ヒメニラの花
カタクリを見ながら福山に辿り着いた翌日は、友人と石灰岩の台地を切り裂いて流れる谷を歩くことにしていた。友人は前回、この場所を歩いた時に猿の群れに出会い怖い思いをしたらしい。それで、今回は僕を誘ったのだとか。山で猿に襲われて怪我をしたという話はあまり聞かないから、それほど危険とは思わなかったが、友人曰く、猿は群れで近づいてきて怖いらしい。独りで歩いていてふと寂しさを感じることはあるし、新しい発見をした時に一緒に喜びあえる相手がいないのはつまらない。
その日は朝まで雨が降っていた。雨が降ると川が増水して渡ることが難しくなるらしく、予定通り決行するかが決まったのは10時頃だった。13時に近くの道の駅で合おう!
予定の時間の30分前に道の駅に着いてしまった。約束の場所に車を停めると、友人の車に似た車が停まっていたが、まさかと思いトイレに行った。戻ってくると、友人が歩いていた。やはり、早くから来ていたようだ。午前中は周辺でゼンマイやタラノメを山ほど採っていたらしい。綺麗に下調理したタラノメをパックに入れて持ってきてくれていた。
さて、道の駅で友人の車に乗せて貰い谷を目指した。車の中はというと、タラノメにつく青黒く光る小さな虫がそこら中を歩き廻っていた。気持ち悪いが、文句は言えない。。。途中まで、何度か通った道を走っていたが、途中から分らなくなった。でも、何となく大体の場所は分っている。友人は車を停めて、支度を始めた。僕もサンダルから長靴に履き替えストックを持った。それから緩やかな下り道をしばらく下った。道とは言わないのかもしれない。僅かに踏み跡のある斜面。
高度差、約150mを下ったところで、川に出た。友人が増水したら渡れなくなると言っていた場所だ。さて川は・・・・、増水していた。長靴では渡れない。だからと言って、今さら引き返すことなど出来ない。周囲をあるいて渡れそうな場所がないか探していると、友人は言った。「おまえ、靴、脱げ!」。無慈悲だが極めて的確な判断だ。靴を脱いでストックを突きながら川を渡り、それから岸沿いに上流に向って歩いて行った。川沿いの草むらを覗きこむと、何とヒメニラが咲いていた。そして・・・・
レンプクソウ
最初から、随分とレアな2種に出会えるとは・・・・
レンプクソウとイチリンソウ
驚いたことにヒメニラは沢山咲いていた。といっても花は小さ過ぎて探すのが大変。
でも、今日は先を急いだ。湿度が異常に高く、谷には霞みがかかっているように見えた。
川沿いの道を歩いていると、ヒトリシズカが咲き始めていた。
オオバイカイカリソウ
初めて見る花。
また、ガスが濃くなってきた。
この先で、また川を渡らなくてはならなかった。四月とは言え、川の水は冷たくて足の先は痛いほどだ。両手にストックを持って流れに負けないように気を使った。
つづく。