辺野古への埋立土砂を搬送している安和桟橋出口部での死傷事故から50日近く経過した。今も沖縄防衛局は、事故の経過や再発防止策を提示できず、土砂搬送作業再開の目途は立っていない。
ところが昨日(8月15日・木)、防衛局は県に、「安和桟橋及び本部塩川港における安全対策の実施について」という要請書を提出した。
この要請書では、「安和桟橋では、連日、トラックの進路を妨害するため、意図的にトラックの進路上に出るという行為が行われており、--- 今般は警備員の制止を聞かず、左折して出ようとする進行中のトラックの前方車道上に出たことから、制止し続けた警備員がお亡くなりになったもの。--- 事故の背景には、連日、繰り返し行われている妨害行為があり、トラック運転手などの工事に関わる作業者や警備員など、民間人による作業を妨げ、民間人に対して危険・危害を及ぼす妨害行為が行われている」と決めつけ、「安和桟橋出入口歩道部へのガードレール設置」や、「本部塩川港への立入禁止」を求めている。
このブログでも何回も説明してきたが、今回の事故の原因は、防衛局が工事を急がせるために、ダンプの回転を早めるよう無理を強いたことにある。そのため、急かされた運転手が左前方の安全確認を怠ったまま、ダンプを急前進させたことから、事故が発生したのだ。
防衛局の今回の要請書は、そうした事実には全く触れず、全ての責任は住民の抗議行動にあるとしたもので、あまりに一方的なものだ。今年に入ってからも安和桟橋の出口部では、ダンプと一般車両の交通事故が立て続けに4件発生していることからも、事故の原因はダンプの無理な走行にあることは明らかである。防衛局は、安全対策を県に押しつけるのではなく、まず、自らの土砂搬送方法の問題点を見直し、再発防止策を示すことが必要である。
7月の定例県議会でも自民党議員が再三、追及したが、県土木建築部長は、「安和桟橋歩道部へのガードレール設置や、本部塩川港を立入禁止とすることはできない」と繰り返し答弁している。今回の防衛局の要請に対しても、毅然とした対応をとるよう望みたい。
今朝の琉球新報は1面トップ他、2面、23面でもこの問題を詳しく報じている。
特に、ダンプ運転手のコメント(23面記事(末尾に掲載))は、防衛局の問題点を鋭く指摘している。
「新基地建設行為にたずさわるダンプ運転手も防衛局の対応に疑問を感じている。『国は工事を急いで、強引なことをしていた責任を認められないから、筋違いの要請をしている』と語った。
事故後、ダンプに新たなカメラを設置するよう求めるなど、締め付けが強まっているという。運転手は嘆いた。『防衛局の対応が迷走している。抗議活動の人たちと折り合ってきた『1台ずつダンプを出す』という元の状態に戻せばいいだけだ。」
(防衛局が県に提出した要請書の冒頭部分)
負傷したAさんが、「トラックの前方車道上に出た」とはどういうことか。Aさんが立っていた場所は、歩道の車両乗入部であり、「歩行者、その他一般の通行に優先して車両乗入部を使用することはできない」(国土交通省中部地方整備局HP)とされているように、あくまでも歩行者の通行が優先されるところである。
防衛局は、事故の経過を知るために不可欠な、被害者のAさんや目撃者Bさんへの聞き取りもしていない。それでいて、「車道上に出た」と断定した根拠は何故か、説明しなければならない。
(車両乗入部の例(本件事故現場とは別の箇所))
(車両乗入部は「車道」ではない。あくまでも歩道の一部を道路管理者の許可を得て、隣接敷地への車両が通過できるようしたものであり、歩行者がおれば車両は一時停止しなければならないのは当然である。)
2024.8.16 琉球新報