2023年12月号(NO.218)
1面~3面
島全体が訓練場 徳之島 基地なき島も有事拠点(栗原佳子)
昨年末の安全保障関連3文書の改定からまもなく1年。南西諸島の防衛体制の強化が打ち出されるなか、部隊が配備された島々ではさらなる増強が進められている。空港や港を有事に利用する態勢づくりも進む。そんな中、自衛隊関連施設はないが、なし崩し的に大規模な日米共同訓練の場とされているのが鹿児島県の徳之島だ。
島最北端の徳之島町手々(てて)海浜公園。11月15日午後、静かなビーチに突然、重低音が響き、見る見るオスプレイの機影が近づいてきた。砂浜の枯草や小石などがびゅんびゅん飛び散る。150㍍は離れているが、ものすごい風圧だ。
オスプレイは緑地に着陸。すぐに機体の後部ハッチが開き、バラバラっと約15人の隊員が小銃を抱えて飛び出してきた。島しょ防衛を担うという触れ込みで創設された「日本版海兵隊」水陸機動団だ。彼らがビーチで戦闘態勢を取ったのが、遠目にもわかる。ほどなくオスプレイは離陸。戦闘態勢を解いた隊員たちを乗せ、カーキ色のトラックが走り去っていった。あっという間の出来事だった。
徳之島は、11月10日から20日まで全国で展開された陸上、海上、航空の自衛隊統合演習の重要な舞台になった。総勢で900人。海岸など島内15カ所以上が訓練場として使われた。日時などは事前に告知されるが、この訓練は公表されていなかった。
「本気の訓練だから隠したいんでしょう」と、同行した奄美市の男性がいう。「この公園を使う法的根拠はありません。監視の目がないと思って、やりたい放題ですよ」
世界自然遺産にも指定された徳之島。風光明媚な海浜公園はバーベキューやキャンプ、海水浴もできる人気スポットだ。しかし訓練は、手々集落の住民さえ知らされていなかった。爆音で仰天し、何事かと公園に駆け付けた住民は、自衛官に立ち入りを禁じられたという。
オスプレイが着陸した緑地は茶色く変色していた。焦げていたのだ。遮蔽板も敷いていなかった。
この統合演習には自衛隊3万人超、米軍1万人超が参加した。1979年から始まった演習に、一昨年から米軍も参加している。
徳之島は昨年11月の日米共同統合演習「キーンソード23」で大規模な訓練場になった。日米のオスプレイが訓練するのは国内で初めてだった。
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4面~5面
混迷続く大阪万博 「投資無駄に」最悪の判断(矢野宏)
開幕まで500日に迫った「2025年大阪・関西万博」。海外パビリオンの建設遅れや会場整備費の上振れなどの山積するなか、メキシコとエストニアが参加を辞退した。他国からもコスト高に不安の声が上がっており、辞退が続く可能性は否めない。大阪市議会で万博・カジノ問題を追及してきた前市議の川嶋広稔さんが11月3日、大阪市内で開かれた「うずみ火講座」で講演。大型プロジェクトが陥りやすい罠に触れ、「効果が得られないなら中止か変更しかない。これまでの投資が無駄になるという判断は最悪だ」と訴えた。
「本当に建設が間に合うのか」。日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長(清水建設会長)が6月22日の記者会見で懸念を示したことで、建設準備の遅れが一気に表面化した。しかも、宮本会長は2022年9月には「2025年日本国際博覧会協会」(博覧会協会)に対し、開幕に間に合わなくなると伝えていたという。
「大阪府の吉村洋文知事は博覧会協会の副会長でありながら日建連からの懸念を『聞いていない。耳に入ったのは今年5月だ』と発言したが、統一地方選が終わったあと。無責任すぎないか」と川嶋さんは指摘する。選挙では「万博誘致に成功したのは維新の功績だ」と大々的に宣伝しながら、ここにきての責任転嫁。川嶋さんは「万博は成功したら維新の手柄、失敗したら自民の責任になる」と警鐘を鳴らしてきた。
大阪・関西万博は25年4月13日から半年間、大阪湾の人工島「夢洲」(大阪市此花区)を会場に開催される。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。期間中の来場者は2820万人、経済効果2兆円と試算している。
万博には150超の国・地域が参加予定。そのうち、メキシコを含む56カ国が当初、自前でパビリオンを建設する「タイプA」を希望していた。「万博の華」と言われるが、建築資材や人件費の高騰で、国内の建設業者が決定したのは半数程度。博覧会協会はプレハブなどの建物を整備し、参加国が外装や内装を行う簡易な「タイプX」を提案したが、移行を決めたのは現時点でブラジルとアンゴラだけ。着工期限は12月~24年1月に迫っており、博覧会協会は複数の国がタイプAを断念すると見込み、25カ国分のタイプXを先行発注した。「撤退ドミノ」を食い止めるための苦肉の策だ。
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6面~7面
リニア新幹線用地買収 住宅突っ切る高架橋(阿久沢悦子)
リニア中央新幹線の工事現場を歩く随時連載。今回は山梨県の甲府盆地を横切る予定のリニア高架橋の用地買収をめぐり何が起きているかを、甲府地裁での証人尋問から検証する。
「リニアの高架で、自宅の土地が三角形に切り取られるんですよ」
最初にそう聞いたのは2年前、リニア高架橋が通る予定の南アルプス市を訪ねた時のことだった。何を意味しているのか、すぐにはつかみかねた。
10月24日、甲府地裁であったリニア工事差し止め請求訴訟の口頭弁論で、原告側の書面に掲載された様々な地図を見て、得心がいった。リニア中央新幹線は南アルプス市の住宅地を斜めに突っ切る。高架橋は高さが防音フード込みで約30〜35㍍、幅21・6㍍。JR東海は高架橋の直下の土地「だけ」を買収しようとしている。高架橋ベルトは、現に人が住んでいる用地を分断したり、三角形に切り取ったりしていた。
この日は原告や補助参加人8人の証人審問があった。
原告の一人、秋山美紀さん(51)は2012年、南アルプス市の一戸建てを購入し、夫、娘と移り住んだ。東側に富士山を望む、日当たりや風通しのいい家だ。3年後、JR東海の住民説明会でリニアのルートが自宅の真上を通ると知った。職員はラジカセからリニアの走行音を流し、「騒音はこのぐらいでそんなにうるさくないです」と説明した。「いくらでもボリュームが調節できるじゃないか」と住民たちは失笑した。JR東海の環境アセスメントでは、防音フード付きの場合、営業運転時の騒音はガイドウエイ中心からの距離25㍍で65デシベルと予測されている。日本の住宅地における環境基準の「夜間40デシベル以下、昼間50デシベル以下」を大きく上回る。
秋山さん宅には、その後2、3回、職員が土地の買収交渉に訪れた。敷地の南東にあたる1辺3㍍の三角形の土地だけを売って欲しい、と打診された。ルートは母屋から2㍍しか離れていないが、建物にかかってはいない。
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8面~9面
宝塚歌劇団の記者会見 開き直る閉鎖社会(粟野仁雄)
「清く、正しく、美しく」のタカラヅカが激震だ。高校から阪急宝塚線沿線に暮らし、『ベルサイユのばら』が大人気だった学生時代は石橋駅で毎朝「押し屋」のアルバイトをしていた。阪神・淡路大震災では、壊れた施設で若き天海祐希さんの稽古も取材、雑誌のグラビアで大スター轟悠さんを取材したこともある。ファンとは言えないが親近感はあった。ところが今回は愕然とする事態だったようだ。
中学時代から見ていたヅカガールは電車内では背筋をピシッと伸ばして微動だにせず、ホームでは電車にお辞儀をする。異様な光景でもあった。
それなら害はないが、9月に宝塚市のマンションで自殺した25歳の宙(そら)組団員Aさんに関して過酷な超過労働とともに先輩団員から陰湿ないじめが続いていたことに対して、加害団員からの謝罪と補償を遺族が求めていることを、代理人の川人博弁護士が発表していた。
この問題は早くから「週刊文春」がスクープとして報じていたが、何が真相なのか。
11月14日に宝塚ホテルで開かれる劇団の記者会見に出向こうと劇団広報に電話した。朝からテレビでも「今日の夕方に会見」と報じているのに当日の午後になっても劇団広報の男性は「調整中で日にちも何も決まっていません」と繰り返した。阪急電鉄の広報に聞くと女性が出て「劇団に聞いてください。こちらではわかりません」。会見には参加できたが、司会は阪急電鉄の女性広報部長だった。
会見で説明したのは、劇団の木場健之理事長、村上浩爾専務理事ら3人。会見内容は多く報じられているが、要は外部弁護士による聞き取り調査の発表。「ハラスメントやいじめは確認できなかった」と完全否定した。その一方で超過労働は認めて謝罪し、木場氏が辞任することを明かした。
会見が始まって1時間以上して週刊文春の記者が「ご遺族の代理人が『いじめがなかったことなど納得できない』と言っています」と尋ねた。文春の記者は、配られた資料をいち早く遺族弁護人に送ったのか。木場理事長は驚いた様子で「答えられません」とした。
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10面~11面
関東大震災100年 横浜の朝鮮人虐殺 巡査告げた「武装せよ」(栗原佳子)
1923年9月1日午前11時48分に発生したマグニチュード7・9の大地震は、震源に近い神奈川県全域に未曽有の被害をもたらした。建物倒壊、火災、土砂崩れ、津波ーー。特に横浜は壊滅状態で、陸の孤島と化した。そこで起きた朝鮮人虐殺は東京以上に大規模だったとされる。しかし、詳しい実態はいまも分からない。「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会(以下、神奈川実行委)」の山本すみ子さんと今本陽子さんの案内で虐殺現場の跡地をフィールドワークした。
JR横浜駅から徒歩10分。住宅街の急な坂道を上りきると、視界が開けた。10月28日、神奈川区高島町の高島山公園。ヒロシマ講座(竹内良夫さん主宰)の連続フィールドワーク「虐殺100年の現在地~歩いて考える関東大震災」の横浜編はここからスタートした。戒厳令下、神奈川の司令部が置かれた場所でもある。
「今夜、此方面へ不逞鮮人が三百名襲来することになって居るそうである」「十六歳以上六十歳以下の男子は武装して警戒して下さい」
2日午後、巡査が住民や避難者に告げた言葉を教師の八木熊次郎さんが日記に書き留めていた。八木さんは市街地から避難。同じく2日に避難した黒河内巌さんは同日の日記に「朝鮮人が飲用水井戸へ毒を打ち込みたりとて鮮人と見たら皆打殺せと極端なる達しあり」とつづった。
「神奈川区は大虐殺地域だったのです」と山本さん。横浜中心部は大火に見舞われ、神奈川区を管轄した神奈川署以外の警察署は全焼した。虐殺は火災エリア周辺で発生。避難地が虐殺の現場と化し、この高島山周辺でも虐殺が繰り広げられた。
留学生らでつくる在日本関東地方罹災同胞慰問班調査班が被災地を回った。犠牲者数6661人、うち神奈川県が3999人を占めた。しかし、司法省調査では神奈川県2人、横浜市内はゼロとされた。
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12面~13面
ウクライナ最新報告 負傷兵の病院も標的(西谷文和)
ポーランド、ワルシャワ西駅のバスセンターから夜行バスでキーウへ。キーウには正午に着く。昼のバスに乗ってしまうとキーウ着が深夜、ウクライナには夜間外出令が出ているのでバス停で野宿する羽目になる。なので夜行バスで行く。乗客のほとんどが女性と子ども。18歳以上、60歳以下のウクライナ男性は原則として国に残らねばならないので、ポーランドに脱出できるのは原則、女性と子どもと老人だ。
10月5日正午、キーウ着。通訳のダニエルと再会。下町のアパートにチェックインして取材開始。まずはキーウ郊外のイルピン陸軍病院へ。実はダニエルの父親は赤紙で軍隊に取られ、東部の激戦地バフムトで戦闘中、撃たれて背中に重傷を負っている。50代でも前線に出向くのだ。以来、父親は自宅でふさぎ込み、仕事もせず酒を飲む毎日。おそらくPTSDになっている。父親と一緒に戦っていた友人兵士がイルピンの病院に入院していて、インタビューに応じてくれるという。さっそくバスでイルピンに向かう。
イルピン川に架かる橋が修復工事中。2022年2月24日、北のベラルーシからロシア軍が侵攻。キーウ郊外のブチャを占領した時、「ウクライナ領土防衛隊」が自然発生的に結成され、ボランティア兵士たちがイルピンに集結。北(ブチャ側)のロシア軍と南(イルピン側)の領土防衛隊の間で壮絶な銃撃戦が始まり、人々はこの川を越えてキーウに逃げた。あれから1年8カ月。まだ戦争は終わらない。突然バスがストップし、ここからは徒歩。アスファルトの道がここで途切れているのだ。この先は舗装が剥がされた地道になっている。原因はロシア軍の戦車。戦争初日に大量の戦車がこの街にやってきて、その重量で道路が傷だらけになり、普通車は通行不能になった。戦争は何もかも壊していくものなんだなーと、改めて実感。道路も破壊されているが、両サイドのマンションもトータルに破壊されている。22年3月、ロシア軍が撤退するまでの約1カ月、ここで激しい銃撃戦になり、逃げ遅れた人々が虐殺された。ミサイルや戦車砲が雨あられのように撃ち込まれた。ブチャのマンションはすでに修復されていたが、イルピンのマンションもようやく復旧工事が始まった。もうすぐ厳しい冬がやってくる。住居の確保は喫緊の課題だ。
イルピン陸軍病院へ。周囲のビルは爆撃で破壊されている。傷ついた兵士が集まるこの病院は、いまもロシア軍の標的になっている。軍事機密満載の病院、ビデオカメラを回すのは厳禁。手足を失った兵士、破壊されたビル。撮影したいが我慢せざるを得ない。ダニエルの父親の友人、ブジャクさんをお見舞いするという形で、許可を得る。病院内部には、まだ当時の塹壕があり、病棟の壁には多数の銃痕。案内板には穴が空いている。
松葉杖のブジャクさん(41)が病棟から出てきた。病院の中に森があって、森の中の木陰、病棟が写り込まない形で撮影開始。ブジャクさんは、東部の激戦地バフムト近郊のクリシュフカの前線で戦っていた。相手はチェチェン紛争でロシア側に立って虐殺を繰り返してきたアハマド将軍率いる民間軍事会社。ワグネルのチェチェン版だ。クリシュフカで4カ月戦った。7月末、いつものように前線で戦っていた時のこと。塹壕にロケット弾が飛び込んだ。
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14面~15面
ヤマケンのどないなっとんねん 傷とホコリの議員たち(山本健治)
岸田内閣の閣僚や政務三役、自民党幹部の不祥事、問題言動などアホらしくて書く気もしなくなっていたのだが、まだ出てきそうである。
テレビで訳知り顔に解説しているコメンテーターたちの中には「議員たちの身体検査を十分にしていれば問題も出てこないのに首相の周辺がダメなのだ」というようなことを言っている者もいたが、問題は身体検査ではない。いまや「叩けばホコリが出てくるやつ」や「スネに傷持つやつ」が議員になっているから内閣改造や党人事のたびに問題言動や疑惑が暴露されるのだ。
現在の政府、首相や閣僚たちは資質も資格も見識もない、どうしようもない連中ばかりになって、完全に統治能力を失ってしまったのである。こんな情けない首相と内閣、与党内に次の首相を狙う人物がいたり、野党がしっかりしていれば、とっくの昔に退場させられ、新たな首相、内閣が生まれているはずである。
だが、そんな人物が与党にはいないし、しっかりした野党も存在しないのが、情けない現状である。次を狙っているとウワサされている自民党茂木幹事長は「明智光秀になりたくない」などと言っているが、そう言うのなら明智光秀でないやり方で天下を取ればいい。こんな言い方しかできない人物の下に人は集まらない。いつまでたっても首相にはなれないし、誰も首相にしたいとは思わない。
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16面~17面
フクシマ後の原子力 世界の反発恐れ棄権(高橋宏)
イスラエルとイスラム組織ハマスとの軍事衝突が激しさを増している。圧倒的な軍事力を駆使して、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を強め、その標的は難民キャンプや病院にまで及んでいる。11月14日現在で双方の死者は1万2千人を超え、そのうちの1万1千人余りはパレスチナ側であり、ガザ地区当局によれば5千人弱の子どもたちが犠牲になった。すっかり目立たなくなっているが、ロシアとウクライナの戦闘も続いており、日を追うごとに犠牲者は増え続けている。
イスラエルとハマスとの戦争の最中、5日にとんでもない発言が飛び出した。イスラエルの極右政党「ユダヤの力」に所属する閣僚が、ラジオ番組でガザ地区への核兵器の使用について「可能性の一つだ」と肯定する発言をしたのだ。ネタニヤフ首相はすぐに否定し、閣議への出席停止を決めたが、罷免するには至っていない。ネタニヤフ首相はハマスに対し「根絶やしにする」と公言しており、核兵器を使用しない保証はない。
ロシアも、7月にメドベージェフ前大統領が、ウクライナの反転攻勢が成功した場合に「核兵器を使用せざるを得なくなる」とソーシャルメディアに投稿して世界に衝撃を与えた。ロシアの核戦略の基本原則では、通常兵器による攻撃であってもロシアの国家的存続が真に脅かされたならば、核での反撃が認められている。メドベージェフ氏は、これに基づいて核兵器使用に言及したと考えられる。
どちらも、極端な考えを持つ人間の荒唐無稽な発言と、片付けるわけにはいかない。かつて広島、長崎に原爆を投下した際、アメリカの大義名分は「戦争を終結させるため」であったことを思い返してほしい。少なくともイスラエルやロシアは、抑止力という名目を踏み越え、核兵器を脅しと戦争終結の手段にしようとしている。
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18面
三池炭鉱爆発事故60年 高次脳障害支援法を(矢野宏)
死者458人を出し、戦後最悪の炭鉱災害となった福岡県大牟田市の三井三池炭鉱三川坑(みかわこう)炭じん爆発事故から60年。839人が一酸化炭素中毒となり、記憶障害などの「高次脳機能障害」に今も苦しんでいる。惨事を語り継ぐ集会「原点はここにあった 高次脳機能障害と現代社会」(三池炭鉱炭じん爆発から60年イベント実行委主催)が11月10日、大阪市阿倍野区の区民センターで開かれ、全国に70万人いると言われる高次脳機能障害患者を支援する法律の制定を呼びかけた。(矢野宏)
事故は1963年11月9日に発生。坑内で脱線した炭車から出た火花が巻き上がった炭じん(石炭の粉末)に引火、大爆発を起こした。一酸化炭素が充満し、命を取り留めた労働者の多くが高次脳機能障害を負った。一酸化炭素中毒で脳が低酸素状態に陥り、長い闘病生活を強いられた。目に見えない障害のため、「仮病」「なまけ病」などと言われて孤立。家族に暴力を振るう人もいた。
事故から3年後、国が労災法の適用を打ち切ったため、患者家族らは救済のための特別立法を求めて国会に請願。67年7月には75人の妻たちが地下350㍍の灼熱の坑底に6日間144時間座り込み、世論を動かし法案成立に向けて大きな力となった。
72年には患者と家族が三井鉱山に損害賠償を求めて提訴。93年の福岡地裁判決で、効率化を優先させて炭じんの清掃員を削減させた会社の過失責任が認められたが、三井三池炭鉱は97年に閉山した。
集会は3部構成。1部では、実行委代表で、坑内で救助に当たった元三池炭鉱労組役員の立山寿幸さん(88)=堺市=が「爆発で橋などが吹き飛び、15人ほどの遺体が散乱していた。キャップランプが上を向いたり、下を向いたりして埋まっていた」と振り返った。事故翌日には犠牲者の収容が本格化し、立山さんは次々と運ばれてくる遺体をトラックからおろす作業に当たったという。
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19面
大阪市の木を切る改革 予算不足垣間見え(矢野宏)
大阪市があいまいな選定基準で公園樹などを伐採しているのではないか。「大阪市の街路樹撤去を考える会」(渡辺美里代表)が樹木医に鑑定を依頼した結果、伐採・撤去の対象の中には健全な樹木が含まれていることが判明した。市の緑化課に問いただすと、答えは二転三転した。
大阪市は「公園樹・街路樹の安全対策事業」(2018~24年度)を進めるため、伐採する木を選ぶようコンサルタント会社に委託し、2021年3月に報告書を受け取った。樹木医の診断をもとに樹木の状態に応じて、a「保存」、b「剪定または保存」、c「剪定または保存(落枝などの危険性)」、d「要経過観察」、e「要注意樹木」、f「伐採(台風などで倒木の危険性)」、g「伐採(倒木の危険性)」の7段階で判定していた。
例えば、扇町公園で今年度中に伐採予定のケヤキは軽い方から2番目の「b」判定。考える会が独自に鑑定を依頼した一般社団法人「地域緑花技術普及協会」代表理事で樹木医で農学博士の細野哲央さんも9月の現地調査で、「活力・樹形とも非常に良好」「安全・安心に支障をきたす事情は見当たらない」と鑑定している。 渡辺さんらが11月2日、市緑化課と面談したところ、課長は「コンサルがいかなる判定をしていても、3年前の樹木医の診断で『異常』が指摘されていれば、それが軽いものであってもリスクが少しでもあるので伐採する方針だ」と明言した。
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20面
読者近況(矢野宏)
青島記者が開高健賞
【東京】毎日新聞記者の青島顕さんの「MOCT(モスト)『ソ連』を伝えたモスクワ放送の日本人」が「第21回開高健ノンフィクション賞」に選ばれ、11月17日に東京・内幸町の帝国ホテルで贈呈式が行われた。
モストとは、ロシア語で「架け橋」のこと。第二次世界大戦中の1942年に旧ソ連で日本向けのラジオ放送を開始したモスクワ放送が舞台。戦後の東西冷戦下で、モスクワ放送から流れる日本語放送を担った日本人がいた。目的はソ連の状況や社会主義の理想を伝えるプロパガンダか、架け橋を築くことだったのか。日本人スタッフの人間模様を丹念な取材で描いた。(矢野)
朗読劇「東義久の世界」
【京都】女優の遠藤久仁子さんが主宰する「二人だけの劇場セザンヌ」が12月23、24日と2024年1月27、28日、作家の東義久さんの作品「童話屋でござる」を取り上げ、語りと朗読劇として公演する。
劇団を40年間続けて1400回以上の公演を重ねてきた遠藤さん。昨年は、炭鉱の「女坑夫」を描いた一人芝居を筑豊各地で公演した。「41周年の新たな取り組みとして、京の作家、東さんの作品を取り上げ、久しぶりに京都の物語の世界を楽しんでいただきたい」と語っている。
開演時間は12月23日(土)と1月27日(土)午後1時~と3時~、12月24日(日)と1月28日(日)午後3時~。
会場は京都市南区東九条北烏丸町のセザンヌアトリエ(南図書館向かい)入場料は一般1500円、学生1000円、小中高校生500円。
問い合わせは、劇場セザンヌ(075・205・1733 FAX075・672・3426)まで。 (矢野)
師走の「あみだ池寄席」
【大阪】噺家の露の吉次さんが会主をつとめる「第66回あみだ池寄席」が12月10日(日)午後2時~西区堀江の和光寺本堂で開かれる。
師匠の二代目露の五郎兵衛さんから引き継ぎ、年4回開催。2023年の締めくくりは、吉次さんが「兵庫船」「厩火事」の2席を披露するほか、露の端さんと林家染吉さんがゲスト出演する。
和光寺へは地下鉄千日前線「西長堀駅」⑤出口から東へ徒歩2分。前売り1500円(当日2000円)。
問い合わせは吉次さん(06・6491・3554)まで。 (矢野)
沖縄DVD上映会
【大阪】「はごろも九条の会」世話人代表の池田憲彦さんから「DVD上映会のご案内」ハガキが届いた。
「沖縄返還時に日米間で交わされた多くのやり取りを見ながら、今に至る沖縄問題を考えてみたいと思います」
・日時 12月16日(土)午後1時~3時
・場所 高石市の羽衣公民館(パンセ羽衣3階)
・交通 JR東羽衣駅、南海羽衣駅から西へ徒歩5分
・入場無料
池田さん(090・3873・3210)まで。(矢野)
21面
経済ニュースの裏側 金融緩和の功罪(羽世田鉱四郎)
マネーの氾濫 マネーが増えすぎると、モノ・サービスとの均衡が崩れ、本来のあるべき価格より高くなります。それがインフレです。通貨自体の価値も下落します。2013年から始まったアベノミクスは、金融緩和によるインフレ誘導でした。その後遺症は、今も大きな影響を及ぼし続けています。
通貨の下落(円安) 円と主要通貨ドルを比較すると、年間平均では、12年が1㌦=79円でしたが、22年は131円、直近では150円に。1ユーロも、12年が102円、22年は138円となり、直近では160円です。場当たりの経済政策を続ける政府は、補正予算案で、国債(借金)の追加発行を行い、今年度の新規の国債発行は44兆円余りの見通しです。23年6月末の国債残高は1240兆円。中央銀行(日銀)が半分を保有します。参考までに、世界の主要国の政府債務残高をご紹介します。GDP対比です。米国121%、フランス111%、ドイツ66%。日本は260%で、経済不安が懸念されるギリシャ(178%)やイタリア(144%)を上回る水準です。
好調な法人業績 一方、法人の決算は極めて好調です。国税庁の資料によれば、22年度決算での全国の法人申告所得は前年比7%増で、2年連続の増収増益です。また23年9月決算の上場企業では、3期連続で、純利益が過去最高の見通し。総合商社では、昨年度の営業利益が軒並み1兆円を超え、過去最高の利益を計上しました。資源高に加え、予想を上回る円安が、利益を押し上げた形です。
……
22面
会えてよかった 久高政治さん⑦ 米国資料で事件の真相明らかに(上田康平)
桜澤論文には、立法院特別委は当
初から被災者を支援していたが、米
軍からの補償が進まない中、被災者、
支援団体は運動を展開し、本土への
訴えも開始、補償問題は解決した、
とあり、私も事件の全体像を知った。
あとは米国公文書館資料である。
「資料集 石川・宮森の惨劇
米国公文書館文書に見る
ジェット機墜落事件」の発刊
2016年、久高さんはこの資料集の監修・翻訳にあたる方に米国での資料収集の協力を依頼、渡米準備に入る。墜落事件60周年の19年に資料集として公開するつもりであった。
ところが16年12月、手に入れたか
った米国公文書館のUSCAR(米
国民政府)関係文書をすでに持って
いた方から寄贈していただくことが
できた。監修者の方がミカン箱一箱
分、全部、翻訳してと依頼されたと
資料集解題に書いておられますねと
言うとプリントしたら2000枚に
なったのだという。17年2月のこと
だった。4月から持ち込まれた資料
の検討が始まり、12名
の方で翻訳。空軍の事
故報告書と合わせて墜
落事件60周年の19年6
月、資料集は発刊され
た。
……
23面
日本映画興亡史 千本組異聞⑥ マキノに影響与えた浅草(三谷俊之)
笹野末三郎が上京したのは22歳の時だった。最初に身を置いたのは、浅草・千束町に一家を構える演歌師の元締めのテキヤ飯島一家系列の親分で、「民謡と俗謡社」を興した倉持忠助だった。柏木隆法が『千本組始末記』で述べているように「当時の浅草はまさにヤクザの文化が華ひらいた時代」でもあった。もともと浅草は芝居や映画などでおなじみの新門辰五郎の縄張り。浅草寺境内一帯のヤクザやテキヤは、新門一家に場代を払っていた。ただ明治を過ぎ、大正に移行してくると他のヤクザやテキヤが力を持ってくる。
ヤクザとテキヤだけではない。当時の浅草は浅草12階と呼ばれた凌雲閣がそびえ、日本一の繁華街だった。そして、浅草オペラの全盛期でもあった。大正5(1916)年にアメリカでダンスを学んだ高木徳子が浅草六区の活動写真館「キネマ倶楽部」で10日間にわたって、アメリカ流のオペレッタを昼夜連続公演し、大人気を博したのを嚆矢とする。
その後、作曲家の佐々紅華や興行師の根岸吉之助らが「歌劇団」を起こして一大ブームをつくった。「浅草オペラ」は大衆的で、若者のものだった。その熱狂的なファンは「ペラゴロ」と呼ばれた。
文士劇を売りものにする特異なオペラ団『常磐楽劇団』には、虚無主義者でアナキストの辻潤たちも舞台に立った。客席や楽屋には大杉栄や谷崎潤一郎がいた。この館を中心に今東光やサトウハチロー、若き宮沢賢治、小林秀雄、今日出海、東郷青児、川端康成らが集った。大杉は伊藤野枝とともに、浅草12階下を闊歩していた。
……
24面
坂崎優子がつぶやく エコでないトイレ自動機能
今年、トイレをリフォームしました。新型コロナも収束していない上に、これからもいろいろな感染症が流行するだろうと、手を触れずにふたが開いて水も流せる、オート機能のあるものを選びました。
リフォームを終え使い始めると、気になるところが出てきました。まずはふたの開閉。初期設定ではふたが開いたまま水が流れるようになっていて、ここは閉めてから流れてほしい。選んだ機種は変更が可能でしたが、メーカーによってはふたを閉めてから流すことができないものもあるようです。今回はそこまでチェックしていなかったので、あとからできないとわかってがっかりする可能性もありました。欲しい機能は、商品を選ぶ前に明確にしておく必要があります。
そして今回私が最も気になったのは、水の流し方です。「大」と「小」を判断していないことがわかったからです。ふと「どのくらい正確かな」とレバーの動く方向を毎回見てみると、ほとんど「大」の水が流れていたのです。これでは節水タイプに変えた意味がありません。
そこでどういう判断をしているのかを調べてみました。うちの機種は、座っている時間が30秒以内ならば「小」、それ以上なら「大」で流します。実際計ってみましたが、いつものペースで使用すると30秒をオーバーします。毎回「大」で流すはずです。この設定もメーカーによって異なり、50秒のところもありました。
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25面~29面
読者からのお手紙&メール(文責・矢野宏)
コロナで巣ごもり
体力気力失いそう
奈良県大和郡山市 吉松郁美
うずみ火事務所に顔を出さないまま、今年も残るところ50日余りとなりました。大阪にも3年間行けていません。体力も気力も失われてしまいそうで心細いですが、「私の灯台 新聞うずみ火」を励みに毎日を過ごしています。
釜ヶ崎フィールドワークに参加したかったです。西成警察署に毎年、「労働者の詩集」をいただきに行っていました。男物の衣服を段ボールで送ったり、カンパしたり、三角公園での炊き出しを手伝ったり、ちょこちょことかかわっていましたが、コロナがはやってからはまったく何もやっていません。
以前、歌手の加藤登紀子さんが三角公園で歌ったこともありましたが、ずっと前の話でしょうね。水野阿修羅さんの案内で回れば、もっと釜ヶ崎のことを知ることができたのに残念です。
空襲証言DVDの制作にわずかですが、お役立てください。忘年会の記事もうらやましく読みました。
(お手紙にはたくさんの切手が同封されていました。ありがとうございます。まずは吉松さんに礼状を)
進まぬ少子化対策
首相はいつ応える
埼玉県狭山市 根橋敬子
少子化問題はなぜ、解決しないのか。岸田首相は「従来とは次元の異なる対策を実現する」と表明しながら何も進んでいない。
子どもが欲しくても産むことができない人もいるだろう。初めから産まないと決めている人もいると思う。生活苦から産めない人々も少なくないだろう。男女平等というが、まだまだ男社会だ。その中でスキルを磨き、上を目指す中で、子育てができるだろうか。
例えば、出産間近まで出社したとしても、出産すれば最低数カ月は職場復帰はできないだろう。その間も社会は動く。
今は0歳から預かってくれる保育園も増えた。しかし順番待ちだ。会社に保育所を備えているところもわずかだができた。授乳もできるそうだ。だが心配なのは変わらない。熱が出たと言われれば帰宅せねばならない。仕事のストレスと育児のストレス。たまったものではない。男性で育児休暇を取っている人は数%だという。たまに1年とった人がいると、ニュースになるぐらいだ。
離婚すれば慰謝料を払わぬ元夫も多い。私の周りにもそのために子供に当たる人が何人かいる。子供は無事に育つだろうか。
多くの子供が貧困の中で、苦しい生活を強いられている。その上、さらに産めというのか。
1年間7万円の減税だって?1カ月に、ではない。戦闘機や万博など、無駄なお金はジャンジャン使うのに。
いつから日本はこんな心の貧しい国になったのか。岸田首相、答えをどうぞ。
(円安と低成長でこの国の経済力は低下しています。実質賃金も減り続け、安い賃金に甘んじているのが実情です。こんな日本に誰がした?)
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26面
車いすから思う事 「お願いします」私の変化(佐藤京子)
介助犬イムア君と出かける時、外出先での用足しを避けるため、一度促してから「介助犬(お仕事中です)」マントをつけて家を出る。散歩は60~90分ほどだが、行き先は特に決めない。20分ほど歩き、店舗に入る前にもう一度促す。トイレ用のシートを敷いて準備すると、イムア君が腰を落としてトイレをする。排せつ物をビニール袋に入れ、シートをたたんで車イスの下に片づけるのだが、手が足りない。片手にビニール袋を持ち、片手だけでシートたたむことは至難の業だ。イムア君は今、トイレのシートを拾って渡す練習している。これができるようになると、ずいぶん助かる。
いくら介助犬とはいえ、トイレを我慢できない。失敗を繰り返すと、犬自体がどこでしてもよいと錯覚してしまう。それだけは避けたい。最近、イムア君とはいい感じで「トイレする?」の声掛けに集中できるようになった。これまで、店内や電車・バスで失敗したことはない。この状態を維持していくことが大事だと思う。
行き先を決めずに歩いているが、最近はコーヒー店に立ち寄ることが増えた。ここでも、トイレをさせてから。近くに駅へ向かう通路があり、トイレをさせるのだが、人通りが絶えない。最近、よく「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけてくれる。通行のじゃまにならないかと心配していたが、声をかけてもらえるのはうれしい。そんな自分の変化に気づく。今までなら「お手伝いをしましょうか」と声をかけられても、「大丈夫です」と応えていた。他人に犬のトイレの準備を頼むのは気が引けたからだ。だが、最近は「ありがとうございます。お願いします」と応えるようになった。あれをしてこれをしてと頼むのは苦手だったが、声をかけてくれた人もドキドキしているだろうと思う、心のゆとりが出てきたようだ。
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27面
絵本の扉「こんとあき」(遠田博美)
1986年生まれの娘に毎夜読んでいた絵本の中で、読んだ回数が一番多かったのが林明子さんの作品でした。『こんとあき』は娘が3歳の時に我が家にやってきました。
きつねのぬいぐるみの「こん」は、おばあちゃんに頼まれて赤ちゃんのお守りに砂丘町からやってきます。まだ赤ちゃんのいない籠の前にいるこんは退屈。次のページには、赤ちゃんの「あき」が眠っていて、あまりの可愛さにビックリしているこんがいる。あきが生まれて数年経った時、こんの腕がほころびてしまい、こんとあきは連れだって直してもらいに砂丘町のおばあちゃんの所へ。初めて電車に乗るあきを、こんは常にサポート。お腹が空いたらどうするのと不安げなあきに、こんは「だいじょうぶ」とお弁当を買いに行く。心配するあきにいつも「だいじょうぶ」と安心させるのです。
けれど、駅弁を買った帰りにドアにシッポを挟まれて一転ピンチに。車掌さんの機転で事なきを得て、砂丘町に到着。砂丘を越え、おばあちゃんの家までまた冒険が始まります。大きな犬に出会っても「だいじょうぶ。ぼくがついているからね」とあきを守る。犬にほえられても砂に埋められても、「だいじょうぶ。だいじょうぶ」と小さい声で安心させようと励ますのです。
最後はあきに背負われ砂丘を下りますが、小さい声で「だいじょうぶ。だいじょうぶ」と言い続けるこん。絵本の文字がどんどん小さくなり、読み手にこんの健気さを伝えます。ようやくおばあちゃんの家にたどり着き、綻びを直してもらったこん。その笑顔はとてもさわやかなです。
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30面
うずみ火掲示板 豊中空襲記録映画 12月17日に上映会(矢野宏)
「豊中に平和と人権に関する資料館を求める会」事務局の山東健さん(78)が企画・監督を務めたドキュメンタリー映画「神崎川―豊中南部空襲6月7日の記録」(50分)がこのほど完成し、12月17日、豊中市立地域共生センターで上映会を行う。
太平洋戦争末期の1945年6~7月、豊中市は6回の空襲に見舞われ、計575人が犠牲になった。最も被害が大きかったのが6月7日の第3次大阪大空襲だった。来襲したB29は409機。初めて1㌧爆弾が投下されたあと、焼夷弾による爆撃、さらには138機の米戦闘機P51ムスタングによる機銃掃射も加わった。
実はこの日の攻撃目標は大阪陸軍造兵廠だった。現在の大阪ビジネスパーク、大阪城公園の東部と大阪環状線を挟んだ東側に広がる東洋一の軍需工場だ。だが、大阪の上空に梅雨前線が張り出し、豊中市や隣接する吹田市などを「誤爆」したものと見られている。
神崎川をはさみ大阪市淀川区に隣接した豊南地区は、当時は豊能郡小曽根村だった。農地が広がる中に軍需工場が立地しており、大きな被害を出した。
上映会は午後2時から。公開に先立ち、ドキュメンタリー「流言飛語百年」などを制作した毎日放送ディレクターの亘佐和子さんと「神崎川」の監修・語りをつとめた矢野との対談が予定されている。制作カンパ1000円。問い合わせは山東さん(090・3275・9521)まで。
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編集後記(矢野宏)
野球が大好きだった黒田清さんは、セリーグは阪神タイガース、パリーグでは阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)の熱烈なファンだった。阪神が18年ぶりのリーグ優勝、オリックスがリーグ3連覇を達成し、今年の日本シリーズは59年ぶりの関西決戦としても盛り上がった。黒田さんが生きていたら、仕事に手がつかなかっただろう。▼この号がお手元に届く頃には大阪と神戸で優勝パレードも終わっているだろうが、姫路の谷野勉さんもお怒りのように、運営費を賄うクラウドファンディングも低調だ。21日時点で1万1600人以上から約9000万円が集まったが、目標額5億円の2割に満たない。▼低迷の理由は、パレードに絡めて大阪万博をPRするような姿勢が批判を招いたからだ。大阪府の吉村知事は、パレード開催を発表した記者会見で、万博のキャラクターとともに登場し、「万博を一緒に盛り上げたい」と強調。府が開催費用を集めるため、府教委を通じて教職員にクラウドファンディングの周知を要請したことも「寄付の強制だ」と反発を招いた。▼府市がパレード来場者の誘導などをする要員として職員計3000人にボランティアを募り、スタッフジャンパーを支給するのみ。一方、兵庫県と神戸市は休日勤務扱いとなることから、待遇差に不満が漏れる事態を招いている。▼府関係職員労働組合の小松康則委員長は「知事のトップダウンで職員の多くが長時間労働を強いられている。府には絶対評価で毎年約15%の職員を下位評価にする人事制度があり、ボランティア要請に『強制』と感じる職員は少なくない」と語っていた。ある川柳を思い出した。「黒田記者 存命ならば 何と書く」 (矢)
31面
うもれ火日誌(矢野宏)
10月9日(月・祝)
矢野 午後、大阪市西区の新阿波座公園から難波までの「あかんやろ!カジノ 女性パレード」を取材。力強い。
10月11日(水)
栗原 午前、群馬県藤岡市の市歴史館で、文化財保護課が保管する関東大震災時の藤岡町の関連文書を閲覧、撮影。午後、群馬県庁へ。「群馬の森」追悼碑をめぐり再び県を提訴した市民団体の会見を取材。夕方、藤岡事件を語り継ぐ市民の会の会議を取材。
10月14日(土)
午後、新聞うずみ火主催の釜ヶ崎フィールドワーク。長年、日雇い労働者として暮らしてきた水野阿修羅さんの案内で現地を回った後、新井信芳さんの居酒屋「グランマ号」で懇親会。
10月15日(日)
矢野、栗原 午後、近鉄特急で名古屋へ。パレスチナ自治区ガザ地区について「パレスチナこどもキャンペーン」スタッフに話を聞く。夜、ガザ空爆反対を訴える街頭アピールを取材し帰阪。
10月18日(水)
矢野、夕方、大阪市北区の扇町公園で「大阪市の街路樹撤去を考える会」の渡辺美里さん、谷卓生さんの案内で伐採対象の樹木を見て回る。渡辺さんらが依頼した樹木医が健全と鑑定した木まで対象になっており、選定基準のあいまいさが浮き彫りに。
10月19日(木)
「水俣病被害者救済措置法」に基づく救済の対象外となった128人が国と熊本県、チッソに損害賠償を求めた訴訟で、国の救済策の見直しを迫った大阪地裁判決を不服として国などが控訴。矢野、栗原 午後、大阪府島本町に住む原告、前田芳枝さんに話を聞く。
10月20日(金)
矢野、栗原 夕方、水俣病第2次近畿訴訟の原告、白川良子さんを取材した後、京都大へ。緊急学習会「ガザとは何か」で、パレスチナ問題に詳しい早稲田大教授、岡真理さんの話を聞く。
午後、石田冨美枝さんが新聞折り込みチラシのセット作業に。
10月23日(月)
午後、柳田充啓さんが35年物の梅干しを持参。新聞折り込みチラシのセット作業を手伝ってくれる。
10月24日(火)
夕方、217号となる新聞うずみ火11月号が届く。長谷川伸治さん、工藤孝志さん、康乗真一さん、大村和子さん、樋口元義さん、多田一夫さんの手を借りて発送作業。郵便局の回収にぎりぎり……間に合わず。残りの新聞は翌日。
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32面
うずみ火講座(矢野宏)
2024年のスタートを飾る「うずみ火講座」は1月27日(土)午後2時半~大阪市浪速区の市立難波市民学習センターで開催します。パレスチナ問題やアラブ文学が専門でパレスチナ自治区ガザへの渡航経験がある早稲田大教授の岡真理さんを講師に招き、パレスチナのガザで何が起きているのかなどについて解説してもらいます。
イスラム組織ハマスが10月7日、イスラエルを奇襲攻撃して以来、自衛を名目にしたイスラエルによる虐殺が繰り広げられています。ガザの犠牲者は1万2000人を超え、その半数が子どもです。岡さんはこう訴えています。
「今、起きていることは、暴力の連鎖でも憎しみの連鎖でもありません。テロリストに対する自衛の戦いでもありません。イスラエルが75年前に行ったパレスチナの民族浄化を完遂するためのジェノサイドです」
一日も早い停戦を祈りつつ、皆さんの参加をお待ちしています。資料代1000円、学生500円。
会場はJR難波駅直結、OCAT4階。地下鉄なんば駅から徒歩5分
32面
忘年会のお知らせ(矢野宏)
12月2日(土)午後5時とお伝えしましたが、午後6時からに変更します。新宿2丁目の中華料理店「隋園別館・新宿店」(都営線「新宿3丁目駅」⑤出口から徒歩3分)で開催します。二次会は「海森2号店」(03・3355・5183)で。
翌3日(日)の埼玉読者会は正午に西武新宿線「新所沢駅」西口改札に集合。徒歩5分の「デルフィーノ新所沢」で(会費5000円)。会食後は本川越に移動し、喜多院などを散策する予定です。申し込みは根橋さん(090・9245・0531)まで。
大阪忘年会は9日(土)午後6時~淀川区宮原の韓国料理店「セント」(地下鉄御堂筋線「東三国駅」から徒歩3分)で開催。会費は4500円。近くの店で二次会も予定しています。初めての方もご参加ください。
1面~3面
島全体が訓練場 徳之島 基地なき島も有事拠点(栗原佳子)
昨年末の安全保障関連3文書の改定からまもなく1年。南西諸島の防衛体制の強化が打ち出されるなか、部隊が配備された島々ではさらなる増強が進められている。空港や港を有事に利用する態勢づくりも進む。そんな中、自衛隊関連施設はないが、なし崩し的に大規模な日米共同訓練の場とされているのが鹿児島県の徳之島だ。
島最北端の徳之島町手々(てて)海浜公園。11月15日午後、静かなビーチに突然、重低音が響き、見る見るオスプレイの機影が近づいてきた。砂浜の枯草や小石などがびゅんびゅん飛び散る。150㍍は離れているが、ものすごい風圧だ。
オスプレイは緑地に着陸。すぐに機体の後部ハッチが開き、バラバラっと約15人の隊員が小銃を抱えて飛び出してきた。島しょ防衛を担うという触れ込みで創設された「日本版海兵隊」水陸機動団だ。彼らがビーチで戦闘態勢を取ったのが、遠目にもわかる。ほどなくオスプレイは離陸。戦闘態勢を解いた隊員たちを乗せ、カーキ色のトラックが走り去っていった。あっという間の出来事だった。
徳之島は、11月10日から20日まで全国で展開された陸上、海上、航空の自衛隊統合演習の重要な舞台になった。総勢で900人。海岸など島内15カ所以上が訓練場として使われた。日時などは事前に告知されるが、この訓練は公表されていなかった。
「本気の訓練だから隠したいんでしょう」と、同行した奄美市の男性がいう。「この公園を使う法的根拠はありません。監視の目がないと思って、やりたい放題ですよ」
世界自然遺産にも指定された徳之島。風光明媚な海浜公園はバーベキューやキャンプ、海水浴もできる人気スポットだ。しかし訓練は、手々集落の住民さえ知らされていなかった。爆音で仰天し、何事かと公園に駆け付けた住民は、自衛官に立ち入りを禁じられたという。
オスプレイが着陸した緑地は茶色く変色していた。焦げていたのだ。遮蔽板も敷いていなかった。
この統合演習には自衛隊3万人超、米軍1万人超が参加した。1979年から始まった演習に、一昨年から米軍も参加している。
徳之島は昨年11月の日米共同統合演習「キーンソード23」で大規模な訓練場になった。日米のオスプレイが訓練するのは国内で初めてだった。
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4面~5面
混迷続く大阪万博 「投資無駄に」最悪の判断(矢野宏)
開幕まで500日に迫った「2025年大阪・関西万博」。海外パビリオンの建設遅れや会場整備費の上振れなどの山積するなか、メキシコとエストニアが参加を辞退した。他国からもコスト高に不安の声が上がっており、辞退が続く可能性は否めない。大阪市議会で万博・カジノ問題を追及してきた前市議の川嶋広稔さんが11月3日、大阪市内で開かれた「うずみ火講座」で講演。大型プロジェクトが陥りやすい罠に触れ、「効果が得られないなら中止か変更しかない。これまでの投資が無駄になるという判断は最悪だ」と訴えた。
「本当に建設が間に合うのか」。日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長(清水建設会長)が6月22日の記者会見で懸念を示したことで、建設準備の遅れが一気に表面化した。しかも、宮本会長は2022年9月には「2025年日本国際博覧会協会」(博覧会協会)に対し、開幕に間に合わなくなると伝えていたという。
「大阪府の吉村洋文知事は博覧会協会の副会長でありながら日建連からの懸念を『聞いていない。耳に入ったのは今年5月だ』と発言したが、統一地方選が終わったあと。無責任すぎないか」と川嶋さんは指摘する。選挙では「万博誘致に成功したのは維新の功績だ」と大々的に宣伝しながら、ここにきての責任転嫁。川嶋さんは「万博は成功したら維新の手柄、失敗したら自民の責任になる」と警鐘を鳴らしてきた。
大阪・関西万博は25年4月13日から半年間、大阪湾の人工島「夢洲」(大阪市此花区)を会場に開催される。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。期間中の来場者は2820万人、経済効果2兆円と試算している。
万博には150超の国・地域が参加予定。そのうち、メキシコを含む56カ国が当初、自前でパビリオンを建設する「タイプA」を希望していた。「万博の華」と言われるが、建築資材や人件費の高騰で、国内の建設業者が決定したのは半数程度。博覧会協会はプレハブなどの建物を整備し、参加国が外装や内装を行う簡易な「タイプX」を提案したが、移行を決めたのは現時点でブラジルとアンゴラだけ。着工期限は12月~24年1月に迫っており、博覧会協会は複数の国がタイプAを断念すると見込み、25カ国分のタイプXを先行発注した。「撤退ドミノ」を食い止めるための苦肉の策だ。
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6面~7面
リニア新幹線用地買収 住宅突っ切る高架橋(阿久沢悦子)
リニア中央新幹線の工事現場を歩く随時連載。今回は山梨県の甲府盆地を横切る予定のリニア高架橋の用地買収をめぐり何が起きているかを、甲府地裁での証人尋問から検証する。
「リニアの高架で、自宅の土地が三角形に切り取られるんですよ」
最初にそう聞いたのは2年前、リニア高架橋が通る予定の南アルプス市を訪ねた時のことだった。何を意味しているのか、すぐにはつかみかねた。
10月24日、甲府地裁であったリニア工事差し止め請求訴訟の口頭弁論で、原告側の書面に掲載された様々な地図を見て、得心がいった。リニア中央新幹線は南アルプス市の住宅地を斜めに突っ切る。高架橋は高さが防音フード込みで約30〜35㍍、幅21・6㍍。JR東海は高架橋の直下の土地「だけ」を買収しようとしている。高架橋ベルトは、現に人が住んでいる用地を分断したり、三角形に切り取ったりしていた。
この日は原告や補助参加人8人の証人審問があった。
原告の一人、秋山美紀さん(51)は2012年、南アルプス市の一戸建てを購入し、夫、娘と移り住んだ。東側に富士山を望む、日当たりや風通しのいい家だ。3年後、JR東海の住民説明会でリニアのルートが自宅の真上を通ると知った。職員はラジカセからリニアの走行音を流し、「騒音はこのぐらいでそんなにうるさくないです」と説明した。「いくらでもボリュームが調節できるじゃないか」と住民たちは失笑した。JR東海の環境アセスメントでは、防音フード付きの場合、営業運転時の騒音はガイドウエイ中心からの距離25㍍で65デシベルと予測されている。日本の住宅地における環境基準の「夜間40デシベル以下、昼間50デシベル以下」を大きく上回る。
秋山さん宅には、その後2、3回、職員が土地の買収交渉に訪れた。敷地の南東にあたる1辺3㍍の三角形の土地だけを売って欲しい、と打診された。ルートは母屋から2㍍しか離れていないが、建物にかかってはいない。
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8面~9面
宝塚歌劇団の記者会見 開き直る閉鎖社会(粟野仁雄)
「清く、正しく、美しく」のタカラヅカが激震だ。高校から阪急宝塚線沿線に暮らし、『ベルサイユのばら』が大人気だった学生時代は石橋駅で毎朝「押し屋」のアルバイトをしていた。阪神・淡路大震災では、壊れた施設で若き天海祐希さんの稽古も取材、雑誌のグラビアで大スター轟悠さんを取材したこともある。ファンとは言えないが親近感はあった。ところが今回は愕然とする事態だったようだ。
中学時代から見ていたヅカガールは電車内では背筋をピシッと伸ばして微動だにせず、ホームでは電車にお辞儀をする。異様な光景でもあった。
それなら害はないが、9月に宝塚市のマンションで自殺した25歳の宙(そら)組団員Aさんに関して過酷な超過労働とともに先輩団員から陰湿ないじめが続いていたことに対して、加害団員からの謝罪と補償を遺族が求めていることを、代理人の川人博弁護士が発表していた。
この問題は早くから「週刊文春」がスクープとして報じていたが、何が真相なのか。
11月14日に宝塚ホテルで開かれる劇団の記者会見に出向こうと劇団広報に電話した。朝からテレビでも「今日の夕方に会見」と報じているのに当日の午後になっても劇団広報の男性は「調整中で日にちも何も決まっていません」と繰り返した。阪急電鉄の広報に聞くと女性が出て「劇団に聞いてください。こちらではわかりません」。会見には参加できたが、司会は阪急電鉄の女性広報部長だった。
会見で説明したのは、劇団の木場健之理事長、村上浩爾専務理事ら3人。会見内容は多く報じられているが、要は外部弁護士による聞き取り調査の発表。「ハラスメントやいじめは確認できなかった」と完全否定した。その一方で超過労働は認めて謝罪し、木場氏が辞任することを明かした。
会見が始まって1時間以上して週刊文春の記者が「ご遺族の代理人が『いじめがなかったことなど納得できない』と言っています」と尋ねた。文春の記者は、配られた資料をいち早く遺族弁護人に送ったのか。木場理事長は驚いた様子で「答えられません」とした。
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10面~11面
関東大震災100年 横浜の朝鮮人虐殺 巡査告げた「武装せよ」(栗原佳子)
1923年9月1日午前11時48分に発生したマグニチュード7・9の大地震は、震源に近い神奈川県全域に未曽有の被害をもたらした。建物倒壊、火災、土砂崩れ、津波ーー。特に横浜は壊滅状態で、陸の孤島と化した。そこで起きた朝鮮人虐殺は東京以上に大規模だったとされる。しかし、詳しい実態はいまも分からない。「関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会(以下、神奈川実行委)」の山本すみ子さんと今本陽子さんの案内で虐殺現場の跡地をフィールドワークした。
JR横浜駅から徒歩10分。住宅街の急な坂道を上りきると、視界が開けた。10月28日、神奈川区高島町の高島山公園。ヒロシマ講座(竹内良夫さん主宰)の連続フィールドワーク「虐殺100年の現在地~歩いて考える関東大震災」の横浜編はここからスタートした。戒厳令下、神奈川の司令部が置かれた場所でもある。
「今夜、此方面へ不逞鮮人が三百名襲来することになって居るそうである」「十六歳以上六十歳以下の男子は武装して警戒して下さい」
2日午後、巡査が住民や避難者に告げた言葉を教師の八木熊次郎さんが日記に書き留めていた。八木さんは市街地から避難。同じく2日に避難した黒河内巌さんは同日の日記に「朝鮮人が飲用水井戸へ毒を打ち込みたりとて鮮人と見たら皆打殺せと極端なる達しあり」とつづった。
「神奈川区は大虐殺地域だったのです」と山本さん。横浜中心部は大火に見舞われ、神奈川区を管轄した神奈川署以外の警察署は全焼した。虐殺は火災エリア周辺で発生。避難地が虐殺の現場と化し、この高島山周辺でも虐殺が繰り広げられた。
留学生らでつくる在日本関東地方罹災同胞慰問班調査班が被災地を回った。犠牲者数6661人、うち神奈川県が3999人を占めた。しかし、司法省調査では神奈川県2人、横浜市内はゼロとされた。
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12面~13面
ウクライナ最新報告 負傷兵の病院も標的(西谷文和)
ポーランド、ワルシャワ西駅のバスセンターから夜行バスでキーウへ。キーウには正午に着く。昼のバスに乗ってしまうとキーウ着が深夜、ウクライナには夜間外出令が出ているのでバス停で野宿する羽目になる。なので夜行バスで行く。乗客のほとんどが女性と子ども。18歳以上、60歳以下のウクライナ男性は原則として国に残らねばならないので、ポーランドに脱出できるのは原則、女性と子どもと老人だ。
10月5日正午、キーウ着。通訳のダニエルと再会。下町のアパートにチェックインして取材開始。まずはキーウ郊外のイルピン陸軍病院へ。実はダニエルの父親は赤紙で軍隊に取られ、東部の激戦地バフムトで戦闘中、撃たれて背中に重傷を負っている。50代でも前線に出向くのだ。以来、父親は自宅でふさぎ込み、仕事もせず酒を飲む毎日。おそらくPTSDになっている。父親と一緒に戦っていた友人兵士がイルピンの病院に入院していて、インタビューに応じてくれるという。さっそくバスでイルピンに向かう。
イルピン川に架かる橋が修復工事中。2022年2月24日、北のベラルーシからロシア軍が侵攻。キーウ郊外のブチャを占領した時、「ウクライナ領土防衛隊」が自然発生的に結成され、ボランティア兵士たちがイルピンに集結。北(ブチャ側)のロシア軍と南(イルピン側)の領土防衛隊の間で壮絶な銃撃戦が始まり、人々はこの川を越えてキーウに逃げた。あれから1年8カ月。まだ戦争は終わらない。突然バスがストップし、ここからは徒歩。アスファルトの道がここで途切れているのだ。この先は舗装が剥がされた地道になっている。原因はロシア軍の戦車。戦争初日に大量の戦車がこの街にやってきて、その重量で道路が傷だらけになり、普通車は通行不能になった。戦争は何もかも壊していくものなんだなーと、改めて実感。道路も破壊されているが、両サイドのマンションもトータルに破壊されている。22年3月、ロシア軍が撤退するまでの約1カ月、ここで激しい銃撃戦になり、逃げ遅れた人々が虐殺された。ミサイルや戦車砲が雨あられのように撃ち込まれた。ブチャのマンションはすでに修復されていたが、イルピンのマンションもようやく復旧工事が始まった。もうすぐ厳しい冬がやってくる。住居の確保は喫緊の課題だ。
イルピン陸軍病院へ。周囲のビルは爆撃で破壊されている。傷ついた兵士が集まるこの病院は、いまもロシア軍の標的になっている。軍事機密満載の病院、ビデオカメラを回すのは厳禁。手足を失った兵士、破壊されたビル。撮影したいが我慢せざるを得ない。ダニエルの父親の友人、ブジャクさんをお見舞いするという形で、許可を得る。病院内部には、まだ当時の塹壕があり、病棟の壁には多数の銃痕。案内板には穴が空いている。
松葉杖のブジャクさん(41)が病棟から出てきた。病院の中に森があって、森の中の木陰、病棟が写り込まない形で撮影開始。ブジャクさんは、東部の激戦地バフムト近郊のクリシュフカの前線で戦っていた。相手はチェチェン紛争でロシア側に立って虐殺を繰り返してきたアハマド将軍率いる民間軍事会社。ワグネルのチェチェン版だ。クリシュフカで4カ月戦った。7月末、いつものように前線で戦っていた時のこと。塹壕にロケット弾が飛び込んだ。
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14面~15面
ヤマケンのどないなっとんねん 傷とホコリの議員たち(山本健治)
岸田内閣の閣僚や政務三役、自民党幹部の不祥事、問題言動などアホらしくて書く気もしなくなっていたのだが、まだ出てきそうである。
テレビで訳知り顔に解説しているコメンテーターたちの中には「議員たちの身体検査を十分にしていれば問題も出てこないのに首相の周辺がダメなのだ」というようなことを言っている者もいたが、問題は身体検査ではない。いまや「叩けばホコリが出てくるやつ」や「スネに傷持つやつ」が議員になっているから内閣改造や党人事のたびに問題言動や疑惑が暴露されるのだ。
現在の政府、首相や閣僚たちは資質も資格も見識もない、どうしようもない連中ばかりになって、完全に統治能力を失ってしまったのである。こんな情けない首相と内閣、与党内に次の首相を狙う人物がいたり、野党がしっかりしていれば、とっくの昔に退場させられ、新たな首相、内閣が生まれているはずである。
だが、そんな人物が与党にはいないし、しっかりした野党も存在しないのが、情けない現状である。次を狙っているとウワサされている自民党茂木幹事長は「明智光秀になりたくない」などと言っているが、そう言うのなら明智光秀でないやり方で天下を取ればいい。こんな言い方しかできない人物の下に人は集まらない。いつまでたっても首相にはなれないし、誰も首相にしたいとは思わない。
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16面~17面
フクシマ後の原子力 世界の反発恐れ棄権(高橋宏)
イスラエルとイスラム組織ハマスとの軍事衝突が激しさを増している。圧倒的な軍事力を駆使して、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を強め、その標的は難民キャンプや病院にまで及んでいる。11月14日現在で双方の死者は1万2千人を超え、そのうちの1万1千人余りはパレスチナ側であり、ガザ地区当局によれば5千人弱の子どもたちが犠牲になった。すっかり目立たなくなっているが、ロシアとウクライナの戦闘も続いており、日を追うごとに犠牲者は増え続けている。
イスラエルとハマスとの戦争の最中、5日にとんでもない発言が飛び出した。イスラエルの極右政党「ユダヤの力」に所属する閣僚が、ラジオ番組でガザ地区への核兵器の使用について「可能性の一つだ」と肯定する発言をしたのだ。ネタニヤフ首相はすぐに否定し、閣議への出席停止を決めたが、罷免するには至っていない。ネタニヤフ首相はハマスに対し「根絶やしにする」と公言しており、核兵器を使用しない保証はない。
ロシアも、7月にメドベージェフ前大統領が、ウクライナの反転攻勢が成功した場合に「核兵器を使用せざるを得なくなる」とソーシャルメディアに投稿して世界に衝撃を与えた。ロシアの核戦略の基本原則では、通常兵器による攻撃であってもロシアの国家的存続が真に脅かされたならば、核での反撃が認められている。メドベージェフ氏は、これに基づいて核兵器使用に言及したと考えられる。
どちらも、極端な考えを持つ人間の荒唐無稽な発言と、片付けるわけにはいかない。かつて広島、長崎に原爆を投下した際、アメリカの大義名分は「戦争を終結させるため」であったことを思い返してほしい。少なくともイスラエルやロシアは、抑止力という名目を踏み越え、核兵器を脅しと戦争終結の手段にしようとしている。
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18面
三池炭鉱爆発事故60年 高次脳障害支援法を(矢野宏)
死者458人を出し、戦後最悪の炭鉱災害となった福岡県大牟田市の三井三池炭鉱三川坑(みかわこう)炭じん爆発事故から60年。839人が一酸化炭素中毒となり、記憶障害などの「高次脳機能障害」に今も苦しんでいる。惨事を語り継ぐ集会「原点はここにあった 高次脳機能障害と現代社会」(三池炭鉱炭じん爆発から60年イベント実行委主催)が11月10日、大阪市阿倍野区の区民センターで開かれ、全国に70万人いると言われる高次脳機能障害患者を支援する法律の制定を呼びかけた。(矢野宏)
事故は1963年11月9日に発生。坑内で脱線した炭車から出た火花が巻き上がった炭じん(石炭の粉末)に引火、大爆発を起こした。一酸化炭素が充満し、命を取り留めた労働者の多くが高次脳機能障害を負った。一酸化炭素中毒で脳が低酸素状態に陥り、長い闘病生活を強いられた。目に見えない障害のため、「仮病」「なまけ病」などと言われて孤立。家族に暴力を振るう人もいた。
事故から3年後、国が労災法の適用を打ち切ったため、患者家族らは救済のための特別立法を求めて国会に請願。67年7月には75人の妻たちが地下350㍍の灼熱の坑底に6日間144時間座り込み、世論を動かし法案成立に向けて大きな力となった。
72年には患者と家族が三井鉱山に損害賠償を求めて提訴。93年の福岡地裁判決で、効率化を優先させて炭じんの清掃員を削減させた会社の過失責任が認められたが、三井三池炭鉱は97年に閉山した。
集会は3部構成。1部では、実行委代表で、坑内で救助に当たった元三池炭鉱労組役員の立山寿幸さん(88)=堺市=が「爆発で橋などが吹き飛び、15人ほどの遺体が散乱していた。キャップランプが上を向いたり、下を向いたりして埋まっていた」と振り返った。事故翌日には犠牲者の収容が本格化し、立山さんは次々と運ばれてくる遺体をトラックからおろす作業に当たったという。
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19面
大阪市の木を切る改革 予算不足垣間見え(矢野宏)
大阪市があいまいな選定基準で公園樹などを伐採しているのではないか。「大阪市の街路樹撤去を考える会」(渡辺美里代表)が樹木医に鑑定を依頼した結果、伐採・撤去の対象の中には健全な樹木が含まれていることが判明した。市の緑化課に問いただすと、答えは二転三転した。
大阪市は「公園樹・街路樹の安全対策事業」(2018~24年度)を進めるため、伐採する木を選ぶようコンサルタント会社に委託し、2021年3月に報告書を受け取った。樹木医の診断をもとに樹木の状態に応じて、a「保存」、b「剪定または保存」、c「剪定または保存(落枝などの危険性)」、d「要経過観察」、e「要注意樹木」、f「伐採(台風などで倒木の危険性)」、g「伐採(倒木の危険性)」の7段階で判定していた。
例えば、扇町公園で今年度中に伐採予定のケヤキは軽い方から2番目の「b」判定。考える会が独自に鑑定を依頼した一般社団法人「地域緑花技術普及協会」代表理事で樹木医で農学博士の細野哲央さんも9月の現地調査で、「活力・樹形とも非常に良好」「安全・安心に支障をきたす事情は見当たらない」と鑑定している。 渡辺さんらが11月2日、市緑化課と面談したところ、課長は「コンサルがいかなる判定をしていても、3年前の樹木医の診断で『異常』が指摘されていれば、それが軽いものであってもリスクが少しでもあるので伐採する方針だ」と明言した。
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20面
読者近況(矢野宏)
青島記者が開高健賞
【東京】毎日新聞記者の青島顕さんの「MOCT(モスト)『ソ連』を伝えたモスクワ放送の日本人」が「第21回開高健ノンフィクション賞」に選ばれ、11月17日に東京・内幸町の帝国ホテルで贈呈式が行われた。
モストとは、ロシア語で「架け橋」のこと。第二次世界大戦中の1942年に旧ソ連で日本向けのラジオ放送を開始したモスクワ放送が舞台。戦後の東西冷戦下で、モスクワ放送から流れる日本語放送を担った日本人がいた。目的はソ連の状況や社会主義の理想を伝えるプロパガンダか、架け橋を築くことだったのか。日本人スタッフの人間模様を丹念な取材で描いた。(矢野)
朗読劇「東義久の世界」
【京都】女優の遠藤久仁子さんが主宰する「二人だけの劇場セザンヌ」が12月23、24日と2024年1月27、28日、作家の東義久さんの作品「童話屋でござる」を取り上げ、語りと朗読劇として公演する。
劇団を40年間続けて1400回以上の公演を重ねてきた遠藤さん。昨年は、炭鉱の「女坑夫」を描いた一人芝居を筑豊各地で公演した。「41周年の新たな取り組みとして、京の作家、東さんの作品を取り上げ、久しぶりに京都の物語の世界を楽しんでいただきたい」と語っている。
開演時間は12月23日(土)と1月27日(土)午後1時~と3時~、12月24日(日)と1月28日(日)午後3時~。
会場は京都市南区東九条北烏丸町のセザンヌアトリエ(南図書館向かい)入場料は一般1500円、学生1000円、小中高校生500円。
問い合わせは、劇場セザンヌ(075・205・1733 FAX075・672・3426)まで。 (矢野)
師走の「あみだ池寄席」
【大阪】噺家の露の吉次さんが会主をつとめる「第66回あみだ池寄席」が12月10日(日)午後2時~西区堀江の和光寺本堂で開かれる。
師匠の二代目露の五郎兵衛さんから引き継ぎ、年4回開催。2023年の締めくくりは、吉次さんが「兵庫船」「厩火事」の2席を披露するほか、露の端さんと林家染吉さんがゲスト出演する。
和光寺へは地下鉄千日前線「西長堀駅」⑤出口から東へ徒歩2分。前売り1500円(当日2000円)。
問い合わせは吉次さん(06・6491・3554)まで。 (矢野)
沖縄DVD上映会
【大阪】「はごろも九条の会」世話人代表の池田憲彦さんから「DVD上映会のご案内」ハガキが届いた。
「沖縄返還時に日米間で交わされた多くのやり取りを見ながら、今に至る沖縄問題を考えてみたいと思います」
・日時 12月16日(土)午後1時~3時
・場所 高石市の羽衣公民館(パンセ羽衣3階)
・交通 JR東羽衣駅、南海羽衣駅から西へ徒歩5分
・入場無料
池田さん(090・3873・3210)まで。(矢野)
21面
経済ニュースの裏側 金融緩和の功罪(羽世田鉱四郎)
マネーの氾濫 マネーが増えすぎると、モノ・サービスとの均衡が崩れ、本来のあるべき価格より高くなります。それがインフレです。通貨自体の価値も下落します。2013年から始まったアベノミクスは、金融緩和によるインフレ誘導でした。その後遺症は、今も大きな影響を及ぼし続けています。
通貨の下落(円安) 円と主要通貨ドルを比較すると、年間平均では、12年が1㌦=79円でしたが、22年は131円、直近では150円に。1ユーロも、12年が102円、22年は138円となり、直近では160円です。場当たりの経済政策を続ける政府は、補正予算案で、国債(借金)の追加発行を行い、今年度の新規の国債発行は44兆円余りの見通しです。23年6月末の国債残高は1240兆円。中央銀行(日銀)が半分を保有します。参考までに、世界の主要国の政府債務残高をご紹介します。GDP対比です。米国121%、フランス111%、ドイツ66%。日本は260%で、経済不安が懸念されるギリシャ(178%)やイタリア(144%)を上回る水準です。
好調な法人業績 一方、法人の決算は極めて好調です。国税庁の資料によれば、22年度決算での全国の法人申告所得は前年比7%増で、2年連続の増収増益です。また23年9月決算の上場企業では、3期連続で、純利益が過去最高の見通し。総合商社では、昨年度の営業利益が軒並み1兆円を超え、過去最高の利益を計上しました。資源高に加え、予想を上回る円安が、利益を押し上げた形です。
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22面
会えてよかった 久高政治さん⑦ 米国資料で事件の真相明らかに(上田康平)
桜澤論文には、立法院特別委は当
初から被災者を支援していたが、米
軍からの補償が進まない中、被災者、
支援団体は運動を展開し、本土への
訴えも開始、補償問題は解決した、
とあり、私も事件の全体像を知った。
あとは米国公文書館資料である。
「資料集 石川・宮森の惨劇
米国公文書館文書に見る
ジェット機墜落事件」の発刊
2016年、久高さんはこの資料集の監修・翻訳にあたる方に米国での資料収集の協力を依頼、渡米準備に入る。墜落事件60周年の19年に資料集として公開するつもりであった。
ところが16年12月、手に入れたか
った米国公文書館のUSCAR(米
国民政府)関係文書をすでに持って
いた方から寄贈していただくことが
できた。監修者の方がミカン箱一箱
分、全部、翻訳してと依頼されたと
資料集解題に書いておられますねと
言うとプリントしたら2000枚に
なったのだという。17年2月のこと
だった。4月から持ち込まれた資料
の検討が始まり、12名
の方で翻訳。空軍の事
故報告書と合わせて墜
落事件60周年の19年6
月、資料集は発刊され
た。
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23面
日本映画興亡史 千本組異聞⑥ マキノに影響与えた浅草(三谷俊之)
笹野末三郎が上京したのは22歳の時だった。最初に身を置いたのは、浅草・千束町に一家を構える演歌師の元締めのテキヤ飯島一家系列の親分で、「民謡と俗謡社」を興した倉持忠助だった。柏木隆法が『千本組始末記』で述べているように「当時の浅草はまさにヤクザの文化が華ひらいた時代」でもあった。もともと浅草は芝居や映画などでおなじみの新門辰五郎の縄張り。浅草寺境内一帯のヤクザやテキヤは、新門一家に場代を払っていた。ただ明治を過ぎ、大正に移行してくると他のヤクザやテキヤが力を持ってくる。
ヤクザとテキヤだけではない。当時の浅草は浅草12階と呼ばれた凌雲閣がそびえ、日本一の繁華街だった。そして、浅草オペラの全盛期でもあった。大正5(1916)年にアメリカでダンスを学んだ高木徳子が浅草六区の活動写真館「キネマ倶楽部」で10日間にわたって、アメリカ流のオペレッタを昼夜連続公演し、大人気を博したのを嚆矢とする。
その後、作曲家の佐々紅華や興行師の根岸吉之助らが「歌劇団」を起こして一大ブームをつくった。「浅草オペラ」は大衆的で、若者のものだった。その熱狂的なファンは「ペラゴロ」と呼ばれた。
文士劇を売りものにする特異なオペラ団『常磐楽劇団』には、虚無主義者でアナキストの辻潤たちも舞台に立った。客席や楽屋には大杉栄や谷崎潤一郎がいた。この館を中心に今東光やサトウハチロー、若き宮沢賢治、小林秀雄、今日出海、東郷青児、川端康成らが集った。大杉は伊藤野枝とともに、浅草12階下を闊歩していた。
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24面
坂崎優子がつぶやく エコでないトイレ自動機能
今年、トイレをリフォームしました。新型コロナも収束していない上に、これからもいろいろな感染症が流行するだろうと、手を触れずにふたが開いて水も流せる、オート機能のあるものを選びました。
リフォームを終え使い始めると、気になるところが出てきました。まずはふたの開閉。初期設定ではふたが開いたまま水が流れるようになっていて、ここは閉めてから流れてほしい。選んだ機種は変更が可能でしたが、メーカーによってはふたを閉めてから流すことができないものもあるようです。今回はそこまでチェックしていなかったので、あとからできないとわかってがっかりする可能性もありました。欲しい機能は、商品を選ぶ前に明確にしておく必要があります。
そして今回私が最も気になったのは、水の流し方です。「大」と「小」を判断していないことがわかったからです。ふと「どのくらい正確かな」とレバーの動く方向を毎回見てみると、ほとんど「大」の水が流れていたのです。これでは節水タイプに変えた意味がありません。
そこでどういう判断をしているのかを調べてみました。うちの機種は、座っている時間が30秒以内ならば「小」、それ以上なら「大」で流します。実際計ってみましたが、いつものペースで使用すると30秒をオーバーします。毎回「大」で流すはずです。この設定もメーカーによって異なり、50秒のところもありました。
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25面~29面
読者からのお手紙&メール(文責・矢野宏)
コロナで巣ごもり
体力気力失いそう
奈良県大和郡山市 吉松郁美
うずみ火事務所に顔を出さないまま、今年も残るところ50日余りとなりました。大阪にも3年間行けていません。体力も気力も失われてしまいそうで心細いですが、「私の灯台 新聞うずみ火」を励みに毎日を過ごしています。
釜ヶ崎フィールドワークに参加したかったです。西成警察署に毎年、「労働者の詩集」をいただきに行っていました。男物の衣服を段ボールで送ったり、カンパしたり、三角公園での炊き出しを手伝ったり、ちょこちょことかかわっていましたが、コロナがはやってからはまったく何もやっていません。
以前、歌手の加藤登紀子さんが三角公園で歌ったこともありましたが、ずっと前の話でしょうね。水野阿修羅さんの案内で回れば、もっと釜ヶ崎のことを知ることができたのに残念です。
空襲証言DVDの制作にわずかですが、お役立てください。忘年会の記事もうらやましく読みました。
(お手紙にはたくさんの切手が同封されていました。ありがとうございます。まずは吉松さんに礼状を)
進まぬ少子化対策
首相はいつ応える
埼玉県狭山市 根橋敬子
少子化問題はなぜ、解決しないのか。岸田首相は「従来とは次元の異なる対策を実現する」と表明しながら何も進んでいない。
子どもが欲しくても産むことができない人もいるだろう。初めから産まないと決めている人もいると思う。生活苦から産めない人々も少なくないだろう。男女平等というが、まだまだ男社会だ。その中でスキルを磨き、上を目指す中で、子育てができるだろうか。
例えば、出産間近まで出社したとしても、出産すれば最低数カ月は職場復帰はできないだろう。その間も社会は動く。
今は0歳から預かってくれる保育園も増えた。しかし順番待ちだ。会社に保育所を備えているところもわずかだができた。授乳もできるそうだ。だが心配なのは変わらない。熱が出たと言われれば帰宅せねばならない。仕事のストレスと育児のストレス。たまったものではない。男性で育児休暇を取っている人は数%だという。たまに1年とった人がいると、ニュースになるぐらいだ。
離婚すれば慰謝料を払わぬ元夫も多い。私の周りにもそのために子供に当たる人が何人かいる。子供は無事に育つだろうか。
多くの子供が貧困の中で、苦しい生活を強いられている。その上、さらに産めというのか。
1年間7万円の減税だって?1カ月に、ではない。戦闘機や万博など、無駄なお金はジャンジャン使うのに。
いつから日本はこんな心の貧しい国になったのか。岸田首相、答えをどうぞ。
(円安と低成長でこの国の経済力は低下しています。実質賃金も減り続け、安い賃金に甘んじているのが実情です。こんな日本に誰がした?)
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26面
車いすから思う事 「お願いします」私の変化(佐藤京子)
介助犬イムア君と出かける時、外出先での用足しを避けるため、一度促してから「介助犬(お仕事中です)」マントをつけて家を出る。散歩は60~90分ほどだが、行き先は特に決めない。20分ほど歩き、店舗に入る前にもう一度促す。トイレ用のシートを敷いて準備すると、イムア君が腰を落としてトイレをする。排せつ物をビニール袋に入れ、シートをたたんで車イスの下に片づけるのだが、手が足りない。片手にビニール袋を持ち、片手だけでシートたたむことは至難の業だ。イムア君は今、トイレのシートを拾って渡す練習している。これができるようになると、ずいぶん助かる。
いくら介助犬とはいえ、トイレを我慢できない。失敗を繰り返すと、犬自体がどこでしてもよいと錯覚してしまう。それだけは避けたい。最近、イムア君とはいい感じで「トイレする?」の声掛けに集中できるようになった。これまで、店内や電車・バスで失敗したことはない。この状態を維持していくことが大事だと思う。
行き先を決めずに歩いているが、最近はコーヒー店に立ち寄ることが増えた。ここでも、トイレをさせてから。近くに駅へ向かう通路があり、トイレをさせるのだが、人通りが絶えない。最近、よく「何かお手伝いしましょうか?」と声をかけてくれる。通行のじゃまにならないかと心配していたが、声をかけてもらえるのはうれしい。そんな自分の変化に気づく。今までなら「お手伝いをしましょうか」と声をかけられても、「大丈夫です」と応えていた。他人に犬のトイレの準備を頼むのは気が引けたからだ。だが、最近は「ありがとうございます。お願いします」と応えるようになった。あれをしてこれをしてと頼むのは苦手だったが、声をかけてくれた人もドキドキしているだろうと思う、心のゆとりが出てきたようだ。
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27面
絵本の扉「こんとあき」(遠田博美)
1986年生まれの娘に毎夜読んでいた絵本の中で、読んだ回数が一番多かったのが林明子さんの作品でした。『こんとあき』は娘が3歳の時に我が家にやってきました。
きつねのぬいぐるみの「こん」は、おばあちゃんに頼まれて赤ちゃんのお守りに砂丘町からやってきます。まだ赤ちゃんのいない籠の前にいるこんは退屈。次のページには、赤ちゃんの「あき」が眠っていて、あまりの可愛さにビックリしているこんがいる。あきが生まれて数年経った時、こんの腕がほころびてしまい、こんとあきは連れだって直してもらいに砂丘町のおばあちゃんの所へ。初めて電車に乗るあきを、こんは常にサポート。お腹が空いたらどうするのと不安げなあきに、こんは「だいじょうぶ」とお弁当を買いに行く。心配するあきにいつも「だいじょうぶ」と安心させるのです。
けれど、駅弁を買った帰りにドアにシッポを挟まれて一転ピンチに。車掌さんの機転で事なきを得て、砂丘町に到着。砂丘を越え、おばあちゃんの家までまた冒険が始まります。大きな犬に出会っても「だいじょうぶ。ぼくがついているからね」とあきを守る。犬にほえられても砂に埋められても、「だいじょうぶ。だいじょうぶ」と小さい声で安心させようと励ますのです。
最後はあきに背負われ砂丘を下りますが、小さい声で「だいじょうぶ。だいじょうぶ」と言い続けるこん。絵本の文字がどんどん小さくなり、読み手にこんの健気さを伝えます。ようやくおばあちゃんの家にたどり着き、綻びを直してもらったこん。その笑顔はとてもさわやかなです。
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30面
うずみ火掲示板 豊中空襲記録映画 12月17日に上映会(矢野宏)
「豊中に平和と人権に関する資料館を求める会」事務局の山東健さん(78)が企画・監督を務めたドキュメンタリー映画「神崎川―豊中南部空襲6月7日の記録」(50分)がこのほど完成し、12月17日、豊中市立地域共生センターで上映会を行う。
太平洋戦争末期の1945年6~7月、豊中市は6回の空襲に見舞われ、計575人が犠牲になった。最も被害が大きかったのが6月7日の第3次大阪大空襲だった。来襲したB29は409機。初めて1㌧爆弾が投下されたあと、焼夷弾による爆撃、さらには138機の米戦闘機P51ムスタングによる機銃掃射も加わった。
実はこの日の攻撃目標は大阪陸軍造兵廠だった。現在の大阪ビジネスパーク、大阪城公園の東部と大阪環状線を挟んだ東側に広がる東洋一の軍需工場だ。だが、大阪の上空に梅雨前線が張り出し、豊中市や隣接する吹田市などを「誤爆」したものと見られている。
神崎川をはさみ大阪市淀川区に隣接した豊南地区は、当時は豊能郡小曽根村だった。農地が広がる中に軍需工場が立地しており、大きな被害を出した。
上映会は午後2時から。公開に先立ち、ドキュメンタリー「流言飛語百年」などを制作した毎日放送ディレクターの亘佐和子さんと「神崎川」の監修・語りをつとめた矢野との対談が予定されている。制作カンパ1000円。問い合わせは山東さん(090・3275・9521)まで。
30面
編集後記(矢野宏)
野球が大好きだった黒田清さんは、セリーグは阪神タイガース、パリーグでは阪急ブレーブス(現オリックス・バファローズ)の熱烈なファンだった。阪神が18年ぶりのリーグ優勝、オリックスがリーグ3連覇を達成し、今年の日本シリーズは59年ぶりの関西決戦としても盛り上がった。黒田さんが生きていたら、仕事に手がつかなかっただろう。▼この号がお手元に届く頃には大阪と神戸で優勝パレードも終わっているだろうが、姫路の谷野勉さんもお怒りのように、運営費を賄うクラウドファンディングも低調だ。21日時点で1万1600人以上から約9000万円が集まったが、目標額5億円の2割に満たない。▼低迷の理由は、パレードに絡めて大阪万博をPRするような姿勢が批判を招いたからだ。大阪府の吉村知事は、パレード開催を発表した記者会見で、万博のキャラクターとともに登場し、「万博を一緒に盛り上げたい」と強調。府が開催費用を集めるため、府教委を通じて教職員にクラウドファンディングの周知を要請したことも「寄付の強制だ」と反発を招いた。▼府市がパレード来場者の誘導などをする要員として職員計3000人にボランティアを募り、スタッフジャンパーを支給するのみ。一方、兵庫県と神戸市は休日勤務扱いとなることから、待遇差に不満が漏れる事態を招いている。▼府関係職員労働組合の小松康則委員長は「知事のトップダウンで職員の多くが長時間労働を強いられている。府には絶対評価で毎年約15%の職員を下位評価にする人事制度があり、ボランティア要請に『強制』と感じる職員は少なくない」と語っていた。ある川柳を思い出した。「黒田記者 存命ならば 何と書く」 (矢)
31面
うもれ火日誌(矢野宏)
10月9日(月・祝)
矢野 午後、大阪市西区の新阿波座公園から難波までの「あかんやろ!カジノ 女性パレード」を取材。力強い。
10月11日(水)
栗原 午前、群馬県藤岡市の市歴史館で、文化財保護課が保管する関東大震災時の藤岡町の関連文書を閲覧、撮影。午後、群馬県庁へ。「群馬の森」追悼碑をめぐり再び県を提訴した市民団体の会見を取材。夕方、藤岡事件を語り継ぐ市民の会の会議を取材。
10月14日(土)
午後、新聞うずみ火主催の釜ヶ崎フィールドワーク。長年、日雇い労働者として暮らしてきた水野阿修羅さんの案内で現地を回った後、新井信芳さんの居酒屋「グランマ号」で懇親会。
10月15日(日)
矢野、栗原 午後、近鉄特急で名古屋へ。パレスチナ自治区ガザ地区について「パレスチナこどもキャンペーン」スタッフに話を聞く。夜、ガザ空爆反対を訴える街頭アピールを取材し帰阪。
10月18日(水)
矢野、夕方、大阪市北区の扇町公園で「大阪市の街路樹撤去を考える会」の渡辺美里さん、谷卓生さんの案内で伐採対象の樹木を見て回る。渡辺さんらが依頼した樹木医が健全と鑑定した木まで対象になっており、選定基準のあいまいさが浮き彫りに。
10月19日(木)
「水俣病被害者救済措置法」に基づく救済の対象外となった128人が国と熊本県、チッソに損害賠償を求めた訴訟で、国の救済策の見直しを迫った大阪地裁判決を不服として国などが控訴。矢野、栗原 午後、大阪府島本町に住む原告、前田芳枝さんに話を聞く。
10月20日(金)
矢野、栗原 夕方、水俣病第2次近畿訴訟の原告、白川良子さんを取材した後、京都大へ。緊急学習会「ガザとは何か」で、パレスチナ問題に詳しい早稲田大教授、岡真理さんの話を聞く。
午後、石田冨美枝さんが新聞折り込みチラシのセット作業に。
10月23日(月)
午後、柳田充啓さんが35年物の梅干しを持参。新聞折り込みチラシのセット作業を手伝ってくれる。
10月24日(火)
夕方、217号となる新聞うずみ火11月号が届く。長谷川伸治さん、工藤孝志さん、康乗真一さん、大村和子さん、樋口元義さん、多田一夫さんの手を借りて発送作業。郵便局の回収にぎりぎり……間に合わず。残りの新聞は翌日。
……
32面
うずみ火講座(矢野宏)
2024年のスタートを飾る「うずみ火講座」は1月27日(土)午後2時半~大阪市浪速区の市立難波市民学習センターで開催します。パレスチナ問題やアラブ文学が専門でパレスチナ自治区ガザへの渡航経験がある早稲田大教授の岡真理さんを講師に招き、パレスチナのガザで何が起きているのかなどについて解説してもらいます。
イスラム組織ハマスが10月7日、イスラエルを奇襲攻撃して以来、自衛を名目にしたイスラエルによる虐殺が繰り広げられています。ガザの犠牲者は1万2000人を超え、その半数が子どもです。岡さんはこう訴えています。
「今、起きていることは、暴力の連鎖でも憎しみの連鎖でもありません。テロリストに対する自衛の戦いでもありません。イスラエルが75年前に行ったパレスチナの民族浄化を完遂するためのジェノサイドです」
一日も早い停戦を祈りつつ、皆さんの参加をお待ちしています。資料代1000円、学生500円。
会場はJR難波駅直結、OCAT4階。地下鉄なんば駅から徒歩5分
32面
忘年会のお知らせ(矢野宏)
12月2日(土)午後5時とお伝えしましたが、午後6時からに変更します。新宿2丁目の中華料理店「隋園別館・新宿店」(都営線「新宿3丁目駅」⑤出口から徒歩3分)で開催します。二次会は「海森2号店」(03・3355・5183)で。
翌3日(日)の埼玉読者会は正午に西武新宿線「新所沢駅」西口改札に集合。徒歩5分の「デルフィーノ新所沢」で(会費5000円)。会食後は本川越に移動し、喜多院などを散策する予定です。申し込みは根橋さん(090・9245・0531)まで。
大阪忘年会は9日(土)午後6時~淀川区宮原の韓国料理店「セント」(地下鉄御堂筋線「東三国駅」から徒歩3分)で開催。会費は4500円。近くの店で二次会も予定しています。初めての方もご参加ください。