クリンソウを見に行った翌日、去年から計画していた「秘密の谷」にベニバナヤマシャクヤクを見に行った。前日に訪れた山ではオオバアサガラはまだ蕾だったが、但馬東部の山では花盛り。少し距離があって、目の前で見ることはできないが大きな花の房を沢山垂らしていた。
オオバアサガラ
ここから一度下り、また一つ峠を越えていつも車を停める沢の脇のスペースに到着した。この辺りも前日は雨が降っているだろう。そうであれば、蛭が元気良く活動しているはず・・・・。ハイカットの靴を履いてスパッツを付けた。その上からメントール入りのスプレーをたっぷりと吹きつけた。上半身は長袖だし、これで大丈夫の筈。。。
橋を渡って杉林の中の道を登った。途中から道を外れて杉の枯れ葉の積る急斜面を登って行く。最近は気温が上がって山で蛇に出会うことが多い。そう思って登っていると案の定、居た。薄茶にオレンジ色の縞がある気味の悪い蛇だ。ジムグリの若い奴だろう。蛇を避けて登って行こうと思い向きを変えた途端に杉の枯れ枝に乗ってしまったらしい。
転んでしまい、危うく蛇の上に倒れる所だった。。。起き上がったが、五十肩の左肩が痛み、しばらく動けない。友人は先に行ってしまった。斜面を登るのも左腕が使えないので何ともしんどい。何とか林道に出て進み、適当なところでまた山に入り込んだ。
去年、迷い込んだこの谷には最初、沢山のヤマシャクヤクの株があり小さな蕾を付けていた。他の山ではヤマシャクヤクはとっくに花の時期を終えていたから、ひょっとしたらベニバナヤマシャクヤクなんじゃないかと思ったのだ。ヤマシャクヤクは谷を登り切って尾根まで出て、そこから下った辺りでは芽が出たばかりだったのだ。でも、それからしばらくして友人がこの谷を訪ねて見ると、最初の谷のヤマシャクヤクは花を散らしていて、尾根を越えた辺りでベニバナヤマシャクヤクの花が残っていたという。そこで、最初の谷のヤマシャクヤクが花盛りなタイミングを予想して登ってきたわけだ。
友人に追いついて、早いかな・・・などと話しながら登る。ふと、時計をみると・・・・、あ!蛭が腕時計の脇に吸いつき、膨れ上がっていた。慌ててたたき落とすが・・・・
流血の惨事・・・
陽の当らない杉林の中の谷を登って行く。しばらく登ると、やっとヤマシャクヤクが咲いていた。でも・・・・
白い・・・・
また、白い・・・・
・・・・
タイミングは良かったけれどね・・・・
急斜面はまだまだ続いている。汗が腕を流れているので、血も流れ続ける。蛭のヒルジンというのは優れもので、全く血が停まることがない。仕方なく、ザックを降ろしてタオルを取り出し腕に巻いて登った。でも、息切れ。友人は先を急いで登って行ってしまった。そして、上から声が聞こえてきた。
「全部、白だ・・・・」。こっちは腕が紅に染まっているよ・・・・
やっと、友人の居る場所まで追いついて、また斜面を登った。
こんな薄暗い環境だったら、ヤマシャクヤクも遅く咲くということか・・・・
しかし、息が切れてなかなか登れない。膝に手をついて息を整えていると、面白そうな葉が杉の枯れ葉の間から顔を出していた。
ヤマエンゴサク?
ユリ科だろうけど・・・、小さな蕾がついている。
見上げる。
まだ、上に沢山咲いているじゃないか・・・・
意地になって登った。みんな白花なのにな・・・・
いろいろ考えて日にちを選んだだけあって、時期はぴったりだったけど、普通のヤマシャクヤクだったとは・・・・
また、見上げる。
友人は柄にもなく、一生懸命写真を撮っている。
友人がバテテいる俺を気遣って、「表がこの状態じゃ、尾根の裏の谷はまだ早いかもしれない。どうする?」と聞いた。
俺は答える。「ここまで来たら、行くしかないだろ」。一度登った急斜面を下り、尾根に向かって歩き始めた。
つづく。