が最も好きな魚の一つです。生ではありません。
焼いてあるので是非食べてください。」
と私が言うと、生臭いので嫌だと言う。
さて、こういうとき、皆さんならどうするでしょう。
さすが年の功、一子さんは、穏やかにニコニコ笑顔を浮かべて、
「黄君のために作ったんだから、ちょっとでも食べてみてね。」
と優しく言うのであった。
私が
「日本では、わざわざ作ってくれたものを食べないのは失礼です。」
と爆発しそうな心を抑えて、冷静に言えたのは
一子さんの仏様のようなピースフルな微笑のお蔭だ。
もとより黄君に悪気があるわけではない。
クンクンと匂いを嗅いだりしながらも、おっかなびっくりすこおしずつ食べだした。
江西省では、川や池の魚は食べるが、臭みを消すために様々な強烈香辛料を使う。
朝の焼き魚にそれがないので、(生臭い)と感じたようだ。
しかし、頑張って半分は食べた。骨だらけの川魚に慣れているので、
「骨がない!」と驚きの発見もできた。
四日目、スエミ姐さんのところでは、
大阪のおばちゃん達(元教師・現教師が多い)に取り囲まれ、
「あんた!出されたものは全部食べなあかんねんで!」
「わたしらかて、中国に行ったときは、何でも食べたで。
蜂の子どもかてちゃんと食べてんから。」
と、厳しい教育を受けた。
五日目は我が娘、ナオの登場だ。
我々は回転寿司屋に出かけた。
さすがに私は気を遣って、初めから
「黄くんは生ものは無理だから。」
と言ったのだが、ナオは炙りサーモンにレモンをかけて
「これはちょっと焼いてあるからいいんちゃう。レモンもかけたから。」
と彼に差し出した。
(あ、それ半分生(なま)!レモンも江西省人は苦手では!)
と思った時は遅かった。
〈出されたものは食べなければならない。〉
と多くの人々による薫陶を受けた黄君はパクリと炙りサーモンを口に入れ、飲み込んだ。
ゆっくり顔を上げた黄君の目には涙が浮かび、顔中真っ赤になっていた…。
(ああ、可哀そうに。でも、なんでか可笑しくてたまらな~い!)
言葉、そして食べ物だろう。
黄君は、大学2年生ながら(9月から3年生)日常会話の基本はマスターしている。
慎重な性格も手伝って始めはあまり話さないが、
慣れてくると普通に話すので、周囲の人々は
「うわ、日本語めちゃ上手やん。だまっているから話せないんかと思っていたわ。」
と驚く。
昨夜は尼崎の我が娘宅で会食したのだが、遊びに来た近所の友達親子のうち、
小学5年生の子は、自然に話す黄君を娘の連れ合い(結婚相手)だと勘違いしていた。
そんな黄君だが、食事では悪戦苦闘している。
二日目の朝、ホームステイ先の一子さん宅では、
一子さんが何日も前からあれこれいろいろ考えて、
白いご飯・みそ汁・焼き魚(鮭)・漬け物・果物・その他、
腕によりをかけて作ってくれた。
しかし、
「何でも食べます」とメールに書いていた黄君の箸は
いっこうに鮭に向かわない。
一子さんは医者から塩分を控えるように言われているので黄君だけのために塩鮭を購入し、いつもよりずいぶん早起きしてせっせと作ってくれたのだ。
「鮭は日本人が最も好きな魚の一つです。生ではありません。
焼いてあるので是非食べてください。」
と私が言うと、生臭いので嫌だと言う。
さて、こういうとき、皆さんならどうするでしょう。
さすが年の功、一子さんは、穏やかにニコニコ笑顔を浮かべて、
「黄君のために作ったんだから、ちょっとでも食べてみてね。」
と優しく言うのであった。
私が
「日本では、わざわざ作ってくれたものを食べないのは失礼です。」
と爆発しそうな心を抑えて、冷静に言えたのは
一子さんの仏様のようなピースフルな微笑のお蔭だ。
もとより黄君に悪気があるわけではない。
クンクンと匂いを嗅いだりしながらも、おっかなびっくりすこおしずつ食べだした。
江西省では、川や池の魚は食べるが、臭みを消すために様々な強烈香辛料を使う。
朝の焼き魚にそれがないので、(生臭い)と感じたようだ。
しかし、頑張って半分は食べた。骨だらけの川魚に慣れているので、
「骨がない!」と驚きの発見もできた。
四日目、スエミ姐さんのところでは、
大阪のおばちゃん達(元教師・現教師が多い)に取り囲まれ、
「あんた!出されたものは全部食べなあかんねんで!」
「わたしらかて、中国に行ったときは、何でも食べたで。
蜂の子どもかてちゃんと食べてんから。」
と、厳しい教育を受けた。
五日目は我が娘、ナオの登場だ。
我々は回転寿司屋に出かけた。
さすがに私は気を遣って、初めから
「黄くんは生ものは無理だから。」
と言ったのだが、ナオは炙りサーモンにレモンをかけて
「これはちょっと焼いてあるからいいんちゃう。レモンもかけたから。」
と彼に差し出した。
(あ、それ半分生(なま)!レモンも江西省人は苦手では!)
と思った時は遅かった。
〈出されたものは食べなければならない。〉
と多くの人々による薫陶を受けた黄君はパクリと炙りサーモンを口に入れ、飲み込んだ。
ゆっくり顔を上げた黄君の目には涙が浮かび、顔中真っ赤になっていた…。
(ああ、可哀そうに。でも、なんでか可笑しくてたまらな~い!)