平良(たいら)とみさん。
「ちゅらさん」は見たことがありません。
でも、たった一作観ただけの「ナビイの恋」は泣けました。
「おばあ」という呼び方は、「さん」も「ちゃん」も、ましてや「さま」もついていないけれど、
沖縄の言葉で、深い深い親しみと尊敬が詰め込まれた言葉なんだと
あの映画で初めて知りました。
「ばばあ」と「おばあ」、一文字しか違わないのに対極に位置する言葉だなあ、
と感じ入ったものです。
登川誠仁さんの飄々とした歌声が多くのシーンに流れる中、
ブラジルから60年ぶりに帰ってきた恋人とナビイが船出していくあの場面は、
近松門左衛門の浄瑠璃の道行きにも似て、
私にはミュージカル・コメディとは到底思えませんでした。
ずっと、沖縄で俳優人生を歩んでこられた平良さんは、
「ちゅらさん」に出演を乞われて、はじめ乗り気ではなかったけれど
「自分が出演することが、沖縄のためになるのなら」
と決意してお引き受けなさったそうです。
平良さんも愛する沖縄を背負って立つ一人の女性でした。
辺野古、東村の座り込みをしている方々と、平良とみさんは
全くおんなじだ、と思います。
大切な沖縄のおばあが、一人亡くなりました。