今日(2月1日)の沖縄タイムスは、来週早々にも汚濁防止膜のためのコンクリートブロックの投下が始まると大きく報道した。琉球新報も同様の記事を掲載しているから間違いはないだろう。いよいよ、辺野古新基地建設反対運動も重大な局面を迎える。
今日は所要もあったので、辺野古では船には乗らず、午前中、ゲート前の座り込みに参加した。マイクを回されたので、このコンクリートブロック投下計画について説明した。「どういうことが分からなかったが、話を聞いて理解できた」と言っていただいたので、このブログでも説明しよう。
(沖縄タイムス 2017.2.1)
大浦湾での埋立工事に際しては、汚濁の拡散を防止するために汚濁防止膜が設置される。その汚濁防止膜を固定するために大量の大型コンクリートブロックが投下されるのだが、1月31日、防衛局が開いた環境監視等委員会がその計画を了承したというのだ。
(沖縄防衛局:第7回環境監視等委員会資料3)
<2種類の汚濁防止膜>
汚濁防止膜には「浮沈型」と「固定型」の2種類がある。いずれも海面のフロート部分から海中に7m~10mほどのカーテンがついている。そのため、強い抵抗を受けるので、「浮沈型」(上図右側)は、海上のフロート部を固定するために、海底に大型コンクリートブロックを投下してアンカーロープで結ぶ。台風等の大波・強風の際は、海面のフロート部分を海底に沈下させるという。今回、大浦湾には延長2,185mの「浮沈型」汚濁防止膜が設置され、それを固定するために海底に228ヶもの大型コンクリートブロック(11~14トン)が投下される。
「固定型」汚濁防止膜(上図左側)は、強風時にも沈下はさせず、「根固用袋材」(栗石を入れた網袋、1トン/個)を投下して海底を平坦にした上に設置したH型鋼に固定するものだ。今回、大浦湾には延長412mの「固定型」汚濁防止膜が設置される。
<岩礁破砕許可も得ずにコンクリートブロックを投下することは違法>
しかし、このようなコンクリートブロックや根固用袋材を海底に投下するためには、県の漁業調整規則第39条に基づく岩礁破砕許可を得る必要がある。防衛局は2014年8月、埋立本体部分の岩礁破砕許可を申請し、当時の仲井眞知事がそれを許可した。しかし、今回、投下が予定されている箇所は、埋立本体部分の外側であり、当然、防衛局は改めて知事に対して岩礁破砕許可の申請をしなければならない。もし、来週からコンクリートブロックの投下が始まれば、県の漁業調整規則に違反した重大な違法行為であり、「6月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金」(同規則第52条)が課せられる。
菅官房長官は、「日本は法治国家ですから」と繰り返している。しかし政府は、辺野古でも高江でも数々の違法行為を続けてきた。今回、さらに違法行為を繰り返すことは絶対に許されない。
(2015年1月、防衛局はやはり工事施工区域に沿って大型のコンクリートブロックを大量に投下した。翁長知事も中止を求めたが、防衛大臣が行政不服審査請求と執行停止を求め、農林水産大臣がその執行停止を認めてしまった。しかし、我々住民は、県の漁業調整規則違反ということで当時の防衛局長を那覇地府検察庁に告発している。)
また、「固定型」汚濁防止膜設置のための「根固用袋材」(栗石を入れた網袋、1トン/個)やH型鋼の投下も当然、岩礁破砕許可の手続きが必要である。
<県の照会にいっさい回答しないことも許されない>
このようなコンクリートブロック投下計画に対して、沖縄県は一昨年12月以来、文書照会を行ってきた。本年1月5日にも、「汚濁防止膜の敷設計画」について、「コンクリートブロックの寸法・重量」や「設置位置・座標」、そして計算根拠等を文書照会した。県は、その照会文書で、「本文書により照会した内容の確認が出来るまでの間は、コンクリートブロックを海域に投入しないよう、改めて申し添えます」としたが、防衛局は未だ回答すらしていない。
それにもかかわらず、防衛局は今回、「環境監視等委員会の承諾を得た」として、来週早々にもコンクリートブロックを投下しようとしている。環境監視等委員会は防衛局内部に設置されたものにすぎず、公平な第3者機関ではない。環境監視等委員会については、委員に対して、防衛局の埋立工事受注業者から「寄付金」が寄せられていることが大きな問題となってきた。このような内輪の、しかも不当な「寄付金」をもらってきた環境監視等委員会が承諾したとしても、それは何の説得力も持たない。漁業調整規則を所管する県に申請し、県の承諾を得るまではコンクリートブロックの投下は許されない。
<57トン、44トン等のブロック投下計画が、何故、「全て15トン以下」に変更されたのか?>
今回、防衛局は「浮沈式」汚濁防止膜固定のために、11~14トンのコンクリートブロックを228投下するとしている。これもきわめて不可解な話だ。防衛局はすでに3年前に埋立本体工事について業者と契約を交わしている。大成建設を中心とした共同企業体が受注した「中仕切岸壁新設工事」「汚濁防止膜設置工事」に汚濁防止膜のためのコンクリートブロック投下が指示されている。
ところが、その発注の際の工事設計書では、コンクリートブロック投下については、57トンのものが102ヶ、44トンのものが38ヶ、12トンのものが48ヶの合計236ヶとなっている。発注の際の内容が、突然、「全て15トン以下」に変更されたのだが、その計算根拠は全く示されていない。
第6回環境監視等委員会の資料では、これらの汚濁防止膜の設計は、「風速15m/sec」とされている。風速15m/sec以上の場合は海底に沈下させるからコンクリートブロックは15トン以下でよい」というのだろうか? 発注の際の工事設計書作成も、当然、計算の上で作成したはずだが、それが何故、今回のように変更されるのだろうか?
また、台風が近づいた際に、この汚濁防止膜をどのようにして沈下させるのか、そのためにどれほどの時間を要するのかも明らかではない。また「自立式」汚濁防止膜は、台風の際に撤去させるのかどうか等も示されていない。
<とんでもない防衛局の言い分---岩礁破砕許可なしに工事を強行するのか!>
埋立本体部分の岩礁破砕許可(2014.8.28)は、本年3月31日に更新期限を迎える。たとえ、今回、大型コンクリートブロックを投下しても、4月以降はいっさいの工事が出来なくなる。
しかし、政府はまたとんでもない主張を始めている。「岩礁破砕許可はそもそも必要ない」というのだ。政府は、「沖縄県漁業調整規則は、漁業権が設定されている漁場内での規則」今回は「名護漁協との漁業補償締結に当り、総会で漁業権消滅の同意を得た」ので、「工事区域には漁業権が設定されておらず、岩礁破砕許可の対象外」と言い始めている(2017.1.28 沖縄タイムス)。
こんな言い分は全く通用しない。それなら防衛局は、埋立申請が承認された後の2014年7月14日に何故、埋立本体部分の岩礁破砕許可を申請したのか? そして、同年8月11日、海底ボーリング調査に関する岩礁破砕等に関する協議書を提出したのか?
上記の沖縄タイムスは、「同じように漁業権の一部消滅手続きをとった那覇空港埋立については、すでに岩礁破砕許可の再申請をした。辺野古でも、知事が許可する見込みがあれば再申請する。そうでなければ申請しないというのであれば、政府こそ二重基準」と強く批判している。
そもそも漁業権の変更は知事が免許するものだ(漁業法第22条)。漁協の総会で漁業権の一部放棄を議決してもその時点で漁業権が消滅するのではない。2012年6月8日、水産庁長官は各都道府県知事に対して「漁場計画の樹立について」という文書を出している。そこでは、「漁業補償の際に、組合の総会の議決を経た上で、事業者との間で『漁業権の変更(一部放棄)』等を約する旨の契約が交わされる事例が見受けられますが、かかる契約行為はあくまでも当事者間の民事上の問題であり、法第22条の規定上、このことにより漁業権が当然に変更されるものではありません」と明記している。政府自らの文書でのこのように明記しているのだから、今回のような政府の言い分は全く通用しない。
<知事は、大至急、埋立承認の「撤回」を!>
もはや一刻の猶予もできない。このような巨大なコンクリートブロックが大量に投下されれば、大浦湾は取り返しがつかない深刻な被害を受けてしまう。県はただちに防衛局に対して、コンクリートブロック投下を中止するよう指示しなければならない。差し止めの仮処分申請等の法的措置をとることも必要だろう。
そして、この間、指摘されているように、知事は埋立承認の「撤回」に踏み切らなければならない。知事は現在訪米中だが、5日(日)に帰沖するのなら、来週の初め、6日(月)のうちに、「撤回」を行うべきだ。
(沖縄タイムス 2017.2.1)
(沖縄防衛局:第7回環境監視等委員会資料3)
(一昨年2月のコンクリートブロック投下)
(Kさん撮影)
(今日のゲート前、コンクリートブロック投下問題を説明)