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【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

【転載】金平茂紀と室井佑月、萎縮するテレビで孤軍奮闘を続ける二人が語る実態! メディアはなぜ安倍政権に飼いならされたのか

2019-04-25 23:11:30 | 転載
リテラ > 社会 > オピニオン > 金平茂紀と室井佑月が語るテレビの現実
室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第13回ゲスト 金平茂紀(前編)
安倍政権の言論弾圧体質によって、どんどん悪化している報道の萎縮。なかでも、ひどいのがテレビだ。第二次安倍政権発足以降、政権に批判的なキャスターやコメンテーターが次々と降板に追い込まれ、上層部から現場までが政権の顔色を窺い、批判的な報道はほとんどできなくなっている。
 そんななか、今回は地道に果敢に政権批判を続ける数少ない番組のひとつ『報道特集』(TBS)キャスターを務める金平茂紀氏をゲストに迎えた。金平氏といえば、『筑紫哲也NEWS23』番組編集長、TBS報道局長、アメリカ総局長などを歴任。定年退職後の現在も、『報道特集』キャスターを継続し、政権への厳しい批判も厭わない姿勢を貫いている。
 そんな金平氏に、やはりテレビでコメンテーターを続けている室井佑月が迫る。なぜテレビはここまで萎縮してしまったのか。御用ジャーナリストが跋扈する理由とは何か、そして、安倍政権下でテレビに何が起きたのか。テレビで孤軍奮闘を続ける二人の激論。まずは、前編をお読みいただきたい。
(編集部)

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室井 金平さんがこの対談に出てくださってすごいびっくりしました。これまでレギュラー的にテレビに出ている人にはみんな断られていたんです。金平さんは『報道特集』のキャスターをしているのに、こんな対談に出てくださって!

金平 僕はもう2016年にTBSの執行役員の任期も終わっているから、契約ベースでやっている。というか、TBSも扱いかねているんじゃないですか? TBSには定年まで長く勤めていたけど、以前、室井さんと一緒に共謀罪反対の呼びかけ人をしたことあったでしょ? あの記者会見をやった1週間後に呼び出されて上層部に言われたんです。「お引き取り願おうか」と。呼びかけ人と直接の因果関係はないんだろうけど、「もうそろそろ、こういうことをやる人間は扱いかねる」っていう空気があったんじゃないかな。

室井 あると思います(笑)。だって、わたしも同じですから。かれこれ20年情報番組に出ていますが、最近は毎回、会議で名前が挙がってるみたい。「次、降板」って。でも、わたしを降ろしたあとに番組と同じ考えの人を呼んじゃうと、わかりやすすぎるし、ちょっと休んだだけでネットにすごく書かれるから、降ろされそうで降ろされない(笑)。まあ、今後は分かりませんけど、たぶん、五輪前に辞めさせたいんじゃない。

金平 こう言っちゃなんだけど、同じような立場の2人で対談なんかやっていいのかな(笑)。

室井 TBSはかつて“報道のTBS”と呼ばれていて、とくに『筑紫哲也NEWS23』 時代の、家族でやっているような雰囲気は大好きでした。金平さんも筑紫ファミリーだったでしょ。
金平 筑紫時代は全スタッフ、そして番組もが一体となった感じで、うまく回っていた。筑紫ファミリーという疑似家族のような。でも、いまでは良き疑似家族はとっくに壊れています。「老壮青」って言っていたんですけど、いまは誰もファミリーとか思っていない(苦笑)。

室井 でも、TBSと言えば報道だったじゃないですか。

金平 かつてね。


室井 いまでも他局よりは頑張ってると思うけど。

金平 他が酷すぎるんでしょう。論評にも値しないようなところがほとんどになっちゃって。僕はいま65歳だけど、僕らが学生時代のテレビは、NHKは体制を代表する本当のことは絶対言わないメディアで、“お上の代弁者”として捉えられていた。そんななか、民放の報道ではTBSが圧倒的に強かった。かつて『JNNニュースコープ』(1962〜1990年放送)という番組があって、田英夫や古谷綱正、入江徳郎とかのベテランどもがいて、結構な迫力があったんです。当時、「NHKとTBS、どっちが本当のことを言っているのか」と問われれば、みんながみんな「TBSに決まってるじゃん」と言うくらいに力があった時代だった。その頃、他の民放は、テレ朝は、NET=「日本教育放送」時代で報道には力を入れていなかったし、フジテレビは娯楽路線、日本テレビはプロレスと野球。報道をやっていたのがTBSだった。だから本来強いのは当たり前なんです。


【ワイドショーが報道化して報道がワイドショー化、重要な問題が無視】

室井 でも今後はどうなんですか? わたし、情報番組に20年出てますけど、どんどん変わってきていると実感していて。たとえば政治的な問題が起きても、ワイドショーで取り上げるのは「細野豪志が二階俊博と会った」とか本質に関係ない話ばかりで、あとは安倍応援団が安倍首相の代弁を主張していて。

金平 かつてワイドショーとストレート報道の関係は、新聞社でいうと週刊誌と本紙みたいな、妙な上下関係があった。「報道は偉いんだ」という意識ですね。ワイドショーや情報番組はいわゆる井戸端会議。でも、現在のようなネット社会になり、ネットで出ている言葉と、印刷されて出るオールドメディアの言葉が受け取る側から見ると等価になっている。そんな時代ですから、報道番組もワイドショーも等価と捉えられる時代になっちゃった。だからテレビの本質からいうと、どっちもどっちなんです。

室井 テレビも視聴率至上主義だから、森友事件や辺野古新基地建設のことより、「貴乃花が離婚した」ということを取り上げる。ある意味仕方ないとは思うけど、カルロス・ゴーン事件では、その本質にはほとんど触れず、ゴーンが釈放されて変装していることを延々とやる。すごく変だし、本質をごまかそうとしている意図を感じるほど。

金平 ワイドショーが報道化して、報道がワイドショー化したということじゃないかな。いま、夕方のニュースを見ていてもほとんどワイドショーじゃないですか。やってるネタも変わらない。「テレビなんだから同じ」と平準化されてしまった。

室井 テレビ局も番組づくりを制作会社に任せている体制だし、制作会社もなんだかネトウヨ路線の会社も多くなっていて。だからそういう政治ネタを延々流されるより、むしろ「スズメバチが民家の軒先に巣をつくっちゃった」という特集を組んでくれたほうがマシって思っちゃいますよ。しかも沖縄の基地問題という日本にとって需要な問題も、アリバイ的に触れるだけ。

金平 興味ないもん、制作側も視聴者も。実は本土の多数派は沖縄のことに興味ないんですよ。悲しいですけれど。

室井 あります! わたしは興味ありますよ。だって基地問題は沖縄だけの問題じゃないもん。

金平 本来はその通りなんです。僕も在京メディアのなかでは沖縄問題を取り上げ続けている自負はあるし、通い続けてもいる。でも、普通の報道マンは違う。「沖縄やったって数字ついてかないから、やったって仕方がない」と平気で公言している局員もいます。

室井 取り上げ方だと思う。「安倍政権に歯向かってる」みたいなつくり方したら、みんな面白いから絶対見るはず。

金平 いやいや、「安倍政権に歯向かってる」というつくり方をしようと思う報道関係者なんて何人いると思ってるんですか? 室井さんも本当はわかってるでしょう。どんなスタッフがどういうことを考えながら原稿を書いているか(笑)。

室井 確かに、すっとぼけて論点をずらしてるとは思います。それは嘘をついているのと同じことだと思う。たとえば、消費税を取り上げるにしても、ポイント還元の話を何時間も延々とやる。それより増税前の約束と違う使われ方をされようとしていること、大企業は減税されて税収入のトータル額はほとんど変わってないということを指摘すべきなのに。


【メディアが生み出した安倍政権の傲慢、統計不正問題でも厚労省が酷い会見】

金平 わかりやすいからね。自殺した西部邁さんが言ったようにJAP.COM(アメリカ属国株式会社)になっちゃったんだよ、日本は。西部さんの言う通りで、国全体が株式会社みたいになっちゃって、儲けをいくらにするとか、ポイント還元とかの話ばかり。日本人のなかに数値主義、視聴率主義がすっかり根付いてしまった。でも、日本の1968、69年頃はめちゃくちゃ面白かったんです。たとえば最近、「1968年 激動の時代の芸術展」に行ったけど、赤瀬川原平のニセ千円札事件についての展示があって。ニセ札をアートとして制作したが起訴された事件だったけど、裁判になって、法廷で証拠物として“ニセ札”が陳列された。それを彼らは「展覧会」と称していて。しかも当時、時代の最先端にあった彼らは数値をバカにするんです。何でも数値化して何かやるのって「バカじゃないの?」って。でも、いまは数値、数値、ポイントポイントばかり(笑)。原子力資料情報室の伝説的人物の故・高木仁三郎も、1970年代、すでに「朝日ジャーナル」で数値化への批判をしていた。数字を物神化させ、それが唯一の価値の尺度となっている批判だったけど、実際、いまの世の中そうなってしまっている。もちろん税金の話もね。

室井 消費税増税にしても「ポイント還元で儲かる」って言われても、そもそも自分たちが払った税金でしょ。それを還元するって言われてもなんだか詐欺にあっている気分だもの。詐欺といえば、福島第一原発の事故対応費が民間シンクタンクの資産によると最大81兆円だというのが朝日新聞に出ていたけど、数値化がそんなに好きなら、81兆円ってすごく大きい金額だし、ワイドショーで出したら国民ぶったまげだと思うけど、ぜんぜんやらない。

金平 いまの政権にとって数値は自分たちの主張を通すための後ろ盾として使う道具だって考え方だから。数値は客観的な事実とか、そういうものではないという。道具だから。だから都合のいい数値しかあげられない。都合の悪い数値は隠す。

室井 最近では厚生労働省の統計不正なんか典型でしたよね。国民を騙すために政権と官僚が好きなように数字を操作できちゃう恐ろしい時代だと実感しました。

金平 ひどい話だよね。あのとき、厚生労働省が報告書を出したときの記者会見に行ったんです。厚生労働省特別監察委員会の樋口美雄委員長が、とにかくひどかった。会見の時間を区切っちゃって、ろくな解説もしないし、記者もあまり突っ込んだ質問しないんだよ。見てて腹立っちゃって。こんなことで記者クラブの連中も納得しているのか?と大いに疑問に思いましたよ。そのなかで僕は一番の年寄りだから「こんなので納得すると思ってるんですか?」というような質問をしたら、会見場が何だかシラっとするわけです。

室井 すっかり飼いならされてる感じがします。番記者なんか政治家が外遊するときにも同じ飛行機で同行したりして。

金平 ドキュメンタリーをやっていた先輩にこんなことを言われたことがあるんです。「記者の起源なんて(取材対象者に)同行して飯食わされたり飲まされたりして情報の密使の任務を果たす、そういうやつがおまえらの起源だよ」って。たとえば今野勉とか村木良彦などTBSが輝いていた時代のドキュメンタリストは「報道のストレートニュースをやっている記者は敵だ」なんて言ってたからね。「どうせ御用聞きだろう?」って。そのくらいラディカルだった。そういう人たちと番記者の間には緊張関係があったから、逆に僕なんかは悔しいから「そんなことストレートニュース部門の俺たちは言われたくない」って思って、一生懸命がんばって、スクープをモノにしようとしましたけどね。


【望月衣塑子記者問題の官邸前デモに参加した記者はわずか20~30人】

室井 番記者との緊張関係といえば、東京新聞の望月衣塑子さんが話題ですよね。それまでほとんどまともな質問をしなかった記者クラブのなかで、菅偉義官房長官に果敢に質問して。それで官邸から排除され恫喝されているのに、他の記者は知らんぷり。逆に「彼女がいると邪魔だ」って言われちゃったりして。会見を見ていても、記者はみんなうつむいてパソコンをカタカタしてるだけ。

金平 3月14日に首相官邸前で新聞記者などメディア関係者らと市民約600人がデモをおこなって、望月記者への嫌がらせに抗議したけど、しかし現役の報道記者は、正直に言うと、20~30人くらいかな。あとはOB、OG、リタイアした人。現役記者としてはデモに参加すると会社に睨まれる可能性もあるからね。でも、それでは大きな力にならない。一線にいるメディア関係者が大挙してやらないと。人ごとじゃなくて自分たちの問題だという意識が希薄なんてすね。しかも望月記者が孤軍奮闘しているなか、江川紹子などが“どっちもどっち論”を主張するなど、ひどい状況です。

室井 自分は関係ない。自分の問題じゃない。番記者なんだから政府幹部センセイの言い分を聞いていればいい。そんな意識なんじゃない。だから望月さんの記者としての当然の問題意識も理解しないし、ひとり怖い思いをしているのも理解できない。わたしも秘密保護法のデモに行ったことありますが、周りを見渡したらメディア関係者や新聞社の人すら本当に少なくて。味方がいないって、本当に怖い。

金平 僕らの本来の仕事は、「権力は監視するものだ」ということで、とにかく権力を批判することです。「ウォッチドッグ」とも言うけど、そうした批判精神を失ったらメディアは存在価値がない。あと、これは筑紫さんが言っていたことだけど「マイノリティになることを恐れちゃダメだ。マジョリティなことを言い出したらダメ」だと。ダイバーシティ、多様性が大切で、一色に染まるのは「気持ち悪い」と。それはメディア人にとって基本ですよね。権力監視、少数派を恐れるな、多様性を尊重する。この3つがあれば少々の失敗は仕方ない。でも、いまのメディア状況を見ると、全部逆の方向にいっている。権力監視じゃなくて、ポチ、御用記者に成り下がり、それを恥じるどころか嬉々としている。田崎史郎とか岩田明子とか、大昔の山口敬之とかね。権力の真横にすり寄って、人事にまで口を出すようになる。

室井 なんでそんな御用記者がうじゃうじゃいて、まかり通っているのか、まったくわからない。

金平 特に最近顕著だと思うけど、テレビの制作側からしたら「政権に近い=便利に使える」という意識もあると思う。一方、御用記者は、政権や総理に近いことを、社内的生き残りの処世術、人事に使うわけです。「わたしは総理と直接話ができますから」と。みんな苦々しく思っているけど、そういう記者は社内的に力を持ってしまう。

室井 安倍政権で置かれた内閣人事局の構造、やり方と一緒じゃない。安倍さんに近い人、お友だち、イエスマンばかりが出世する。

金平 そうです。それがメディアがダメになった原因のひとつですね。御用記者が優遇され社内で出世する。メディア企業で、安倍政権と同じような構造が出来上がっている。ガタガタうるさいことを言う奴はパージされ、吠えないやつのが「かわいい、かわいい」と重宝される。

室井 なんか話を聞いていると、悔しくて絶望的な気持ちになるね。

(近日公開予定の後編に続く)


【広原盛明のつれづれ日記 2019-04-23 】 転載と私見

2019-04-25 06:06:19 | 転載と私見
Ⅰ:転載
沖縄・大阪衆院補選における自民2敗は〝予定の行動〟だった、大阪維新はなぜかくも強いのか(3)

 統一地方選後半戦と沖縄・大阪衆院補選の結果が出た。統一地方選の結果については何れ論じるとして、今回は沖縄・大阪の2つの衆院補選に的を絞って考えてみたい。選挙結果についての各紙1面の見出しは「衆院補選 自民2敗(完敗)」というもので、いずれもが夏の参院選に対する影響の大きさを伝える内容だった。具体的には「政権『常勝』に陰り」(朝日)、「自民、参院選へ立て直し」(日経)、「自民完敗 参院選に危機感」(産経)、「自公2敗 安倍政権に打撃」(赤旗)など、かなり与党に厳しい論調となっている。



 だが、選挙情勢を深読みすると、安倍政権とりわけ首相官邸にとって今回の衆院補選における2敗は〝予定の行動〟だったと言えるのではないか。沖縄は最初から「負ける選挙」と諦め、大阪は敢えて「負ける選挙」だと位置づけていたので、選挙前から「自民2敗」はすでに織り込み済だったのである。自民党関係者が「今回の補選はそれぞれの地域事情に基づくものであり、夏の参院選にはさほど影響しない」と言うのはそのことを指している。



沖縄選挙がもはや利益誘導策では勝てないことは、自民といえどもわかっている。あれだけ民意を踏みにじってきたのだから、今さらどんな利益誘導策も通用しない。沖縄県民の誇りが許さないからだ。一方、大阪は少し事情が込み入っている。安倍政権の政治戦略からすれば、維新とりわけ大阪維新は改憲勢力の「盟友」であり、これを潰すことは絶対にできない。まして、安倍首相と菅官房長官は橋下氏や松井氏と酒食を共にする昵懇の間柄であり、個人的にもきわめて親しい関係にある。首相官邸が創価学会幹部と共謀して大阪都構想住民投票に漕ぎつけたのも、政府の総力を挙げて大阪万博の誘致に取り組んだのも、すべては維新を安倍政権の「手駒」として使うためだ。



 日本第2の都市大阪で、知事・市長という手駒を自由に使える政治効果は大きい。野党共闘を分断する上でも公明党を手なずける上でも、維新を自家薬籠中の物にしておくことは首相官邸にとって政権維持のための最重要事項といえる。これに比べると、自民の国会議員1人や2人を失うことなど物の数ではない。安倍首相や菅官房長官が大阪ダブル選挙で自民候補の応援に入らず、また衆院補選では「負ける」ことがわかってから首相(だけ)がアリバイ的に応援演説に入ったのは、すべてこの判断に基づいている。



 安倍政権にとって、大阪ダブル選挙や衆院補選で維新が息を吹き返し、野党に流れるかもしれない無党派票を食い止めることができればこれに越したことはない。そのためにも夏の参院選の橋頭堡ともいうべき大阪衆院補選で維新が勝利し、その勢いを強めることができれば「何倍もお釣りが返ってくる」と踏んでいるのである。可哀そうだったのは大阪自民だが、なにしろ「弔い合戦」としか言えないような旧い体質のままだから、こんな連中は切り捨てても仕方がないと思われているのだろう。



 ところで、大阪衆院補選にはもう一つ大きな問題がある。それは、共産の議席を投げ打って野党共闘候補として出馬した宮本氏が惨敗したことだ。宮本氏の得票数は1万4千票、得票率は9%で候補者4人中の最下位だった。



【大阪12区衆院補選確定票数】

        60,341(38.5%) 藤田文武 維新  

        47,025(30.0%) 北川晋平 自新、公明推薦

        35,358(22.6%) 樽床伸二 無前

        14,027( 8.9%) 宮本岳志 無前、共産・自由推薦

        156,751( 100%)



 毎日新聞と共同通信社などが共同実施した出口調査によると、宮本候補が惨敗した構図があからさまに浮かび上がってくる。以下はその要約である(毎日、京都19年4月22日)。

(1)大阪衆院補選で投票した有権者の政党支持率は、維新31%、自民27%、公明9%、共産5%、立憲民主4%、無党派層21%などである。ここで注目されるのは野党支持率の驚くべき低さであり、共産と立民を合わせても9%、これに数字としては上がってこない国民や自由を加えてもせいぜい10%余りにしかならない。これでは表向き「野党共闘」を掲げても、有権者にとってはせいぜい「弱小政党の集まり=烏合の衆」程度にしか見られないのではないか。

(2)宮本候補への支持政党別投票率は、共産支持層77%は当然としても、立民支持層27%、無党派層9%とあまりに少ない(国民はゼロ)。立民支持層の大半(57%)は樽床氏に流れ、無党派層は樽床41%、藤田37%、北川14%、宮本9%に分散している。つまり、宮本氏は「野党共闘候補」として位置づけられず、泡沫候補レベルの投票しか獲得できなかったのである。

※朝日新聞の出口調査でも、無党派層の投票先は樽床35%、藤田34%、北川22%、宮本9%とほぼ同じ傾向が出ている。また宮本氏は、「夏の参院選で野党共闘を進めるべきだ」と回答した投票者の中の僅か10%しか支持されていない。つまり野党支持者や無党派層の中の共闘推進派の中で、宮本氏はその代表として認識されていないのである(朝日19年4月22日)。

(3)大阪都構想に対する賛否は、藤田投票者が賛成93%:反対4%(以下同じ)、北川投票者42%:52%、樽床投票者53%:38%、宮本投票者34%:62%である。「大阪都構想の実現で大阪を成長させる」「維新はそのための改革の旗手になる」という維新のアピールが広く有権者に浸透し、宮本投票者の3分の1までが大阪都構想に賛成しているという世論状況が形成されているのである。この世論状況を勘案しないで「大阪都構想反対」一本やりの公約を連呼しても、有権者の耳にはなかなか届かない。大阪を元気にする政策提起をともなわない安倍政権批判や大阪都構想批判だけでは、有権者の心を掴むことができなかった――。このことが、維新圧勝の背景であり、宮本氏惨敗の原因である。



 これに対して、沖縄衆院補選では名実ともに野党共闘のレベルを超えた「オール沖縄」の共闘体制ができあがっている。そして「オール沖縄」は、普天間飛行場の辺野古移設に反対という強固な世論によって支えられている。屋良投票者の89%が辺野古移設に反対であり、無党派層の76%、公明支持層の31%、自民支持層の18%が屋良候補に投票している(毎日、同上)。無党派層による屋良候補投票76%と宮本候補9%との間には、「天と地の差」があると言ってもいい。



 ところが、2つの衆院補選の結果を受けて立憲民主党の長妻選挙対策委員長は、「自民党の失速を感じている。(今後は)野党共闘を強力に進めていきたい」と語ったという(読売19年4月22日)。また、共産党の志位委員長は「宮本候補を先頭とするたたかいは、今後に生きる大きな財産をつくった」と述べている(赤旗19年4月22日)。大阪衆院補選の惨憺たる結果からどうしてこれほどの能天気な総括ができるのか、その真意はいっこうに分からないが、低迷している野党支持率をそのままにして形式的な野党共闘を組んでも結果は目に見えている。沖縄のように無党派層はおろか保守層の一部までも引き寄せることのできる政策を共有することなしには、夏の参院選はおろか衆参同日選挙にも到底対応することはできないだろう。


Ⅱ:私見


 広原盛明氏の結果分析ぬは、なるほど、と肯くことが多く、まなぶところが大きい。
では、日本共産党宮本岳志氏の無所属候補となり、野党共闘をよびかけた実践はどう評価されるべきか。私は宮本たけし候補と次々に応援が広がる様子を同タイムでネットで見てきたので、広原氏の分析は見事とうなりながらも、選択できた作戦としては、あれはベストに近いと思う。

 それでも、投票の数値を見ると驚愕の念に駆られる。

もはや日本社会の状態は、このような客観的情勢下に置かれている。
ここからの戦略は、仲間内での同感だけではなく、安倍政権首脳部の真相を見抜くことと、安倍自民党を支持する世間の社会心理を「あるがままに」見抜くことだ。

選挙戦で結果は意図と異なる場合でも、闘うことそして結果をできりだけ客観的に把握して、その対策をもとに再度挑戦すること。敗北を教訓化して闘い続けることだ。
そのような教訓として、広原盛明氏の分析は実に大切な見識と感ずる。