11月17日(火)、翁長知事は、国の代執行提訴を受けて記者会見を行なった。各紙は翁長知事の「沖縄差別の表れ」「銃剣とブルドーザーによる強制接収を思い起こさせる」といった会見内容を大きく報道したが、この日の知事会見は、国の代執行訴訟についてだけではなく、防衛局が許可区域外に投下したコンクリートブロック問題についての県の調査内容の報告も同時に行われた。
私は、ちょうど11月15日の本ブログで、「知事はただちに岩礁破砕許可の取消しを!」と訴えたばかりだった(どうなったのか、コンクリートブロック不法投棄問題)。しかし、知事は17日の記者会見で、「県が8月末に行なった調査では岩礁破砕がなされたかどうかは判断することができなかった」として、岩礁破砕許可の取消しは行わないという見解を示してしまった。各報道機関は、代執行訴訟に焦点をあてていたため、この問題についての報道はごく小さく、その意味を解説した報道はない。しかし、この問題は極めて大きな意味を持っており、残念ながら知事は判断を誤ったと言わざるを得ない。今からでも再考し、岩礁破砕許可の取消しに踏み切るよう要請したい。
(本年8月31日から始まった県の臨時制限区域内での潜水調査)
●許可区域外へのコンクリートブロック投下問題の経過
経過を追ってみよう。今年初め、防衛局が大浦湾の工事施行区域(臨時制限区域)に沿って、フロート等のアンカーとするため、最大45㌧のコンクリートブロック(以下、「CB」)を大量に投下した。昨年8月28日、埋立本体部分については岩礁破砕許可が出されていたが、これらのCB投下は許可区域の外であり県の漁業調整規則違反となる。ヘリ基地反対協のダイビングチームが臨時制限区域の外側から潜水調査を行ってCBによってサンゴ礁が壊されている事実が明らかとなり、大きな問題となった。県は、昨年8月の埋立本体部分の岩礁破砕許可の際、「本申請外の行為をし、又は付した条件に違反した場合は、許可を取消すことがある」等の許可条件を付している。許可条件違反で埋立本体部分の岩礁破砕許可を取消すべきだとの声が湧き上がった。
しかし県は、「これらのCB投下によってサンゴ礁破壊の事実があるかどうかをまず確認する」として、米軍に臨時制限区域内の潜水調査を許可するよう求めた。そして、翁長知事は本年3月23日、防衛局に対して「県の調査が終わるまで全ての海上作業の中止」を指示した。しかし、防衛局は翌日、農水大臣に行政不服審査請求と執行停止の申立を行い、農水大臣は3月30日、その執行停止の申立を認め、知事の指示書の効力は停止されてしまった。
その後も沖縄県は、臨時制限区域内でのCBの潜水調査をするため、米軍との協議を続けてきた。一度は不許可とした米軍もやっと立入を許可し、県は本年8月31日から9月11日にかけて現地での潜水調査を行なった。
11月17日、知事は記者会見でその調査結果の報告をした。そこでは「半年以上も立入調査が認められず、岩礁破砕がなされたかどうかについては判断することができない。」として、岩礁破砕許可の取消しは行わないという見解を示してしまったのである。
●「今からでも岩礁破砕許可の取消しを!」
この知事の判断はどうしても理解できない。埋立本体部分の岩礁破砕許可は何よりも埋立承認に付随したものである。知事は、すでに埋立承認を取消したのだから、本来ならその際に埋立本体部分の岩礁破砕許可も取消さなければならなかった。今からでも遅くない。ただちに埋立本体部分の岩礁破砕許可を取り消していただきたい。
また、「岩礁破砕の事実が確認されなかったから、許可の取消しはできない。」というのも納得できない。県漁業調整規則に基づく岩礁破砕許可の手続は、「埋立、護岸・防波堤等の構築、消波ブロック等の設置」等の「海底の地形を改変する全ての行為」について事前に知事の許可を得るよう定めたものである。許可を得ないまま違法行為を行なったことに対して、それがたまたまサンゴ礁を破壊しなかったからといって許されるものではない。無許可行為に対しては、「原状回復を命じることができる」(「岩礁破砕等の許可に関する取扱方針」)と定められている。さらに、前述のように許可条件違反であることも明らかであり、知事は、ただちに埋立本体部分の岩礁破砕許可を取消し、コンクリートブロックの撤去を指示すべきである。
知事は記者会見で、「本件では政府の不条理極まる対応により、結果として、このような結論に至ったことを誠に苦々しく思っている」と強い怒りを示した。それならば、何故、この「政府の不条理極まる対応」を許してしまうのか? 岩礁破砕許可の取消しに踏み切るべきことは明らかである。
何度も説明してきたように、今後も埋立本体工事を阻止するための知事権限はいくつもある。しかし、これらの知事権限は、その時点で間髪を入れずに知事が毅然と対応しない限り、何の意味もなくなってしまう。